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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第4幕 人間恐怖症からの躊躇
54/57

第46話 妙にリアルな夢!……という名の躊躇

かなりお久しぶりです。

冬コミ新刊の原稿を書いてたり、ゲームのシナリオ書いてたり、某電子書籍の原稿書いたり……。

気付いたらこんなに期間開いてしまいました(白目

しばらくは忙しくないはず……あれ?前にもこんなこと言ってた気が(白目




「眠れない……」


 あれからなんだか気分落ち込みまくり……。


「拓海のばか……」


 まくらを強く抱き締めて、拓海の首を絞め落とす練習でもしようかと思って諦める。

 ボクの抱きまくらはずぶ濡れで病室の片隅で宙吊り。今ボクが抱き締めてるのは病院の普通のまくら。抱き心地が非常に悪い。

 それがさらにストレスで、イライラが止まらない。


「明ちゃん、少し落ち着いたら? もう消灯時間過ぎてるし……」


 ベッド脇のお母さんが心配そうに覗いてため息を吐いた。


「じゅうぶん落ち着いてるもん!」


「……じゃあその髪の色はなんなのかな?」


 あきれながらお母さんに言われて、自分の髪の毛を一房持ち上げると見事に赤く光ってた。魔術内科の先生曰く、魔力を制御できない時の特徴で、もってる魔力が活性化すると属性の特色に体毛や眼の色が変わることがあるらしい。


「……理不尽だ~……」


 唇を尖らせて文句言うだけに留める。

 水浸しになった病室の掃除とベッドの入れ替えに加えて、臨時の魔力検査や問診なんかあって、夕食は食べそこねそうになるし、抱きまくらは洗濯してもらったりでもう散々。

 お姉ちゃんに迷惑かけるし、お母さんにも迷惑かけちゃうし……。

 拓海はあれからすぐ、お母さんを呼んで、また日を改めて謝りに来ると言っていたらしい。


「それにしてもどうしたものかしらねぇ?」


 お母さんが心配そうな口調で笑いかける。


「ふぇ? なにが?」


「あなたの属性の項目よ。闇属性に加えて火属性。おまけに風属性だなんて……。未確定だったのには理由があると思っていたけど、ますます謎が大きくなったわね……」


 盛大にため息をついてボクの赤くなった髪の毛いじり始める。


「ボクもこんなにころころ髪の色が変わるのはいい迷惑だよ~」


「そうね~。ジェイクとの契約時の衣装に赤色が混じってたのは火属性のせいだったのね」


「そんなのボクに言われても知らないよ! そもそも属性を複数持ってるっておかしいことなの? ボク以外にも持ってる人はいるんでしょ?」


「持ってることは持ってるけど……属性を3つ以上となるといないのよね……。まあ、明ちゃんの場合は他に問題があるんだけど……」


 お母さんが珍しく沈んだ表情をして、盛大にため息をついた。


「他に問題? どういうこと?」


 お母さんがそう言うくらいだから、大きな問題なのかな?


「確認されてるだけで、魔法少女の世代交代って親から子供に共通の属性が受け継がれているのよ」


 共通の属性……? あれ? ボクとお母さんの属性って……確か……。


「お母さんは? お母さんはどうなの?」


「私はほぼ純粋な光属性で、少し水属性が混じってるの。目が青いのはそのせいね。だから、明ちゃんが持っている属性と被らないし、今までの常識なら明ちゃんの主属性は『光』になってないとおかしいのよ。不思議ね~」


「不思議ね~って他人ごとのように言われても~」


「明ちゃんが不満に思うのも仕方ないけど、今はどう考えても分からないことなんだから、気にしちゃダメよ? 魔力の成長期は感情の起伏で暴発しちゃうんだから」


「言われてることは分かってるけど……」


 感情のコントロールとかよく分からないんだよね。


「まあ、ジェイクから明日の朝に新しい腕輪が来るって話が来たから、今晩だけの辛抱よ?」


「そうなんだ……。じゃあ、今晩だけガマンだね」


 今晩だけガマンという言葉を言い聞かせて強引に目を瞑った。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



 目を開けたら、真っ暗な部屋の中で、膝を抱えて三角座りをしているところだった。

 見回すと、私のベッドと机が目に入る。

 見上げると少しだけ差しこむ陽の光が床に届く前に絶ち消えている。ふぅっと小さく息を吐くと、ゆらゆらと黒い霧が滞留していた。


「……私、どうして……」


 つぶやいた言葉は乾いた喉で掠れ、ぼんやりした頭では言葉に意味を持たすことはできなかった。


―― こんこん。


 控えめにドアがノックされ、何かが立てたことりという音が聞こえる。


「明? お願いだからそろそろ顔を見せてくれないかしら? 今日でもう3日目よ?」


 お母さんの沈んだ声が聞こえた。


「……嫌です。もう誰とも会いたくありません」


 心配してくれているというのに、私の口から出た言葉はあまりにも冷たく、そして無感情だった。


「でも! もう3日も閉じこもったままじゃない! 閉じこもりっ放しは良くないわ! せめてお風呂には入りなさい。出てこないならお母さんが嫌と言っても出しますよ?」


 強めの口調、少しのいら立ちと、大きな心配を抱えたような、そんな口調。


「………………」


 なにも返すことができない。今の自分の姿を誰かに見せる勇気も湧かない。ただただ、『誰も傷つけたくない』という思いのみ、心を支配していた。


「返事がないから入るわよ? 明」


「まっ――」


 静止を掛けようとするも遅く、お母さまがドアを開けてしまった。


「なにこ――」


 数日ぶりのお母さまの顔、見ただけで涙がこぼれて、大きく黒い霧が出口に向かって殺到した。

 自分から吹き出る霧を抑えこもうと布団を被った瞬間、ビリビリに引き裂かれ、小さく羽毛が部屋の中を乱れ飛ぶ。


 3日前と同じだ。

 一番初めは、お姉さまとの些細な口喧嘩。


「少しは家の外に出たら?」


「……怖くて出れません。放っておいてください」


「だけど、いつまで経っても出ないじゃない! そんなのダメよ! 今日は嫌でも外に連れ出すわよ?」


 カッとなって「私は出たくないと言ったら出たくないんです! お姉さまなんて大嫌い!」そう叫んだ瞬間に、バシッと乾いた音がして、お姉さまが頬をおさえていた。

 あの時はまだ、お姉さまが痛いと小さくつぶやく程度だったのに、今はお母さまを吹き飛ばすほど。


「お願いですから扉を閉めてください!」


 慌てて閉じられた扉の音に安堵して、身体をさらに縮める。


「……明ちゃん、それはいつから? いつから始まっていたの?」


 扉越しに聞こえるお母さまの怖いほど怒気を含んだ声が聞こえる。


「3日前から……。昨日は、部屋が暗くなったのかと思う程度でした。今朝になったらもう手が付けられなくて……」


 少し視線を上げると黒い霧が更に濃くなり渦巻いている。


「そう……。必ずなんとかしてみせるから、ガマンしてね」


 お母さまが口にしたなんとかしてみせるという言葉、信じてみようと思い、待つことにした。

 はじめは魔術被害専門の救急隊員。結界を張りながらの救助だと説明されたが、部屋に入れずあえなく断念。

 次に来たのは現役の魔法少女。はじめは「大丈夫だよ」と優しい声を掛けてくれたものの、最後には「こんなのあたしじゃ無理! 他当たってよ!」と半ば投げやりに放棄され、それから幾日が過ぎて、もう何もかも諦めた。

 日々強くなっていく力が止めどなくなにもかもに襲いかかり、お母さまが気を使って差し入れてくれるご飯だって皿ごと割れて、ペットボトルだって破裂する始末。

 触れるものがなにもかも壊れていく。

 動くだけでものが壊れるということは動くこともできないわけで……。


「私は……なにをやっているのでしょうね……」


 かすれた声が喉から漏れる。

 閉じこもってばかりで食が細くなった弊害か、もとから痩せていた身体がさらに細くなったはずなのに、さらに痩せ細ったような気がする。

もう身体の感覚さえない。

 私はこのまま死ぬのだろうか……。

 最後に物を口にしたのはいつだっただろう。

 最後になにかを飲んだのはいつだっただろう。

 最後に身体を動かしたのはいつだっただろう。

 霞む世界は一面黒……黒……黒……。

 このまま……この暗闇に溶けきってしまえば楽になるだろうか……。

 思えば私の人生は暗闇の連続だった……。味気なかったと言い換えてもいい。

 お祖母さまに言われるままに習い事をして、勉学に励んで、期待に答えて……。

 本当はみんなが羨ましくて、どうして私を妬む必要があるのか理解ができなかった。あんなにも彼女たちは自由だというのに……。

 無理をし過ぎて分不相応だったのかもしれない……。

 せめて死ぬ前に、人並みの恋のひとつくらいしておけば良かったかもしれない。


「……そんなの無理」


 自嘲気味に吐息が漏れる。

 だって、今の私には分不相応な夢なのだから……。

 最後の力を絞り出して部屋のドアを見つめる。

 私には……あのドアの外へ出る勇気もなければ……力さえもうないのだから……。


「……え?」


 なんの前触れもなく、いきなりドアが押し開いた。


「――り!」

――りちゃん!


「あか――」

――かりちゃん! 目を覚まして!


――『言ったでしょう? 貴女は識ることになる……と』――。


…………


………


……







□◇□◇□◇□◇□◇――…



「――り! 目を覚まして!」


 妙にリアルな夢だった。未だに身体に夢の中の感覚が残ってるような気がする。


「明! お願いだから目を覚まして!」


 遠いのか近いのかよく分からないけど、お母さんの叫び声が聞こえる。

 やけに重いまぶたを上げると、魔法少女に変身したお母さんが険しい顔で叫んでいた。


「なっ……で……」


 あれ? おかしいな、声が出ない……。それに……なんだか身体が熱い……。

 口の周りに圧迫感を感じて、なんだかしゅうしゅうと音がする。

 もしかして酸素吸入マスク?


「ああ、明、気がついたのね!」


 霞んでいた視界がはっきりし始める。お母さんは全身ボロボロで、顔にも細かい切り傷がある。周りの人も防護服みたいなものを着ていた。

 視界いっぱいに広がるのは黒いモヤで、さっきまで見ていた夢と一緒だった。


「お母さん……もういいよ……」


「なにがいいの!?」


「ボクから離れて……」


 お母さんが傷だらけなのはボクのせいだって分かる。


「もう……誰も傷つけたくないんです……」

――もう……誰も傷つけたくありません……――。


 自分の置かれている状況は分からないけど。ただそれだけはボクの心からの望みだった。





                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



という訳で『妙にリアルな夢』の回でした。

今回から少しずつ夢が顕著に出てきます。

もうちょっと短く纏めるはずだったのにどうしてこんなに長くなってしまったんだか(白目

次回の展開はお後がよろしいようで……な回になると思います。




P.S.というかCM?

今回も間が開きまくったのは冬コミ新刊の原稿に重点を置いてたからです。

冬コミ新刊は2冊あります。


①『ひーこんたいむ!』

なろう風にジャンルとタグをつけるなら、

ジャンル:コメディ

キーワード:TS、学園、バトル、SF、魔法少女、理不尽、時にシリアス、パロディ

なんて感じのお話です。

『ばっくわ~どまじっく』と根っこは一緒。

こっちは本当にコメディー重視になってます。

もし興味がおありでしたら、冬コミにおこし下さい。

また今回はとらの穴さんで通販を委託します。

良ければご利用下さい。

 ■通販→http://p.tl/BOrW



②Gradation(合同誌)

『あいそまたーんっ』で有名な本知そらさん主催の合同誌になります。

TSF(性転換)をテーマとした合同誌です。

『TS』とか『TSF』とか『性転換』と呼ばれるニッチなジャンルのバラエティ誌です。

あたしの作品は『キミの瞳に映るボク』という作品です。

なろう風にジャンルとタグを付けると↓の通り。

ジャンル:学園

キーワード:TS、シリアス、理不尽、医療、同性間恋愛、再構築

になります。

どシリアス直球モノで、心理的BL・肉体的GLというちょっとキワモノ作品となっております。

こちらも『雪月楓花』名義で通販承っております。

 ■通販→http://p.tl/c7AL



ということで冬コミの情報です。

■イベント情報

 イベント名:コミックマーケット85

 サークル:水天堂

 配置場所:火曜日(3日目)西地区"れ"ブロック-17a

その他詳細は活動報告に纏めてあるのでそちらをご覧下さい(ぺっこり

  →http://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/805098/




もし、冬コミに参加する方でサークルのほうを覗いていただける方がいらっしゃいましたら当日よろしくお願いいたします。


それでは次回は年明けの1週目以内に更新予定でよろしくお願いいたします(ぺっこり

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