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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第3幕 新しい生活への物怖じ
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第34話 カワイイのにこれが敵!……という名の物怖じ

お久しぶりです。

何だかんだ暇なんだと思ってたけど暇じゃなかったわけです。

案外、厳しいですが、新しいお話をおおくりいたします。

それではどうぞ~。



 あれから2日経った。

 拓海との誤解も解けるどころか、なんだか色々すれ違ってばっかり。

 どうも初日がダメだったのか、女子のみんなはボクに拓海が近づこうとすると白い目で見るし、男子は男子でなんだかピリピリするし、本当にどうなってるの?

 普段はみんな仲良いのにこれじゃあボクのせいで空気がぎすぎすしてるんじゃないかって思っちゃうよ……。

 大きくため息出ちゃうよ……はぁ……。


「――りちゃん、明ちゃん?」


「ふぇ?」


 気が付いたら焔さんがボクの肩をゆすってた。


「あれ? もうお昼ご飯?」


 焔さんがカバンもってるから今日はお弁当なのかな?


「もうしっかりしてよ。携帯見て、携帯」


 言われて携帯を見ると、メールの新着が1件。

 送り主の名前が『高根市役所魔法少女課』になってる。


「うわ、ごめん。見てなかったよ」


 あわててノートとかをカバンに詰め込んで立ち上がる。


「あかね、藤乃、私たちお仕事だから天使ちゃんによろしく」


「分かった。焔ちゃん、明ちゃん、気を付けてね。水穂さんにも」


「がんばって」


「うん」


 2人に応援されて手を軽く振って、教室の後の出口で待ってる水穂さんと合流して急ぐ。


「昇降口前のロータリーにはもうタクシー来てるはずだから急いで」


 2人の後を追って昇降口まで来ると、刹那さんと舞さんが先に待ってた。


「遅いで3人とも。なにしてたんや。はよせんかい」


「私が先に来てるのも珍しいよね~」


「ごっ、ごめんね。ボクがトロトロしてたからっ」


「なんだ~、明っちなら仕方ないよねぇ。しんじんさんだからねぇ」


「あわわ。舞さん、頭なで回さないでよぉ」


 変にじゃれ合いながら、魔法少女科から回されたタクシーに乗り込む。

 タクシーは2台で、焔さんと水穂さん、ボクは前。後ろは刹那さんと舞さんが乗っている。


「それじゃあ、運転手さん。桐陽台(とうようだい)2丁目までお願いします」


「はいよ」


 焔さんのかけ声に運転手さんが明るく返事をしてタクシーが出発した。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



 桐陽台(とうようだい)は市内では北部にあたる、15年前に新興住宅地(しんこうじゅうたくち)として開拓(かいたく)されて、今はいっぱい人が住んでる。章栄高校から車で15分の位置にある。

 ボクたちの今回のターゲットはそこに現れたらしい。


「それじゃあ、キミたち、今回の私たちのターゲットについて話そう」


 キリッと引き締まった表情で焔さんが腰に手を当てて話しはじめた。

 相変わらず変わり身早いなぁ……。


「今回の相手は住宅地の花壇(かだん)荒らしの他に、犬や猫などのペットに(おそ)いかかって魔力(まりょく)(うば)って行くらしい。姿は……アレだ」


 ビシッと焔さんが指をさす方向を見た。


「にゃ~……」


 ネコさんだった。黒いネコさんだった。


「わ~、ネコさんだ。カワイイ~」


 顔を洗って、毛づくろいをする黒いネコさんに思わず声を上げてしまった。


「あのね、明ちゃん。見た目カワイくてもあれは『ナニカ』なのだよ! 心を(おに)にして討伐(とうばつ)しないといけない」


「は……はぃ……」


 あんなカワイイのに(たお)さなくちゃいけないなんて……ちょっと罪悪感(ざいあくかん)を感じちゃうよ。


「みんな分かったかな?」


「「は~い」」「あいさ」「……了解」


「それじゃあいくよ!」


『マジカルドレスチェンジ』


 5人そろって変身します。

 思えばこれで10回目。ボクもいいかげん慣れて来たのか言葉を出すだけなら迷わず言えるようになったけど、コスチュームがやっぱり恥ずかしい。

 あれから色々自分でカスタマイズしたけど、重要な所を変えようとすると母さんが怒って変えさせてくれなかった。

 けっきょく、変えられたのはクマさんのバックプリントの削除(さくじょ)と、ガーターベルトがジャマだから取っ(ぱら)ったくらいかな?


「それじゃあ、私とブラック、グリーンとイエローがペア。ブルーは単騎(たんき)各々撃破(おのおのげきは)で」


「「「「了解」」」」


 3方に分かれてそれぞれ準備をする。


「風、吹き(とど)け。(われ)らに敵意(てきい)ある者(さが)し出せ。『風囲報還(ふういほうかん)』」


 舞さんの足元からぶわっと強い風が一瞬(いっしゅん)吹いた。


「あれはなにしてるの?」


「ああ、アレは風の魔法でね。周囲を風で包んで、それで探知(たんち)した情報を使用者に送り届けるものなんだよ」


「そうそう、ちなみにブラックの今日のぱんちゅはクマさんじゃないのねぇ。ザンネン~」


「なっ!? ボクのスカートの中のぞいちゃダメだよ! グリーンひど~い!」


「――は、じょうだんとして……こっち、いきましょ~」


「ほな、リーダー。うちら先に行くわ」


 舞さんと刹那さんがくすくす笑いながら行ってしまった。ぜったいアレはボクのスカートのぞいたのを誤魔化(ごまか)したんだよね? ヒドイよっ!


「でもブルーは1人でへーきなの?」


「……大丈夫」


 手に持った本を開いた水穂さんがページに手をかざした。


「来たれ」


「へ?」


 そのひとことを言うと、本からだばだば音を立てて大量の水が流れ出て来た。


「そして()りし形成(かたな)()傀儡(くぐつ)、『ウォーター・サーヴァント』」


 地面に流れ出た水が次々とペンギンの形になってく。ざっと見て20ぴきくらい?


「すご~い……でもどうしてペンギン? 趣味(しゅみ)なの?」


実用的(じつようてき)……(すべ)る……()べる……」


「え?」


「行け!」


 水穂さんの(するど)いかけ声を聞いてペンギンたちが一斉(いっせい)に動き始めた。あるものは地面をスイーっと(すべ)りながら、あるものはぴょんぴょん()んで、(へい)()び越え、屋根に飛び乗り……ってなんでも有りなんだなぁ……魔法って。


「感心してないで私たちも行くよ?」


「う、うん」


 先を歩きはじめた焔さんを追って、ボクも歩きはじめた。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



「こんなカワイイのになぁ……」


 ちょっと手を向けようとしたら威嚇(いかく)するようにフシャーって飛びかかって来た。


「ひゃあ!?」


「だから危ないって言ってるだろう!」


 (おそ)いかかるネコさんを焔さんが剣で切り捨てる。とぶしゅーって黒いモヤみたいになって消えていく。こういうのやっぱり慣れないなぁ……。


「いいかげん、慣れないとそのうち痛い目にあうぞ? ブラック」


「うぅ……そうなんだけどさぁ……」


 こんなにカワイイのにこれが敵だなんて……。

 やっぱり生き物っぽいのを殺す行為(こうい)ってのが抵抗(ていこう)感じるなぁ……。


「あ、そこの(へい)の上に2ひき、と後ろにいっぴきついてきてる」


「了解、っと」


 焔さんが(へい)の上に飛び乗って、2ひきたたき切る。


「『シャドー・バインド』」


 杖を振り上げて後ろのネコさんの影を(しめ)す。

 ザクッていう音とともに後ろのネコさんの動作(どうさ)がぴたりと止まる。『影縫(かげぬ)い』という技法(ぎほう)らしい。

 らしいってのは、前に戦国モノのマンガで忍者(にんじゃ)が使ってたのを覚えてて、それをイメージにして使ってるだけ。魔法の効果と指定以外はもうなんにも考えてない。

 そうそう、意外と魔法少女の魔法って、イメージが大きいみたい。原理(げんり)は良く分からないけど、『魔法のイメージを浮かべる』、『魔力(まりょく)を放出する』、『指定したキーワードを(とな)える』の3段階。指定したキーワードってのは『呪文(じゅもん)』のことだね。魔法の名前だけでも発動(はつどう)するけど、詠唱(えいしょう)をするとさらに効果が高まるという感じ?


「でもすごいな。良くそんな魔法も使わずに精確(せいかく)魔力探知(まりょくたんち)ができるね」


「ん~? どうしてかなぁ……なんとなく分かっちゃうんだよね~……あ、レッドの後ろ」


「せいっ!」


 どうしてか知らないけど、ボクの場合は変身した後だと気になる方向には必ず魔力(まりょく)を持った『ナニカ』がいるんだよね。ジェイクさんが言うには、ボクが同じ闇属性(やみぞくせい)魔力(まりょく)を持ってるから引かれ合うんじゃないかって。良く分からないけどそういうことらしい。


「これで最後!」


 焔さんがボクの影縫(かげぬ)いで動けなくなった最後のいっぴきを()る。


「終りだ――え?」


 ボクがよろこんであいづちうとうとしたところでゾワリ……とイヤな気配がした。


《――ごめ~ん、りぃだぁ、黒っち、そっちに大きなのが行っちゃったよ~――》



ドドン、ドドン、ドドン、と大きな地響(じひび)きとともに、大きな――


「ネコさんだぁ……」


 これってワンパターンなの? もしかして、『ナニカ』ってみんなこんな感じだったりするの?


(いまし)めよ、()が前に仇為(あだな)す者。『ダーク・チェーン』!」


 こっちに走って来る大ネコさんに向かって杖を振り下ろすと、大ネコさんの周りの色々な物の影から黒い(くさり)が出て、大ネコさんを(しば)りあげていく。

 相手の力が強いのか、(くさり)がミシミシいってるよぉ……。


「あぐっ……長く……持たな――」


 ブツンとちぎれた感触(かんしょく)がして身体が重くなった気がする。見ると、大ネコさんが(くさり)をブチブチちぎり始めてた。


「ブラック!」


 焔さんが()びあがって、大剣でネコさんに()りかかっていた。けど、(くさり)を引きちぎった右腕で、焔さんをねこパンチで迎撃(げいげき)しようとしてる。



「ぶっ、『ブラックホール』!」


 ねこパンチの真ん前に黒い円盤(えんばん)があらわれて右腕を飲み込んだ。さらにボクの体が重くなる。っていうかすごくシンドイ……。これ長くもたないよ……。


「レッド!」


「てーい!」


 ズバン、という音がして、大ネコさんが黒いモヤになって消えた。


「ふぅ~……」


 息をはいてその場にへたれ込んじゃった。もうちょっと遅かったら危なかったよ……。


「……あ」


 ばしゅって音がして、自動的(じどうてき)変身解除(へんしんかいじょ)されちゃった……。これはマズイかも……。


「大丈夫か!? ブラック!」


 走って来る焔さんがぐにゃりと(ゆが)んだ……。

 ああ……やっぱり……魔力(まりょく)切れ……だ……――。






                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



なんか、最近変なトラブルとか、病気の発作で寝込んだりとかが多いです。

時間はいっぱいあるのに、病気で気分最悪で筆が進まないとかですね。

どうしてこうなった……みたいな事もあるわけで。

なんというか残念無念な気持ち。


今回は久々に魔法少女回。もやもや気分の明も出動要請(しゅつどうようせい)掛かれば出なくちゃいけません。

そして明ちゃんも約2週間の光さんが計画した特訓メニューで魔法が自分の意志で使えるように!

と言っても、攻撃魔法がほとんどなくて、もっぱら拘束(こうそく)系ばかり。

まだまだ前線に出る事は無さそうです。

と言うのも光さんも明ちゃんにムリをして欲しくないと思っての事なんですよね。

まずは後衛で仕事に慣れなさいと言う感じです。

で、あいかわらず燃費が非常に悪いです。魔力の放出コントロールが上手くできてないので浪費が激しい訳ですね。

今後の課題は燃費を良くする事でしょうか?

これからもがんばれ明ちゃん

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