第32話 囲まれて質問責め!……という名の物怖じ
前回から少しお時間空きましたが新しいお話をお送り致します宜しくお願い致します。
ごめんなさい、やっぱ無理……。
ボクはやっぱり甘かった……。
「ねえ、佐伯さん。佐伯さんはどこから転校してきたの?」
「えっと……」
「佐伯さん趣味は?」
「あの……」
「佐伯さん特技は?」
「えっと……」
「佐伯さんって、どこの部活に入ります?」
今、ボクは8人くらいの女の子たちに囲まれて質問責めになってる。
正直言って怖い……。怖いよぉ……。
「佐伯さん?」
「佐伯さん?」
「佐伯さん?」
「佐伯さん?」
どうしよう?……どうしよう、どうしようどうしようどうしよう……。胸が苦しくって身体が震えて来る。怖くてなにも考えられないよ……。
「あ~か~り~ちゃん!」
明るい声が耳元から聞こえた。
「あぅ?」
声が聞こえた方にふり向いたら高坂さんがニコニコ立ってた。
「こっ、高坂さん」
「ごめんね、みんな。明ちゃんっていっぱい人に囲まれた状態で見下ろされるとパニックになっちゃうの。ちょっとみんな前の方はしゃがんでくれると助かるんだけど、ダメ?」
高坂さんがボクの代わりに説明してくれた。
「ご、ごめん……ね? みんな……」
努力してそれだけ伝えると、みんな納得してくれたのか、前の方の人はしゃがみながら微笑んでくれた。
それを見るだけでもほっとする。
「ごめんね……ボク……前イジメられてて……囲まれるとどうしても思い出しちゃって……」
「そ、そうなんだ。ごめんね。佐伯さん」
「ううん、みんなありがとう」
ガンバって笑い返した。
「高坂さんもありがと」
「いいえ」
ぽんっと肩をたたいてくれる高坂さん。たたかれた所がちょっと温かく、心強く思える。
「えっと……高坂さんと佐伯さんってお知り合いなの?」
「ええ、バイト先の同僚さんだよ? ね、明ちゃん」
「うん、高坂さんにはお世話に――」
「焔って呼んでって言ったのに~……。もうクラスメイトなんだし良いでしょ?」
「う、うん、じゃあ……ほ、ほむ…ほむらさん……」
なんかすっごく恥ずかしい……。女の子の下の名前を呼ぶなんて初めてだから……。
「照れちゃってカワイイ~……こんなにカワイイのにイジメるなんてよっぽどのバカだよね~」
「うんうん、かわいがる方が面白そ~」
「でも、なんかイジってみたいなぁってのはあるかも~」
みんな、口ぐちにそんなこと言ってる。どうやら、ここではイジメられることはなそうでホッとする。
「それで、佐伯さんはどこから転校してきたの?」
「隣の県の××市の××高校です。結構山の方で……」
これはお婆ちゃんの住んでる家の近くの高校で、表向きはボクはお婆ちゃんちからそこに通ってたけど、イジメにあって転校したってことになってる。まあ、本当はそんなことないんだけどね。
「へ~、山奥だと不便だもんね~……じゃあこっち来てけっこう新鮮なんじゃない? ビルとか建ってて」
「ううん、前はここに住んでたから。街並みだけは知ってるよ?」
「そうなんだ」
「趣味は~?」
「趣味は……お料理……かな?」
「じゃあ特技、特技教えてよ?」
――茶道、日舞それからお琴に合気道……
「茶道、日舞それからお琴に合気道……」
え? あれ? なんでボクこんなこと言ってるの? 茶道はちょっとお母さんに教えてもらったけど日舞とか、お琴とかやったことないのに……。それに合気道もやったことないよ……。
「へ~? 佐伯さんって見た目が大和撫子~って感じだったけど本当に大和撫子なんだ」
「はぅ!? ちっ、ちがうよ! ボ、ボクなんかが大和撫子だなんて……」
「照れちゃってカワイイ~」
「それに一人称がボクとか、背伸びしてるみたいでよけいにカワイイよね~」
カワイイカワイイて言われ続けると、さすがに別の意味でソワソワしちゃう。なんか恥ずかしいよ……。
「照れてる~! カワイイ~」
肩にポンポンって振動が伝わってくる。
「良かったね、明ちゃん。みんな優しそうで」
高坂さん……じゃなかった焔さんが微笑んでくれる。
「う、うん! 焔さんもありがとー」
「いえいえ、どういたしまして……って先生来たよ? みんな席に行こうよ?」
「ああ、本当! 佐伯さん、またね~」
「うん、また後でね~」
みんな優しそうに笑って手を振ってくれた。ボクも手を振りかえして「うん!」って答えた。
「授業を始めるぞ! 日直、号令!」
「きりーつ!」
ガタンと大きな音がして、みんな一斉に立つ。
「礼!」
みんな頭を下げてそのまま座った。
「あ? え?」
周りを見回すとボク一人立ってた。
「はわわ……」
そそくさとあわてて着席する。
この学校、『着席』の号令ないの? ボクまた恥じかいちゃったよ~!
赤面してできるだけ目立たないように身を縮まこませた……。
周りからにっこり微笑ましいと言わんばかりの視線を感じて居心地悪いよ~……ひ~~~~ん……。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
それにしても、なんだかおかしい……。
学校の授業、前の学校よりも進度が早くって、1週間も学校行ってないから授業内容分からないって思ってた。
それなのに、なんだかいつもやってたみたいな感じにスラスラ分かっちゃう……。どうして?
「それじゃあ……ああ、次は転校生の佐伯だが、分かるかな?」
数学の先生が二次関数の問題を指さしてる。
「は、はい……」
緊張したまま前に出る。
二次関数は中学校でもやったし、この辺は大丈夫かも?
先生からチョークを受け取って問題を解いて行く……。
えーっとここは……『 2x - 4x + 10 = 0 』だから ――
――『二次方程式の解の公式』を使って。
代入をすると……。
カツカツ黒板に書いて行く……。
黒板に『 x = 1 ± 2i 』と答えを書く。でもボク、こんなにスラスラ問題解けてたっけ……。
「で……大丈夫でしょうか……?」
自信無いから先生にのぞき込むように尋ねる。
「うん……まあ、予習できてるようだな。これなら授業に付いて行けるだろう。戻りなさい」
どうやらOKもらえたようでホッとする……。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
あっという間に昼休み……。どっと疲れた。意外と緊張する~。
くったりへなへな~って机に突っ伏したところでボクに声がかかった。
「お疲れさま、佐伯さん」
顔を上げると、朝に下駄箱であいさつしてくれた2人組がボクの前に立ってた。
「お疲れさま~」
「私、林田 あかね。よろしくね!」
「私は根府川 藤乃、けっして『とうちゃん』って呼ばないでね」
林田さんは陽だまりみたいなほんわかタイプのお嬢さんみたいな感じで、根府川さんはキレイタイプのお姉さんって感じ?
「よ、よろしく~」
「一緒にお昼どう?」
「うんうん」
正直声かけてくれて嬉しい。
「でも、ボク、今日はお弁当だけど大丈夫?」
「うん、大丈夫。私たちもお弁当――」
「え~? 残念だなぁ……私たち学食組なんだよね」
後ろから焔さんの声が聞こえた。
振り返ると、焔さんの隣に加賀見さんもいた。
「あ、焔さんとかが――」
「み・ず・ほ」
加賀見さんが力を込めて言った。相変わらず表情に変化がなくてちょっと怖い。
「水穂さんもお昼誘ってくれるの?」
「うん、そうなんだけど、学食なんだよね? 私ら」
残念そうに焔さんが言った。
「じゃあ、みんなで学食行かない?」
「良いの? 学食って利用者に限るとかないの?」
普通の学校ってそんなイメージあるけど……。
「うちの学校は学食広いから、誰か1人でも学食利用してれば文句言われないよ~?」
「そうなの? じゃあ大丈夫かな~」
「それじゃあ行こうか、案内してあげるね!」
焔さんがボクの右手をにぎって引っぱる。
「はう……待って~。ボク、お弁当まだ持ってないよぉ!」
お弁当を慌ててカバンから取り出すと、焔さんが改めてボクの右手を取った。
「あの……佐伯……さん」
ふと、声がした方を見ると拓海がきまりの悪そうな顔をして立ってた。
「何なの!? この痴漢男!」
いきなり焔さんが叫んで拓海を睨み、他の3人もボクと拓海の間をさえぎるように立つ。
「み、みんな? あの……」
拓海がなにを言いに来たのかすごく気になるんだけど……。
「私たち、これからお昼なの。また今度にしてくれない?」
「あ……うん……」
きまりが悪そうな声が聞こえて来て……拓海が離れて行ったようだっだ……。
これってどう見ても誤解されてる図式だよね……。
――拓海さま……。
「拓海……さま……」
声をかけたいという気持ちばかりが前面に出て来るけど……どう声をかけて良いのか分からない……。
「それじゃあ、みんなで学食に行きましょう」
根府川さんが振り返って手を打った。
「そうだね」
「行こう行こう!」
「……了解」
4人に半ば連れられる様に引っ張られた。
「う……うん……」
振り返って後ろを見ると拓海がこっちをじっと見ていた……。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
お仕事終わったのでがっつりお時間取る事ができまして、
なんとか小説書く時間を空ける事ができるようになりました。
今月から週一で更新できればいいなぁと思っています、よろしくお願いします(ぺっこり
あ、後、割烹でバトンをもらったのですが、どうせならSS形式でと思って書いてみました。
案外長いですがIFの世界としての読み物として興味があったら見てみて下さい。
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