第15話 女の子の体!……という名の途惑い
皆さんお疲れ様です。
今回書き切れない葛藤に悩まされました。
今のままでも十分オーバーしてるのですがこれは2分割しています。
作者の愛を感じて下さい(笑)
それでは新しいお話をお贈りいたします。
(2012/11/12 体裁統一のためのチェック)
美容院を出た頃にはもうお昼ご飯時を過ぎてたから、姉さんと合流してファミリーレストランに来た。
このファミリーレストランは、イタリアン風で値段と味がほど良く、結構人気のお店だ。
で、今それぞれメニューが決まってウェイトレスさんを呼んだところ。
「僕、ミックスグリルでライス大盛りでおねが――むぐぅ!?」
いきなり母さんが横から僕の口をふさいだ。
「いえいえ大盛りはナシの方向でお願いしますね~。で、私はエビトマトリゾットで」
母さんがなぜか勝手に僕のオーダーを訂正してしまった上にウェイトレスさんに目配せをしている。
「私、カルボナーラにコーンポタージュね」
「ドリンクバーのご使用はどうされますか?」
「じゃあ3つお願いします~」
「かしこまりました。注文の確認をいたします。ミックスグリルが1つ、ライスが1つ、エビトマトリゾットが1つ、カルボナーラが1つにコーンポタージュが1つ、ドリンクバーが3つ、以上でよろしいでしょうか?」
「んんー……!」
ちょっと母さん、ライス大盛りって言ったのにぃ! 訂正させてよぉ!?
「はい」
母さんの顔を見ると憐れむような顔でこっちを見ていた。
なんで!? 僕なにか憐れまれるようなことしたの!?
ウェイトレスさん、お願いだから僕の話を……。
と思ってウェイトレスさんを見るとまるでカワイイ子供を見るような優しい目で見られてしまった。それどころか手を振られるしまつ……。なにこの屈辱感! 僕はこれでも高校生なんだぞ! ウェイトレスさんとほとんど歳変わらないんだぞ!?
「当店では水をセルフサービスとしています。あちらのドリンクバーにてご自由にお使いください。失礼します」
ああ……ウェイトレスさんが一礼して行ってしまった。
僕が肩を落とすと母さんがやっと手を放してくれた。
「ぷはぁ……。母さんなにするの!? 僕、とっても怒ってるよんだよ!?」
母さんを睨み付けてやった。んだけど、反応がイマイチでなんだか反応が薄い上に目が笑ってるんだけど。
「ちょっとなに!? 僕怒ってるんだよ!? ほんっとーに怒ってるんだから!」
その時、いつの間にか構えられていた姉さんの携帯からぴろり~んという写メを撮る音が聞こえた。
「姉さん!」
「だって、怒ってもカワイイんだも~ん」
「はぁ?」
これでも僕は真剣に怒ってるのに……。
ぷすー……。
変な音が聞こえた。というか耳に響いた気が、ていうか、母さんの人差し指で僕のほっぺたを突いていた。
「か・あ・さ・ん!」
「だってー……そんなカワイイ顔でほっぺを膨らませてるのを見ると『つついて』って言ってるようなんですもの~」
もう、母さんめ~……。
ぷすー……。
二度目の不意打ち……横を見るとテーブルを乗り出して姉さんが僕のほっぺたをつついてた……。
「姉さんまで……」
いいかげん僕も限界なんですけど……。
じとーっとにらみ返してやると、にへら~っと締まりのない顔で姉さんが微笑んだ。
「なんなのその反応!?」
「いやー、やっぱり持つなら中途半端にナヨナヨした弟よりカワイイ妹だなぁって」
ひどい……前の僕ってそんな扱いだったのか……。
「あ~……ごめん。別に明のことキライじゃなかったのよ? ただナヨナヨし過ぎててイライラしてただけって言うか……」
「むぅ~……」
「ああ、ごめん……そんなつもりじゃあ……母さん助けて!」
「困ったわねぇ……怒っている顔はカワイイけど泣き落としは本当に怖いわねぇ……」
「泣いてなんてないもん!」
全くこの歳になってそんなことで泣いてられないよ。
「なに言ってるの……その目尻に溜まったものはなんなのよ……まったく」
あわてて目尻をこする。ほらなにも無かったよ? ちょっと湿ってたみたいだけどなにも無かったよ!
「カワイイわね~」
「本当に和むわねー」
「お待たせしました。カルボナーラとコーンポタージュ、ライスとミックスグリルになります」
ウェイトレスさんが僕と姉さんの前に料理を並べて行く。
母さんのリゾットはまだ来ないみたいなので、来る前にドリンクバーに行くらしい。
「明はなに?」
「じゃあ――」
「あ、炭酸系はダメよ? ゼッタイにご飯入らなくなるんだから」
リフジンを感じながら、
「オレンジジュース……」
と母さんに頼んだ。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
しーきゅーしーきゅー至急援軍を求む。僕のお腹が限界です。
ライス半分にチキンソテー半分が残ってるんです。いつもはぺろりと食べてる量なのにどうしてこうなった……。
「ほ~ら、お母さんの言った通りじゃないの~」
横を見ると母さんが勝ち誇ったような表情で僕を見ていた。うぐぐ……悔しいけどもう僕にはこれ以上入らないよ……。
「か、母さん」
「なにかな~? 明ちゃん」
うう、この勝ち誇った表情がちょっと怖い……。
「お願いですからチキンソテー食べてクダサイ……」
「え~? 仕方ないわね~。後で埋め合わせしてもらうわよ~?」
ここは背に腹はかえられないよね……。
「お願いします」
そう言うと喜々として母さんはチキンソテーを食べてしまった。
「明ちゃん、体が小さくなったってこと、自覚持たなくちゃダメよ?」
「そうよ? ほら、ライス半分よこしなさい」
「ごめんね。母さん。姉さん」
どうやら本当にこうなることを読んでてリゾットだけをオーダーしたらしい。
姉さんもカルボナーラだったのは、僕のライスを引き取れるていどに余裕を持つためだったと後から聞かされたのだった。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
さて本日のメインイベント『その2』がやってきました。
ずばり下着を買う、というイベントです。
僕はもう逃げたくて及び腰なのですが姉さんと母さんが両脇を抱えています。
「んふふ~、明ちゃんの初ブラ選びとかワクワクするわね~」
「うんとカワイイ物を選んであげないとねー」
なぜ僕が丁寧語なのかは分かっていただけたでしょうか? そうです。もう気分はドナドナなんです。
両脇頭上からウフウフと怪しい声が聞こえます。
「やっぱりまた今度にしませんか? ほら、コンビニで買えるみたいですし?」
それに僕って下着に執着するような性格でもないですし。
でも、母さんは違ったみたいで、
「だめよ~? 女の子は身体に合ったサイズの下着を着けないと病気になるのよ?」
って脅すような口調で言ってきた。
「そんな大げさな~……」
すると姉さんが耳元でささやき始めた。
「私の友達が体験したことなんだけどね……。サイズの合ってないブラをした時にね……」
「うん?」
低い声で「救急車で運ばれたわ」と言った。
「え……?」
「下着がストレスになったみたいでね……気付いたらストレス性胃潰瘍で1週間くらい入院したのよ」
そんなまさかと思って姉さんの顔を見ると笑っているどころか大マジな顔だった。
もしそれが本当なら……下着恐ろしい……。マジで恐ろしい……。
「だから、ね。明も中途半端に下着を選んじゃダメよ?」
「う……うん……」
そんな訳でやって来ました下着売り場。
ホワイト、ピンク、グリーンにブルー。色々な種類の下着を着けたマネキンが並んでる。
どうしよう、思った以上に抵抗感があって足が前に進まないよ……。
「ほらほら早く」
そんな僕を引きずるように歩く2人。
「ほら観念しなさい」
姉さんの低くドスの聞いた声が響いた。
できるだけ周りを見ないようにうつむいていると母さんが声を上げた。
「すみませ~ん!」
「はい、なんでしょう? お客さま」
「この子のサイズを計りたいのですが」
店員のお姉さんと話していた母さんが僕を突きだした。
「うぁっ……っと」
恐る恐る顔を上げると、店員のお姉さんが優しく微笑みながら、
「お嬢さま、下着選びは初めてですか?」
と聞いて来た。
「うん……そうです」
「ではこちらに来てください。あ、お母さま、ついでにスリーサイズ計ってしまいますか?」
「お願いします」
「分かりました。ささ、こちらへどうぞ」
店員のお姉さんに連れられて試着室に入る。
「それでは、下着以外全部脱いでください」
「え……? 全部……?」
全部ってどこまで……。とりあえずジャケットは脱いで、カットソーを脱ぐ。ホットパンツを脱いでキャミソール、パンツ、ソックスだけになる。
「あの、脱いだんですが」
「キャミソールも脱いでください」
そんな、まだ自分でも見てないのに人前で脱ぐなんて……。
「こ、困ります!」
「でもこのままでは計測できませんし……」
『明ちゃ~ん、しっかりお姉さんの言うこと聞きなさいよ~!』
母さん、ジャストタイミング過ぎるよ! もしかして中身透けて見えてるんじゃないだろうか? なんだかイヤな気配を感じるんだけど。
「うぅ……あまり見ないでくださいね?」
観念してキャミソールを脱いだ時、鏡に映った自分を見てしまった。ハダカの女の子だった。
身長は小さいけど腰のくびれとかお尻の安定感とかどう見ても女の子の体だ。
変わり果てた自分の姿に涙が出そうな気分を感じながらも、知らない女の子のハダカにちょっとドギマギする。
いや、子供のころに姉さんと一緒にお風呂に入った時に姉さんのハダカは見たことあるけどさ、知らない女の子のハダカは初めてでさ……。
「白くてキレイな肌をしてますね。うらやましいです」
「ひゃい!?」
そうだった店員さんがいたんだった。すっかり忘れてたよ。恥ずかしい……。
「あらあら、そんなに恥ずかしがらなくても良いですよ?」
「うぅ……どうして分かるんですか?」
「だってそんなに肌が赤くなっちゃってるんですもの。誰でも分かってしまますよ」
鏡の自分を見ると全身真っ赤になっていた……。
「それでは、まずは胸囲を計りましょうか。両手を上げてください」
僕は鏡を見ないように目をつむって両手を上げた。
「まずはトップからっと」
「ひん!?」
目をつむったのがいけなかった。いきなり胸の先っちょに冷たいのが当たって悲鳴なんて上げちゃったよ……。ていうかひんってなに!? ひんって!
「ガマンしてくださいね? えーっと……65.5っと。次はアンダーですね」
そう言って店員さんが持っていた巻き尺が僕の胸を滑り降りて胸のでっぱりの下あたりに来る。
「アンダーは58.2っと。これだとブラジャーのサイズは60のAAかな?」
「AA……? あれ一番下がAじゃないの?」
「今はAAAってサイズもあるのですよ? トップとアンダーが7.5センチ以上ないとAじゃないの。お嬢さまの場合は差が7.5センチ弱ですからAAですね」
僕の胸を見る、確かに存在を主張しているくらい膨らんでいるのにAじゃないのか。なんだろう、このなにかに負けたような悔しさ……。
「そんなに悔しがらなくても大丈夫ですよ? すぐに大きくなりますから。お母さまやお姉さまも胸が大きいようですし、胸は遺伝で大きさが決まるようなものですし」
「そうですか、良かった~……」
ってなに僕は口走ってるんだ!? 僕、昨日まで男の子だったじゃないか! なんで胸のサイズで一喜一憂してんの!? 頭抱えて叫びたい気分だよ!
「えーっと……ウェストは51センチの……ヒップが71.2、と。これなら服は全て1号ですね」
数値を聞いてるとなんだか僕ってメチャクチャ小さいような気がする。これって男の時の僕と比較しているから? それとも……。
「あの~? 僕って実はメチャクチャ小さいんですか?」
「ん~? お嬢さまくらいの歳なら平均くらいじゃないですか? 小学校高学年だとみんなこれくらいですし……」
しょっ、小学校……高学年……。僕、小学生に見られてたんだ……。
「あ、あの……僕、今年で高校生なんです……」
「ええっ!? あ、あの、失礼いたしましたっ!」
店員のお姉さんに全力で頭を下げられた。
思わず目の前が真っ暗になって試着室の壁で頭を打ち付けた。
僕……このショックから立ち直れそうにないよ……。
天を仰ぎ見ては試着室の白い天井が見えた。ああ、これが青天だったらなぁ……。
今の僕の目尻にはまちがいなく涙が溜まっていることだろう。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
初ブラの回ですね。女の子ならみんな通る道かと。
因みに明のサイズまとめ。
身長:***.*cm(身長は病院回にて発表。レッドが165センチ付近なので顔一個分近く低い明は……?)
B:66.5cm(UB:58.2cm)
W:51cm
H:71.2cm
見事に小学生体型です(苦笑)
高校生なのに小学生扱いとか結構屈辱的ですよね。
因みに服の1号ってのも最低サイズです。
フォーマルな服や学校の制服などのサイズは大体この『号』ってサイズで計ります。
因みに明の場合は1号でも大きいサイズなのでオーダーになる事でしょう(笑)
それにしても、体型の細かい数値設定は骨が折れました。
丸一日かかったんだもん。自分の小学校の時の数値と比較して作るとか結構大変でした(汗)
最終的にはついったーのフォロワーさんに教えてもらったサイトも利用したりして結構大事に……。
さて撃沈した明くんですが、まだサイズを計っただけです。
ええ、この後にもまだ猛攻は控えているんです。
明くんは今後の展開について行けるのでしょうか?次回をご期待ください(ぺっこり




