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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第3幕 新しい生活への物怖じ
36/57

第30話 濃ゆそうなクラス!……という名の物怖じ

こんばんは。

今回はとうとう明ちゃんがクラスに向かうのです。

例の『あの人』の再登場でも有ります。

そんなお話をお送り致します。



「ふざけんな、教頭! あたしを天使(てんし)って呼ぶんじゃねえ!」


 そんな怒鳴(どな)り声にびっくりして姉さんの陰に……。


「こらこら、逃げるんじゃありません! 明の担任なんだから……」


 そう言って姉さんがボクの両肩をがっしり押さえた……。怖いのに……。

 ちょっと震えながら待ってたら、奥からノッシノッシと音がしそうな大きな動作でその人が現れた。

 色素(しきそ)うすいウェーブがかった長い髪をシュシュでふたくくりにしたカワイらしい人で、ビッチリスーツを着こなしてるんだけど、スウィートチャップス(という名前のキャンディー)を口に(くわ)えてる。

 どんな怖い先生が来ると思ってたら、ちっさくてカワイイ先生だった。

 あ、いや、ボクと比べると10センチくらい上なんだけど、それでも150センチくらいかな?

 他の人と比べてちっさいっていう意味で……ボクより小さいわけじゃない……。


(たの)んますから『アレ』! で呼ばんといてくれませんかね? 教頭先生」


 頭をガシガシかきながらそのカワイらしい先生が言う。なんか口調がオヤジ臭い……。とてもさっき『天使(てんし)』なんて呼ばれてたようには見え……るかな?

 目つきは鋭いけど見た目はけっこうカワイイ先生だし、性格(せいかく)さえ目をつむればカワイイって思えるかも? これなら名物教師って言われても不思議(ふしぎ)じゃないかも?


「んで~……佐伯副会長。転校生連れて来てくれたの~? ありがとうね~」


 ぺしぺし姉さんの肩をたたきはじめた。しかも……背伸びしながら……。

 なんだろう……その光景を見てボクの胸が()め付けられる……ていうか涙が出そう……。これが共感(きょうかん)だというの?

 はっ!? いやいや、まだボクには未来があるはず! 未来があるはずなんだよ!


「で、こっちのちっこいのが転校生かな? なんか小学生みたいだけど大丈夫か?」


 鋭いジト目でこっちを見てきた……ちょっと怖い。ていうかグッサリとボクが気にしてること言わないでほしい……ぐっすん。

 先生だって身長低くてスーツじゃなかったら中学生にしか見えないくせに……とは言えない。さっきの怒声(どせい)を聞いてると怖くてとてもじゃないけど言えない……。


「あうっ……さっ、佐伯明と言います~……よ、よろ、しくっお願いします」


 ボクがどもりながら自己紹介すると、先生が一瞬だけ驚いた顔をして、苦笑しながらボクの肩を軽くぽんぽんと叩いた。


「なぁに(かた)くなってるんだよ? フランクに行こう、フランクに」


「そ、そう……ですか?」


「仮にもこれからあんたの担任(たんにん)なんだよ? 変によそよそしいのは困る、うん」


 そう言って先生はボクにスウィートチャップスを1つくれた。


「味が気に入らないなら言っとくれ、他にも『いっぱい』あるから」


 先生が両腕を振ると、両手の指の間にずらりとスウィートチャップスが現れる。

 レモン、ソーダ、コーラ、オレンジ、グレープ、アップル、抹茶ミルク、コーヒーミルク、ピーチミルク、ダブルベリー、バニラチョコ、プリン、マンゴー、キャラメル、最後にメロンソーダ。(まさ)にオールコンプリート! ちなみにメロンソーダは業務用パッケージにしか入ってないレアモノなのですよ。

 なになに? 手品なの? ていうかこんなにどこに入れてたの?

 ボクが先生の手を不思議(ふしぎ)そうに見ると、素早(すばや)く手をひるがえしたとたんに手からスウィートチャップスが全部消えた……。不思議(ふしぎ)だなぁ……。

 あ、もらったこれ、チェリー味だ。春限定の味でボクも大好き。


「ありがとー先生、ボクチェリー大好きです」


 これは良い物をもらっちゃった。後でおいしくいただこう! 嬉しいなぁ。


「おおう、この子、笑うとすごいカワイイなぁ。まるでウサギのようにカワイイじゃないか! 佐伯副会長。これ、あたしにくれ!」


 そう言いながらボクにぎゅーっと先生が抱き付いた。


「ダメですよ。明は私のカワイイ妹なんです!」


 あわてて姉さんもボクを引っぱり返した。


「ちぇーケッチぃなぁ……。ああ、自己紹介忘れてたね。あたしは佐伯明ちゃんの担任の坂槻(さかつき)だよ、よろしくな!」


 そう言ってぺしぺしボクの肩をたたいた。気さくで良い先生なのかも?


「坂槻先生、これからよろしくお願いします~」


「うんうん、じゃあそろそろ予鈴(よれい)が鳴るからクラスへ一緒に行こうか? 佐伯副会長もありがとね!」


「いえ、坂槻先生、妹をよろしくお願いします」


 姉さんが先生に頭を下げて出て行った。


「じゃあ、名簿(めいぼ)とか持って来るから待ってて!」


 そう言って先生は足早(あしばや)にデスクにかけて行く。

 あれ? そう言えば坂槻先生の下の名前ってなんだったんだろ? 姉さんに後で教えてもらうこともできるしまあいっか。

 そんなことを考えてたら、先生が戻ってきた。


「さあ行こうか」


「はい」


 教室に向かって先生と並んで歩く。一応姉さんから大体の教室の場所を聞いてる。

 もう予鈴(よれい)が鳴った後で、さすが進学を目指す普通科の校舎。もう廊下には生徒が誰もいない。


「それにしても、明ちゃんも大変だなぁ? こんな時期に転校で……。ああ、知ってると思うけどな、あたしはあんたの『仕事』の先輩だ。大体、あんたらの担任はみんな先輩がなるのが基本だって覚えておくと良い。みんなソッチの(なや)みには相談にのれるから遠慮(えんりょ)するなよな」


「はい、ありがとうございます」


「まだなんか(かた)い気がするなぁ……。まあそのうち(やわ)らかくなるか~」


「すみません、ボク……人見知りで……」


「そっか、うちのクラスは()ゆいキャラばっかりだからガンバりなよ~」


 からから笑って先生はそう言った。

 どうしよう、()ゆそうなクラスとかボク、馴染(なじ)めるかなぁ……心配だなぁ……。


 先生と会話をしながら歩いてるとすぐに1年C組が見える。なんだか、中がガヤガヤ(うるさ)い。


「なんだか、(うるさ)いな……。おおかた明ちゃんが転校してくるってんで(さわ)いでるんだろうけどな」


「そんなことないですよ~……」


「そう? 編入(へんにゅう)試験代わりに受けてもらった実力テストで5教科487点取った時期外れの転校生って(うわさ)になってるんだけどな~?」


 ……はい?


「えーっと……今なんて言いました?」


「時期外れの転校生?」


「その前」


「ああ、実力テストで5教科487点?」


「そう! それ! ウソですよね~?」


「ウソ? あたし担任だよ? どうしてウソなんか……」


「だってボクそんな頭良くないですよ?」


 編入(へんにゅう)試験受けた時は確かに頭がすっきりするなぁって思ってたよ? 後、テスト問題カンタンだなぁ、変だなぁって思ってたよ? でもまさかボクの頭が良くなってたなんて……そんなことあるの?


「たまたま調子良かったんじゃないのー? 結果が結果なんだし細かいこと気にしな~い。それじゃあ先に入るから呼んだら入ってね~」


 坂槻先生が手をひらひらさせて教室に入って行く。


「てめーらうっせぇぞ! 黙りやがれ! そこ! 小声であたしを『天使(てんし)』ちゃんなんて呼ぶんじゃねえ!」


 すっごい罵声(ばせい)の後にスコーン! というなにか軽い物がぶつかる小気味(こきみ)良い音が響いた……。

 これが……進学クラスのショートホームルーム……?


「じゃあ出席取るぞー?」


 先生が順番に出欠(しゅっけつ)を取って行く……。あれ? なんか聞き覚えがある名前が呼ばれたような……。気のせい?

 それにしても出欠(しゅっけつ)を取る間もなんだかヒソヒソ声が続いてる。うん、とても進学校って感じがしない気がする……。

 それにしてもさっき気になった名前……なんだっけ? う~ん……。


「それじゃあ、ひとり欠席っぽいが転校生を紹介するよ!」


 坂槻先生がそう言うと教室からキャーって声とかワーって声が響いて来る……。

 もしかしてすっごく期待されてる?


「入ってこーい!」


 先生がそう言ったので(おそ)(おそ)る教室をのぞきこむ。

 ボクがのぞいた瞬間(しゅんかん)にシーンってなった……。


「え……っと、なに? どうしてこんなシーンって……」


 これ、入って行って良いのかな?

 一歩はいって教室を見渡(みわた)すとみんなポカーンってしてる。ボクってそんな風に見られることしたかな?

 教室の入り口で立ってると外からドタドタ誰かが走って来る音がした。


「すみませ~ん! 遅刻(ちこく)しましたー! って……」


「ええっ!?」


 ふり向いた瞬間(しゅんかん)にドカーンって誰かがぶつかって来た。ドカーンって。


「ふぁ!? きゃあ!?」


「わぁっ!?」


 ぶつかって来た誰かともつれあって倒れた。

 誰かがボクの上に倒れ込んでた……ていうか……。


「ちょっ……やだ……」


 ボクの……その……胸に顔を押し付けてた……。なんでこんな体勢なの!?


「なにこれ……(やわ)らかい?」


 そのままボクの胸を誰かの手がはい回る……。


「ひぅっ!?」


 そいつがやっと顔を起こした時、さっきの気になった名前が誰だか分かった。

 『厳島 拓海(いつくしま たくみ)』、ボクの親友だった。


「いやーすまんすまん、大丈夫か……」


 ボクと拓海の目が合う……とすぐに恥ずかしさでプルプル(ふる)えるボクの両肩をつかんで息を吸った。

 おどろきに見開かれた目をした彼の口から出た言葉は……思いがけないくらいボクには意味が理解できない言葉だった……。


「……俺と結婚してくれ!」


 ―― バッチーン!


 教室に大きな破裂音(はれつおん)が響く。

 ボクは恥ずかしさに耐え切れずに、左手で胸を隠した状態で拓海の頬を右手ではたき(たお)してた。





                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



という訳で『濃ゆそうなクラス!』の回でした。

明がクラスに入る前から酷い事になってました。

それにしても酷い展開ですね……。

狙ったように駆け込んで来るアホは凄いですね。

いやこうゆーシーンは実際目の前で起きたの目撃したことあるのですがね……。


でもやっぱりラッキースケベって許されない事ですよね……(遠い目)

と言う訳で酷い再登場をした拓海君でした(てへぺろ☆

これはヒドイ!本当にヒドイ!次回くらいにクラスメイトに吊し上げられても文句は言えませんよね(ぇー)


それにしても最近やっとコメディーしてきた気がします。

良い感じなのですかね?

やっぱ学園生活ってコメディー書きやすくて良いですねぇ……。

まあ、王道ですけど(汗)

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