第18話 本名は秘密!……という名の途惑い
皆さんお疲れ様です。
新しいお話をおおくりします。
今回は第2次戦闘パート後半です。
コメディからは若干離れていますが宜しくお願いします。
(2012/11/13 体裁統一のためのチェック)
怒声が聞こえた直後、母さんが苦笑いを浮かべて大きな声で言った。
「ごめ~ん、助けに入るタイミングが分からなくって~」
ちょっとそんな大声出さないでよね。ボク達が囲まれてるって分かって……ひぃっ!?
気のせいかな? なんかものすごーい勢いでネズミが振り返ってるんですけど……。
「ねえ? か……ライムちゃん。すごく囲まれてるように見えるんだけど……」
「あら~……ゴメンちゃい」
舌を出してカワイく言ってもダメ! ぜったいダメ! 現在進行形でどんどん増えてるよ!?
へたり込みそうなほどガクガク足が震えてしかたない。
「もうだらしないなぁ……」
だらしないとかそうゆーの関係ないよ! 平然としてられる母さんが変なんだよ!
「光満ち薙ぎ払え! 『ライト・ウェイブ』」
母さんが右手の杖を大きく振り上げて一気に振り下した。と同時に光の津波が起こった。
ドバっとふき出してダバーッとナニカを押し流して行く。いえ擬音語ばっかりで申し訳ない解説だけどそうとしか言えないからしかたないんだよ。
「ねえ、ら、ライムちゃん」
「なぁに? 黒ちゃん」
いや黒ちゃんって……まぁ良いけどさ。
「はじめからそれやっておけば一気に片付いて終了だったんじゃないの……?」
「え……? あっれ~? そうだっけ~?」
光の津波がおさまるとまわりにナニカは一匹もいなくなってた。
それに、物理的な津波じゃないからか、周りのマネキンなんかは倒れていないし、被害も最小限にできたんじゃないの?
「でもこれ、けっこう魔力消耗するのよね~」
そう言って母さんは苦笑いを浮かべた。ひたいに汗をかいてるから結構疲れてるのかも……。
「それに……大きいのにはあまり効果は無かったみたい」
巫女服の青い魔法少女の方を見ると確かに大きいボスみたいなネズミが2匹残ってた。
母さんが盾を構えると一匹が躍り掛かって来て、もう1匹は巫女服の少女に向かって突進を開始した。
巫女服の少女が左手を上げた。
「廻れ!第一、『大鏡』」
大型のネズミが突進してきたところに鏡の盾を出して受け止めた。
ドガーン、と鏡と大型ネズミが衝突する音がこっちまで聞こえて来る。それでも鏡はビクともしていない。
「鏡、割れないのかな?」
疑問に思って口にすると母さんが、
「あれは魔力の盾だから魔力が切れない限りは割れないでしょうね」
と教えてくれた。
「こっちも来るわよ!」
ズシンという振動が響くと母さんの構えていた盾に大型ネズミがぶち当たった。
「ひぅっ!?」
ミシミシという音が聞こえて来る。母さんの盾が軋んでる……ていうかヒビが入ってる!?
「さっきので魔力を使い過ぎたからかしら……」
母さんの顔に焦りが見える。多分もう一撃来たら危ないってのは分かる。それだったら僕がなんとかすれば良いんだよね?
「母さん!」
僕は勇気を出して母さんの前に出た。
どうせ次はもたないなら僕が出た方が良い……と思ったんだけどやっぱ怖いものは怖かった。ちょっと足がすくんじゃったよ。
「ギィイ!」
鋭く鳴いた大型ネズミが再び突進体勢に入る。
「お願い! 出てぇ!」
両手をかざすと黒い円盤が目の前を塞いだ。
ずぶずぶぅっとなにかが沈む音と共に体から力が抜けて行くのが分かる。
多分、これが魔力の消耗なんだと思う。大きな円盤を出してるから消耗も激しいんだ。母さんがさっきコレは規格外の魔法だって言ってたし……。
ずぶずぶと沈み込む重みが軽くなっていく度に体がどんどん重くなる。歯を食いしばって耐えているけど、もう限界だよ……。
「耐えなさい! 明! 『レイ・ソード』!」
母さんが光の剣を出して、一気に黒い円盤の裏側に走ってソレで薙ぎ払った。
「でやぁ!」
ばしゅっという音と共に黒い円盤から伝わる重みが一気に消えた。どうやら母さんが大型ネズミを倒してくれたみたいだ。
「お疲れ様、明」
母さんが無事なのを確認したら一気に足から力が抜けた。
「ちょっと! 大丈夫? 明」
倒れ込みそうになったところを母さんが抱き止めてくれた。
「頭がくらくらする~……」
「無茶するからよ! 後1匹いるのに」
母さんに言われて後の1匹を見る。巫女服の少女が鏡の盾で応戦しているのが分かる。
けど、さっきよりも鏡の数が増えて4枚になっていた。
「助けに入らなくて良いの?」
「もう決まるんじゃないかしら? 多分加賀見さんちの娘さんだろうし」
「え? 加賀見さん?」
巫女服の少女を見返したらちょうど右手を上げていた。
「囲め! 第三、『三点結界』」
鏡の盾で抑えていた大型ネズミの後方に二枚の鏡が回り込んで正三角形の陣形を取っていた。
「ギィイイイイイイ」
鏡に囲まれた大型ネズミが悲鳴を上げて暴れ回ってるのが見えるんだけど、見えない壁に挟まれているみたいに身動きができていない感じ。
「あれは魔法で結界を作って『ナニカ』を封じ込んでいるのね」
程なくして、巫女服の少女の背後にもう1枚鏡が現れた。
「数がそろったから大技見られるわよ? 見てなさい」
母さんがそう言うと少女が剣を地面に突き立て、両手を合わせた。
「挟め!裏第二、『紫鏡』」
3つの鏡に囲まれた大型ネズミを大きく挟み込むように2つの鏡が向かい合う形で浮かび上がった。その後鏡が紫色に染まって大型ネズミを挟み込んだ。と思ったらするりと挟まれた鏡の中に消えてしまった。
「割れろ!」
大型ネズミを吸い込んで合わさっていた鏡がバリーンという破砕音を響かせた後には霧のようにかき消えていた。
「これで終わり?」
僕が母さんに聞くと疲れ切った顔でうなづいた。
「は~……、疲れた……。ふたりともありがとう」
巫女服の少女も笑顔で応えた。
とりあえず疲労困憊の僕らはその場にへたり込んだ。終わったのは良いよ。でもまわりを見るとけっこうボロボロになってて後始末が大変そうだった……。
「母さん……これどうしよう?」
母さんは引き攣った笑顔で一言言った。
「さぁ?」
もうどうにでもなってくださいってことですね、分かります。
「とりあえずココから離れない? 色々と面倒なことになりそうだし」
巫女服の少女の提案には賛成かな? このままここにいたら消防隊とかが来て責任とか問われそう。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
裏手の非常階段まで来て周囲を確認する。誰もいないみたいだ。
「助かったわ。ありがとう。私はマジカル☆ミラ。よろしく」
元気良く言うと巫女服の少女は右手を出してきた。
「よろしく! 僕はさ――」
「ちょっと待った!」
母さんがストップをかけた。
「魔法少女は本名は秘密なの! 黒ちゃんはまだ魔法少女名持ってないから名前は言っちゃダメよ?」
「そ、そうなの?」
巫女服の少女に問いかけるとうなづいた。
「あなたが魔法少女になりたてなら仕方ないわね。今度会った時に教えてくれれば良いわ」
「う……うん……」
「で、そっちの子はどっかで見たことあるんだけど、どなたでしたっけ?」
母さんは一回転して決めポーズを決めると、
「私~? 私は魔法少女ライムライトよ! よろしくね!」
と言って母さんが巫女服の少女改めミラさんの手を握ったら固まってしまった。
「ウソ!? あのライムライトさんなの!?」
なんかアイドルにでも会ったようなすごい反応。もしかして母さんってそんなにすごい有名人なのかな?
「知ってるの?」
なにをバカなことをってバカにされてるような目でミラさんが口を開いた。
「知ってるもなにも伝説の魔法少女じゃない!? あれ……? でもそれって20年いじょ――」
「わー! わー! わぁあああああああああああああああああ!!!!」
急に母さんが大声で叫び始めたから僕の耳にキンキン響いた。
「もう! 急に叫ばないでよ」
「ゴメンね~」
カワイく謝っても許さないんだからね……。
そんな僕たちを苦笑いしながらミラさんは、
「それじゃあ、また縁が有ったら会いましょう」
って言って非常口から出て行った。
絶対母さんの年齢に気付いたと思うよ? あの反応は……。
なにはともあれこうして僕たちのトラブル続きのショッピングは終わったのだった。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
しまった!前回3人による集団戦闘とか言っておきながら集団っぽい戦闘じゃなかった……(汗)
まぁいっか(てへぺろ)
という訳で戦闘イベント終了!
さぁ日常パートに戻れるわ~。わくわく。
という訳で次回は事後処理しつつの日常パート書きますので宜しくお願いします(ぺっこり