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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第2幕 変化への途惑い
30/57

第27話 魔法少女なのに戦隊モノ!……という名の達観

 お疲れ様です。

 前回の予告通り、今回で第2幕の終了です。

 文字数がふくらんでいつもより多くなってしまいましたが、これが第2幕の終了という事でちょっとしたオマケ程度という扱いでお願いします。

 という訳で第2幕の〆のお話をおおくりいたします。

(2012/11/27 体裁統一のためのチェック)



 今僕の手の上に2枚のカードが乗ってる。



-----------------------------------------------------------


  名前 佐伯 明(さえき あかり)   生年月日20XX年06月12日

  住所 XX県高根市XXXXXXXXXXXX

  所属 高根市役所魔法少女担当課

  交付年月日 20XX年04月21日


    証明    登録番号 XX17000489

    写真    属性 闇 (未確定)

          等級 6


  契約主 エルカ・フィーリルライト

  魔法少女監督省 高根市役所魔法少女担当課


-----------------------------------------------------------



-----------------------------------------------------------


  名前 佐伯 明(さえき あかり)   生年月日20XX年06月12日

  住所 XX県高根市XXXXXXXXXXXX

  所属 高根市役所魔法少女担当課

  交付年月日 20XX年04月21日


    証明    登録番号 XX17000490

    写真    属性 闇 (未確定)

          等級 6


  契約主 ジェイク・グリフォード

  魔法少女監督省 高根市役所魔法少女担当課


-----------------------------------------------------------



 魔法少女ライセンスと呼ばれるソレを見ると、父さんや母さんが持ってる運転免許証みたいな感じ。

 名前、生年月日、住所は基本として、所属の欄には高根市役所魔法少女担当課と記載されている。

 交付年月日は今日で、属性は闇(未確定)で契約主はそれぞれジェイクさんと妖精さんの名前。

 写真は魔法少女のコスチュームで可愛く笑っている自分……が写っている……。ああ、頬が痛い……。

 証明写真とはいえ、魔法少女だから仏頂面(ぶっちょうづら)はダメってなんどもNGを出される始末。本当に疲れた。

 因みに写真を撮ったのは市役所御用達(ごようたし)の写真屋さんだ。遅めのお昼ご飯をみんなで食べた後に行ってきた。

 その後作成を頼んでもらって、今魔法少女担当課にできたのが届いたんだ。


「ねえ母さん、この等級ってなに?」


「ああ、これはランクよ? 魔法少女として実績を積むとランクアップしていくのよ~。ゲームで言う所のレベルね~」


「ふ~ん……等級の数字が6になってるけど6が一番始め?」


「本来は7から始めて順番に数字が小さくなって行くんだけど、(あかり)ちゃんはもう実戦を2回経験しているから6からスタートね。因みに4になるまでは見習い扱いよ?」


「見習い?」


「しばらくは監督役の役員が同行して集団行動といったところかしら?」


 すると、妖精さんが僕の肩まで飛んできた。もう始末書の修正は終わったらしい。


「担当はあたし、エルカ・フィーリルライトが受け持つですのん。よろしくね! 明ちゃん」


「え~……」


 すっごい不安……。


「なんかその反応がすっごいムカつくですが……まあ良いです。エルカって呼んでください」


「うん、エルカさんよろしく~……」


「で、続けるわね。契約主の項目を見てもらえば分かると思うけど、それぞれジェイクとエルカの名前が入ってると思う。明ちゃんは契約者が2人いるからライセンスは2枚あるの。ランクは連動しているから安心してね? それぞれ上げないといけないって訳じゃないから」


「うん」


「あと、このライセンスは出動時の交通機関の人に見せれば交通費はタダになるから忘れないようにね?」


「交通費タダなの?」


厳密(げんみつ)には交通費の請求書が市役所に届くようになってるの」


「へ~……便利だねぇ」


 僕はライセンスカードを改めて見つめる……と、属性のところの『闇 (未確定)』に目が行った。


「なにこの未確定って」


「ああ、なんか属性が不安定みたいで確定できないらしいのよね~。私の魔力の影響なのかしら?」


 未確定ってことはそれっぽいってことで良いんだよね? どうしてなんだろう……。

 う~ん……考えても分かる訳ないか~。


「それよりも明ちゃん」


「なぁに? 母さん」


 急に母さんが真面目な顔をした。


「ライセンスも発行されたことだし、魔法少女として大切なことがあるのよね~」


 大切なこと? なんだろう、大切なことって。


「それってそんなに重要なの?」


「そうよ~?」


「いったいなに?」


「それは――」



□◇□◇□◇□◇□◇――…



 あれから1時間近く、僕は非常に困ったことになっていた……。


「ほらもっとカワイく笑って! もっと腰をひねって!」


 えー……なんと言いますか、特訓中です……。

 なんの特訓だって? ……決めポーズだそうです(ぼそり)


「そもそもなんでこんなの特訓しなくちゃいけないの!?」


 手に持った杖を地面に投げつけた。


「意味わかんないよ! 『リムーブドレス』!」


 黒い光が腕輪から出て僕は変身を解いた。やっぱパンツスタイルの方が楽だ。スースーしないし、はずかしく無いし。


「なんで変身解いちゃうの!?」


「だって腰ひねるのは良いけどガーターベルトが食い込んで痛いの! もうイヤだ! こんなの止める!」


 僕だって怒る時は怒るんだからね!


「そもそもこれって自分でカスタマイズできるって言ったよね!?」


「え……まあ……そう言ったかなぁ? なんて……」


「教えて!」


「え~……」


「良・い・か・ら・教えろ!」


 そうじゃないと僕はボイコットするんだからね!


「そもそもぱんつもぱんつなの! なにアレ! 水色と白のシマシマでフリルとリボンなのは良いけど! あれ? 良くないけど!? クマさんのバックプリントとか意味が分からないよ!」


 もうなんて言うかくやしいの! なんだか地団駄(じだんだ)踏みたくなるくらい僕は怒ってるんだからね!


「光、(あかり)くんの言っていることは正しいと思う。いいかげん教えてやりなさい」


「え~……残念。せっかく会心のデキだったのに~……」


 まだ言うか!

 僕は思いっきり冷たい目でにらんでやったらやっと母さんも(あきら)めがついたみたいだ。


「しかたないわねぇ……じゃあ教え――」


 母さんが口を開いた時、部屋のドアが開いて元気な声が聞こえた。


「課長! エルカ! こんにちは!」


 元気良くあいさつをして入って来たのはフェアリーレッドさんだった。


「おっと、光さんもこんにちは!」


「ちゃ~っす」


「こんにちは……」


「ども~」


 次々と入って来た少女達はみんな見覚えがある。一昨日の魔法少女たちだ。


「ああ、来たか」


 ジェイクさんが机の上に立ち上がった。


「みんな来たことだし、今から1つ報告をしよう!」


 ジェイクさんの声にみんなが注目する。


「今日からキミたちの仲間になる佐伯明だ。仲良くしてやってくれ」


 4人が一斉に僕を見た。


「あの~……今日から魔法少女をやります佐伯明です。よろしく願いします」


『…………』


 4人が沈黙したまま僕を見ていた。


「あの~……」


「ああ!」


 レッドさんが大きな声を上げて立ち上がった。


「ひゃい!?」


 いきなり大声出さないで欲しい。ちょっとびっくりしたじゃないか……。


「その声は一昨日の元少年だね! カワイくなりすぎてて気付かなかったわ」


 レッドさんのその声でみんなハトが豆鉄砲(まめでっぽう)をくらったような反応をした。


「あ~……この子が~」


「気付きませんでした……」


「むっちゃかわええやん。こりゃ分からへんわ」


 いやまぁそうだよね。前会った時は髪の毛伸び放題だったし、しかたないよね。でもカワイイとか言われるのは内心フクザツ。


「でもこれでそろったね!」


「そうやなぁ、念願やもんな」


 一体なにがそろったんだろう? 話的にメンバー? でもそろったってのがちょっと良く分からないなぁ……。


「みんな良かったですのん。これからガンバって下さいですのん」


 妖精さんもうれしそうだ。


「で、メンバーってなんのメンバー?」


 僕が聞くとレッドさんがうれしそうに目を輝かせて言い切った。


「戦隊よ!」


「そうなんだ~。戦隊か~……って……はい?」


 今の聞きまちがい……じゃないんだよね?


「あ~……諦めた方が良いと思う。りぃだぁって戦隊オタクなんだよね~……」


 半眼になってやれやれと首を振る緑の人。


「良し! 今からキミは……属性なんだっけ?」


「え~っと……『闇』らしいです」


「そう! じゃあキミは今からフェアリーブラックよ!」


 びしーっと指をさされた……。任命されちゃったよ……僕が戦隊隊員とか意味が分かんないよ……。


「小さくてカワイイしメンバーのマスコットの位置付け決定ね!」


 小さくてカワイイは余計だよ!


「ねえ、なんとかしてくれません?」


 クールダウンよろしく、冷静にこっちを見ている青い人にたずねると、

「あら……青春は一回しかおとずれないの……貴重よ? バカができるのは……」

ニヒルに眼鏡を掛け直した瞬間逆光で表情が見えない……。なんだかちょっぴり怖い……。


「まあ、なんや。新しい仲間っちゅーことでひとまずよろしくや」


「痛いっ」


 黄色の人がバシンと僕の背中を叩いた。


「ウチは稲葉 刹那(いなば せつな)、フェアリーイエローや。よろしくや」


「よ、よろしくお願いします」


「あたしは風間 舞(かざま まい)適度によろしく~……」


 ダルそうに右手を上げたのは緑の人。


「よ、よろしくね」


 思わず苦笑いで握手してしまった。

 で、眼鏡の奥からじと~っとした目で見てくる青い人。


「……加賀見 水穂(かがみ みずほ)……ブルー……よろしく……」


「う……うん……」


 やっぱり怖いよ~……僕この子苦手になりそう……。


「そして私が高坂 焔(こうさか ほむら)! 妖精戦隊マジカルフェアリーのリーダー、レッドよ! よろしく!」


 ぱぁって光り輝きそうな見事な明るい笑顔で僕の右腕を取って握手をするとブンブン振った。正直痛い……。


「なんか一昨日と性格違うのは気のせい?」


「いんや~……りぃだぁはなり切りしやすい性格なんだよ~……それがデフォだよデフォ」


 そうなんだ~……。


「よ~し! みんなで妖精戦隊マジカルフェアリーがんばろ~!」


「お~……」


「……適度に」


「がんばるで~!」


「あの……僕帰って良いですか?」


「なんでやねん!」


 鋭いツッコミが僕の背中をバシーンって。


「だって~……この年で戦隊モノはないでしょ? 戦隊モノは……」


「……今なんて言った?」


 高坂さんの顔がひきつってます……。正直ムチャクチャ怖いです……。


「ひぃ!? ごめんなさいっ!」


 僕が反射的に謝ったところでジェイクさんの机の電話が鳴った。電話を器用に取ったジェイクさんが、話し始めた。なんか目が鋭く細くなってる。なにかイヤーな予感がしてきた……。


「みんな出動だ! 商店街に『ナニカ』が現れた!」


「よっしゃ~! 初出動や!」


 勢い良く立ち上がると稲葉さんがパァンっと手を打ち付けた。


「みんな! ガンバって行こう!」


 高坂さんの表情がキリッってしてます……。変わり身早いなぁ……。


「え~……めんどうくさい~……」


 と言ったのは風間さん。やっぱりいつもダルそうなのかな? 僕も便乗したい……。 


「僕も行きたくない~……」


「ほら……行くよ……?」


 眼鏡の奥から冷たい視線で射抜くように見るのは加賀見さん。


「それじゃあ、車で送るわね?」


 車のキーをひとさし指で回しながら立ち上がる母さん。


「それじゃあガンバるですのん」


 妖精さんが飛び上がって、ジェイクさんは机の上から手を振ってます。


「ほらほら初出勤ガンバりましょ~?」


 どうしてみんなやる気満々なんだよ……。


「イヤだ! やっぱり僕行きたくないよぉ!」


 ジタバタもがくもがっしりと母さんと高坂さんに肩をつかまれて僕は連行されるのであった……。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



 高根市役所って書かれた軽のバンから降りる5人と1匹(?)。


「行くよ! みんな!」


 先頭で降りた高坂さんが鋭く掛け声を上げます。


「はい!」


「りょ~かい~」


「任せとき!」


「…………」


 みんな合いの手を上げるけど、僕は上げなかった。だって車内での打ち合わせでもう胸焼(むなや)けすんぜんなんだもん。

 正直もう合わせる元気も有りません……。


『マジカルドレスチェンジ!』


「まじかるどれすちぇんじ……」(ぼそ)


 かざした銀色の腕輪が光り輝き、光が治まると全員色取り取りのカラフルコスチュームに変わります。

 真ん中はリーダーの高坂さん。活発な笑顔で武器の大剣を片手でぶんぶん回して正眼(せいがん)に構えます。

 右隣は風間さん。すまし顔で武器の大弓を肩に担いで斜に構えています。

 左隣は加賀見さん。知的クールな表情で本を読んでいます。これって武器なの? こんな非常時に本を読むとかムチャクチャ余裕なんだなぁ……。

 あ、因みに変身すると眼鏡かけなくて良いんだね。魔法ってこうゆうのにも使えるんだ。

 右端は稲葉さん。両手に輝くガントレットで『撲殺もOKだよ?』って元気に気合いの入ったポーズを取ってます。

 最後は左端……。

 もう分かりますよね? 僕ですよ! カンベンしてください! なにが(かな)しくてこの年になってこんなこと! ……ぐっすん。

 破れかぶれに特訓通り腰を使って半回転、杖を上げようとした時だった。


「わぁ~! シマシマのクマさんぱんつだぁ!」


 近くのお店の中へ避難しようとしていた親子の、男の子の方が叫ぶと共に周りの人たちが一斉に僕を見た。


「ふぁっ!?」


 反射的に見るとスカートが必要以上にひるがえってた。ゼッタイ中見られたよ……。

 なんでこっち見るんだよ! コッチミンナ。必死になって周りをにらみ返した。

 みんなそしらぬ顔を装ってるけどチラチラこっち見てるから丸分かりなんだからね!

 なんでこんなことになるんだよぉ……コッチミンナ。オマエラガワルインダゾ?(黒いオーラ)

 イジイジと僕は杖の先端で地面に『の』の字を書きはじめた……。


「5人そろって」


 高坂さんが音頭を取ります。


『魔法少女戦隊マジカルフェアリー! 今、華麗(かれい)に参上!』


 キャッチフレーズとともに魔法の五光が後ろからハデに……ってこれハデ過ぎだよ!

 エルカさんの魔法だそうで、魔力の消耗(しょうもう)はそんなにないお飾りなんだとか……。正直こんな特殊効果要らないよ。

 僕は沈む気分を理由にキャッチフレーズを口にすることを忘れて一言つぶやいた。


「どうしてこうなった……」


「西暦20XX年、世界に異世界からの侵略者とそれに対抗して生まれる魔法少女が認知されて四半世紀。ご当地アイドルみたいな魔法少女が活躍する世界に新たなる魔法少女戦隊が降臨(こうりん)した。その名は『魔法少女戦隊マジカルフェアリー』! がんばれ僕らのマジカルフェアリー!」


「変なナレーション止めてよね!」


 拡声器でしゃべる母さんに僕は文句を言った。




 こうして1人の不幸な魔法少女の物語、今始まりま……した?




                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



と言う訳で『魔法少女なのに戦隊モノ!』の回でした。

という訳で開幕に繋がりました。

プロット通りにここまで完了したわけですが、結構ヒドイ内容だったと反省しています。

それでもここまで続けられたのはひとえに読者の皆さま(特に感想板の存在)のお力かと……。

皆さまお疲れ様でした。

第3幕、明ちゃんが転校する所から始まります。

後、9月は銃騎士物語を重点に更新する予定です。

ばっくわ~どまじっくは少し更新頻度が下がります。

よろしくお願いします。


それでは!

今回から始まった『魔法少女戦隊マジカルフェアリー』を今後ともよろしくお願いします(笑)


(2012/05/31追記)

番外編を書く気になったのでアンケートを取ろうと思います。

候補は以下の6つです。投票権は一人2票という事で気になる人は投票してみて下さい。

不正投票が無いように受け付けは活動報告の方でよろしくお願いします。(※現在は締め切っています)

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/

view/userid/88042/blogkey/534027/


1.佐伯 智樹(うちの兄が可愛い!……という名の困惑)

2.佐伯 千夏(カワイイ妹のために!……という名の暗躍)

3.佐伯 光 (わが子が心配!……という名の内心)

4.エルカ  (始末書に追われる!……という名の現実)

5.ジェイク (気苦労が絶えない!……という名の災難)

6.佐伯 礼二(最近家族が暖かい!……という名の幸福)

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