表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第1幕 始まりの不幸
9/57

第7話 羞恥プレイ!……という名の不幸

皆さんお疲れ様です。

今回で起承転結の『起』の部分の『転』の部分が終了ですかね。

そんな新しいお話をおおくりいたします。

(2012/10/27 体裁統一のためのチェック)



 僕は地面に落ちたハーフパンツをあわてて手に取ろうとしてハタと手を止めた。

 ロングTシャツとは言え太腿(ふともも)までしかなかった丈がなぜか(ひざ)まで伸びている……?

 下半身を露出(ろしゅつ)しなかったことに安心したけど、どうしても疑問に思ってしまう。


「このTシャツこんな長かったっけ?」


 いやそもそも、さっきフェアリーレッドさんが高くなったように感じたのは……。


「むしろ僕が縮んだぁ!?」


 髪の毛が異常(いじょう)に伸びて、身長が縮むとか魔法恐ろしい……。


「良いかな~? 佐伯さん、キミは本当に女の子だったんですのん?」


「なに言ってるんだよ!? 僕が男以外のなにに見えるんだよ!?」


「女の子……?」


「女の子~?」


「どっからどう見ても男なんかにゃ見えへんわ」


 黒髪黒目、日本人の一般女子高生のブレザー姿に戻った魔法少女たちから全会一致(ぜんかいいっち)否定票(ひていひょう)

 でもでも、フェアリーレッドさんなら分かってくれるはず。そう思ってフェアリーレッドさんに視線を向けるとフイっと視線を反らされてしまった。どうして!? なんで!?


「すまない。今の君は女の子にしか見えない……」


 フェアリーレッドさんまでそんな反応するなんて……。


「ほな証拠(しょうこ)や! 証拠(しょうこ)見せてみぃ?」


証拠(しょうこ)見せればいいの?」


 証拠(しょうこ)……ああ、学生証だ。メッセンジャーバッグの中から学生証を取り出して黄色の女の子に手渡した。黄色の女の子が学生証を開いてこっちを見る。じーっと見る。むしろ凝視(ぎょうし)する。


「な、なにかな?」


「お嬢ちゃんあかんで、お兄ちゃんの生徒手帳なんやろ? うちは(だま)されへんで?」


「ええっ!? ちょっと待ってよ! お兄ちゃんって誰だよ!? 僕が佐伯明なの!」


「いややなぁ、まだ言うんか? どこを、どう見ても、学生証の写真はあんたや無いやんか! むしろあんた中学入りたてにしか見えへん。それでどない証明できるんか説明してみー?」


 その言葉を聞いてあわてて学生証を取り返して見た。けど、どう見ても僕の写真だ。

 そもそもまだ写真を撮って半月なんだし別人だとまちがわれる要素がどこに……。


「どれ、私にも見せてくれないかな?」


「え?」


 レッドさんが僕の手から生徒手帳を引っ手繰(たく)って中を確認する。

 ふ~んと一(うな)りして手帳を放り返してきたのを慌てて受け取る。


「確かに君は男だったようだ。私が保障しよう」


「どうして過去形なんですか」


「どうしてって……誰か鏡持ってない?」


「一応持ってるけど出さなくちゃダメ~?」


 ダルそうな様子で緑色の女の子が反応した。

 レッドさんが頼み込んで学生カバンから手鏡を出してもらい、僕に手渡してきた。


「ほら、今の自分と生徒手帳の自分を良く比べて見るんだ」


 そう言われて手鏡を受け取ってのぞいてみた。

 手鏡に映ったのは黒い長い髪で大部分が隠れた顔だった。

 小振りで(あご)がすらっとしていて、鼻梁(びりょう)がほど良く整っていて、黒い大きな目が特徴的でかなりの色白。

 ただ、髪型がかなり昔のホラー映画の幽霊と同じような髪型だけにちょっと怖い。そして引き攣った笑いを口元に浮かばせていた。


「これ……誰……?」


 思わず漏らした声と同調して手鏡に映った顔の口が動く。


「もしかして……僕……なの?」


 幽霊のような容貌(ようぼう)に見開いた瞳。


「ひぃっ!?」


 思わず悲鳴を上げて手鏡を放り投げちゃったけど、

「おっと」

ギリギリでレッドさんがキャッチしてくれた。

 ああ、なるほど。さっきレッドさんと妖精さんが悲鳴を上げたのが良くわかる。

 多分真っ黒な髪の毛の塊の髪が分かれて間から大きな瞳がギョロリ……と。


「ホラーだ! ホラー過ぎる! 魔法の力怖いっ!」


 思わず全力で悲鳴を上げるほどの怖さだった。僕の想像力は(あなが)ちまちがってないはず。

 ってちょと待って! 身体が変化してるって事は……もしかして……。

 慌てて太腿(ふともも)を引き合わせて股下の感覚を確かめてみる……予想通りアレの感触が無い!


「ああっ! 無いっ! 無くなってるっ!」


 男の子の大事なアレ。生まれてもうすぐ16年、いつも僕に付いてたアレが無いのだ……!

 いやアレアレ言いたいだけじゃないのかってツッコみされそうだけどさ……僕には相当(そうとう)ショッキングなできごとだよ。

 パニックを起こした僕は、まさにドン引きされるほどに取り乱していた。

 周りの女子は全員距離を取って、イタイモノを見るような視線(しせん)を投げかけて来る。それがものすごくミジメで涙があふれてくる。

 正直、今僕は(ひざまず)いて号泣していないだけ()められても良いはずなんだよ!


「なぜなのWhy!?」


「ヒートアップしているところ申し訳ないですのん。話を聞いてもらえるですか~?」


「ぐすっ……ふぁい?」


 妖精さんが深刻そうな顔をして、バカっぽい口調で話しかけていたので鼻をすすって顔を向けた。

 そしたらまた「ひぃっ」と声を上げられた。

 正直、メチャクチャ傷付くんですけど……このやり取り。


「それは多分変身魔法の効果ではないですのん」


「なにそれ……」


「魔法少女の変身魔法の効果は、目と髪の色をその人の持つ属性の特色に変えて魔法少女の衣装を着せるというものですのん。身体を作り替えるなんてことは法則上(ほうそくじょう)不可能(ふかのう)ですのん」


法則上(ほうそくじょう)?」


「魔法は万能ではないですのん。『法』と付く通り法則があるですのん。佐伯さんの場合はその法則から外れてるですのん」


「じゃあコレなんなんですか?」


「それはアレじゃないか? 男相手に魔法少女の契約をしたからじゃないか?」


 レッドさんが呆れてツッコミを入れた。


「はぅあ!? まさかさっきのアレのせいでですのん!?」


「それはそうだろ? 本来魔法少女の契約は女の子としか成立しないだろ? だったら原因は略式で契約決めたエルカにあるんじゃないか」


「エルカ……(ひど)い子……」


「エルカ、責任とらなあかんで」


「私たちには責任回さないでね~。面倒くさいし~?」


「わかったですのん! そこまで言うなら責任取るですのん! 今から『魔法少女担当課』に戻るから一緒に来るですのん」


「でも、早く僕帰らないと……」


 姉さんに頼まれたアイスを見る。もう中身はドロドロに溶けてるんだろうけど、さすがに帰りが遅いと怒ってそう。


「どの道、元の姿に戻らないと帰れないですのん! 来るですのん!」


 確かに元の姿に戻らないと家に帰っても「誰?」って言われるだけだしなぁ……。


「どうでも良いから……まずは下をはいたら……?」


「え゛っ!?」


 青い女の子は冷たい目で汚いモノを見るようにボクの足元を見た。

 とりあえず、ハーフパンツとトランクスをあわててはいた。けど、やっぱりズルズルと下がってしまう。

 あわててすべり台の影に駆け込んだ。長い髪がザリザリ地面に引きずられるけど今はかまってられない。男として最低最悪の危機なんだから……。

 トランクスだけ脱いでハーフパンツを引き上げてベルトで絞る。ベルトがホルダータイプで良かったよ、まったく。ノーパンなのはすっごいイヤだけど……なにも下にはいてないよりはマシかな? いやものすごくヘンタイになった気分だけど……。


「なにやってるんだ?」


「ひぃ!?」


 フェアリーレッドさんがこっちをのぞきこんでた。そして彼女の視線が僕の右手に移って赤面する。


「なっ、なにを手に持ってるのよ!? 女の子がはしたない!」


 僕はあわててソレをメッセンジャーバッグの中に放り込んだ。ソレとは僕のトランクスだ。いや女の子とかはしたないとかの問題は置いておいてよ。僕は男なんだし……。

 愛想(あいそ)笑いを浮かべて、なんとかレッドさんを(なだ)めて皆のもとに戻る。 赤面したレッドさんを(いぶか)しげに皆が注目するも、本人は「何でもない」の一点張りだ。


「それでどうやって行くの? 『魔法担当課』ってどこにあるの?」


「徒歩で市役所ですのん」


 思ってた以上に『魔法担当課』ってのはしっかりしたお役所だったらしいです。

 しかし、市役所まで徒歩ってね……。市役所は無いんじゃないかなぁ……。こっから歩いて片道20分くらいじゃないかな? しかも商店街を突っ切るコースで……。


「あの~…、車とかは無いんですか……?」


「誰が運転すんねん」


 ごもっともです……。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



 結局、みんな歩いて市役所へ向かうことになりました。

 今、僕は黒服に強制連行されているグレイのような気分です。

 横をちらっと見ると買い物帰りの奥さんがこっちを見てるし、前を見ると怖い物を見たような引き()った顔をしている奥さんが見てるし……。

 現在僕たちは先頭を妖精さんと緑色の人。右をレッドさん、左を黄色の人、後ろを青色の人、その真ん中に僕という陣形。

 どうしてそんな陣形で移動しているかって?

 髪の毛が長すぎて一人じゃ移動できないから、3人に持ってもらって移動してるんだ。さっきから後ろの青色の人が無言で抗議しているように思えて忍びない。

 あ、ちなみに緑色の人は真っ先に、

「面倒くさいから~……あたしパ~ス」

と言いました。極度(きょくど)の面倒くさがりだそうです。

 そんな奇妙な光景を振りまきながら移動してる僕らは、とうぜん奇異(きい)の目に(さら)されているわけです。

 これなんて羞恥(しゅうち)プレイ!?


「うわ~……髪の毛オバケだ!」


 すれ違った男の子に指をさされてはやし立てられ、

「こら! 指さしちゃいけません!」

あわててイヤなモノを見たような表情で買い物袋を下げた奥さんがたしなめます。


「え~…?」


 こっちが「え~…」って言いたいよ……。

 ちなみにやっと市役所までの道が半分終わった所です。まだまだ道のりは遠いよ……。

 僕はガックリと肩を落とした。




                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



前回『急いでR15のタグを付けさせて頂きますね』と言いましたが、もう付いていました(爆)

さて、明くんは今後どうなるのでしょうか。気になる人は次回を待て!(ぇー)

という訳で次回もよろしければお付き合い下さいませ(ぺっこり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ