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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第4幕 人間恐怖症からの躊躇
53/57

第45話 意味不明な上に逆切れ!……という名の躊躇

お久しぶりです。

リアルでまた、ちょっと色々と忙しくてなかなか書けれませんでした。

新しいお話をお送りいたします。



 目の前の光景がどういう意味を持ってるか、僕にはさっぱり理解ができない。

 なにに対しての「ごめん」なのか、僕には思い当たることが多すぎる。

 思い返せば、ボクが章栄高校に転校してからの色々……あったなぁ……。

 なんだろ? ちょっとむかっときた。


「拓海は……なにに謝ってるの?」


「へ? ああ、そっか。謝らなくちゃいけないってのが先にあって、なにに対してっていうの忘れてた」


 ひとつ苦笑して頭を掻くと、拓海が真面目な顔をした。


「女の子が病気で無理してる時に説教なんてして悪かったよ。ついつい、以前のアキラの時みたいにしてたんだ。本当に悪かった」


 その言葉、拓海の本心なんだろう。すごく申し訳なさそうな顔をしているし、こいつの性格からして、こんな時に冗談なんて言うやつじゃない。

 言うやつじゃない……けど……。


「ああ、ごめん。今はアキラじゃなくて、アカリだったっけ? ごめん、ごめん。これからは明ちゃんって呼ぶべきかな?」


 困ったように笑う拓海。

 なんだろう、すごく、胸の中がもやもやする。

 ううん、もやもやだけじゃなくって……すごく痛い……。


「なにが……悪かった……だよ……」


「アキ……じゃなかった明ちゃん?」


「なにが悪かっただよ! そんなのいつものことじゃない! どうして拓海が謝るの!? 女の子にってどういうこと!?」


 拓海がボクを女の子扱いするなんて……。


「どういうこともなにも……」


「ボクは……女の子じゃない! 今は……ちょっと変わってるけど! おっ、男の子なんだよ!?」


「そんなこと言われても……。今のお前、小さな女の子じゃないか!」


「だ、だからっ、ボクを女の子あつかいしないでよ! って言ってるでしょ!?」


「おっ、俺にだってなあ、小さい女の子には紳士的に対応するって信条があって、だな……」


「どうして? 前みたいにどうして気軽に話してくれないの? さっきから言い訳ばっかり! いつもだったら……。いつもだったら笑い飛ばして『ごめんごめん、今度から気をつけるわ』くらい軽く言葉を返してくれるのに!」


「だ~か~ら~……。ああっ、もう! 千夏さん、なんとかしてくれよ~……」


 頭を抱えて叫ぶ拓海に代わって、今度はお姉ちゃんが慌てだした。


「落ち着いて、明。厳島くんにだって事情はあるだろうし、言ってることは納得できることなんだから。性急に答えを求めなくても……」


「だって……だってぇ……」


 ボクと拓海は幼稚園からの仲で、『どんなことがあってもずっと親友だよ』って約束した仲だった。

 それなのに……。それなのに、ボクがちょっと姿変わっただけで、まるで小さい子供、しかも女の子扱いするなんて……。

 悔しい……。なんだか分からないけど悔しいんだ。まるで他人になったみたいですごく寂しいんだ。

 視界が、涙で滲みそうになって、パジャマの袖で顔を拭う。


「ひっ……うっ……約束しったじゃない……。ずっと親友だって……。ど、んなことがあっても……親友……だって……。そう……言ってたじゃないか」


「確かに、そう言ったけど、言ったけどさ……」


「だろ!? だったら……。だったらボクのこと、女の子だなんて――」


 目の前に座る拓海に向かって、布団を跳ね除け、乗り出して強く訴える。


「女の子だなんて思わないでいつも通りにしてよ!」


「う……ぐっ……」


「ねえ? 良いでしょ?」


「待った! お願いだからそれ以上近付くな!」


 口元おさえて視線をそらす拓海。拒絶され……た? もしかして……ボク、拒絶されたの?


「どっ、どうしてそんなこと言うの!? ボク、なんか、拓海に嫌われることした?」


「いや……。だから聞けって……。千夏さん……なんとかしてくれよ……」


「なんとかって……」


「約束破るなんてぇ……ひどいよぉ……。たくみのばかぁ!」


 もう悲しくって、辛くって、どうしようもなくなって、涙をぼろぼろこぼしながら拓海にすがりつきいて叫んでた。


「ぐっ……ふぅ!?」


「ふぇ……? え……?」


 ぽたり、ボクの手の甲に小さな音と感触が……。え? 血……?


「な……? え……?」


 顔を上げると、拓海が真っ赤な顔をして鼻血を流しながら涙を流してた。


「俺……がんばったよな? もうガマンしなくてもいいよな……?」


「え゛……? あの~? 拓海……くん……?」


「あ~き~ら~!」


「ふぇえ!?」


―― どぐしゃっ……がしゃーん!


 血走った目で飛びかからんばかりの勢いで、いきなり身を乗り出した拓海が「ぐぇっ!?」と変な声を出しながら真横にすっ飛んでいった。


「お、おねーちゃん……?」


 そこには般若のようなすごい顔をしたお姉ちゃんが、フルスイングで振り切ったような体勢でスクールバッグを持っていた。


「いい加減調子乗るんじゃないわよ! このヘンタイロリコン野郎!」


「だって仕方ないだろ!?」


 ゆらり。

 拓海が、首を抑えながらフラフラと立ち上がった。


「こんな可愛いパジャマ着たロリっ子にベッドの上から涙目上目遣いですがりつかれたら無理だろ!? 並みの男じゃ耐えれねえよ! ああ、耐えれないとも! そんなの無理に決まってる!」


 ナニヲ言ッテルンダこいつハ……。

 あまりの剣幕に、一瞬なにを叫ばれたのか頭が理解できない……。いや、理解したくない。

 ボ、ボクは……。ボクは……。どう反応したらいいの……?


「いくら紳士な俺でもこんなご褒美を前にしてガマンできるだろうか? いや、できまい!」


 高らかに両手を掲げる拓海。ボクにはもう、彼のことが理解できない……。


「あんたねぇ! よりにもよって一番面倒臭いこと言うなんて! このバカ!」


―― どぐしゃっ


「おぶぅ!?」


 お姉ちゃんがスクールバッグで拓海をぶっ飛ばした。


「あんた、ガマンするから、連れて行けって言ってたのはウソ!? このヘンタイ!」


―― どぐしゃっ


「ふげぇ!?」


 もうなにがなにやら……。

 でも……拓海に嫌われてる訳じゃないみたいってのは分かった……。分かったけど、素直によろこべない……。

 ボクと、いつものように接してくれない。

 ボクのこと、けっきょく女の子としてしか見てくれてない。

 ボクとの約束、守ってくれなかった。

 悲しいやらムカつくやら……むしろ頭にきた! すごく頭にきた!


「ちょっ、待って!千夏さん、あれ!」


「そんな古典的なネタに引っかかるわけ――」


「アキラがっ! ちょっ、待て! アキラ! 落ち着け!」


「――って明!? みっ、水! 水~!」


「ボクは十分落ち着いてるっての!」


「落ち着いてないだろ!? だったらその頭の上のはなんなんだ!」


「はぁ? もういいかげんにして! さっきから拓海、変なことばっかり言って! ボク怒ってるんだからね!?」


「怒ってるのは見れば分かるから! もうしかたない!」


 拓海が怒鳴りながら、ボクに向かって突進してくる。


「え? なになになに? なんなの!?」


「アキラごめん!」


「ええ~~~!?」


 いきなり拓海がボクを抱きしめて引き倒した。


「なななっ、なにっしゅるのっ!?」


―― ボンッ


 なにかが爆ぜる音がして音がした方を見る。と、焦げ臭い臭がした。


「え……? 天井が……焦げてる? ……って、わっ!?」


 次の瞬間、シャーっと小さな音を立てて、スプリンクラーから水が降ってきた。

 ボクの視線の先、真っ白だった病室の天井が焦げ茶色に変色していた。


「ええ!? なんで!? どうして!?」


「そんなのこっちが聞きたいっての……。ああ、冷て~……。まあ、無事で良かった」


「あっ……ちょっ!? ひゃんっ!?」


 きつく抱きしめられた体勢で、拓海が身をよじって腕を動かしたせいで、背中を撫でられた感触がして変な声が出てしまった。


「たっ――」


「大丈夫か? アキ――」


「拓海のばかぁ!」


―― バッシーン!


「ぶふぁ!?」


 ボクの右手がジンジンと痛む。見ると手のひらが赤くなっていて、目の前には頬が紅くもみじに染まった拓海の顔。


「やっぱ……アキラのビンタいってー……」


「わわっ!? ご、ごめんなさい!」


 慌てて体を起こして、拓海から離れようと――


「きゃあ!?」


して、濡れた床に足を滑らせてすっ転んだ。


「ほんとにそそっかしいなぁ……、お前」


 気付いたら、心配そうな表情で覗きこむ拓海の顔が至近距離にあって、心臓が止まりそうになった。

 ていうか、拓海の腕の中に逆戻り!? なんで、どうしてこうなるんだよ!?

 再び脱出して、お姉ちゃんの後ろに避難した。


「あんたら、どこの少女漫画ですか……。あ~あ、もうメチャクチャじゃない……。これどうするのよ?」


 お姉ちゃんが呆れて両手を上げて盛大にため息をついた。

 周りはもうずぶ濡れのぐちゃぐちゃ。ベッドまでスプリンクラーの水でべしょべしょ……。


「ってあ~~~~!! ボクの抱枕が~~……」


 見るも無残にずぶ濡れでベッドの横に横たわってた……。

 汚れてないかな? 大丈夫かな?


「この惨状よりも抱枕のほうが大切なのね……くしゅっ……」


 お姉ちゃんが肩をがっくりと落として、くしゃみをひとつした。


「とりあえず、厳島くんは部屋を出て!」


「へ……?」


「女の子の着替えを見たいの? ヘンタイさん」


「は、はい! 今すぐ出ていきますっ!」


「どうしましたか!? 火災報知機が作動したんですけどなにかありました……か?」


 拓海が慌てて部屋を出て行くのと同時に、看護婦さんが駆け込んできた。

 その後は、看護婦さんに説明したり、お母さんに連絡して新しく着替えを持ってきてもらったり、ベッドの上を交換したり、色々とてんやわんやの大騒ぎ。

 天井の焦げめとか、ぐしゃぐしゃになったシーツとかマットレスとかどうするの? とか色々話したりするともう面会時間も大きく過ぎていた。


 結局、いつの間にか拓海が帰ってしまって、拓海との仲直りは大失敗のままに終わってしまったのだった。

 まあ、借りた漫画の本とかはダッシュボードの中にしまってたし、抱枕も濡れただけで干せば大丈夫ってことが分かって良かったけど……。

 次、拓海と会う時、どんな顔をして会えばいいのか……。それだけがものすごく不安で大きな悩みになりそうだった……。





                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



という訳で『意味不明な上に逆切れ』の回でした。

なんという酷い回だったんだろう……(遠い目)

久しぶりにコメディータッチだったけど……だったけど……。

まあ、元々拓海ってこんなイメージだったしなあ……(白目)

まあ、すぐに拓海くんも株を戻すでしょう! ……多分(汗)

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