幕間3 胡蝶の夢
皆さんお久しぶりです。
幕間3のシリアス一色のお話をおおくりします。
夢を見ていた。
一人の女の子の夢。
一人の男の子に救われた女の子の夢。
生きる目的を再び見つけた女の子。
初めに目覚めた感情は感謝の気持ちだった。
ひたすら泣きじゃくった後に、ぽつりと口にした言葉。
「暗闇の中にただ溶けるだけの私を……見つけてくれてありがとう……」
彼が傷ついた体の痛みに耐えながらも見せる笑顔。
どこかで見た事がある、懐かしいという気持ちと共に感じたのは安心感。
彼女が祖母の家に引き取られ、離れ離れになった幼馴染だったと気づいたのはそれから少し経ってから。
幼い頃は弱気だった彼女をいつも守るようにして立っていたのは彼。
彼女はそんな彼に依存するようになる。
ゆっくりと、笑顔を取り戻していく彼女。
そんな彼女を支えるように隣を歩く彼。
次第に取り戻していく感情と人間らしさ。
少しだけ前向きになれた彼女は、次第に彼に心を開いていく。
彼が優しく見守る中、月日は流れ、彼女は学業に復帰した。
実家に戻った彼女はそのまま地元の中学校に転入。
岐宿も彼女は彼の居るクラスへ。
彼の支援もあって徐々にクラスに馴染み始める。
嘗ての同じ学校の仲間も居た為か、気を許せる友達も増え始めた。
彼女は変わろうと努力する。
彼女は嘗ての惨めな自分を思い出すのが嫌で前向きに。
彼女は空っぽの伽藍洞に成ってしまった自分を満たすように。
彼女はそして、感謝してもし足りぬ彼に恩を返そうと努力する。
それでも彼は、「お前に恩を売りたくてした訳じゃない。見返りなんて要らない。ただ笑って欲しかっただけだったんだ」と言うだけ。
そんな、彼に益々感謝の念を厚くしては、想う。
どうしたら、彼に恩を返せるのかしら……。
どうしたら、彼が恩返しを受けてくれるのかしら……。
どうしたら、彼が喜んでくれるのかしら……。
どうしたら、こんなにも彼になにかをしてあげたい、という気持ちを私が持っていると伝えられるのかしら……。
どうしたら、どうしたら、どうしたら、どうしたら、どうしたら……。
気が付くと、視線が彼を追い求めていた。
気が付くと、彼を見て溜息を吐いていた。
気が付くと、自分の気持ちに気付いている筈の彼が受け止めてくれない事に苛立っていた。
暫くして、親しくなった学友に指摘される。
「それは恋じゃないの?」と。
そして中学校卒業を機に、彼を中学校の体育館、その裏へと手紙で呼び出した。
まるで本当に体験しているような感覚がした。
彼女の動かす手や足、首の曲がり具合から髪が身体を撫でる感触まで。
絶望から前向きに変わる彼女の感情、彼から感じる温情、そして一喜一憂の想い。
期待を胸に、微かに躍る期待感。
今か今かと待ち遠しく想う心苦しさ。
喜怒哀楽の全ての感情が流れてくる。
彼女は想う、こんなにも色々としてくれる彼に報いたい。
彼女は思う、こんなにも彼が好きだったのだという事実と経緯。
彼女は怯む、こんな私が彼に想いを伝えても良いのだろうか。
彼女は告げる―――
「来てくれてありがとう……。あの、私……実は前からあなたの事が――」
俯きながら、緊張で震えながらも必死に紡いだその言葉。
目の前で彼に想いを告げた少女が不器用に微笑む。
思いを受け止める彼。
その彼の口から紡がれる言葉。
その言葉は遠くて聞き取る事ができない。
直後、顔を上げて、涙ぐみながらも微笑む少女の姿。
どうしてボクはこんな夢を見る?
どうしてボクは彼女と感情や感覚を共有している?
「これは記憶。貴女が生きた物語」
不意に後ろから声が掛かる。小さくか細くとも確たる芯の有る声。透き通った声音なのにどこか歪な響き。
振り向くと俯いた女性の姿。ボクと比べて少しだけ身長が高い、髪が凄く長い女の人だった。
近づいたその時、彼女が口端を少し上げる。
「ボクが生きた物語?」
「そう、そして貴女は識る事になる」
彼女が顔を上げた時、真っ直ぐ視線が交差する。
その瞳は悲しげで……。
そしてその顔は―――。
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
と言う訳で幕間3でした。
シリアスオンリーでイミフな幕間ですが、避けて通れない構成です。申し訳ありません。
これからも幕の間に挟まれますのでご了承ください。
さて次回から第4幕の幕開けとなります。
第4幕の1話目は翌日6月16日22時に更新します。
今少しお待ちください(ぺっこり




