第31話 自己紹介!……という名の物怖じ
前回の終わりからちょっとお時間経ちました。
正直リアル忙しくて中々執筆する時間取れません。
ガクリ……でもとりあえず書き終わったのでアップします。
―― バッシーン!
「ぶふぁ!?」
ボクの右手がジンジンと痛む。見ると手のひらが赤くなっていた。
ボクはいったい今なにをしたんだろう?
そう思って周りを見ると、みんなポカーンと口を開けて見ていた。
目の前には紅くもみじに染まった頬をおさえる拓海。
――拓海さま!?――。
「拓海……さま?」
視界がぼやける。
「え? どうして俺の名前を?」
ぼう然とする彼の顔を見て、胸が締め付けられる様に感じた。
とても痛くて、とても辛い……。そんな気持ちが湧き上がる。
「あぅっ……ぐっ……ふぅ……ぅぅ……」
それ以上なにも言葉が出なくて、変な声ばかりが口からもれる。
「……厳島くん! なに転校生泣かせてるの!」
「くそ! 拓海め! あんな小さくてカワイイ女の子泣かせるなんて……許せねぇ!」
え? 泣かせ……?
あわててボクは自分の頬をさわると、涙がこぼれてた。
あれ?もしかしてこれって……。
女の子押し倒す → 胸をさわる → 平手打ち → 女の子ボロ泣き → チーン!(ひらめきの音)
ガタン! ガタン! また1つガタン! 次々に修羅のような顔をした男子生徒たちが席を立ち始める。
オゥ! キミたち! 待つんだ! これはそう! なにかの間違いなんですよ! いや確かに間違いは起きた! 別の意味の間違いは起きたのですけど! これは間違いなんですよ!
「ちっ、違うんだぁ! ワザとじゃない! ワザとじゃないんだよ!」
次々と男子生徒たちが教壇上の拓海へと殺到して行く。
「うぅ……ぐすっ……まっ、待っ……て……」
なんとか声に出したけど拓海に駆け寄る男子生徒達の足音で消えてしまった。
「お~よしよし、怖かったねぇ」
そう言いながら坂槻先生がボクの肩を抱いて頭をなで始めた。
「野郎ども! 痴漢野郎には制裁だ! 殺っちまいな!」
優しそうな顔でボクの頭を撫でてた先生は、一転して悪鬼羅刹のような殺気を漏らしながら黒い笑顔で首を掻っ切るジェスチャー。
「「イェスマム!」」
敬礼した男子生徒達に両わきをかかえて連行されていく拓海……。
どなどなどーなーどーなー……。
――がらがらぴしゃん!
勢い良く扉が閉まった。
仔牛を彷彿とさせるような……無実を訴える瞳をしながら、廊下に引きずり出されて行った。
「もう安心だよ? 明ちゃん。悪漢はこらしめられるのだー」
「せ……んせっ! ちがっ……! ボ…ク――」
『ギャー!』
ボクが先生に必死に説明しようとしてたところに廊下から悲鳴が聞こえた。
『おーっと! ここでコブラツイストが決まったー!』
『厳島逃げる! 厳島逃げる! それでも逃れられないー!』
『スリー! ツー! ワーン! ……』
廊下はシーンと静まり返った……。
ガラガラ……。
男子生徒達がさわやかな汗を拭いながら戻ってきた。
「ヒドイ……冤罪だぁ……不可抗力だって言ったのに……」
よっぽどひどくやられたのか、身体をよじった変なカッコウで拓海が入って来た。
コブラツイストって腰とか背中とか肩とか痛めつける技……なんだっけ?
「だっ……大丈夫……ですか?」
あわてて駆け寄って顔を覗き込むと、
「だ、大丈夫さ!」
痛みに耐えるように震えながらも、さわやかな笑顔でサムズアップする拓海。
もしかして、ボクのこと気付かってくれてるのかな?
「その……辛かったら……言ってくださいね?」
辛そうだったから見上げて声をかける。
「はっ! はいっ!」
なんか知らないけど……声を掛けた瞬間に直立不動になって、ガッチガチなまま拓海は自分の席らしい方に歩いて行った……。
実はけっこう元気だったみたい?
ぼーぜんとなって拓海を見送ってると、
「そろそろ自己紹介しよっか?」
って坂槻先生が言った。
「あ、う……ごっ、ごめんなしゃっぅ!」
舌かんだ……ジミに痛い……。思わず出そうになった涙をこらえるとまた先生が抱き付いて来た。
「ああ、もうカワイイなぁ……っじゃなくって! はいチョーク!」
先生からチョークを受け取った。名前を黒板に書けってことなのかな?
とりあえず名前を書く。
「う~~~ん!」
背伸びをしてできるだけ大きく書く。『佐伯 明』っと。
この体になって一番困るのが高い所に手が届かないことなんだよね。
この体になってあらためて体感するけど、黒板の上1/3に手が届かない……なんて不親切設計……。
チョークを先生に返して振り向く。
みんなの視線がいっぺんに来て怖い。
何人かは変な顔をしてる。もしかすると、男の子の時の名前と今の僕の名前、読み以外は変わってないから『もしかして……』って思ったのかも。見覚えのある顔だから……同じ中学出身で、下手すると元クラスメイトなんて人もいるかもしれない。
ボク、3年間イジメられてたからクラスメイトの顔どころか、名前さえ覚えてない。
相手の顔もまともに見ないで過ごした3年間……向こうはボクを知ってても、ボクは知らない。
なんだか本当に知らないところに来た気分で、まるで本当の転校生みたいだ……。
あ、いや本当に転校生だった。
でも、そんな中に見知った人が二人いた。
高坂さんと加賀見さんだった。
高坂さんが軽く手を振ってくれて、加賀見さんは軽くうなずいてくれた。
2人のお蔭でちょとだけ強張った体から力が抜けたような気がする。
震える左手を右手で押さえてなんとか踏みとどまる。
「あ…のっ! きょっう…から、お、お世話になります。さ、さえき……あ、かり……です。よ、よろしくおねぎゃいしましゅ」
超かみまくり……だった……。恥ずかしい……。今すぐ穴があったら入りたい!
どうしてボク……自己紹介さえまともにできないんだ。
「か……カワイイ……」
「なにアレ……なんか変な気分になりそう……」
「だから言ったでしょ? カワイかったって……」
コソコソと話し合うみんなの声がこっちまで漏れ聞こえてくる。
ボクが顔を上げるとみんな頬を緩めながらこっちを見てた。
「あ…の……」
困った……。どう反応したら良いのか困った。いったいボクは新しいクラスメイトになんて声かければいいの?
「あの……坂槻せんせー……ボク……」
助けを求めるために隣の先生を見上げると、頬を緩ませながらボクを食い入るようにじーっと見てた。……ちょっと怖い。
「……はっ!? いやーごめんごめん。そんな訳で佐伯ちゃんはちょっと内気な女の子みたいだから、みんなあんまりプッシュしないで仲良くやってくれよな!」
「「は~い!」」
「「イェスマム!」」
なぜに男子は軍隊式ですか……。
「んじゃー、佐伯ちゃん。席は窓際の一番後ろだから」
先生が指さす方には誰も座ってない席があった。一番最後の席なんだなって、納得。
いつまでも前に立ってるのも恥ずかしいから急いでその席に向かった。
「佐伯さんよろしくね」
「これからよろしく~」
席に急ぐ最中に声をかけてくれた女の子たち。さっき下駄箱であいさつしてくれた子たちだ。
また声をかけてくれた。うれしい。
「う…ん、よろしくおねがいします」
できるだけの笑顔で返事して席に着いた。
「それじゃあ、欠席者ゼロってことで、連絡事項だ! ゴールデンウィーク明けにある球技大会だが――」
坂槻先生の声がクラスに響く。
ボク、これからこのクラスでガンバるんだ。
新しい学校、新しいクラス……。
できれば友達……できると……いいなぁ……。
ボクはかなり濃ゆいクラスの中、新生活への大きな不安に混じってちょっぴり希望を胸に小さくガッツポーズをしたのだった。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
という訳で本格的な学園生活のスタートです。
色々と伏線ばら撒きながらのスタートでした。
もうこの時点で酷いクラスだと言う事が分かりますよね……。
気弱な明はこれからどうこのクラスに馴染んで行くのか……。
これからがんばれ!明ちゃん。




