第21話 うちの弟がおかしい!……という名の途惑い
皆さんお久しぶりです。
けっして忘れていたわけじゃありませんよ?リアルがとてつもなく忙しいのです。
そんな訳で空いてしまいましたが新しいお話をおおくりします。
(2012/11/13 体裁統一のためのチェック)
「うぐぅ~……疲れた~」
二段ベッドの下段にダイブしてまくらを抱きしめる。
今日は色々あって疲れすぎた、と思う。髪切って、下着買って、戦って、病院で身体検査して……。
どんなけ詰め込んだの? って感じで本当に疲れちゃったよ。
はぁ……やっぱり自分の部屋が落ち着くなぁ……。
「それにしてもな~んか違う気がする」
そうだよ、まくらが小さいから落ち着かないんだよね。
――まく…が………とおちつか…い――。
「へ? どうして体が小さくなったはずなのにまくらが小さいなんて思うんだろ?」
寝返りをうってまくらを持ち上げてみるけど、いつもの僕が使ってるまくらだった。
「むしろ大きいよね?」
胸に抱きしめるとなんだか汗臭い。というかなんか臭いがキツい。どうして?
大きく息を吸ってみる。
「うわっ……もしかして……」
目を閉じてもう一回鼻で息を吸ってみる。
「臭い……」
自分の腕に鼻を当てる。微かに桃に近い臭いがする。
「体の臭いが根本的に違うから違和感を感じるんだ……」
とりあえず換気をしよう! そうしよう!
窓を大きく開けてベッドに寝転がる。
「僕、本当にどうしちゃったんだろう……」
でも、この臭い、キライじゃない。僕の男だった時の臭い……。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
「……おい、起きろよ……きろってば……」
――後5分……――。
「頼むから起きてくれ!」
――うぅ~……頭が痛いのに耳元で大きな声を出さないで欲しい――。
「なによ? 大きな声出して……智樹のバカ……」
まくらを抱え直して寝返りを打った。なんかまくら重いなぁ……。
「ぐぁっ……痛い痛いっ!」
やたらと智樹が騒ぐから目を開けると、目の前に智樹の顔があった。
いやなにがなんだか分からないだろうけど僕も分からない。
「なんで智樹が僕のベッドにいるんだよ!?」
「うごっふぅ!?」
蹴り飛ばそうと思って膝を上げたら、ちょうど智樹のみぞおちに僕の膝が入っていた。
「うぐぐ……なんでこうなるんだ……」
どさっと音を立てて僕のベッドから智樹が転がり落ちたのを確認した。
体を起こして大きく手を挙げて伸びをして首を回す。
「ふぅ~~……んぅ~~……あぁ~……」
なんか少し寝違えた気がする。
首を倒したら智樹と目が合った。と思ったら思いっきり顔を反らした。
「なに?」
「な、なんでもない……」
なんでもない訳ないだろう。そんなあからさまに……。
「んで、どうして僕のベッドに智樹が入ってたの?ていうか僕の目の前に顔があったんだけどさ……」
「うっ……、ああっ、あれはだなっ! 俺のせいじゃないからなっ! ほんっとうに俺のせいじゃないんだからな!」
なんだかワタワタと暴れはじめた……ちょっと面白い。
「いや……内容を聞いてから判断するから……」
とりあえず先を話してくれ、と顔を見つめる。
「ほら? 話してよ?」
ベッドから乗り出してじーっと智樹の顔を見つめる。あ、ちょっと顔が赤くなり始めた。
「いや……でも……」
「ほら早く」
なんかいつもの智樹らしくない。いつまでもったいぶるんだか。でもなんかからかうと面白い反応してくれるしなぁ……。
「ほら~?」
「うわ~!!!! 分かった!! 分かったからそんな顔で見つめるなぁ!!!!」
すっごい大きな声で耳が痛くなった。ていうかそんな顔ってどんな顔だよ?失礼な。
「もうすぐ夕飯だろ? 母さんがお兄を呼びに行って来いっていうからさ、来たんだけど。寝てたもんだから起こそうとしたんだよ」
「それで? どうして僕のベッドに入ってくることになったんだよ?」
「いや……なかなか起きなくてさ。気持ち良さそうにまくら抱えて寝てたもんだから、まくらを引っぺがしたんだよ。そしたらいきなり腕をつかまえられて引っ張り込まれたんだ。すぐに出ようとはしたんだぜ? でも、がっしり左腕に抱き着かれてさ。引きはがせなくてそのままベッドの中ってわけさ……」
僕が? 智樹に抱き着いてた?
「もっとマシな冗談無いの?」
すると智樹が左肩を指差した。良く見るとTシャツがべったりと濡れていた。
「これ、見れば分かると思うけどお兄のヨダレだから……」
「うわっ、本当!?」
慌てて口元をぬぐうとかすかに湿ってた……。
「いやー、ごめんね! そうかそうか、まぁ寝ぼけてたから仕方ないってことで流しておいてよ?」
とりつくろって智樹の肩をポンポンとはたいておく。
さーて、お夕飯はホワイトシチューだし楽しみだな~。楽しみすぎてベッドから跳ね下りちゃったよ。こうゆー時は体が軽くなった分、いろいろできて良いよね。以前だったらベッドがギシギシいってたと思う。
「いや……流すとかムリだ……」
なんか暗い声が背後から聞こえた。
「どうしてよ?」
振り向いたら、智樹のガタイの良い胸しか見えなかった。
智樹はバスケ部で身長高いんだよね。以前も僕より身長高くて見上げ気味だったけど、今は本当に見上げないと顔が見えない。
改めて見上げて、
「どうして?」
と聞くと智樹の顔が歪んだ。
「ああああああああああああああああああ!!!!」
なんか奇声あげながら両手で頭を抱えてブンブン頭振ってる……。
「智樹が……壊れた……」
「お前自覚持てよ! こっちが困るんだよ!」
なんかがしっと肩をつかまれた。地味に食い込んで痛い……。
「わけ分かんないし、痛いから離せ!」
一発パンチを胸に叩きつけた。
「ぐぇ……」
「まったく! ご飯なんでしょ? みんな待ってるんだろうし早く行くよ?」
僕はうずくまった智樹を置いてダイニングに向かった。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
ダイニングにはもうみんなそろってて僕はラストから二番目だった。最後はもちろん智樹だ。
今晩は母さんの予告通りホワイトシチューで、母さんの18番だ。
「う~ん……美味しいねぇ!」
美味し過ぎてスプーンが止まらない!
「まだいっぱいあるけど明ちゃんは食べすぎに注意するのよ~?」
母さんの言葉は一理ある。お昼に失敗しちゃったしね……。
「は~い!」
素直にうなずいておく。
「それにしても、明が女の子になってどうしようかと思ったが、これはこれで華があって良いもんだな」
父さんがビアグラスをあおって言う。ちょうどビアグラスが空になったから瓶ビールを注いであげる。
いつも父さんの隣に座るからか、それが僕の役割みたいになってる。
「おう? 明すまないな~」
上機嫌でビアグラスをあおる父さん。
「カワイイ我が娘に注いでもらうビールほど美味いもんはないよな? 父さんは娘にビールを注いでもらうのが夢だったんだ」
これはそうとう酔っていらっしゃいます。そうだよね、ビール瓶3本目だもんね。
「父さん、そろそろビールはダメだよ? それに、そんなに娘に注いで欲しかったんだったら姉さんに言えば良いのに……」
「イヤよ! お酒臭いのキライだもの」
「だとさ……。娘に距離を置かれて父さんは悲しい! 明は父さんのことキライじゃないよな!?」
「キライじゃないけどお酒臭い息を吐きながら肩組まないでよ」
苦笑いをしながら応対する。
「そうだぞ? 父さんもお兄がイヤがってるんだしホドホドにしときなよ!?」
智樹が怒った口調でそう言った。なにをカリカリしてるんだか。カルシウム足りないんじゃないか? って僕と同じ食生活で毎日よぶんに牛乳飲んでるしそうでもないか……。
「智樹、僕ぜんぜん気にしてないから……どうどう」
「俺は馬かよ……」
智樹はため息をついて不満げにシチューをかきこんで席を立った。
「あら? 智樹ちゃん、もう良いの?」
母さんが智樹に聞くと、
「今日は食欲そんな無いから良い」
って言って行ってしまった。
「なんなの? あれ……」
僕がつぶやくと姉さんがニヤリと笑った。
「智樹のヤツ……面白いことになりそうね」
「え? 姉さんには智樹がおかしい理由分かるの?」
「大体ね~……ふふん」
姉さんのこの勝気な表情、ぜったい智樹がオモチャにされる前触れだよ……。智樹に合掌。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
夕飯が終わって、父さんと姉さんと僕でリビングのテレビを見てると、母さんがバスタオルを持って来た。
「玲二さん、バスタオル持って行ってもらえませんか~? そろそろ智樹が出てくるころなので~」
そう言えば智樹が一番風呂だったんだっけ? だったら僕がバスタオル持って行くのに……。どうして父さんに頼むんだろう?
「う~む、だが私もダルくてなぁ……」
結構ビール飲んだから酔っぱらってて父さんグデグデだ。足取りも怖いし無理でしょ? これ。
「じゃあ明行ってきなさいよ?」
姉さんが良い笑顔で僕に言った。言われるでもないと思う。
「うん、分かった! 母さん僕が行ってくるよ」
「え……?」
母さんが一瞬困った顔をした。そんな困ることないでしょ?
「良いから母さんはテレビでも見ててよ?」
母さんからバスタオルを受け取ってお風呂場に僕は向かった。
「こんなのちょっと行って来てちょちょいと置いて来るだけじゃんか」
脱衣所の引き戸を開けると同時にガチャっという音がする。
「およ?」
「あん?」
ちょうど智樹がお風呂から出て来たところで、智樹は惜しげもない全裸状態だった。なにげに腹筋が割れ始めてて良い体付きだ。僕もこういう体になりたかったよ……。
「おっと……智樹、バスタオルこれね? 後、替えのトランクス」
ちょうど良かった。脱衣カゴに入れるより手渡しの方が早いもんね。
「ああ……」
なんか智樹がぼう然とした顔で固まってる。どうしてだろう? まぁいっか、用事済んだし、テレビの続き見たいからさっさと戻ろう。
「あっ……あっ……ああ……」
なんか背後から変な声が聞こえてきた。
振り向いた瞬間、
「○×△□○×△□○×△□○×△□○×△□~~~~!!!!?」
智樹が意味不明な叫び声を上げた。
「うるさいなぁ……智樹! 近所迷惑だから静かにしなよ!」
もう、意味が分からないよ。
腕を組んで智樹の様子を心配しながらリビングに戻って来たら姉さんと母さんが僕の方を見ていた。
「明! グッジョブ!」
姉さんは良い笑顔でサムズアップ。母さんは心配そうな顔をしていた。
「明ちゃん……智樹ちゃんをあんまりイジメないようにね?」
母さんが不思議なことを言ってきた。僕が智樹をイジメる? なんのことだろう。
「僕が智樹をイジメるわけないじゃん? 変な母さん」
ソファーに座ってテレビに体を向けると、母さんが重いため息をついた。
一体なんなんだか……。みんな変過ぎるよ……。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
という訳でうちの弟がおかしい!の回でした。
弟の挙動不審が今後どうなって行くのか気になりますが、気になりますが!気になるだけだったりするかもしれません。
とりあえず2日目の家族の心情はこれで書き終わった気がします。
そんな訳で、布石を置きながら2日目の団らん終了~!
なんか味気なかったと思いますが次回も宜しくお願いします(ぺっこり




