第6話 強制変身!……という名の不幸
皆さんお早うございます。
眠いです。すっごく眠いです。
あたしには厨二病の適性は無かったと愕然とした第6話をお贈り致します。
(2012/10/27 体裁統一のためのチェック)
目の前が真っ黒だ。暗いを通り越して黒かった。
僕は死んだのかな? と思ったんだけどどうも足で立ってるような感覚がある。
でも真っ黒なんだよなぁ……。
「なあ? エルカ、お前『コレ』どう責任取るの?」
「いやー責任と言われても、『コレ』ばっかりはどうしようもない……ですのん……」
2人の声がはっきり聞こえる。
おかしいなあ、僕が死ぬようなこと言われたのに。
「ひぃ!?」
「はぅあ!?」
声が聞こえた方に首を動かすと2人の悲鳴が聞こえた。
どうやら僕は生きてるようだった。
そして、視界一杯の黒。これの正体が判明した。髪の毛だ。しかもすごい量の。
「な、なんだよこれ!? 僕の髪の毛メチャクチャ伸びてるよ!?」
手で掬って見るとおかしなほど長い。
下を見ると前髪さえも地面に届いて散らばってるんだ。一体どうして……。
「ねぇ?」
「ひっ……」
また妖精さんの怯えたような声が聞こえた。どうも僕を怖がってるらしい。
「僕……どうなったの……?」
首を傾げて自分の腕を見る。ダークグレーの生地に黒い縁取りをした袖が見えた。
「あれ……?」
もしかして、これは魔法少女の……?
慌てて下を見ると髪の毛の影で見えなかったそれが見える。
スカートだった。しかも膝上ミニ丈。
「ちょっ……なんで僕がこんなっ、スカートなんてはいてるんだよ!?」
全然気付かなかったよ! あれか、スカートをはくとスースーするとか漫画で出てくるけど、髪の毛が長すぎてそもそも風とか感じないんだ……。超ロングの髪の毛恐るべし!
「これじゃあまるでヘンタイじゃないか……」
ズンと心が重くなった。
よりにもよって人前でヘンタイ的なカッコウへ強制的に着替えさせられるとか、こんなのひど過ぎる……。
あれ? なんだろう、どす黒い霧みたいのが出てきた気がする。
「なんだこれ!?」
「どうして……こんな強力な魔力がダダ漏れなのよ……」
2人の声が聞こえてくる。いいかげんこの長い髪鬱陶しいなぁ。
両手で長い髪をかき分けるとやっと2人の姿を確認することができた。2人とも僕を驚きで引き攣った顔をしながら見てた。
「おいエルカ、本当に『コレ』……元に戻るんだろうな?」
フェアリーレッドさんが僕を指さす。
気のせいかな? 少し前まで僕と同じくらいの身長だったはずなのに、頭一個分近く高いような……? ていうか、明らかに僕見上げてるよね!? どうして!? なんで!?
「さあ……? 男に契約を施して成功した例なんてはじめてだから……」
妖精さんは気まずそうに答えを濁した。
そんな2人の後ろでは3人が懸命に戦っているのが見える。
「ちょいレッド!? なに油売ってんのや!? さっさと戦わんかぃ!」
「ごめん、今行く!」
フェアリーレッドさんは申し訳なさそうな表情で目配せして戦場に戻って行った。多分『ごめん』って意味だったんだと思う。なんか変に気を使われてイヤな感じ。
「さて~……やっちゃったのはしかたないのでとりあえずはこの状況を終わらせてから対応しましょう」
さっきよりもメチャクチャ大人びてる口調だよこの妖精さん。もしかしてバカっぽかったのはキャラ作りなの……?
「あなたは今魔法少女になったの。現状を打破するためにも力を貸して欲しいの。終わったら契約を破棄しても構わないからお願い!」
いやお願いって言われてもなあ……今なったばかりだしなあ……。
「あなたの魔法はこの黒い霧みたいなものみたい。使い方わかる?」
「わかる? って言われてもなぁ……あっ!?」
魔法少女4人の攻撃をすり抜けてオオカミがこっちに来るのが見えた。
「ねぇ、妖精さん。これってやばい状況?」
「やばいって状況なんてものじゃないわ!」
そんな会話をしている間にもオオカミは大きく地面を蹴りあげて、僕たちに向かって右手を大きく振るった。
あ、これは本当に死んだかもって身構えた時、ズズズと小さな音を立てて黒い霧が集まり大きな円盤状になってオオカミと僕たちの前にふさがった。オオカミがそれに反応できずに右手をそれに突っ込んだ。
「はえ?」
初めは盾なのかな? と円盤状になった霧を見ていたんだけど、どうも違うみたい。
オオカミの右手がズブズブとその丸い円盤に沈み込んで行く。
『グヌゥ、何ダコレハ!? 我ガ腕ガ抜ケヌ』
オオカミが、突っ込んだ右手を引っ張り、もがいてるのに抜ける様子がない。
あれ? むしろ薄っぺらい円盤なのにこっちに突き抜けてないよね……?
「なんて強力な拘束魔法ですか……」
妖精さんがキリッとシリアスな顔をしてつぶやいたのは良いけど、目の前のオオカミが右手を軸にビッタンバッタンと暴れて砂埃を巻き起こしている様が異様過ぎて台無しだ。
それにしてもなんだかどんどん力が抜けて行くような、疲れが溜まって行くようなそんな感じがする。
「はふぅ……妖精さん……なんだか僕疲れたよ……なんだかとても眠いんだ……」
感じがするってのを通り越して正に頭がグラグラしてきた。とっても眠くなる感じ。
「それは大きく魔力を消耗しているからよ。もう少し耐えて!」
耐えるって言っても、これかなりシンドイんですけど……。
「良くやった、少年! そのまま維持しておくんだ!」
フェアリーレッドさんが叫び大剣を上段に構えた。
「集え炎! 貫け熱き意志!」
あ、なんか必殺技っぽいぞ。
大量の炎が大剣を中心に巻き上がるのが見える。
いやまぁなんかどうでも良くなってきた。とりあえず早くしてほしい。僕もう倒れそうだ……。
「受けよ! 我が必殺の一撃! 焦熱飛炎斬!!」
いやもうすごくイタイタしい決めセリフを叫んで、大きく炎を纏った大剣を振り回しながら跳び上がった。
今の僕の表情を見ればまちがいなく目が点になっていると思う。
わざわざそんなセリフ言わなくても良かったんじゃない?
そんな心の中のツッコミもなんのその。
彼女は見事、オオカミの首の付け根に大剣を振り下ろした。ザン、という切り裂き音と共にオオカミの首が二つほど斬り飛ばされるのを見た。
「グァァァアアアアアア!!?」
オオカミが残った一つの首で断末魔の声を上げた。効果は絶大だ。
「我ヲココマデ苦シメルトハ……ダガ忘レルナ……我ハ何度デモ甦ルノダ……」
なんかどっかの有名なRPGのボスキャラが言ってたようなセリフっぽい……。お願いですからもう戻って来ないでください。
だんだんオオカミの形が崩れて黒いモヤになって行く。そんな中、オオカミの暗い目が僕をにらみ付けて来た。すっごく怖いです。
「マタ逢オウゾ、特ニソコノ黒イ小娘……」
ええ、ちょっとそれ僕のこと? なんかターゲット認定されちゃってるの!? どうして!?
《開門》
妖精さんが呪文を唱えると、黒い穴みたいなのが地面に開いて黒いモヤがどんどん吸い込まれて行く。ぐいぐいと吸い込んで行き、やがてきれいに黒いモヤが無くなって結界が解けた。
どうやらあの穴にオオカミの残骸(?)を吸い込んで終了らしい。
そういえばいつの間にか僕の周りの黒い霧がきれいに消えていた。
「終わったー!」
「今回、えっらい大変やったな」
「もう疲れたので~、帰って寝ても良いですか~?」
魔法少女たちが口々に愚痴をこぼして変身を解いて行く。
「そう言えば、僕って強制的に変身させられたんだけどどうやって変身を解くの?」
「普段の自分の姿を思い浮かべて『リムーブドレス』と唱えると普段の姿に戻れるですのん」
あ、妖精さんの口調がバカっぽくなってる。もしかして人前じゃあバカを装ってるのかな?
それにしても、普段の自分の姿か。どんなだったかな?
出かける前の玄関の姿見に映った自分を思い出してみる。
「えーっと…普段の自分……普段の自分……りむーぶどれす?」
一瞬黒い光が射して消えた。
「あれ? なにも起こってないんだけど……?」
頭は異常に重いままだから髪の毛はそのままだ。特に変わりは……あれ? 上着はパステルブルーのパーカーに戻ってた。
「え? あれ? なんで?」
それでも袖はだぶだぶ、腰回りも緩……。
はっと気付いて慌てて手を腰に持って行った。
でも、気付くのが遅かったせいで僕の身体からハーフパンツがズルリと滑り落ちてバサリと地面に落ちた。
そんな僕の様子を4人の少女と妖精さんが見つめていたんだ。
「ぎ、ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!?」
トランクスを道連れにして落ちたハーフパンツのせいで下半身は真っ裸。そんな姿を凝視されて僕は悲鳴を上げることしかできなかった。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
最後お見苦しい表現をお出しして申し訳ありません深くお詫びは申し上げますが反省はしていません(キリッ
あ、すみません。急いでR15のタグを付けさせて頂きますね(いそいそ
という訳で次回もよろしければお付き合い下さいませ(ぺっこり