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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第1幕 始まりの不幸
3/57

第1話 僕はチキンな高校生!……という名の不幸

連続して第1話をお贈りします。

(2012/10/27 体裁統一のためのチェック)



 僕の名前は佐伯(さえき)(あきら)。今年高校1年生になったばっかり。

 身長低い、女顔、気弱でイジメられ~の典型的内気少年だ。

 どうしてそんなことが分かるかって?

 だって入学1週間でもうイジメられてるんだ……。

 別に好きでイジメられてるわけじゃない。

 これにもちゃんとした理由は無い。たまたま気が弱そうだからって目を付けられたのがきっかけ。

 本当は中学校で終わってたはずだったのに……。


 僕は中学校の頃イジメられていた。1年から3年までずっと!

 理由はなんだっけ? そうそう、クラスの男子から『お前がカブトムシ()ったんだろう!?』だ。

 ある日、クラスの虫かごからカブトムシがいなくなっていた。

 前日エサやり当番が虫かごのフタを閉め忘れたのが原因。

 けっきょく教室のそこらかしこからカブトムシが発見されたものの、

「お前がそんなインケンな性格だから悪いんだ!」

って言いがかりでクラス全員満場一致(まんじょういっち)のイジメられる対象となってしまったのだった。

 ちなみに先生は見ない振り。しょせん先生もサラリーマン。面倒事にはフタをしたい。

 けっきょく文句もなにも言えないチキンな僕は3年間()えるしかなかった。


 そして中学を卒業して新たな学園生活! 高校生! 中学とはオサラバ! 新生活カモーン! とはしゃいでいた時期がありました。

 フタを開けたらワーオ、中学校のイジメ主犯格(しゅはんかく)が同じクラスでしたよ……がっでむ!

 結局、メンバーは変われども主犯格(しゅはんかく)がいるわけで、クラスは先導(せんどう)されてまたイジメられる日々が再び到来(とうらい)


 そんな波乱万丈(はらんばんじょう)のスタートに疲れていた僕だったのだ。


 今日は土曜日、週の最後で午前で授業も終わり。

 逃げ帰るように家に帰ってきた。

 どうして逃げ帰るように帰って来たかって? それは呼び出し状が机の中に入っていたからだ。

 正直まさか呼び出し状まで来るとは思ってなかった。どうせいつか痛い目を見るなら今は逃げた方がマシ。負け犬根性(こんじょう)万歳(ばんざい)な行動だった。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



 家に着いて一息つくとちょうど姉の千夏(ちなつ)玄関(げんかん)右正面の階段から降りてくるところだった。


 「あら? 明、おかえり。ちょうど良かった」


 僕はイヤな予感(よかん)がして視線(しせん)()らす。

 姉さんが『丁度良かった』という言葉を使う時は大抵(たいてい)僕に命令をする時だ。理不尽(りふじん)(きわ)まりない。

 そう、僕は家族の中でも最底辺(さいていへん)なのだ。家族構成は5人。父と母、この姉に弟と僕で5人。

 父は厳格(げんかく)、母は(ほが)らかだけど(しつけ)には(きび)しい。姉は唯我独尊(ゆいがどくそん)(※注、本当はそんな意味ではありません)、弟は強かで立ち回りが良いさわやかスポーツ少年。

 それに比べて僕はイジメられ体質でネクラ、これといった容姿でもなく、学校でも中位をキープする平凡(へいぼん)野郎。極めて平凡(へいぼん)過ぎて最底辺(さいていへん)なんだ。

 そんな僕に声をかけてきた姉さん。まちがいなくなにか命令されるに決まってる。


「お腹すいたからあんたお昼ご飯作りなさいよ」


 やっぱり命令された。

 わが家では土曜のお昼は各自(かくじ)でとることになっている。母さんが茶道(さどう)の先生(?)をしていて土曜日は家を空けているからだ。

 とうぜん『各自(かくじ)』なので自分で用意するべきなんだけど、姉さんは全部僕に押し付ける。

 だからいつまでたっても料理できないんだよ!……と(さけ)んでみたいけれどできない。しょせん僕はチキンだよ。涙をのんで従うしかないのさ。


「わかったよ。ちょっと待ってなよ」


 僕はしぶしぶうなずいて2階の自分の部屋に(かばん)と制服の上着である深緑のブレザーを放り投げてキッチンに向かう。

 手早く自分の臙脂(えんじ)色のエプロンを掛けて調理に入った。

 冷蔵庫と冷凍庫、脇の野菜が入った段ボールに目を通す。

 冷や(めし)、卵、玉ねぎにニンジンを発見する。チャーハンで良いか?とプランを立て、ため息と共にまな板の上に食材を並べていく。


「んじゃーお昼ご飯できたら呼んでね!」


 と姉の声が背後から聞こえる。

 のん気なものだと愚痴(ぐち)ってまずは材料を洗っていく、ニンジン、玉ねぎ。ああ、ピーマンを忘れてた。姉さんはピーマンがキライだ。腹いせに入れてやろう。

 ニンジン、ピーマン、玉ねぎと微塵(みじん)切りにして行く。オーソドックスで良いよね?

 あ、肉類は入れない。だって(あぶら)っこいの苦手だからね。

 卵はできれば半熟(はんじゅく)が良いんだけどそこまで()るとめんどくさいので止めておく。

 調理時間15分弱。われながら手際(てぎわ)が良い……。

 ちなみに料理は小学校4年からしている。

 今しているエプロンは小学校4年の時に『姉さん』が僕の誕生日プレゼントに(おく)ってくれたものだ。

 今じゃあ僕の伸長も160cmを()えてかなり短く感じるけど、『姉さんの為』に買い()えるのもイヤだから使い続けてる。


「姉さん、できたよ?」


 お皿に盛りつけて食卓に並べながら言うと、リビングのソファーにダラダラと寝ころんだ姉さんがこっちに振り向く。いいかげん(つつし)み持ってよ。

 姉さんが食卓に着いて食べ始める。手を合わせるどころか感謝さえしない。これが姉さんのクオリティ……唯我独尊(※注:意味を誤解しています)はダテじゃない。

 と、考えた瞬間(しゅんかん)、姉さんが僕をジロリとにらんだ。


「あんたさぁ、いいかげん私がピーマン嫌いだってことをさ。理解してくれないのかなぁ?」


 かなり殺気立ってるご様子で、目が座ってる。ガツンと食器に当たったスプーンで首をはねられそうだ。

 うん、正直めっちゃ怖い。目で射殺(いころ)すってのはこういう時に使われる言葉だよね。


「い、いい歳なんだから、ピ、ピーマンくらい食べたら……どうかな?」


「なにそれ……? どうゆーこと?」


「イエナンデモアリマセン」


 ささやかな抵抗(ていこう)はあっさり失敗。それどころか僕を窮地(きゅうち)に追い込んだようです。


「つ、次は気を付けるよ。次は……」


(そう次だけはね……)


「明? 言葉がまちがっているわ? 次『から』はでしょ? 次『から』は」


 『から』を異常(いじょう)に強調する姉さん。ゼッタイ僕の意図(いと)を理解してるよこの人、おっかない……。


「つ、次からは気をつけます……」


 ここまで(おど)されたら逆らう気さえ起きやしない。素直にうなずく僕はことごとくチキンだった。


「で、あんた、そろそろ高校生活慣れた?」


「……いや……」


「でしょうね」


 世間話ていどで聞いてきたのか意図(いと)は分からないけど、あっさり引き下がられる辺り、姉さんも僕がまたイジメのターゲットになったことを予測してるんだろう。

 一瞬で無言の食事になって数分。姉さんが完食して席を立つ。どうやらこれから勉強らしい。


「それじゃ、後よろしく~」


 ひと言言って去って行く。

 僕は自分の分を食べて2人分の食器類を洗った。



□◇□◇□◇□◇□◇――…



 食後の僕はフリーダム。

 リビングの()え置きゲーム機の『Dreemドリーム Playerプレイヤー 3』を起動させる。『Anthonyアンソニー』というメーカー製でそこはかとなく普及(ふきゅう)しているゲーム機。

 ちなみにマスコットキャラクターはサル。『アンソニー』と『セガール』という二匹のサルのどつき漫才(まんざい)が記憶に色濃(いろこ)く残ってる。どうしてやめちゃったんだろうなぁ? あの猿漫才(さるまんざい)……。

 最近はまり中の『Dragonドラゴン Hunterハンター』をゲーム機に入れて起動する。

 今日はゼッタイ素材(そざい)出してやるんだ。そう息巻(いきま)いて(こぶし)をにぎりしめる。


「待ってろ! 『飛竜玉(ひりゅうぎょく)』!」


 僕は興奮気味にコントローラーをにぎりしめて(さけ)んだ。


「明! うるさい!」


 2階から響いてきた姉さんの声にビクリと肩を震わせて、静かに始めた僕はやっぱりチキンだった。





                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



また前振り長いんじゃねぇの?って思った人!ごめんなさい微妙に今回も本番まで長いです(ぇー)

本番が第4話からの予定です。

いやこれは別の作品よりも前振りは短くしようと努力したんですよ!?

いえ努力不足だよ!ってツッコまれればそれまでなんですけどね……。

ついつい下地を作り込み過ぎちゃうんですよね……悪い癖だなぁ……。

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