表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/187

第1話 母たちの暗躍?

第2部スタートになりました。

これからもよろしくお願いします。

 それは王城での出来事だった。

 金髪の猫っ毛のように柔らかな短髪でがっしりとした体つきの精悍な顔をした男性。

 マールの父であり、コゼットの夫。

 侯爵家当主、名前をスタンリー・クレイヒルドという。

「ほら、あなた。姉さんがもう着いている頃なんだから、急がないとだめでしょ?」

「そんなことを言ってもだな。俺だって急いで支度したんだからさ」

「あら、そんなぷよぷよしたお腹して、最近たるんでるんじゃないのかしら? 結婚した当時はかっこよかったのにね……」

「お前なぁ、割れた腹筋維持するほど暇じゃないんだよ……」

「あらー。イオリちゃんを見習って欲しいわねー」

「またイオリちゃんかよ。マールの婚約者だからって贔屓し過ぎじゃないのか?」

「そんなこと言ってもいいのかしら? 例の国のこと解決したのはイオリちゃんの功績なのよ? あの子が目立ちたくないからって、セレンちゃんの手柄になってるだけなのに」

 そう、スタンリーは伊織が勇者だとは知らないのだ。

 この秘密はコゼットたち姉妹とファリル姉弟たちだけが知っているのだった。


 金髪直毛の短髪で眼鏡をかけた、事務方を思わせる少し線の細い男性。

 セレンとミルラの父であり、ロゼッタの夫。

 公爵家当主、名前をビルディア・アールヒルドという。

「ロゼッタさん、そろそろコゼットさんが着くんじゃないのかな?」

「あなたねぇ。気を使い過ぎなのよ。もう少し堂々と出来ないのかしら?」

「そんなこといってもさ。僕は昔からこうだったじゃないですか」

「そうね。そんな優しいところに惹かれて一緒になったんですものね」

「そう言ってくれると僕も助かるよ……」

「でもね、あなたがしっかりしてくれないから、いつまで経っても男の子が生まれなかったんじゃないの」

「そんな僕だって目の下に隈を作るくらい頑張ってるのに。これ以上じゃ枯れちゃうよ……」

 そう、いまだに義務に追われているビルディアだったのだ。

「もういっそのことセレンを当主にしてしまうしかないのかしら……」

「イオリ君は駄目なのかい?」

「彼はね、目立ちたくないらしいのよ。性格なのかしらね……」

 ビルディアも伊織が勇者だと知らないのだった。


 やっと到着したクレイヒルド夫妻。

「スタンリー君、久しぶりだね」

「お久しぶりです。ビルディア閣下」

「やめてくれないかな、その呼び方。僕はそんなんじゃないって……」

「相変わらずお優しいのね、お兄さまは」

「そうなのよ、でもね。これしか取り柄がないから困ってるのよ」

 言いたい放題であった。

「ご機嫌いかがですか? ロゼッタ姉さま」

「ありがとう、貴方はどうでしたか? 少しぽっちゃりされたような気がしますけど」

「えっ。さっきコゼットにも言われたけど、そんなに目立ちますか?」

 こちらも言いたい放題だった。

 実に毒満載の姉妹だ。


 しばらくすると謁見の間へ通される四人。

 玉座に座る金髪におでこの広いオールバックの男性。

 この国の国王、カシミリア・パームヒルド。

 横に座るブラウンのセットに時間のかかりそうなウェーブの入ったロングヘアの女性。

 王妃のヘレネ・パームヒルド。

 片膝をついた四人。

「国王陛下、ご機嫌麗しゅうございます」

 ビルディアが代表して挨拶をする。

「うむ。そなた等も元気そうでなによりだな」

「はい、この度はフレイヤード王国の一件についてご報告に参りました」

「そうか、では隣の部屋で詳しく聞くとしよう」


 会議室のような広間で長いテーブルを挟んだ状態での会談になる。

 お茶を出されて、一息ついた。

「それで、どのような感じになったのかな?」

「はい。フレイヤード王国の無条件降伏に近い形になると思われます」

 カシミリアにビルディアはそう報告するのだった。

 セレンから上がっている報告の全てを終わると。

「そうか、それで今回はそのイオリという青年の活躍が大きかったというのだな?」

「はい」

「ならば、私が直接召し抱えなければならないだろうな」

「そうね、私たちの王女の婿に据えるのが一番でしょう。やはり長女のカレルナがいいかしか?」

 嬉しそうに話すヘレネ。

「そうかもしれないな。カレルナも十五になるか──」

 その瞬間。

「いいえ、それは無理ですよ」

「「えっ」」

 驚くカシミリアとヘレネ。

「既に我が家の騎士爵ですし、それにもうマールちゃんとセレンちゃんとも婚約してもらいましたから」

「なによそれ!」

 ヘレネが怒り始める。

「ちょっと、落ち着いてヘレネ」

 カシミリアが宥める。

「カレルナのどこが不満なのよ! 可愛そうじゃないの」

「いや、そういう問題じゃないだろう。てか、姉さん。どういうこと?」

 素に戻ってしまったカシミリア。

 実はロゼッタとコゼットはカシミリアの姉であり、カシミリアは姉たちに頭が上がらないのである。

 そう、ロゼッタもコゼットも王女だったのだ。

 カシミリアとヘレネの間には女の子ばかり四人。

 男の子が生まれず、今もカシミリアは泣きながら義務をこなしているのだった。

 ヘレネの希望で側室を取ることを許されないので、毎晩ヘレネに尽しまくっている。

 ヘレネが我儘なのは仕方ないのかもしれない。

「イオリちゃんはもう私の可愛い息子なのよ。だから、無理なのよ」

「そんな、いつの間にそんなことに。あなた、おかしいじゃないのよ。前に調べさせたときは婚約なんてしてないって。カレルナにもこっそり見せにいったら【あのお兄ちゃんかっこいい。お嫁さんになりたいな】って言ってたのに……カレルナの純真な心を返してよ!」

 何をやっているのだろうかこの人たちは、もう無茶苦茶であった。

 ロゼッタが苦笑しながら。

「あのね、カシム。もう遅いのよ。私だって最初ね、がっかりしたのよ。でも、なんとかセレネードも婚約をしてもらたの。三人も婚約者がいるからもう無理かもしれないわね」

 そこでコゼットが止めを刺すように。

「この国では婚約解消は罪になるのよ。だから諦めた方がいいわ。残念だったわね」

 どや顔でヘレネを見るコゼット。

「コゼットさんーっ……」

 どうどう、とヘレネを宥めながら。

「姉さんたち。そこをどうにかならないかな。せめてカレルナだけでも」

「んー。イオリちゃん次第だとは思うけど。難しいんじゃないかしら。ごり押しでもしたら、逃げちゃうからあの子。もしそんなことになったら、国が割れるかもしれないわね。そのときはもちろん、イオリちゃんに付くけどね」

「そんな……」

 がっくりと肩を落とすカシミリアを見て、あまりにも不憫に思ったのか。

「でも機会くらいはあげてもいいかもしれないわね。今度私の家にカレルナちゃんを連れてくるといいわ。そのときに合わせてあげるくらいならできると思うから」

「助かるよ、コゼット姉さん。ヘレネったら、臍を曲げると大変なんだ」

「あらあなた、そんなこと、な・い・わ・よ?」

「だから。姉さんたちのどちらかが女王になれば、俺こんな苦労しなくて済んだのに……」

「嫌よ、こんな城に留まるなんて考えたくもないわ」

「そうね、私もコゼットと同じだわ」

 そんな理由で女王になるのを拒んだ姉妹。

「あなた、早く男の子が欲しいわ。そうすればこんな苦労しなくて済むんですもの」

「あの、まだ会談の途中なんだけど……」


 そのあと、今回結婚して独立することになったガゼットを伯爵にすることに合意した。

 将来的にはフレイヤード地区を納めさせる形にしていこうと。

 元国王と王妃については会ってみないと解からないが、攻め込んだことに関しては、王家を解体したことでそれなりの処罰はもう下ったも同然。

 なので、フレイヤードの地でなんらかの職に就かせる。

 フレイヤードに残った貴族や商家などの対応については、早急に対応する。

 そんな感じで、今回の会談は終わったのだった。


読んでいただいてありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ