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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第4幕 人間恐怖症からの躊躇
55/57

第47話 自分のものとは違う望み!……という名の躊躇

かなりお久しぶりです。

いや、なんか色々とテンパっているのにツモれない酷いストレスを起こすようなことが色々とありましてですね。

そのせいで文章書きたくない病が発症という酷い状態に(汗)

まあ、持ち直したんですがね。

今回はターニングポイントに近い色々とこう暴露に近い感じの展開です。

そのせいで書いては直して書いては直してでこんなに時間がかかったという……(滝汗)

後、更新プレビューでルビの表示方法が変更されてたらしいのに気付いて慌てて対応したせいで30分位いつもの更新時間から遅れてしまった感じです(白目)

まあ、そんな感じで新しいお話をどうぞ。



「なにをバカな言ってるの! ふざけたこと言うと許さないわよ!?」


 霞む視界の中、お母さんがボクに向かって叫ぶ。


「もういい? 傷つけたくない? そんなことは余裕がある時に言いなさい! 私は明にとってのなんなの!?」


 怖い顔をしてボクを刺すように睨みつける。その目から涙が流れてた。


「お……母さん……」


 掠れる声で、それだけを答える。

 ボクにとってお母さんは、お母さん以外にないじゃないか……。


「母親はね、子供が何歳になったとしても可愛いものなの! 守りたいものなの! だから明は黙って守られなさい!」


 もう母さんにはなにも言えなかった。

 のどもふるえて声が出ないし、お母さんの気迫に負けてしまった。


「佐伯さん、後1時間程度で来るそうです!」


 どこからか女の人の叫び声が聞こえる。


「了解! なんとか持ちこたえてみせるから、指示した連絡先に連絡と、迎えを手配して!」


 お母さんが誰かに話しているようで、周りが慌ただしくばたばたとし始める。


「後1時間、新しい腕輪が来るからがんばって耐えて!」


 少しだけ、まだ動く首を縦に小さく動かす。と、お母さんがうなずき返して杖をボクの目の前に浮かべる。


「精神に関与する魔法で、明の魔力のほうが強いから全力で行くしかないの。気持ち悪いとか不快な感じがするかもしれないけどガマンしてね!」


 母さんのピンク色の杖の先端。淡い青色の宝石が少しずつ光り輝いていく。


「深き眠りの淵へ誘え、『コーマ』!」


 一瞬だけ、強い光が目の前で起きて、ぐるんと目が裏返るような気持ち悪い嫌な感覚、そして身体がきしむようなひどい頭痛と吐き気を感じた気が――。



『まったく、成長著しい……という言葉に相応しいですね』



「……え?」


 遠くから響くような声を聞いて、ひどい吐き気をこらえて目を開けると星のような光源のある暗闇に近い空間だった。

 そう、3日前にボクが気絶した時に見たあの空間そのもの。

 その上下左右分からない空間に、ボクは浮いていた。

 体の感覚はないし、動かすこともできない。いや、まばたきもできないようなそんな状態。


「もう少しだけ成長するまでは……と申し上げたばかりだというのに……」


「ひっ!?」


 今度は耳元。すごく近いところから声が聞こえて思わず小さく悲鳴を上げる。


「まあ、ここで果ててしまったほうが、(わたくし)にとって都合がいいかもしれませんね」


 くすり、とイヤな感じの笑い方。暗くジメッとして、そしてとてつもなく冷たい……『冷笑』と言い切れるような笑い方。あまりにも冷たくて背筋が凍りそう。


「……果てるって……どういうこと?」


「文字通り、『果てる』とは……終端、終末。人に対しては逝去と呼ばれる事象。もっとも、(わたくし)は天国とか極楽浄土とか死後の世界なんて塵芥(ちりあくた)にも信じていないのですけどね……」


 くすくすと声の主は笑う。まるで自分をふくめた全てをあざ笑うかのような……そんなイヤな笑い方。


「どうして……ボクは死ぬの?」


 だって、寝る時にお母さんが言ってたじゃない、『今晩だけの辛抱よ』って。寝て起きたら新しい腕輪が届いて、それでおしまいだって言ってたじゃない!


「分かっているのでしょう? 魔力の暴走が起こっているのだと。このままでは死に至るのだと……」


 そんなこと、言われても……。


「ボク……まだ死にたくない……。だって! だってボクはまだ……恋だってしたことないんだよ!?」


 ボクが叫んだ瞬間に再び、くすくすと声の主が笑う。


「それは本当にあなたの望み?」


 子供に言い聞かせるようなていねいな口調にイライラする。


「それ……どういう意味?」


「あなたはあなた、他のなにものでもない。そのことを忘れないでくださいね」


「……え?」


「以前こう言いましたよね? お忘れですか?」


 いや、3日前のことだからしっかり覚えてる。


「……それがどうかしたの?」


「あなたは『人並みに恋をしたい』などと望んだことがあったのですか?」


「それはもちろん! ……もちろん……もちろん?」


 勢いに任せて言ってしまったけど、ボクはそんなことをいつ望んだ? 『死ぬ前に一度でもいい、人並みに恋をしたかった』だなんて……。

 違う……ボクは望んじゃいない。これはボクのものとは違う望みだ。ボクが望んだ望みじゃない。

 じゃあ誰が? 誰がこれを望んだの?


「急激な成長で同調してしまったのですよ、あなたは」


「……同調? なにに?」


 声の主に問いかける。


「そのようなことはもう、分かっているのでしょう?」


 ……指摘されて思い至るのは……最近良く見るあの夢?

 ボクが今まで死を覚悟したことなんて、さっきまで見ていた夢の中でだけじゃないか。

 じゃああの夢はなんだったの? 


「……もう分かっているのでしょう?」


 声の主がゆっくりとボクの右側を、半円を描くように……音を立てることなく移動している。


「分からない……」


 分かりたくない……。

 必死になってその『考えた末の答え』を頭から追い出そうとする。

 そんなボクをあざ笑うかのように、くすくすと笑いながら正面に回りこむ。

 ボクより身長が少しだけ高いその人の、ほっそりとした首筋を中心に、色鮮やかな青紫の和服の合わせ目と、悲しみが透けて見えるような笑みをたたえた唇が見える。

 それ以外に、ボクは視線を動かすことができない。


「分からないのではなく、理解しようとしないだけ」


 目の前の声の主、いや……彼女の左手が()()()()()()()()()()()()()()()()()を取り、引き寄せる。


「いっぐっ――」


 いきなり左手に激痛が走る。とともにボクの左手が……左腕がすぅっと消えていく。


「なんで!? どうして消えるの!?」


 あまりにも唐突過ぎて、パニックを起こしそうになる。


「ここで果てるなら、このような周りくどいこともしなくて済んだものを……」


 彼女が悔しさのにじむような、押し殺した小さな声でつぶやいた。

 次の瞬間、左足から激痛が走る。


「苦しい? でも、(わたくし)も同じ苦しみを味わい続けてきたの。だから――」


 彼女がボクの左のほっぺたを優しく撫でてすくい上げていく……。


「いっ、イヤだ……」


「あなたにも共感して欲しい――」


 これ以上知っちゃいけない……。これ以上見ちゃいけない……。そんなイヤな予感が胸をざわつかせる。


「そうしていただけたのならきっと(わたくし)を分かってもらえる――」


 なにか致命的な、致命的ななにかが起きる引き金が引かれようとしている。


「だって――」


 そんなイヤな予感が胸いっぱいに広がっていく。


「あなたは(わたくし)のことを一番よく知っているのだから……」


 顔をすくい上げられたボクの視線と、目の前の彼女の視線が交錯する。

 半眼で、精気を感じないどこか達観したような、作り物じみた瞳。

 なにもかもをあざ笑うような、皮肉を込めた薄い笑み。

 顔の作りは幼さを残す童顔で……。

 髪は艶やかな漆黒。

 それは……その顔は……。


「なにかしら? その顔。まるで遊園地のミラーハウスの鏡でも見たような酷い驚きよう」


「うっ……あっ……」


 声が詰まる。

 驚くな、なんて言われて驚かないわけがない。

 だって、その顔は……その顔は……ボクが毎朝鏡の中に見る……()()()()()()()()だったのだから……。


「果てるなら果てるでそれもよし、とは思っていたのですが……。都合のよい展開というものもそうそうありませんね……」


 激しい痛みとあまりにも理解の苦しむこの状況に、呆然としているボクを見つめる目の前の彼女。少し大人びたボクの顔をした彼女から笑みがすぅっと消えて冷たい表情になる。


「あの方が来てしまいました……か……」


 辛く悲しい表情を浮かべて、彼女がボクの胸に左手を当てる。


――ずるり


 気持ち悪い感覚とともに彼女の、目の前の少し大人になったような容姿をしたボクの左腕が、ボクの胸に沈み始める。


「ひっ、やぁ……なんっ――」


 息が詰まって、ボクの消えていた左腕が元に戻っていく。激痛を感じていた左足の痛みも感じなくなっていく。


――ずるり


 一段階、ボクの胸に彼女の腕が沈む。


「――はっ――ぅぐっ」


 侵食されているようなあまりの怖さに胸が詰まってうまく息ができない。


「そのように怖がる必要はありません。これは単なる応急処置なのですから」


 応急処置? なにに対しての応急処置だって言うんだよ?


――ずるり


 彼女の腕どころか肩まで沈み込む。


「あなたは今、魔力の暴走により、体外に急速な魔力放出を行っています。(わたくし)が行っているのは不足している魔力の補充……」


――ずるり


 肩から半身……そしてますます彼女が()()()()に沈んでいく。

 文字通り目と鼻の先、目の前の彼女の目がボクを射竦めて、目の前が真っ暗になる。


…………


………


……



 瞬きしたのかと思って目を開けると、2つの別々の景色が重なったような……そんな空間だった。

 相変わらず、黒いモヤが渦巻いて……。


「目が覚めてしまったじゃないか! さっさとしてしまえ!」


「お願い! 明を助けて!」


――バキンッ


 なにかが砕ける音がした。


「ちっ、腕輪がまたひとつイカれちまった。後5つだ! 早くしろ!」


 腕輪……?

 力の入らない左腕をゆっくりと持ち上げると、8個していた黒い腕輪がいくつか砕けている。


「な……に……?」


 それだけで限界。力がするりと抜けて、ボクの左腕がベッドに落ちた。

『あなたは今、魔力の暴走により、体外に急速な魔力放出を行っています』

 夢の中だと思うけど、ボクと同じ顔をした彼女が言っていたのがこれか……。


――バキンッ


 腕輪がひとつ壊れる音が響く。

 力がどんどん抜けていく……。

 力が抜けた場所から酷い痛みを感じる。

 いや、感覚がどんどん鈍くなってるような気もする。

 頭がぼーっとする。

 息が苦しい。

 体がどんどん冷たくなっていく気がする。

 これが……死ぬっていうこと?


――バチンッ


 ぼんやりとそんなことを考えている時、なにかが弾けるような音がして視線を向ける。

 黒いモヤの中、ひとり分の人影がボクに向かって近付いて来る。


「くぁっ、いってー!」


 人影が悲鳴をひとつ上げる。

 その声は聞き覚えがある男の声……。

 じょじょに近づく人影の、顔がはっきりと見えてくる。


「た……く……み……さ……ま……」


 そう、苦しそうに顔を歪ませて、荒れ狂う黒いモヤの中を怪我をしながら懸命に、ボクに向かってゆっくりと近づく人影は……拓海だった。


――バキンッ


 腕輪がひとつ壊れる音が響く。


「ああもう! ちくしょう! 届けってんだよ!」


 必死に伸ばされた拓海の右手、気付いたらボクの左手はそれに向けて伸ばされていた。


――バキンッ


 腕輪がひとつ壊れる音が響く。

 拓海がしがみつくようにボクの左腕をつかんでなにかをした瞬間、ウソのように荒れ狂ってた空気がすうっと収まった。


「ふぅ……間に合った……」


 顔中細かな切り傷を作った拓海が、盛大にため息を吐いて、泣きそうな顔を無理やり笑顔に変えて見せる。


「なんで……拓海さまがここに……?」


「おばさんがお前を助けてくれって必死に電話してきたんだよ」

――『――が助けてくれって必死に頼んできたんだよ』


「でも、こんなに傷だらけになってまで……」


 目眩で視界が二重にぶれる。

 ボクが今いるのは病室のはずだ。それなのに、ボクの部屋の風景が重なって見える。


「そんなの気にするなよ!」

――『そんなの気にするなよな!』


 二重にぶれた拓海の片方がボクに向かって笑いかけ、もう片方が照れ臭そうに苦笑いを浮かべる。


「俺はお前の親友だからな」

――『俺はお前の幼馴染なんだからさ』



 さらりと言われた言葉が胸に刺さる。

 嬉しいような、悲しいような、寂しいような、いろいろな感情が渦巻いて……。

 ボクはゆっくりと息を吐きだして口を開いた。


「ありがとう……」

――『ありがとう……』


それだけを短くつぶやいただけで、目を開いているのも辛いほどの眠気と気怠さに包まれた。





                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



という訳で『自分のものとは違う望み』の回でした。

いや~、ここまで持ってくるの大変だった。いや大変だった。

第4章のプロットの1/3消化したという感じで(マダカヨ

なんか話の展開上、章変えした方がいいような気もしてきたような……。

さて、やっと夢の中の登場人物が暴露されたのが今回大きな動きという感じですね。

これを切っ掛けに、明がどうなっていくのか……は今後をご期待ください(ぺっこり





後はちょろっと宣伝。

全年齢対象の同人誌を虎の穴通販で取り扱いしてもらうことになりました。

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