第26話 知らない間に変わってる!……という名の途惑い
お久しぶりです。
実家から帰って来て色々とダラダラしてたらこんな真が空いてしまいました。
とりあえず新しいお話をおおくりいたします。
(2012/11/27 体裁統一のためのチェック)
「わ~気持ちいいなぁ……」
と、思わず口に出ちゃうくらいに気持ちいい。
今ジェイクさんの背中に乗って空を飛んでいます。
いやージェイクさんって実は普段ネコの姿してるんだけど、それは仮の姿で、本当の姿は本物のグリフォンなのでした。
さっき思いっきり蹴飛ばしちゃってごめんね、ジェイクさん……。
…………
………
……
…
□◇□◇□◇□◇□◇――…
「――という夢を見てました……ゴメンナサイ」
「そこまで期待されても私にはなにもできんぞ?」
ジェイクさんがため息をついた。
今僕が平謝りをしてるのはグリフォンの姿に戻ったジェイクさんです。
「そもそも背中に乗って飛ぶなんて非常識にもほどがある! 背中なんかに乗られたらツバサが動かせないから空なんぞ飛べるわけがない!」
「えー……背中に乗って飛べないの~?」
「あたりまえだ! まったく……ケガが治ったと思ったらヨダレと歯形とは……」
ごめんなさい。ツバサにヨダレと歯形がついているのは僕のせいです。
ジェイクさんは思いっきり蹴っ飛ばしちゃってろっ骨を折る大ケガをしてしまったのでした。
そしてケガのせいで仮であるネコの姿を維持できずに元のグリフォンの姿に戻ってしまったとかで……。
初めは驚いたけど、カッコ良かった。ってそうじゃなくて!
で、治療をするには大量の魔力が必要だとかで、僕の魔力を直接ジェイクさんがくみ上げて(?)治療に専念していたんだけど、大量の魔力消費のせいで僕はいつの間にか寝てたらしい……。
で、夢を見ながらジェイクさんをヨダレまみれにした上でかみ付いてしまったんだ。
「やっぱり雲は雲でわたがしに見えてもわたがしじゃないんだなぁ……」
「私のツバサをわたがしと間違えてかじったのか……」
「え!? あ……その、ごめんなさい!」
素直に謝るとジェイクさんも深くは怒ってなかったようで「まあ良い」と許してくれた。
「あれ? そういえば母さんは……? って、なにこれ!?」
僕はあわてて部屋の姿見に駆け寄った。
「いつの間に……」
ジェイクさんに魔力供給をするために2Pカラーの方に変身してたんだけど。眠ってる間に僕の姿はすっかり変わっていた……。
薄いピンク色のフリルで飾られた真っ赤なワンピースドレスは少し裾が短くなってひざが見えるくらいになって、腰には大きなリボン。このリボンって下手すると地面に着きそうなんだけど……。
腕にはピンクのリボンをいっぱい巻きつけて、首には大きなリボンタイにグリフォンが彫り込まれたカメオ。多分これジェイクさんなんだろうなぁ……。
それにしてもこのスカートの下のすーすーする感覚が酷すぎる……これがパニエってものなのかな?
今僕の上半身はワンピースドレスの下にパニエってなってる。正直下はパンツ一枚っぽい感覚がなんとも落ち着かなくて恥ずかしい……。そんなに大きな開きになってないのが救いかも……。
あ、後は、足が黒と赤のストライプのニーハイに白のガーターですよ……。
母さんフリフリがそんなに好きなのかなぁ……? 見るだけならキレイだなぁって思えるけど自分が着てるとなると恥ずかしいのと女装気分でちょっとキツい気がする……。
もう姿に関しては諦めて僕は床に横たわるジェイクさんの隣に座った。
それにしてもジェイクさんの背中はあったかい、僕好みにモフモフはしてはいないけど毛並みがサラサラでなでるだけで気持ち良いんだよね……うぐぅ……また眠くなってきちゃった……。
「くぁ~……ねむい~……」
まだ頭がくらくらする。魔力枯渇なのかな? これ。
とりあえず、もうちょっとジェイクさんの背中をまくらにさせてもらって寝よう!うん、そうしよう……。
「まったくしかたない……」
ジェイクさんがため息交じりで僕に背中を貸してくれた。
「どーでも良いけど! そろそろこの書類にチェック入れてくださいよぉ!」
妖精さんの涙交じりの声が聞こえたような気がしたけど……眠いからいっか……。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
「ちょっと3人とも! どうして寝てるのよ!?」
「んぇ?」
大きな声に起こされて顔を上げると母さんが怒った顔で覗き込んでた。
「んゅ? 母さんどうしたの?」
「どうしたじゃないわよ~……まったく~……。私一人だけお仕事で3人はお昼寝なんて良いご身分ね……」
ジェイクさんは僕がまくらにしてたから仕方ないとして……。あ……気持ちよさそうに僕のヒザの上で妖精さんが寝てた……。
「なんてずうずうしいんだ……」
僕は妖精さんをヒザの上から揺すり落とすと「あいたっ」って小さく悲鳴を上げて妖精さんが起きた。
「起きた?」
「ヒドイですのん……起こす時はもっと優しくがレディーへのあつかいだと思うですのん」
「そうですか……」
僕が立ち上がると後ろでぱぁっと光が出て、振り向いたらジェイクさんが元の黒猫に戻ってた。
「さて、エルカ。君も寝ていたようだが、きちんと始末書は書き終わったかね?」
「書き終わったのに見てくれなかったのはどこのどなたでしょうね……」(ボソ)
「なにか?」
妖精さんのつぶやきがジェイクさんにバレバレだったみたいで、ジェイクさんのひとにらみで妖精さんが黙ってしまった。
「で、母さんはお仕事お疲れさま~」
「ありがとう、『あかり』ちゃん」
…。
……。
……はい?
「……今なんて?」
ちょっと今、僕空耳しちゃったのかな?
「ありがとう、『あかり』ちゃん」
「『あかり』って誰……」
「決まってるでしょ?」
母さんが笑いながら僕を指さした。どうやら『あかり』とは僕のことらしいです。
「一体どうして僕は『あかり』に?」
母さんがチョイチョイって手に持ってる紙を指さした。
「なに? これって住民票……? 佐伯 明15歳、女……?」
ちょっと待って! 住民票って公的文書だよね!? いつの間に変わったの!? 僕の知らない間に変わってるとかドウユウコトナノ?
「母さん……」
とりあえず無言の抗議というモノをしてみる……。じと~っとでも言えるように意識して目を細めてみた。
「あら? イヤなの? 女の子で『あきら』ってちょっとカッコイイけど、『あかり』の方がにあうかな? って。あなたが生まれる時に玲二さんと二人で男の子なら『あきら』、女の子なら『あかり』って読みにしようと決めてたのよ?」
僕が生まれる時に決めてた名前をつけ直してくれたってことなんだ。
「それでも一言欲しかった……」
「ごめんなさいね」
「それでも良く変更できたね~」
名前ってそう簡単に変更できるものじゃないんだよね?確か。
以前、ニュースで名前の変更には色々裁判所とかで手続きが必要だって聞いたんだけど……。
「朝の内にXX型だって診断書ができたって連絡が来たの。だから診断書を引き取って来て手続きを済ませたのよ~。女性だっていう診断書をもらえれば戸籍上の性別変更が認可されるようにって、魔法少女監督省に法的特例の申請をジェイクが土曜日の内にしておいてくれてね。性別の変更をさせてもらったの」
「へ~……でもそれじゃあ性別の変更だけで、名前の変更の方は認可されてないよね?」
「そこは特に問題ないわよ? 日本の法律で戸籍に登録されるのは漢字だけなの。つまり漢字の読み方に関しては制限が無いのよ~? 公的文書で名前のふりがなが書いてあるのは住民票だけだし、ふりがなの変更なんて『誤記入の申請』だけで一発で変更できるのよ~? だから性別の変更と共にふりがなの変更も出しておいたの~」
えっへんと自慢気に胸を張る母さん。
「そうなんだ……。僕の名前、『さえき あかり』になったのか~……」
「名前の漢字自体変えた方が良かった?」
漢字を変える……? 自分らしい名前に変えるとか?
僕は母さんに言われてちょっと考えてみる。
自分らしい名前ってなんだろう?
う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん……? 思い浮かばない……。
そもそも、僕が男の子のままだったらもっとカッコイイ名前が良いなぁってのは思い浮かぶよ? あの男の子の名前カッコイイなとか思ったことは有るし……。
でも、今の僕って女の子なんだよね? 女の子らしい名前を付けなさいとか言われても正直困る。
だって、僕の体は女の子だけど心は男の子のままだし、自分にカワイイ名前付けなさいって言われてできると思う? できないよね。
そう考えると今まで通りの漢字のままで読みを変えるのがベストだと思う。
逆に考えてみて、今までの漢字でイヤなことってあるの? ってことだけど……。
特にないかも……。新しく自分の名前の漢字を覚えなおす必要ないし。
あるとしたら……それは個人的な感情でしかない。
「ううん、今のままで良い。今のままが良いよ!」
「そう?」
「確かに僕、『明るい』っていう字に不釣合いかな? って思ってた……。でもね、母さん。僕、負い目はあるけどこの名前キライじゃないよ? 生まれてずっと使って来たから……。でも、『あかり』は……ちょっと恥ずかしいかも?」
自分の名前が『あかり』とか実感うんぬんよりも恥ずかしいのが一番かも……。
ああ、考えたら頬が熱くなってきちゃったよ
「大丈夫よ~? こんなにカワイイんですもの~。にあってるわ~」
そう言うと母さんが抱き付いて来て、僕に頬ずりしはじめた……。
「ちょっと母さん、恥ずかしいよぉ……」
「今からあなたは『あかり』ちゃんよ?」
「はいはい、僕は今から『あかり』だよ? 母さん」
「うふふ~」
「えへへ~」
僕と母さんはゆっくり笑い合った。
「まるでホームドラマですのん……」
妖精さんのため息交じりの声が聞こえて来た。
「なにを見とれておる! このバカモノ! さっさと報告書を修正せんか!」
「は~い……」
「まだ報告書書いてるの!?」
僕は驚いて妖精さんの方を見ると、半泣き状態で身長の2/3程もあるボールペンをゴリゴリ使って書類を書いていた。
「見ての通り誤字が酷くてほとんど書き直しだ」
ジェイクさんが器用に両手を広げてやれやれと首をふった。
「ふぇ~~ん……だれか助けて~……」
さすがにそれは無理があるよ~……。
僕は見なかったふりをしていまだに抱きついたままにへら~と笑う母さんの相手をすることにした。
妖精さんガンバってね!
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
と言う訳で『知らない間に変わってる!』の回でした。
今回で主人公の戸籍が変わったので一段落ですね。
文字数次第ですが次回あたりで第2幕が終わると思います。
そしたら銃騎士物語を重点的に更新すると思うので、ペースは以前くらいの頻度に落ち着くと思います。
それでは次回もよろしくお願いします(ぺっこり




