表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

卑怯卑屈上等

翌日、寝坊はしなかったが訳あって遅刻ギリギリだった。

急ぎ目で彼女の下駄箱を確認するとやはりスニーカーは何処にもなかった。

まぁまだ来てない可能性もあるしな、きっと大丈夫だ。

そう自分に言い聞かせながら階段を上がって行く。そして教室のドアを開けるとそこには黒板を必死に消す小幸さんと、それを見て野次を飛ばしたりニヤニヤしたりする数人組の女子生徒がいた。

他の生徒はどこか居たたまれない雰囲気でいつも通りを演じている。

小幸さんは一瞬俺に視線をくれるとまた直ぐに黒板を消し始めた。ここで手伝っては彼女の気遣いが無駄になる、だから俺は何事もなかったかのように席についた。

席につく直前みてしまった小雪さんの机には少ないボキャブラリで思い付く悪口の限りが書き殴られていて、とてもカラフルになっていた。


「おはよーさん、なぁ神居はどう思うよ」

「何が?」

「だから・・・・・・その机の事だよ」

「犯人が分かればいいんだけどな」

「俺朝練から戻ってくるとき見ちまったんだけどさ、これやったの朝倉(あさくら)美代(みしろ)水本(みずもと)なんだよ」


あぁ、いかにも女子高生やってますって感じの人たちか。リーダー格の朝倉に関しては同じ中学だったから知ってるけど、いわゆる高校デビューを成功させたやつだ。

今じゃすっかりクラスカーストのトップに君臨するリア充なのだ。

あとの二人はしらん。三人に共通するのが、どうみても自然の色の髪じゃないことと少し紅すぎる口紅だ。


「お前も災難だな」

「まぁな」


自分で肯定すんのかよ。


「まぁやりたいようにやらしときゃ良いんじゃねぇの、俺関係ないし」

「そう・・・・・・だよな。本人が嫌って言えばいいだけだもんな」


前方からの訳の分からないにらみを無視して文庫本を開く。もう話しかけるって言ったのはお前だしな。

きっと長内さんは、俺が何があっても小雪さんの味方っての信じたんだろう。

そんな押し付けがましい信頼に答える必要なんて無い。俺は俺の決めたことのために動く、それだけだ。

そうこうしてると黒板を消し終えた小幸さんが濡らしたハンカチで罵詈雑言の限りを書き殴られていて机の落書きを消していく。

さすがに教師に見つけられるのは面倒だったのだろう、水性ペンで書いてある。

そんないじめに心痛める健気な少女を傍目に俺は本を読みふけった。


「ねぇ神くん」

「・・・・・・」

「無視すんなよ」

「長内さんが話しかけないでって言ったんだろ」

「でも神くんも大幸さんの味方だって言ってたじゃん」

「だから?」

「何で助けてやんないの?」

「長内さんみたいに関係性すら真っ向から全否定で助ける来なんて更々無い人にとやかく言われる筋合いはないね。それに俺は人助けするほど殊勝な人間じゃない」


ただ大した意味も理由も価値もない悪意が嫌いなだけ。


「今回のこれだって理由なしだろ、なら助けるなんて意味わかんねぇよ」

「でも切っ掛けは大幸さんが石井(いしい)くんふったかららしいよ」

「大した理由じゃない。助ける義理もない。俺はこの件に関して無関係だな」

「・・・・・・見損なった」


自分の事を棚にあげっぱなしの長内さんはそれだけ言うと一限目の用意を始めた。

確かに見損なったよ。

そして見せかけは恙無く過ぎていく時間も、とうとう昼休みに差し掛かった。


「あれ、これだれの携帯?」


隣のクラスから昼飯を食いに来た女子生徒がロッカーの上の段ボールの中から携帯を取りだしそんな事を言った。

うん、それ俺の。

名乗り出て受けとる間際とても嫌そうな顔をされる苦痛と、後に触っちゃったキモいと言われる苦痛を代償に携帯を取り戻す。

わざわざ大声で言わなくてもいいじゃん。

ああいうやつらって何で自ら進んで傷つけてくるの?

俺なんもしてないよ、なのにさぁ。

昼飯はやけにしょっぱかった。


■□■□■□■


人は人をいじめる。

他者を貶めることで自分はそいつより優れてると優越感を得るた

、そいつ一人をいじめることで他の奴等と仲良くするため。

理由は沢山あるが結局のところいじめる原因は二通りしかない。それは嫉妬と嫌悪。

リーダーの嫌悪は全員の嫌悪、嫉妬もしかり。

日本の学校は日本社会のあしき風習をそのまま詰め込んだ様なもので、皆が右を向けば残りも右を向く、左を向けば左を向く。

リーダーに嫌われれば除外され袋叩きにされる。

そうならないために誰もがそいつにさかわらず服従する。楽しい高校生活は諦めと服従で成り立っている。

そんなので楽しいはずがないのに、いじめられてたあいつに比べると自分なんて楽しいもんだと思えてしまう。

だからいじめは無くならない。


ガラガラガラ


教室の扉が音を立てて開く。

今朝遅刻しかけるまで校門で待っていれた手紙を読んでようやくきたのだろう。

朝倉は俺の顔を見ると不機嫌そうな顔つきになった。


「で、何のよう?」

「見てもらいたいものがある」


三メートル先まで近づいてきた朝倉に録画した動画を見せる。

今日の今朝起きた事の一部始終が記録されている。そこには楽しそうにけらけらと笑いながらいじめを重ねる朝倉と他二名がバッチリと移っていた。

朝倉の体育館シューズから小幸さんの靴を取りだし笑い、机に落書きして笑い、黒板に有ること無いこと書いて笑う。

そして止めに

『あいつが石井をふるからこんなことになったんだよ』

吐き台詞を吐いて三人揃って去っていく。

それは昨夜の日の暮れた後の事。


「これに心当たりはあるか?」

「・・・・・・」

「あるよな、わざわざ夜中に忍び込んでやったんだから覚えてないわけねぇよな」

「だっだからなに、教師にでも言い付けんの?ほんとしょうもない」

「そんな事しねぇよ」

「だったらどうすんのよ」

「そうだな、ネットにでも晒すか」


瞬間余裕ぶってた面が青ざめていく。

最近になってネットトラブルが大きく取り上げられ、顔を晒したりするのは基本ありえない。

一度出回れば二度と消すことができないからだ。

こんな悪事を働き個人も特定できなおかつ、場所まで特定できるような動画がネットに上がれば、偽善ぶった奴等のもう攻撃を受けるだろう。

そのうち学校側もメディアも気付き、学業の進行なんて無視してインタビューの嵐。

学校なんて続けられなくなる。


「おっ脅すつもり?」

「ちなみにお前らの住所もリサーチ済みだからそれも一緒にさらしてあげる。男にモテたかったんだろ、きっと男も女も来るよ」

「最低!だいたい私が悪いの?」

「この動画見ただけでも窃盗および侮辱罪で刑事事件にも出来るし、民事裁判にすればほぼ間違いなく小幸さんは勝てる。つまり法的にもにお前らが悪いと認定されるわけだ」

「・・・・・・」


付け焼き刃の知識に言い負かされるようではこいつもまだまだだな。


「まぁ俺は優しいからな許してやる」

「あり、が、とう」

「何て言うわけねぇだろばーか。これからお前に不安と恐怖に蝕まれる高校生活を送らせてやる。それこそ今まで小幸さんが苦しんだ以上に苦しめるつもりだ、それにお前こんなことも言ってたな。あんなに真っ白とかキモすぎ、人間じゃないじゃんあんなの」


個人的にはこらに一番腹が立っている。

小幸さんは人間だ、ただ真っ白なだけで人間なんだ。アルビノだってだけで人間だってこと否定する権利なんて誰にもない。

なのにこいつは身勝手に否定した。

ふざけんな。


「小幸さんの何を知ってそんなこと言ったんだよ」

「・・・・・・だって何で石井はあんな白いだけの奴選んで私には見向きもしないのよ!」

「お前に魅力が無いからだ。お前なんかに告白する奴はみんな目が節穴なんだよ、その事をよく理解して生きろ」


どういうわけか泣き出してしまう。こいつは今まで小幸さんに酷いことをして来たのに、自分がされるとすぐに泣き出した。

きっと泣けば許されると思ってるのだ、涙は最強の武器なんて言ってたけどあれはうそだから。


「これを晒されたくなかったらもう誰にも関わらず三年間ひっそりと過ごせ。そしたら卒業の日に消してやる」

「・・・・・・はい」


座り込み泣きじゃくる朝倉を放置して俺はその場を引き上げた。

初めからネットに晒す気なんてなかった、そんなことをすれば小幸さんに迷惑がかかる。

それに録っていた俺も仲間の一人にされかねない。

誰かを貶めないと得れない優越感も消せない嫉妬も偽物だ。

そんなものの為に、初めて俺の事を友人だといってくれた人は壊させない。

翌日から朝倉は本当に静かになった。

チラチラとこちらに視線をくれるがそれでもましになったもんだ。

当然の事ながら小幸さんに対しての嫌がらせもピタリとやんだ。

そんなある日の事。


「神居くんありがと。段ボールの中の携帯気付いてたよ」


軽い足取りでバス停への道を行く小幸さんは通りすぎ様にそんな事を言った。

お見通しだったのか。

そんなこんでもうすぐに冬休みがやって来る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ