俺の青春時代とは
選挙一週間前を迎え、彼女の落選が現実的になってきた。と言うことは俺の当選が目に見えてきたことにもなる。
このままでは由々色先輩の思惑通り何もかも進んでしまう。そんな事はさせない、俺には積み重ねてきた証拠と先輩の知らない繋がりがあるのだ。
だからこうして柄にもなく俺は、放課後に直帰せず近くの喫茶店で大幸さんを待っている。
あの人に連絡すんのマジでやだったんだよな。
カランコロン
ドアベルが小気味良い音を立てて開いた。
ドアの方に目をやるとそこには大幸さんがいて、予想外なことに先輩もいた。
「あっいたいた」
「わざわざすみません」
二人とも笑顔で気圧してくる人だからなぁ、胃もつかな。
「何で由々色先輩もいるんですか?」
「私が呼んだの」
「・・・・・・」
はぁ。仕方ない、ここで決着をつけるか。そう覚悟し俺は小型録音機を取り出した。
それを見た先輩の顔はどんどん青ざめていく。
今までの会話を録音されるては不味いという自覚があるのだろう。所詮学生詰めが甘い、まぁ俺も学生だけど。
「そっそれは何かな、神居君」
「ただのレコーダーですよ。それより店に迷惑なんで何か頼みましょうか」
俺はブレンドコーヒーでいいか、たいして味の違いも分かる訳じゃないし。
先輩はアールグレイ、大幸さんはエスプレッソを注文した。
「で、神居くん。私を呼び出してなんのようかな?」
「本来なら大幸さんにだけ聞いてもらうはずだったんですが、まぁいいです。内容は頭に入ってますか?」
「完璧だよ」
「なら始めましょうか」
「ちょっ、私おいてけぼりなんだけど」
身を乗り出して自己主張をしてくる先輩を一瞥して俺は積み重ねた計画と証拠と思慮を形にし始めた。
「先輩。約束の件なんですが、果たす気はありません」
「どういう意味かな?」
「果たす必要がないからです」
「じゃあ私もばらしちゃうよ」
「俺を現行犯逮捕した時の罪状と日時、後はそれを裏付ける証拠を出してください」
「二千十六年一月二十四日午前七時頃」
「正確にお願いします」
「・・・・・・」
俺がこの人に反抗するにはまず、この人がやられてないと認める必要があり、その点は既にクリアしてる。次に俺が現行犯で逮捕された事の正当性を崩す必要もある。
罪状も日時も言えない現行犯逮捕なんて効力の欠片もない。
「言えないんですね。それに先輩は、あれは少し強引な勧誘って言ってたじゃないですか。要するに先輩は初めから俺がやってないことを知ってたんだ」
「それこそ証拠あるの?」
「先輩との会話は全部これに録音して、データは家のパソコンと俺の携帯にバックアップしてます」
「・・・・・・」
「それに先輩は事前に俺を知ってた、つまり個人的理由で俺を痴漢犯に仕立てあげた可能性があります。冤罪だと知りつつ、それを利用して俺を脅し自分の思うように動かす。自分は被害者を気取れていいですね」
自分は安全な場所から手駒がボロボロになるのを見下すだけでいい。この人のミスは俺のような反骨精神旺盛な人間を、気付きながらもどうせ驚異にはならないと捨て置いたことだ。
既に最悪の評判、下がる心配なんてしなくていいなら何でもできることをこの人は知ってる、だから俺を捨て駒にした。
「と言うことはです、立派な計画的犯行を重ねた全ての証拠を校内放送ででも流せばどうなるでしょう。先輩がもっとも気にしてた周囲の評価はがた落ち間違いなし。もう分かりましたね、立場を弁えてください由々色先輩」
真っ青だった顔は真っ赤に変わっていく。
傲慢なまでの自己顕示欲とプライドが俺なんかに敗けることを許さないのだろう。
「評判も評価もない先輩はただ少し可愛いだけの腹黒で最低の、俺なんかにすら敗けてしまうレベルのゴミでしかありません」
「あんたより先に全部ぶちまけてやる」
「今ここで俺の言うことに無条件で従うと誓うのなら、許してあげます。全ての事は黙ってましょう。でももしそれが嫌なら、今すぐ大幸さんに携帯の録音データを転送しばらまいてもらいます」
「私がなにしたってのよ」
中途半端な計画で人をおとしいれようとするからそうなる。
大幸さんはよほどすごい先輩だったのか、卒業して二年たった今でも学校の部活やらのグループチャットに入ってる。
影響力は甚大。まっことうらやましいね。
「どうしますか?」
「分かったわよ」
「なら来年の四月に生徒会長を辞任してください。理由は勉学に専念するためで通るでしょう」
「・・・・・・」
「話は以上、帰ってください」
これで仕返しも終了かな。
二百五十円を机に奥と先輩はイライラした足取りで去っていった。
その様子を眺めてるとどういうわけか大幸さんがまた笑ってる。
「どこまでが本当?」
「録音なんて最初のバスの中までしかしてません」
「ふふ、あの子も証拠をちゃんと聞かされたわけでもないのに諦めちゃったもんね」
「あるって言われても出されるまで信じないのが鉄則なはずですし」
そう、言うだけだったらタダなのだ。警察に取り調べされて調書にサインしろって言われても絶対にしない。証拠を提出してもらうまで信じない。
こんなのは常識だ。
「何でこんなことしたの?」
「・・・・・・水無月は副会長の肩書きがあったから中途半端でも何とかやってこれました。だから俺は生徒会長に小幸を推します」
「結局君も自己満足だよ」
「ですね」
「私を利用した埋め合わせきちんとしてね。期待してるから」
そう言い伝票を持っていってしまう。
俺も自己満足か。まぁわかってたけど生徒会長をいじめたら部活仲間だったりに迷惑がかかると言う認識をもってもらいたいのだ。
俺の青春時代はこんな風に卑怯卑屈上等で、影で画策するような時代かもしれない。
俺はこんな青春時代が大嫌いだ。
こんな中途半端な簡潔で申し訳ないです。
途中で話が終わらずにエタる位なら切りのいいところで無理矢理終わらせてやろうと言う魂胆です。
少ないですが読んでくれた方や感想を書いてくれた方々に感謝します。




