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第92話 建物が出来たから次は中だね

 伊織は木が密集している場所へ転移すると、刀を久しぶりに出して伐採を始めた。

 周りに影響がない間隔で間引いていくような感じに木を伐り出していく。

 全てストレージに突っ込むと街へ戻った。

「セレン、マール」

「「おかえりなさい」」

 もうすぐ夕方になろうとしているので、せめて部屋になる部分と風呂場くらいはドアを作っておきたかった。

「マールあのさ、木も地魔法でいけるとおもう?」

「たぶん大丈夫かと思うんですけど」

 伊織は何本か伐ってきたものを出すと、並べてドアの大きさをイメージして魔力を流してみる。

 すると、徐々に形を変えていき、一枚のドアの大きさになっていった。

「お、これならいけるかも」

 ドアを一度格納して風呂場へ向かった。

 出来あがったドアの上下を魔法で微調整しながらはめ込んでしまう。

 左右に動かすとうまくったようだ、これで引き戸の完成だった。

「セレン、マール。今夜から風呂が普通に使えると思うよ」

「やった、ありがと」

「助かります。汗かきましたからね……」

 開けて入ると、大き目の足がゆったり伸ばせる浅い風呂桶。

 広い洗い場、そして脱衣所が出来ていた。

「ベッドなんかはさ、揃うまではテントから持ってくるからそれで間に合わせようね」

「では、マールちゃんと簡単な掃除をしておきますね」

「うん。俺は残りのドアを作ってしまうからさ」

 二手に分かれて作業を続けることにする。

 伊織は一度覚えてしまえばあとは早い。

 陽が落ちる前には全てのドアが完成してしまった。

 今のところマールの馬車があるので、半径五百メートルは魔獣が寄ってこない。

 いずれ壁を作って魔石を埋め込んでいく必要はあるだろう。

 それでも一軒建てるのに一日かかってしまった。

 今日はこの辺でやめておいた方がいいだろう。

 慣れていけばペースは上がるし、ネード商会ほど複雑な間取りもないだろう。

 伊織は一度建物の搬入口でテントを広げる。

 中にあったテーブルやベッドを個別に格納していく。

 テントを格納すると伊織は商会の階段を上った。

 向こうのリビングだったところにテーブルを出していると彼女たちがやってきた。

「お疲れさまです、イオリさん」

「先生、もう扉終わったんですか?」

「さっき終わってね、テーブルとベッドを持ってきたんだよ。テントにあったやつだから間に合わせなんだけどね。どこの部屋に置いたらいいのかな」

「はい。四階にお願いしたいのですが」

「先生。私が持っていきますよ。ここで出してもらえますか?」

「うん、それなら俺風呂場の排水見てくるよ」

 リビングの隣の部屋でベッドを四つ出す。

「一つづつなら持っていけるようになったんですよ」

「頑張ったねー」

「はい、頑張りました。姉さん行きましょうか?」

 彼女たちがベッドメイキングをしている間に、伊織は風呂場へ行く。

 洗い場と湯船交互に水を流して、館の側にある排水溝に転移して確認していく。

 無事排水が確認されたら、木片を魔法で加工して湯船の排水の栓を作った。

 栓をはめて水を溜めて水漏れがないかチェックする。

 しばらく置いても水位が変わらないことで、水漏れがないことが解かった。

(よし、次はトイレだな)

『マール』

『はい、なんでしょ』

『トイレの浄化装置持ってきたっけ?』

『あ……』

 ジータの街では、トイレは汚水をタンクに一度溜めておく。

 魔石で動く浄化装置を通したあとに排水するようになっているのだ。

 汚水の浄化装置も地魔法の応用だと聞いている。

『一度ジータに戻るまで、トイレはこっちでなんとかするしかないかな』

『嘘っ……』

『テント出しとくよ、外に』

『ありがと……』

 テントには簡易型ではあるが浄化装置がついているトイレがあるのだった。

『セレン』

『はい、どうかしましたか?』

『トイレはまだ使えないから、外にテント出しておくからね』

『わかりました。そのようなことまで、ご心配かけてすみません』

 リビングに戻ると至るところが明るくなっていた。

 彼女たちがあちこちに明かりを設置したのだろう。

 明るくなるとがらっとイメージが変わっていく。

 マールが夕食を作っている間に、伊織は紙とペンを出して簡単な間取り図を書いていく。

「これは何の部屋なんです?」

「あのね、集合住宅を作ろうと思ってるんだ。街の人が安心して住んでもらうためと、少ない土地を有効的に使って住居を増やす方法なのかな」

 玄関があり、そこを入るとリビングがある。

 リビングの左には脱衣所を挟んで風呂とトイレ。

 リビングの奥には部屋が三か所。

 その奥にはベランダが用意されている。

 いわゆる一般的な家族持ちが住むマンションの間取りになっていた。

「初めて見ましたね。宿屋のような、それでいてちょっと違う機能的な感じで……」

「これが一つにまとまって、家になるんだよ。これで住居地区と商業地区に簡単に分けることができる。一階を店舗にすることも可能だから共存もできる。俺が住んでいた世界では当たり前にあったものなんだ」

 伊織とセレンがそんな話をしていると、マールが料理を持ってテーブルへ来る。

「はいはい。お仕事の話はそれくらいにして、晩ごはんにしましょうよ」

「お、美味そうな匂いがするね」

 今晩の献立は肉と野菜のスープにパン。

 それと伊織が前に作った具入りのオムレツだった。

 マールは料理のレシピを教えたらそのまま作ってくれるから飲み込みがいいのだろう。

 そのうち米の炊き方を教えようと思っている伊織だった。


 食後のお茶を飲みながら明日の話をする三人。

「明日朝から一度戻ってミルラちゃんを連れてこようと思うんだ。あと戻ってたらセリーヌもね」

「そうですね。墓地も綺麗になりましたし、それがいいかもしれませんね」

「私が戻ってるか見てきますよ」

「ありがと、マール。セレン、ミルラちゃん連れてきてもお店大丈夫なのかな?」

「私とミルラで行商に出てるときでも、普通に営業できますから大丈夫です。それに浄化装置を持って来ないと駄目ですからね……」

 伊織もいちいちテントまで戻るのは効率が悪いと思っている。

 それにせっかく館が出来たのだから、早めに準備もしたいのだろう。

「そうだ、マール」

「はい」

「仲のいい受付の子を引き抜いちゃうのも手かもしれないね。ギルド作るとき」

「あー、それもそうですね。ついでにギルドの手続きもしてきちゃいますね。こっちはいくらでも仕事ありそうですから」

「家具とか生活必需品も揃えてくる方がいいね。数日かけて準備したらこっち戻ってくることにしようか」

「「はい」」


読んでいただいてありがとうございます。

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