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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第3幕 新しい生活への物怖じ
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第38話 バレそう!……という名の物怖じ

お久しぶりです。

もうちょっと早く書き始めるべきだと思っているのですが、いかんせん時間がですね……(言い訳)

というわけで新しいお話をどうぞ~。



「佐伯さんって魔法少女だったのか?」


 左手から出てたモヤを気にしてたら、拓海がポツリとつぶやいた。


「あえ? や、こっ……これは……」


 あわてて、なにかごまかそうと思って……なにもいい案が思い浮かばない。


「はぅ~~……」


 思わず頭を抱えて奇声あげてしまったじゃないの。

 がっくりと肩が落ちた。

 もうどうすればいい? ぜんぜんごまかせる材料なんてないじゃない……。


「ニャー」


 顔を上げると盛大にネコ型の『ナニカ』に囲まれてた。

 どう考えてもこの状態から、なんでもありませんなんて言えるわけがない……ですよね……。


「こいつらさえいなければ良かったのに……」


 胸のモヤモヤ感が、ひとつの塊になって……それがなんだかどす黒いかたまりになっていく。


「ちょっ、佐伯さん、左腕、左腕」


 ますます噴出する量が増えて、拓海が慌て始めるのを見て、みょうにイライラとしてしまう。


「うるさいなぁ、少し黙ってて」


 自分でも思ってなかったほど冷たい声が飛び出て、さらに気分が落ち込んだ。

 本当はそんなこと言うつもりなかったのに……。

 本当はそんなことするつもりはなかったのに……。

 そもそも、巻き込むことなんてあってはいけなかったのに……。


「『ブラック・シックル』」


 大鎌を大上段に構える。


「『シャドー・バインド』」


 目に映るすべての『ナニカ』を地面に縫い付ける。


「ここは危ないから逃げて!」


 後にいるはずの拓海に声をかけて、目の前の『ナニカ』を数匹切り飛ばす。


「でも……佐伯さんは!? こんな真っ黒いのがいっぱいいるとこに置いて行くなんてっ!」


「良いから逃げて! お願いですから!」


 (わたくし)の魔力に寄ってくるなら、一緒にいることの方が危険ですし、まだ新米の(わたくし)には守って戦うなんてムリなのです……。

 だから、拓海が逃げるまでは時間稼ぎだって、なんだって……。


「ピョ~~……」


 急に聞こえた鳥の声に顔を上げると、今度は多分……鳥型の『ナニカ』が、何匹か空を飛んでいた。


「ますます……増えてる……」


「いったいどうなってるんだ? 佐伯さん」


「だから、逃げてって……」


 後ろを振り向くと、どっさり山盛りでした。


「この状態で逃げれると思う?」


「これは……ムリ……かも……」


 地上はネズミ、空は鳥、ついでに塀の上はネコ……もしかしてゼッタイゼツメイというものではないでしょうか?


「どうしましょう……ね」


 必死になって、次々集まってくる『ナニカ』を倒しても、それ以上の数が集まって来て、対処できなくなってきてる……。


「まったく、この数相手に良くやるわねぇ……『ネイルド・レイン』」


 ドツドツドツっと小さい音が連続でして、空から小さいなにかの粒が目の前の『ナニカ』にぶつかって消し飛んでいく。


「本当に、聞いてた以上にでたらめな魔力量ねぇ」


「そうでしょ? 第二、『対天鏡(たいてんきょう)』」


 ドカンと大きな音を立てて、目の前と少し離れて何かに向かっての2枚、大きな鏡が落ちてきた。

 その鏡にさえぎられて、(わたくし)に向かって飛びかかってきていたネコがいっぴき鏡にぶつかる。それと同時に離れたところにある鏡からドカンという音がして、衝撃波なんだろうか? それで鏡の前の『ナニカ』が数匹、吹っ飛んだのが見えた。

 声が聞こえた方を見たら、ふたりの女の子が立っていた。

 ひとりは以前、百貨店で一緒に戦った巫女服っぽい服を着た女の子。そして、もうひとりは青いハーフドレスにロングストールをひっかけた女の子。


――ミラとフレーベル――。

「ミラとフレーベル」


「あれ? 私のこと知ってるの? 初対面だと思うのだけど……」


「私は以前出会ったことあるから知っててもおかしくないんだけどね。『水穿(すいせん)』」


 どんどん集まってくる『ナニカ』を倒して新しく来たふたりと合流する。


「それにしても、随分と服装がカワイくなちゃったわねえ。ゴスロリ調?」


「つっ、つっこまないでください!」


「いやあ、本当にお姫さまみたいで良いね~」


 そう言って、もうひとりの女の子が、ずいっと急アップ。


「いいねえ、いいねえ。こんな女の子……妹に欲しいなあ」


(わたくし)なんて妹にしてどうするんですか……」


 じょうだん過ぎると思ってにらみつけたら、するりと腰を抱いて引き寄せられた。


「ちょっとなにするんですか!?」


――ドスッ!


「えふぅ……これはなんとエグい一撃……」


 はずみでなんとなくその人の脇腹に肘鉄(ひじてつ)をたたきこんでいた。

 ふり返ると、女の子は脇腹を押さえながらヨタヨタと後退していた……。効果はバツグンだ!


「なんだか手馴れている感じ?」


 ミラさんが苦笑しながら女の子の背中を支えた。


「それはもういつものようにされているからじゃないですか! まったく、先輩はいつもそんなだから痛い目に合うのですよ」


 あれ? (わたくし)、そんなに毎回もされてたでしょうか? 初対面じゃなかったかしら?

 でもこのやり取りって前にも有った気がするんですよね……って、掛川先輩……。この人、掛川先輩と同じ行動してるのですよ。

 目と髪の色が青いけど良く見たら、掛川先輩だ。こんな時でも、こういうことは忘れないんですね……。


「私、会ったことあったっけ? こんなにカワイイ子なら忘れるはずも……」


 そこまで言って、急に振り向いて(わたくし)の顔を再確認した。


「ああっ! もしかして千夏の妹ちゃん!?」


「え? 佐伯さんの妹!?」


「佐伯副会長ってアキラの……姉さん……だよな?」


 なんだか連鎖的(れんさてき)におどろかれてるような……。それにこんなこと拓海に聞かれたら変に思われ――。


「ううっ……」


 予想通りに拓海がこっちをじーっと見てました。さっきよりさらに怪しんでますよ……ね? これってもしかして……バレそう……だったりしませんか?


「そ、そんなことよりも! この状況をなんとかしないと」


 そうだよ、現状をどうにかしないと話をしてるだけでも危ないんだよ! けっしてごまかしたいとか、そんなんじゃないんだからね!


「そうだった。それで……なんて呼べばいいのかな?」


「一応、登録してる名前はフェアリー・ブラックですけど……今は別の腕輪使ってるので――」

――(わたくし)の名前はエルノワース――。


 一瞬だけ、なにかの記憶を思い出したような……そんな感じがした。


「エルノワース……。とりあえずエルノワースって呼んでください」


「おーけー、じゃあエルちゃんって呼ぶね?」


「お願いします。おふたりのことも、ミラさんとフレーベルさんってお呼びすれば良いですか?」


「私はそれで」


「私はお姉さんって呼んで欲し……いえ、先輩でいいよ? 妹ちゃん」


 とりあえず変なコントみたいなことしてたから、『ナニカ』がまた増えてしまったのを、対処する。

 それぞれ魔法を使って応戦(おうせん)するけど、どんどん増えてきてる。

 左腕を見ると、あいかわらず黒いモヤが出っぱなしだ。


「で、エルちゃん? その腕から出てるもの……止められないの?」


「腕輪が壊れてておさえきれてないんだと思います。止めるには腕輪を交換するしか……」


 ミラさんに腕輪を見せると両手で頭を抱えてしまった。


「どうしてそんなになるまで放っておいたの!?」


「いつのまにか壊れてて……。(わたくし)って成長期が始まったらしくって魔力に耐え切れなかったんだろうって言われました」


「エルちゃんの魔力って、これで成長期が始まったばかりなの!?」


「え~っと……今日で2日目?」


「妹ちゃんってでたらめねえ……。普通は立ったりするのもキツイ状態のはずなのに……」


「そうなんですか? (わたくし)、魔法少女になって2週間目なので良く分からないのですよね」


 こんなにだらだらと会話してるのに、余裕があるのも不思議だけど、意外とこの3人はかみ合ってるようで、動きやすい。

 ミラさんは防御担当で、『ナニカ』からの単純攻撃を結界で防いで、掛川先輩が遠距離で射撃と範囲攻撃。(わたくし)が遊撃とサポート。


「なんだか、昔っから一緒に戦ってきたみたいに息が合うねえ? 私たち」


 そう、以前から3人で一緒に戦っていたような……そんな気がしてくる。

 (わたくし)がどう動いたら、2人がどう動くのか、全てが分かるような気がする。そんな不思議な一体感(いったいかん)を感じた。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



「包囲が崩れた! とりあえずこの場から移ろう!」


 ミラさんの提案で、一気にその場から駆け出した。住宅街でこんな戦闘していたら一般人を巻き込みかねない。


「だったら高根中に! そこまで行けば住宅街よりはマシだと思いますし、魔法少女課の課長もいますから!」


「ジェイクさんがいるのか、なら問題なしだね。妹ちゃんの意見に乗ろう!」


「ごめんね? た……厳島くん。巻き込んじゃって」


「いや、良いよ……。このまま帰ってって言われてもあの黒い生き物に襲われそうで怖い。それに……」


 拓海はそこで言葉を中途半端に切った。


「なあ、もしかしてお前って――」


「え?」


 不意にかけられた言葉に足が止まる。見上げると、拓海が(わたくし)をじっと見ていた。


「アキラなのか?」


 気づかれ……た?


「なっ、なにを言って……」


――気付いて欲しくなかったのに――。

 気付いて欲しくなかったのに……。

 ピシリッ、と小さく音が響く。


「だってそうだろ? 初対面のはずだったのに俺の名前知ってたし、佐伯副会長の妹って……。それに、お前とアキラ、漢字の読みしか違わないじゃないか……姿容は違うけどさ……」


「わ、(わたくし)は……」


「それにその口調、絶対ムリしてるだろ? いつものお前はもっとのんびりしたマイペースな口調だしな」


「ムリをしてる? だってこの口調は――」

――そう、本当はおばあさまになおしなさいと強要されたもので――。

「この口調は……」

――だから、(わたくし)はこの口調が大キライなの――。

「ボク……じゃない……」


 一瞬だけ、めまいがして……ビキン、と左腕から音がする。気づいたら目の前に地面が近づいてた。


「妹ちゃん!?」


「おい、大丈夫か? その……佐伯さん」


 慌てた拓海に、抱きかかえられるようにして、倒れるのをなんとか回避できたけれど、2つ目の腕輪が割れていた。


「う……ぁ……」


 左腕からだけだったのに、今は足元から全身で、黒いモヤが出ていた。

 そのせいか、どんどん体から力がぬけて、体の底から寒いと感じるほどになにかが抜けていってる感じがする。


「おい! 佐伯!?」


「変身とけてるじゃない! キミ、背負ってあげて? 後ちょっとで高根中だから」


「ああ、はい」


 拓海がボクを背負って走りだした。


「ごめんね? 拓海。ボク……」


「しゃべらなくて良い。舌かむぞ? 話したいことがあったら後でちゃんと聞いてやるから黙ってろ」


「……うん」


 いろいろなことを話したいと思ったけど……どんどん頭がボーっとして来て、なんだか良く分からなくなってきた……。






                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



という訳で『バレそう』の回でした。

とうとう、拓海に正体を勘付かれてしまった明。

どう決着を付けるかはまだ先のお話。

次回は出来れば近いうちに更新したいなぁ(希望的観測)

でも一日に文字を書き続けるのも相当大変なんですよね(汗)

正直な話、銃騎士物語よりも感情表現しやすい分悩まなくても良いから執筆速度速いという(遠い目)

とりあえず、次回は多分第3章終了直前の話になると思いますのでよろしくお願いします(ぺっこり

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