第5話 あなた、あたしと契約よ!……という名の不幸
序盤さくさくを目指していましたが失敗した七瀬ですこんばんわ(泣)
第5話です。まだ主人公ぐちぐち言ってます。そんな回です。
(2012/10/27 体裁統一のためのチェック)
これほど反応に困ったのはいつ以来だろうか、無表情であいさつされても困る。
「えっと? こんにちは?」
僕が青い女の子にあいさつを返したと同時にビシャっていう音がしてオオカミの悲鳴が聞こえた。
「どっせええええええええい!!!!」
「グオァ!?」
振り向くとオオカミの真ん中の頭に1人の女の子が空手チョップを叩きこんでた。遠目に見ると……黄色っぽい。
「はいはい~……ちょいとゴメンなさいね~」
青い女の子に続いて緑色の女の子が壁の外から入って来た。
「りぃだぁ? 連絡してくれないと合流できないじゃないですか~? サボれるなら良いけど~」
「グリーンごめん!」
どうやら3人はフェアリーレッドさんの仲間らしい。
「群れの手下達は片付けました。後は大本を叩くのみ……です……」
隣の首だけを覗かせていた青い女の子もフェアリーレッドさんと合流してオオカミと戦い始めた。
最前列に青い女の子。どっから出したんだ!? ってツッコみたくなるような量の水を操ってオオカミの突進や引掻き攻撃をさばいてた。
次にフェアリーレッドさん。縦横無尽に駆け回っては大剣で攻撃してる。
緑の女の子は手に持つ弓で矢を射かけ、黄色い女の子は中距離から魔法の玉を打ったり近接での格闘攻撃を行ってる。
見事な連携攻撃に見えるけどオオカミにあんまりダメージを与えてないように見える。
「あれあれ~? どうして一般人がここにいるですのん?」
4人を見ていたら透き通った声が聞こえた。魔法少女4人の声とは違うというか人の声とは思えないくらい可愛らしいんだけど、どこかバカっぽい口調に戸惑う。
声がした方を見ると、そこにはありえないモノが宙に浮いていた。いや僕の常識内でのことだけど、実際にはそういうモノがいるということは28年前に確認されている。目の前に浮いていたのはかわいい妖精だった。
「かなり強い力を持っているですのん」
「妖精……はじめて見た~……」
体長15センチくらいの薄い蜻蛉の様な羽を背中に生やした薄緑色の髪の長い女の子だった。羽を動かすでもなくふわふわと漂いながら僕の周りを回る。
「エルカ! 悪いけどその子守ってあげて!」
フェアリーレッドさんが叫ぶ。どうやらこれが『異世界の門の向こう側の善意を持った者』らしい。
「はいですのん」
目の前に飛び上がり小さな指を振ると薄い光の壁みたいなものが現れる。どうやらこれで守ってくれるみたいだ。
光の壁越しに魔法少女たちの戦いを見守る。確かに善戦してるように見えてるけど、全然オオカミに変わりが見えない。
「まずいですのん」
「え?」
「確かに戦えてるですが、決定打を打てないですのん」
「切り札があるのに打てないってこと?」
「そうですのん」
確かに、必殺技らしい必殺技を出せていない気がする。
「どうして?」
「こっちを気にしてるですのん。一応あたしが魔力障壁を張っていても、全力の魔法少女達の必殺技の前ではあまり意味が無いのですよ~。多分それが原因ですのん」
説明してくれるのは嬉しいけど、なんか『ですのん』がくどくてうざいなぁ……。いや、不謹慎だとは思うんだけどね。
「つまり……」
「ぶっちゃけると、あなたがお荷物ってことですのん」
いや確かに逃げ遅れた僕も悪いかもしれないけどさ、もうちょっとこう歯に衣着せてよ。こうオブラートに包んでさ……。
妖精さんの心無い言葉で意気消沈している僕を彼女はチラチラ見てくる。
「でもこのままではいずれ負けてしまうですのん」
「え……?」
「魔力は無限ではないのですよ~? いずれは尽きてしまうですよ~。全滅したらみんな殺されちゃうですのん」
「そんな!?」
僕のせいでみんなが死んじゃうなんて……。
「どうにかならないの?」
「あなた名前は?」
「え? 佐伯明」
「そう、佐伯明っていうの~。それじゃあ、明ちゃん。あなた、あたしと契約するですのん」
「はぁ?」
「あなたが魔法少女になれば全て解決するのですよ~? みんなは必殺技を使えることになるし~、仲間も増えてバンバンザイですのん」
「ちょっ!?」
「それに今契約すれば喫茶エトワールのケーキ食べ放題無料招待券を5枚ほどと各種特典がついてくるですのん」
ケーキの食べ放題はちょっと惹かれるけど男が一人で行くのはヒンシュク買うよなぁ……。ってそうじゃなくって僕は男だからムリだってば。
「いやー……僕は……」
「なにが気に入らないの!?」
できるだけ穏便に断りたいんだけど目の前の妖精さんは許してくれそうもない。もう半分自棄になって迫って来た。
「僕は男だから魔法少女なんてムリ……」
「そんなウソついてまでやりたくないの!? やらないと死んじゃうって言ってるじゃないの! これだけ色々特典まで付けてさ!」
もうなにがなんだか、さっきまでのバカっぽい口調はドコへやらだ。
「どうしてそこまで僕にやらせたいんだよ!? だいたい僕に務まるわけないだろ!? なんの根拠があるんだよ!?」
「あたしの第7感がそう言ってるのよ! まちがいないわ!」
「え……? なにそれ。意味分からない」
えーっと……5感が身体感覚のそれぞれで、第6感が霊感? じゃあなんなのその第7感って……。
「引・き・受・け・て、くれるわよねぇ?」
引き攣り笑いで迫って来ないでよ! 怖いよ!
「む、ムリだって!僕は男なんだよ!」
「だからもう! そんなウソばかり! もう無理矢理契約しちゃうんだからぁ! 終わった後に契約破棄なりなんなりしてよね!」
「そんな無茶苦茶な!?」
《拘束》
「うわっ、なにこれ……」
妖精さんがなにかを唱えた瞬間に、光る鎖に体中を拘束されてしまった。これじゃあ抵抗できないよ!
「略式で契約します!という訳であなた、あたしと契約よ!」
妖精さんが僕の左腕に細い銀色の腕輪を通した。中心には透明な石がはまってる。
《我が名、『エルカ・フィーリルライト』の元に佐伯明を魔法少女に命ずる。解き放て魔力、打ち砕け汝の仇尽く。汝に与えるその力は妖精の名の元に》
急に胸が苦しくなり始めた。なんだろう……ひどく不快な感覚……。
「おいエルカ! なにしてるんだ!?」
近くからフェアリーレッドさんの声が聞こえた。
「なにって~、見れば判るのですよ? 契約に決まってるですのん」
「バカな! その子は男だぞ!? 男を相手に契約の儀式なんてしたらどうなるか分かってるだろう!?」
「へ……? 男……? 女の子じゃないの?」
「さ……さっきから……男だと……」
「あちゃ~…やっちゃったのですよ~。安らかに眠ってくださいですのん」
ぺっこりと妖精さんが目の前でお辞儀をした時、僕の身体の芯の部分がちょうどゴキンという鈍い音をたてて折れた気がした。
まさかの大穴でオオカミに食べられるのではなく妖精さんに殺されるようです。
ボキボキとかゴキゴキとか生々しい音が身体の中から響いて来て、僕の視界は暗転した。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
次回より本格始動し始める主人公……どうなる!?(ぇー)
いやもうなんと言うかやっと次回から話が真面になる……んだろうか(汗)
そんな話ですが次回もよろしくお願いいたします(ぺっこり