第17話 魔力反発!……という名の途惑い
皆さんお疲れ様です。
新しいお話をおおくりします。
今回から数話に渡ってちょっとしたシリアスパートです。
コメディからは若干離れてしまいますが宜しくお願いします。
(2012/11/12 体裁統一のためのチェック)
エスカレーターから見える階下は黒い霧でほとんど見えなかった。
「あらら……これは困ったわね~」
と言いつつも母さんの顔は余裕みたい。
「とりあえず変身しましょう。『ライトアップ』!」
左手の腕輪をかざした母さんが光に包まれると一気に光がはじけ飛んだ。
「って、ええ!?」
衣装は前見た通りなんだけど……なんだかすごく若返ってるんですけど……。
「母さん……なにその姿……」
「あら~? 明ちゃんダメよ~? 今はライムライト! ライムちゃんって呼んでね!」
高校生くらいの若い容姿になった母さんがウィンクを一つした……。
「でも……どうしてそんな姿に……」
「だって~、明ちゃんが昨日『いい歳して』とか言うんですもの。私だって傷付いちゃうんですからね!それに人に見られるなら若い姿の方が良いし~」
でも魔法で若返るとかやり過ぎだと思うんだけど……。
「はっ!? もしかして母さんの容姿が若いのってまほ――」
「そんなこと無い! ゼッタイ無いの!明ちゃんでも許さないわよ?」
と言いながら母さんはピンク色のファンシーなステッキで僕の頭をガツンとたたいた。
「ゴメンナサイ……」
「それよりも、明ちゃん。変身して! 魔法少女の服は物理的にも魔力的にも身体を守ってくれるの」
変身っていうと、あの恥ずかしい言葉を言わなくちゃいけないんだよね……。
「ほらほら、さっさとするの!」
「わ、分かったよ……ま、『マジカルドレスチェンジ』……」
左手の腕輪から黒い光が出て瞬間的に服が入れ替わるのが分かった。
はぁ……またスカートか~……。
一応服装のチェックを入れる。簡素なダークグレーのカッターシャツに膝丈のスカート。
前は髪がじゃまで確認できなかったけど、魔法少女というわりにハデな格好じゃなくって良かった。
母さんみたいな服装は恥ずかし過ぎて僕には無理だし。
と、そんな時にドカンとまた大きな音がした。
「それじゃあ行きましょうか。」
「う、うん」
エスカレーターを駆け下りて行く母さんに続いて2階に下りた。
周囲が真っ暗で良く分からないだろうと思ってたのに、だんだんと魔力が薄くなっていく。
良く耳を澄ますとパンパンとなにかが爆ぜる音が聞こえるし、2階と1階を貫く吹き抜けの窓ガラスがたくさん割れていた。
多分、この魔力の霧を外に出すために割ったのかな? ゆっくりだけど霧が外に出ているのが判るんだけど……。
「これって餌をまいてるようなもんじゃない……」
母さんは頭を抱えていた。
「誰か戦っているわね」
母さんが言うとおり奥の方で叫び声となにかが暴れ回る音がする。
「『ライトエフェクト』!」
母さんが右手を頭上にかかげると光の玉が5つ浮かび上がって周りを照らした。けれど霧が濃いのかあまり役に立たないみたい。
「はぁ……魔力反発ね……」
「魔力反発?」
ため息をつく母さんにたずねると浮かない顔をしていた。
「魔力反発ってのは正反対の属性の魔力がぶつかると反発するの。私の魔力は『光』であなたの魔力はどうやら『闇』。あなたの方が基礎魔力が強いから競り負けてるのね……」
見上げると光の玉は明滅しながら回転しているけど、周囲を照らすほど強い光は出ていないみたいだ。
と、考えていたら少し先に黒い物が動いた気がした。
「明、危ない!」
「母さん!?」
母さんに突き飛ばされた瞬間に背後でシャッという鋭い音と共になにかが横切ったのが分かったんだけど、ドカッと顔面に酷い衝撃が走った。
あいたたた……。どうやら顔からなにかに衝突したみたいだ。鼻が痛い。
「あぅ~いらいよぉ……」
ん~? なにこれ?
顔を上げたらそれはトランクスだった……。しかも僕の鼻血付き……。どうやらワゴンセール品で僕がぶつかったのはワゴンみたい。
頭を振るとバサバサと大量にワゴンセールのトランクスが落ちてきた……。
ああ、なんかすごく懐かしくて涙が出そう……。
「ちょっと明! なんて物を持って鼻血なんて出してるの!?」
「らってぇ~……」
起き上がると鏡張りの柱に僕の姿が映る。小さい女の子がトランクスを顔に当てて匂いを嗅いでるような最悪の格好だった。しかも鼻血を垂らして……って僕はヘンタイか!?
「ああもぉ! こんなろ!」
あわてて思いっきりトランクスを地面に叩き付けた。なんでこんなことに!?
「ほらこれでも使いなさいっ!」
トランクスを踏み締めていると母さんがポケットティッシュを渡してくれた。あわててティッシュを丸めて鼻に詰める。
「『ライト・シールド』」
飛び掛かって来る黒い塊を母さんが円盤状の光で叩き落とした。光が当たった瞬間に目を凝らすと……それは大きな動物だった。しかもチューチューと鳴き声を出すソレ。
「ね……ネズミぃ!?」
目を凝らすと3匹、ううんもっといるかも……。大き目の犬くらいの大きさの超大型ネズミがゴソゴソ動いてた。
「明! ボサっとしてちゃダメ! 『レイ・ソード』」
バシュッという音がすると母さんのピンク色の杖が光の剣になってた。
「てぃや!」
剣光一閃、飛び掛かって来たネズミを切り払った。と同時に塵のようにかき消えた。
「まさかこれも『ナニカ』なの?」
周囲を見渡すと紅い光点がいっぱい見える。うわ~……これ全部ネズミなんだ。僕ネズミ苦手なのに……。
昔、小学校の時にとりもちに引っかかってたネズミを思い出してなんだか気分落ち込んできた……。
「ちょっと明! これ以上魔力を漏らさないでよ! 視界が悪くなればなるほどこっちが不利になるんだから!」
おっと、また足元から魔力が……どうやら僕の気分が落ち込むと魔力が漏れるみたい。なんて迷惑なんだ! いや原因、僕なんですけどね~……。
落ち込んじゃダメってのは判るけどさ……こればっかりは……。コントロール効かないよ。
「明、右!」
母さんが指示した方向を向くとネズミがこっちに飛び掛かって来ていた。
「ひぃ!?」
あわててしゃがむと、どぷんという音が上から聞こえた。
恐る恐る上を見ると、黒い円盤が僕の前にあった。あのオオカミの腕から守ってくれたアレだ。
「はぁ~……助かった~……」
「なにそのデタラメな魔法!?」
「はへ?」
母さんが叫んでた。
「確かにナニカは闇属性だけど……あろうことか魔力レベルの同化だなんて……」
『どうか』?
首をひねると母さんが説明してくれた。
「魔力反発はさっき教えたわよね? その正反対が魔力吸収なの、っと」
母さんが盾で一匹弾いて、一匹を斜めに切り飛ばした。
「私のこの盾は闇属性を持っているナニカを弾き飛ばす効果だけど、明のは――」
僕も3匹飛び掛かって来たネズミを黒い盾で防ごうとした瞬間、とぷとぷとぷんと小さな音がしてネズミが消えた。
「――吸収するんでしょうね」
だいぶ周りが静かになって来た。そろそろ襲ってくるネズミも少なくなってきたし、まわりの魔力の霧も晴れてきた気がする。
「それ、便利ねぇ……。さっき放出してた明の魔力も吸収してるみたいよ?」
「そうなんだ……それにしても母さ――」
母さんと言おうとしたら鋭い声で、
「ライムちゃん!」
と言われた。
「ら、ライムちゃんってネズミ大丈夫なんだね」
「あら? ネズミ型の『ナニカ』なんて基本よ? これからコレを相手にいっぱい戦うことになるかもね……っと」
母さんが笑いながらネズミと戦う。ああ、余裕じゃなくて、これに慣れちゃってるんだ……。
僕にはぜったい慣れることはないと思う……。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
周囲のネズミが片付いて確認する。相変わらず奥の方で誰かが戦ってるみたいだったから母さんと奥まで来たんだけど、戦っているのは巫女服っぽい服装の少女だった。まぁ巫女服って言っても下がミニスカートだから正確じゃないかもだけど。
水色の髪をしたアシメでミディアムショートの気の強そうな目をした女の子だった。
「もう! 次から次へとなんなのよ!? こいつら!」
3つの鏡みたいな盾でネズミの群れを相手に一応持ちこたえているみたいだけど、あれって危険だよね?
「様子を見て加勢しましょう」
母さんの提案にうなづいて見せる。中途半端に加勢しても邪魔しちゃうかもしれないしね。
「『水穿』!」
パンという音が響いて1匹、2匹とネズミが弾け飛んでいく。なにかを打ち出してるのかな?
あ、後ろから攻撃されそう!……と思ったら振り向きざまに回し蹴りで蹴り飛ばした。すごいなぁ……。
「防戦一方ってほどでもないのね」
と母さんが感想を口にした。
確かに少しずつだけど数は減ってるみたいだけど、やっぱり助けた方が良いんじゃないかな? と思った時、
「ちょっと! そこの2人見てないで助けてよ!」
と怒声が聞こえた。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
という訳で新しい魔法少女の登場です。
戦闘シーンにコメディーって難しいですよね。あたしには無理そうです……(遠い目)
彼女は魔法少女戦隊とは関係ないまた別の系統の魔法少女です。
この世界では魔法少女は余り珍しいタイプの人間ではないので……。
次回は3人に増えての集団戦です。
頑張って書きますので宜しくお願いします(ぺっこり