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陽日とお出掛け②

俺はチョコのプレーン、陽日がチョコレートソースと生クリームをふんだんに使った、油断すれば頬にクリームが付きそうなクレープを食べた。

俺の財布からは約千五百円あまりが飛んでいったがまぁこいつがたのしそうならいいか。よくねぇな。


「よし、クレープも食い終わったし帰るか」

「えぇ、もうちょっとデート続けようよ」

「デートなんて初めっからしてないだろ」


ショッピングモールの案内板近くにあるベンチに座って休憩中。

休憩続きで帰宅してもいいと思うんだど、てかもともとそう言う約束だったんだけど。


「・・・・・・」

「あっ」


異彩を放つのが当たり前に思える小幸さんがそこに居た。白を基調にした服装はそのプラチナブロンドの髪や葡萄色の瞳を少し抑えてくれていた。

分かっていたが再認識させられる。道を行けば十人中十人が振りかえるような人だと。


「昨日ぶりね、神居くん」

「そうだな」

「えっ、おにーちゃんの知り合い?」

「まぁな」

「どういう関係どういう関係?」


食い入り気味に目を輝かせ聞いてくる。この時期の女子はみんなこう言うことに興味がある訳じゃないのだろうけど、こいつはどうやら興味津々らしい。

めんどくさい。


「ただの━━━━━━」

「友人よ・・・・・・です」


照れるくらいならさ、普通にクラスメートって言えばいいだろ。俺は陽日にはもちろん誰になんと思われようと気にしないんだしさ。

周囲が関係性の認識を間違えてても俺には関係ないって言い切るんだからさ。


「おにーちゃん友達居たんだ、しかも異性の」

「まぁな。ところで小幸さんは何のよう?」

「お友達なんだからおにーちゃんに話しかけるのに理由なんていらないよね」


バッカお前、何のようかって聞いときゃ雑談って回答は完璧に潰せるんだよ。ここでさりげなく忙しいアピールもするとなお良し。


「ところで、貴女は誰?神居くんの妹?」

「違いますよ。私はおにーちゃんの従妹の陽日です」

「そう。私は大幸小幸、神居くんにはお世話になってるわ」

「そんな、おにーちゃんが誰かを助けるなんてありませんから」

「そうだぞ、俺は別に誰も助けてない」


なんなら誰も助かってないまである。

あの一件はただ無意味で無価値な悪意をまた無意味で無価値で自己満足的な主張で押し潰したにすぎない。

あれで嫌がらせはやんでも小幸さんが加害者からの謝罪を受けたわけでもない、その加害者も今じゃカーストの頂点から転げ落ちた。

誰も救われていない。朝倉に関しては俺が貶めた。


「それより小幸さんお昼御飯はもう済ませましたか?」

「いえ、まだだけれど」

「それなら一緒にいきませんか?私たちも丁度今から行こうって行ってたんですよ」

「ごめんなさい、人を待たせ━━━━━━」

「小幸ちゃんおっそーい」


人に受けの良さそうな媚を上手い具合に隠した女性の声と共にその主がやって来た。

冬にしては些か薄着の女性はブラウン系統の緩くウェーブのかかったショートヘアーで、その顔立ちはあどけなさが残る。それと同時にそこはかとなく小幸さんにも似ている。

体型も胸の大きさを除けば同じくらい。小幸さんより少し身長が高いくらいしか変わらない。

小幸さんの姉か何かだろうその人はニコニコ微笑みを張り付けながら俺と陽日を一瞥した。

うすら恐ろしい物を感じるぜこの女。


美幸(みゆき)先生!?」


何?陽日知り合い?

先生ってことは教師・・・・・・にしては若すぎる気もする。まだ大学生に見えるし。


「あっ陽日ちゃん、久しぶり。陽夏ちゃんは元気?」

「はっはい」

「そちらの方はお兄さんかな?」

「えっと従兄の神居神徒です。おにーちゃん、この人は大幸美幸先生。今年の秋くらいに私の学校に実習に来たの」


と言うことは大学生か、やっぱりな。


「ところで小幸ちゃんとはどんな関係?」

「一応友人です」

「そかそか、お姉ちゃん小幸ちゃんにお友達できて嬉しいよ。あっと小幸ちゃん早く行かないと間に合わないよ」


仲のいい姉妹だこと。

心なしか小幸さんは姉のこと苦手そうにしてるけど、まぁ実際の兄弟姉妹なんてそんなもんなんだろ。

特に妹なんかになれば姉と言う存在が疎ましく思えることもあるだろう、その逆も言えるけど。

終始笑顔の大幸さんに連れられ小幸さんの姿が雑踏に揉み消されていく。そんな後ろ姿を見届けるわけでもなく、俺はさっさと出口に向かって歩き出した。


「おにーちゃん、友達居たんだね」

「まぁな」


ショッピングモールを出ると気圧の違いで生じた冷たい風が頬を掠める。これが涼しい風なら撫でると表現するのだが、冷たすぎる。

電飾に彩られた街路樹が夕暮れの街並みを少し日常からは慣れさせてくれる。世はもうすぐ、具体的には三日後にはもうクリスマスなのだ。

やはり手袋は返してもらえないようだ。


■□■□■□■


はぁ、寒かった。

寒かったから自室で暖をとろうと掛け布団を開けたら陽夏が寝ていた。

まだ寝てたのかとか色々あるけどとりあえず何で俺の布団で寝てんの?


「陽夏ちゃん昔からおにーちゃんのこと大好きだもんね」

「お前も何で俺の部屋いんだよ」


一人の時間極端に減るから嫌だったんだよ。


「いいじゃん」

「早く眠り姫を連れていけ姫の姉君」

「私が姉君ならおにーちゃんは執事だね」


何でだよ王子だろ。義理とはいえ血縁者でしかも長男なんだから王子でいいだろ。


「セバスチャン」

「世の中の執事が皆セバスチャンだと思うなよ」

「おにーちゃん確り返してくれるから好き」

「そりゃどうも」


布団を親の仇のように確り握り、今朝のように引き剥がすのは難しそうだ。だからと言って布団後と排除するわけにもいかない。

諦めて俺もこれで寝よう。


「えっ寝るの?」

「五時になったら起こしてくれ」


何とか一人分のスペースを確保して目を瞑る。寝るときは左膝立てないと寝れない人は少なくないはず。


「じゃあおやすみ」


同じ枕を使うため真隣に陽夏の寝息を感じながらも俺は眠りについた。

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