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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第1幕 始まりの不幸
5/57

第3話 僕は村人A!……という名の不幸

第3話をお贈りいたします。

序盤さくさくを目指していますがそれでも5話掛かるとかちょっと遠い目。

そんなお話ですがどうぞ宜しくお願いします。

(2012/10/27 体裁統一のためのチェック)



「はぁ……すっかり遅くなっちゃったなぁ」


 今、商店街から裏道に入ったところだった。

 商店街から家までの直線距離(ちょくせんきょり)だと裏路地(うらろじ)に入った方が早いんだ。

 商店街とコンビニを結んで家を(かたど)ると、ちょうどアルファベットの”L”の字になるんだ。その商店街と自宅の直線距離(ちょくせんきょり)を取るにはこの裏路地(うらろじ)を通らないといけないんだ。

 最近なにかと物騒(ぶっそう)で、市長から『魔物(まもの)徘徊(はいかい)する場合があるのでできるだけ夕方などの時間帯は人気の無い所は通らないようにしましょう』と広報(こうほう)で流れてくる。

 でも、魔物(まもの)なんて遭遇(そうぐう)しようとしてもできないけどね。

 魔物(まもの)がこの世界に現れ始めたのは28年前。異世界の門が偶発(ぐうはつ)的に発生して向こう側の悪意(あくい)ある『ナニカ』がやって来るんだそうな。その『ナニカ』に対抗するために生まれたのが魔法少女システム。同じく異世界(いせかい)の門の向こう側の善意(ぜんい)を持った者たちが魔法少女を選んで指揮(しき)するものらしい。

 で、その指揮(しき)されている魔法少女が各都市(かくとし)配置(はいち)されてる。とうぜん僕の住んでいる高根市にも魔法少女がいるらしい。誰か知らないけれどありがたいことです。


 と、こんなこと考えていてもしかたない。早く帰らないと姉さんに怒られる。

 急ぐ道のりを駆け足で進んでいると大きな影が僕にかかる。どうも、道脇(みちわき)の家の(へい)の上から影が()びているらしいんだけど……。なんなんだろ?

 そう思って(へい)の上を見上げたのがまちがいだった。そこには身の丈3メートルくらいの大きな犬が音も無く僕と並走(へいそう)していた。

 いやなんてゆーか犬じゃないなぁ……オオカミ? そうだオオカミだ。ゲームで良く見たあれだなぁ……。


「ってオオカミ!?」


 僕が叫んだ瞬間(しゅんかん)、大きくオオカミがジャンプする。

 うわぁ……本当にオオカミってカッコイイんだなぁ……じゃないない! 違うよ僕っ!

 オオカミが前方に着地してこっちに向き直った。


『トテモ良イ(ニオ)イガスル』


「しゃ、しゃべった!?」


濃密(ノウミツ)ナル魔力(マリョク)(ニオ)イ』


 は? え? 魔力(まりょく)(にお)い? 魔力(まりょく)ってあれかな? RPG(アールピージー)とかファンタジー小説の設定の魔法を使うための力。あれのことなのかな?


(ナンジ)(ワレ)魔力(マリョク)(ササ)ゲヨ』


「はぁ? ええ?」


 後ろを振り向く、誰もいない。右は(へい)、左は団地の公園だろうか、小さい広場みたいな公園だけどあいにくと誰もいない。


「あーっと……?」


(サッ)シガ悪イ人間メ。オ前ノコトダ』


 シューシューと音を立ててオオカミの口から気味の悪い色をした(けむり)が吐き出される。黒っぽい赤と言うか、なんというか……くさったブドウの汁みたいな色? そんな色だ。


「もしかして僕?」


 いやー、外れて欲しい。すっごく外れて欲しい。僕じゃありませんように……。


「ソウダ、オ前以外ニ誰ガコノ場ニ居ル?」


 残念、なんと本当に僕でした……。ていうかなんで僕ぅ!?


「いやー、なにかのまちがいでしょ? 僕、魔力(まりょく)なんて持ってないし……」


間違(マチガ)イ無イ。オ前カラ強イ魔力(マリョク)ヲ感ジル。(ワレ)(ササ)ゲヨ』


 いやいや、(ささ)げよと言われましてもどうやって?


「え? なに? どうやってするんだよ?」


『ナニ、簡単(カンタン)ナコトダ。魂ヲカジレバ良イ』


 えー……? それってつまり……。


(ナンジ)(ミズカラ)ラヲ(ニエ)トシテ(ササ)ゲヨ』


 うっわー……思った通りの回答だよ……。(にえ)とか言われちゃったよ……。


「え……? ニエってなに? どんな字を書くの?」


 なにかのまちがいじゃないか確認のために聞いてみる。


『アホウカ。異界(イカイ)ノ生命タル(ワレ)ガコノ地ノ文字ナド(カイ)スル道理(ドウリ)ナド持チ合セテオラヌ』


 でーすーよーねー……。


『素直ニ(ワレ)(ササ)ゲルガ()イ』


 そう言うとオオカミは一つ咆哮(ほうこう)を上げる。


 グォォォォオオオオオオオオオオオ!!!!


 大きな咆哮(ほうこう)は大気をブルブル震わせてるのか、近くの外壁(がいへき)や電柱がビシビシと鳴って電線がグネグネと揺れてる。

 さすがに僕もこれには(かな)わないと思って逃げ出した。できるだけ早く、できるだけ安全なところに……。

 瞬間(しゅんかん)的に視界(しかい)の中に回転する丸いジャングルジムを見つける。全速力(ぜんそくりょく)で公園に駆け込んでその中に飛び込む。

 ガガンッと遅れて大きな音が響いた。


「ひぃ!?」


 オオカミがジャングルジムに体当たりしたんだ。メキメキという音を立ててジャングルジムが(きし)む。


『早ク往生(オウジョウ)セヨ人間』


 ガツン、ガツンという体当たりと共にどんどん揺れが激しくなる。

 格子(こうし)()しに目の前に大きなオオカミの口が迫ってる……ガツンガツン音を立てて。


「ひぃ!? イヤだぁ! 死にたくないぃ!」


 どうして僕がこんな目に……。あれか、腹いせに姉さんの嫌いなピーマンをチャーハンに入れたせいか! そうなのか!? だとしたら今度からピーマンなんか入れてやらないんだからなっ! (うら)むよピーマンの神様。なんでピーマン1つのせいで僕が死ななくちゃいけないんだよぉ!?


『サァ、(アキラ)メロ。(ワレ)ヘノ(ニエ)トナルガ()イ』


「やだぁ! ゼッタイやだぁ!」


 なんとかジャングルジムの支柱(しちゅう)に抱きついて耐えているけれどそのジャングルジムがそろそろヤバイ。

 なにがヤバイかって? (かたむき)き始めてるんだ。


「サア、人間ヨ。ドコマデ耐エルコトガデキルカナ? グルルルル……」


 だんだん倒れて行くジャングルジム。しかもどんどんオオカミが体当たりしている所がひしゃげてるよ!

 どうしろって言うの!? このままじゃあ僕食べられちゃうよ!


「ソラソラドウシタ人間、(アキラ)メルカ人間」


 笑いながら体当たりするオオカミ。マジ怖いです。ていうかヨダレ飛び散ってます。口開けて笑わないでっ! 服にかかってる! 服にかかってるから!


「てゆうかこういう時の魔法少女だろぉ!? なんで来ないんだよぉ!?」


 そう(さけ)んだ瞬間(しゅんかん)にボキリという音が聞こえた。その瞬間(しゅんかん)に世界が回転する。


「わぁあああ!!!!」


 どうやら支柱(しちゅう)の根元が折れたみたいで、地面をジャングルジムが転がり出したらしい。


「コレハ何トモ面妖(メンヨウ)ナ……転ガル(オリ)トハ」


 ゴロゴロと転がるジャングルジム。それを追い回すオオカミ。

 追うものと追われるもの。その関係はまるで猫と毛糸玉だ。

 ゴロゴロ―…ガシンガシン。ゴロゴロ―…ガシンガシン。

 これが等身大(とうしんだい)の猫と毛糸玉だったらどんなに(なご)めたんだろ! そしてその玉に自分が入ってなければさらに……。


「でい゛う゛が……だれ゛がどめで……ぎぼぢわ゛る゛……おえぇ……」


 もう気持ち悪くて限界(げんかい)……。

 すぐに力が抜けて手が滑ってしまった。しかも運が悪いことにすぽーんとジャングルジムの入り口を通り抜けて外に投げ出される。なんてお約束!?


「ヤット、(ニエ)()ラエル」


 視界がグラグラするのと地面に放り出された痛みでうまく立てない。それでも逃げなくちゃって本能が言ってる。命が危ないって言ってる。

 僕はやっとのことで立ち上がって逃げようと前進するも、目の前にはオオカミが回り込んでた。

 アレだ、『勇者は逃げ出した! しかし、魔王からは逃げられない!』ってヤツだ。

 正に魔王に(にら)まれた村人Aな僕、なんて言ってる場合じゃなかった。目の前には大きく口を開いたオオカミの顔が迫ってた。


(ああ、これで僕の人生も終わりか……あっけなかったなぁ……)


 覚悟を決めて目を閉じようとした瞬間(しゅんかん)、ドッゴーンという大きな音とともにオオカミが横倒(よこだお)しに吹っ飛ばされてた。


「え? え? なに? なんなの?」


 スタンという音と共に目の前に女の子が着地した。


「やぁやぁ、少女よ。お姉さんが助けに来たからにはもう大丈夫だからね!」


 とにかく赤い人だった。後ろ姿しか見えてないから判断できないけれど、赤い髪にパステルピンクの生地に赤色の縁取りがされた燕尾(えんび)ブラウス。下は真っ赤なパンツルックだった。

 その姿はあまりにも衝撃的(しょうげきてき)で、僕の感想はただひとつだった。


(うっわー……なにこのはずかしいかっこう……)





                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。


シリアスコメディー目指しています。序盤がコメディーらしくなくて申し訳ないです。早くも感想でコメディらしくないと突っ込まれました(苦笑)

今までシリアス系しか書いてこなかったのでコメディに慣れてないんですよね。なので序盤からコメディ全開なんてことは出来ませんでした(泣)

まぁまだ物語の起承転結の『起』の部分の更に『承』が今終わった所なのでもう少しお待ちください。

それでは今回はこれで失礼しますなのですよ。

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