#1 魚心あれば水心①
どうしよう・・。
私の前には気づいたら羊さんの群れがいました。いや、いるというか取り囲まれているに近いです。
たくさんの羊さんが周りでメェーメェーと鳴く姿は見ようによってはカワイイですが、見ようによっては怖いものです。私は羊さんになにかしてしまったのでしょうか。
あれでしょうか、僕たちの縄張りに勝手に入ってくるな!的な感じでしょうか?
それでしたらごめんなさい、謝ります。けれど悪意はないので!だから戦闘態勢とらないでくださいー!
あ、もしかしたら異世界だし言葉通じたりするのかな?ならば対話せねば!
「あの、私無害ですんで!羊さんには何もしませんから!仲良くやりましょう!」
羊さんたちは無言だ・・・。それどころかさっきと何も変わってないー!言葉通じなかったんだ。恥ずかしー!
私が一人で恥ずかしさに悶えていると、羊さんの群れから一匹が進み出てきました。周りの羊さんが道を譲るところを見ると、群れのリーダーでしょうか。
そして私の目の前でじっとこちらの瞳を見つめてきます。
くっ、なんて可愛さですか!ついついリーダー羊さんの頭をよしよし撫でてしまいます。
するとリーダー羊さんは気持ちよさそうに目を細めました。しかし何故か周りの羊さんたちがぎょっとしました。
あれ?何かまずかったですか?
少し戸惑っていると、リーダー羊さんが他の羊さんたちにメェーとなにかを言っています。
ていうか普通に最初から羊さんたち、メェーって言ってましたね。言葉通じるかもとか思った自分が恥ずかしいです。再び恥ずかしさに悶えていると、羊さんたちが歩き始めました。リーダー羊さんを見ると、まるでついてきな、とでも言う感じに顎をくいっとやってくれました。リーダー羊さんかっこいい!
私はお言葉に甘えて羊さんたちについていくことにしました。