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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第2幕 変化への途惑い
23/57

第20話 背伸びをしたいお年頃!……という名の途惑い

皆さんお疲れ様です。

新しいお話をおおくりします。

今回は身体測定の回です。

よろしくお願いします(ぺっこり

(2012/11/13 体裁統一のためのチェック)



 あの屈辱(くつじょく)的な契約イベントの後、母さんと姉さんの2人がかりで布団から引きずり出された僕は身体検査を受けることになった。

 本当は明日、市役所で僕の返事を聞いてから病院に行くことになってたらしいんだけど、今日半日入院することになったからついでにすれば良いんじゃないか? ということらしい。


「という訳で健康診断の話しは魔法少女担当課からこの病院に通してある。費用も市役所持ちだから気にすることはない」


 ジェイクさんは気にするなって言ったけど、僕は気にしちゃうよ。

 とりあえず面倒ごとからということで胸部レントゲンと全身のCT検査から始まった。

 突貫着(とっかんぎ)みたいのを渡されたんだけど、これが妙に恥ずかしかった。

 パンツ一枚の上から羽織るんだけど胸元がちょっと開き気味でさ、背の高い男の先生から中が(のぞ)き見えないか心配になってしまった。

 胸部レントゲンとCTが終わった後にそのことを話したら母さんに笑われた。

「やっと明にも女の子としての自覚が出て来たのかしら?」

だってさ。そんなの元から無いっての。

 最悪だったのは血液検査だった。

 女になって腕が細くなったのは分かってたけどさ、血管が細くて針が刺さらないとかで8回くらい刺された。

 看護婦さんが新米さんだったからだって言うけどさ、流石に8回とか痛すぎるよ! おかげで腕に傷が一杯ついちゃってもう! って感じ。

 という訳で進みに進んで次は……なんだけど、その……問題があり過ぎるものだった。


「はい、じゃあ頑張ってね!」


「あの……しなくちゃいけないんですか?」


「もちろんよ?」


 にこやかに看護師のお姉さんに渡されたのは紙コップだった。


 「トイレはあっちね? 出口に小窓があって、中に紙コップを置く所があるから終わったらそこに置いておいてね」


 いやそうゆー……訳じゃなくてね……?

 返事に困って母さんを見ると、「しかたない子ね」って言いたそうな顔をした。


「どうしたの? 手伝って欲しいの?」


 その言葉を聞いてくるりと一転してトイレに逃げました。

 なにが悲しくてこの歳になってトイレを手伝ってもらうんだよ! 僕にだってプライドあるんだからね!



□◇□◇□◇□◇□◇――…



 息巻(いきま)いたは良いけど、結局途惑(とまど)って終わったのが20分後だった。

 あれ~? おかしいな……朝トイレ入った時は普通にしてたのに……。あ、でも半分寝ぼけてたからどうしてたのか記憶にないってのはあったんだけどさ……。

 まあ、紙コップにね……するのがね……男の時よりとっても大変だったのも理由なんだよ……。

 ああ! もぅ! 思い出しただけでもは~ずか~し~ぃ!

 とりあえず検尿というひどいトラップを乗り越えた僕はゲッソリとしていたみたいで、母さんが心配してはオロオロとしてた。

 次はエコー検査というヤツで、お腹の中を超音波(ちょうおんぱ)で確認する物をやった。

 結果は「見事な女の子です」って言われちゃったよ。

 きちんと……その……女の子の大切な物も確認できたんだとか……。

 血液検査のついでに回したDNA鑑定でXX(ダブルエックス)型だって確認できればすぐにでも戸籍(こせき)は女の子に変えることができるんだってさ。

 お医者さんと母さんがトントン拍子に話を進める(わき)でぼーっとしていた。いやもう燃え尽きてた感がするんだけど。

 そんな僕を楽しそうに見てる姉さんは十分僕の神経を逆撫(さかな)でてる気がする。

 せまい診察室じゃなくて、救急センターの診察室だから3人でもせまくないんだよね。


「明、気持ちは分かるけど話くらいは聞いておいたほうが良いよ?」


 姉さんはそう言うけど、聞いても専門用語ならべて女の子としてどうたら~とかなんだろうし、結果が分かってるんだから聞き流しても良い気がするんだよね。


「だって~……面倒なんだも~ん……」


 頬杖(ほおづえ)をついて聞き流した。


「それじゃあ先生。結果が出しだい診断書の作成をお願いしますね」


 母さんが深くおじぎをしたので先生も笑顔で応えた。

 やっと解放されるよ。長かったなぁ……。


「それじゃあ帰ろうよ、もう5時だし」


「そうね」


 イスから立ち上がって帰り支度(じたく)を始めた僕たちに先生が、

「あ、忘れてた……」

と声を上げた。


「え?」


「身長と体重測ってないよね? 測っちゃって」


「身長……? 体重……?」


 先生が指さした方には身長測定器と体重計があった。

 ああ、忘れてたというか意識したくも無かったのに先生めー……。


「そうね! 明ちゃんの身長分からないものね!」


「明の身長測っておけば私の昔の服も出しやすいし」


「え、えんりょします!」


 逃げようとした瞬間(しゅんかん)にがしっと肩をつかまれた。恐る恐る振り返ると母さんと姉さんが良い笑顔でした。僕を逃がす気はさらさら無いようです。


「さあ、明ちゃん! 測りましょうね~」


「明! 諦めなさい!」


 仕方なく靴を脱いで身長測定器に向かう。

 正直乗りたくない。母さんと姉さんの身長と比較(ひかく)して僕の身長はけっこう低い。

 せっかく高校に入って、身長伸びて、姉さんを追い抜いたと思ったのに……。

 ほんの3日前の身体測定で姉さんより1.1センチだけど上だったことを大喜びした記憶が新しい。あの時は本当に嬉しくて小躍(こおど)りしたくらいだ。姉さんはけっこうキツイ視線送って来てたけど。

 で、今の僕はというと、明らかに姉さんより身長が顔1個分近く低いんだよね……。


「ほら、明! さっさと乗りなさ~い?」


 姉さんの顔が邪悪な笑い顔になってる。正直怖いったらない……。


「うう~……分かったよぅ……乗ればいいんだろ? 乗れば~」


 身長測定器に諦めて乗ると、姉さんが上の測定する棒を下げた。


 ―― ガツンッ ――。


「痛いっ!? なにするの!?」


 『ガツンッ』って音がした! 今『ガツンッ』って音がしたよ! 僕の頭!


「あっら~? ごめんなさいね~? 明の身長もっと低いと思ってたの~」


 良い笑顔、姉さん良い笑顔過ぎるよっ! ぜったいこの前の身長のこと根に持ってるよ……。


「僕はそんなに身長低くないよ!」


 と姉さんに文句を言ったらにらまれた。


「あんたね。そんな背伸びしたってダメなのよ?」


 姉さんが下を指さす。


「そうよ~? 明ちゃん。それはズル過ぎるわ~」


 下を見ると僕の足がつまさき立ちでプルプル震えていた。

 良いじゃないか!? 僕だって身長気にしてるんだよぉ!


「でも、なんて言うか今の明ちゃん、カワイクて写真撮りたいわねぇ……。こう、背伸びをしたいお年頃って感じで」


 それ小学生だよ! ぜったい小学生だよ! 背伸びとかそんなのじゃないってば!


「うふふ……お顔真っ赤にしてガンバってるカワイイ女の子はいかにもいじりがい有りそうよね~……」


 グイっと足になにか重しが乗ったような感覚がした。見ると姉さんが靴を脱いだ右足で僕の足を踏んでいた。

 必死に抵抗する僕の足を笑いながら踏む姉さん……。この人は悪魔だよ! 本当に悪魔だよ! まだ靴を脱いで踏むあたりは優しいかもしれないけどさ。


「それじゃあ測りまちゅよ~?」


 赤ちゃん言葉とか超屈辱(くつじょく)なんですけど! 分かってやってるよね!? 分かってやってるよね!?


「は~い、今の明ちゃんの身長は……ぷっ……139.4センチね」


 ちょっ! 今笑った! 姉さん笑ったよね!? ていうか139.4とかウソだよ! そんなのウソに決まってる!


「は、測り直しを要求する!」


 140センチ台……せめて140センチ台……。

 できるだけ背筋を伸ばして……できるだけ高く~……。


「うぐぐ……」


 背筋に力を入れてもう一回測定してもらった。


「もうしかたないわねぇ……はい、138.9センチね」


 なに……? 身長が下がった……だと……? 必死になっても成果が表れないなんてどうして……。


「も、もう一回!」


「明……」


 不憫(ふびん)な子を見るような目で姉さんがこっちを見ていた。

 母さんもハンカチで目元をおさえてるし、なんなのこの反応……。


「明ちゃん……いいかげん諦めたほうが良いわよ?」


 母さんが涙声交じりで声をかけてきた。

 正直うるさい。僕がどうガンバったって良いじゃないか。


「ダメだよ! これは僕にとって聖戦なんだ!」


 そう、これは僕の尊厳(そんげん)にかかわる戦いなんだ! 負けられないんだ! そう闘志を燃やしていた時期が僕もありました。

 結局、力を入れれば入れるほど身長は下がって行く一方で、僕は汗をかいては身長を測ってもらい続けた。


「明ちゃん……もう諦めましょ? 女の子はね。背中に力を入れれば入れるほど弓形(ゆみなり)にそってしまうの。力を入れれば入れるほど身長は低くなってしまうのよ?」


 そ、そうだったのか……。

 結局、散々測り直してもらって身長は139.4センチだった。

 ガックリと肩を落として沈んだ気持ちで体重計に乗ったけど、37.2キロとかけっこう軽かった。あれ? 服って1キログラムとかあるって聞いたし、僕ってもっと軽かったりするのかな?

 こんなにずっしりと沈み込んだ気持ちなのに体重は軽いんだね……。

 そんな僕たちの様子を笑い顔で見ながら、「キミはやせ気味だね」って一言を付け加えて先生がカルテに身長と体重を記入した。

 うう……ものすごくショック……。明日からまた牛乳飲まなくっちゃ……。

 ふわっと肩に姉さんの手が乗った。


「明、女の子は身長だけじゃないわよ」


 言ってることはまともだけどさ、口元ひくついててとっても台無しだよ!


「じゃあ、今晩はタンパク質をいっぱいとれるようにホワイトシチューにしましょうね~」


 落ち込む僕は母さんと姉さんにうながされて病院を後にした。

 なんという屈辱(くつじょく)。今日のことはぜったい忘れないからね! 次の機会を待ってろよ! 身長測定器めー!




                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



という訳で身体測定の回でした。

有りますよね、背伸びしたい時って。たまたま明の場合は身長はかる時だったという訳です。

でも見かけは小学生だからさぞかし可愛らしい光景が繰り広げられていることでしょう。

今回のMVPは千夏お姉さんですね。多分イキイキとしていた事でしょう。

可愛いからこそイジメてしまう。そんなSなャラクターに確立しそうな勢いです。


今月一杯は課題があるので更新はできそうにありません。

次回の更新は来週になりそうです。

というわけでよろしくお願いします(ぺっこり

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