第13話 母さんのベッド!……という名の途惑い
みなさまお疲れ様です。
今回から第2幕の開幕です。
という訳で新しい展開の始まりのお話をおおくりいたします~。
(2012/11/12 体裁統一のためのチェック)
「――きて……きて」
不規則な調子で揺さぶられて首が痛い。それになんだか頭が重い……。
「あうぅ……?」
一体なに?
目を開けるとそこには――、
「うにゅう……ママ……?」
「あらあら? ママなんて呼ばれるのはなん年ぶりかしら~?」
「はえ……?」
頭がはっきりしてくると自分がなにを口走ったのかやっと理解した。
「やっ……あの、母さん。今のは違うんだよ」
嬉しそうに笑う母さんに慌てて答えた。
「なにが違うの~?」
「僕、ちょっと変な夢見てたからそのせいだよ」
「どんな夢かな~?」
「良く覚えてない……」
なんか変な夢だったような気がする。なんだったっけ……? とっても大事なことだった気がするんだけど。
「ねぇねぇ、もう一回ママって呼んでくれないかしら~?」
「ちょっと母さんっ」
母さんが抱き着いて来てとっても苦しい。
って、どうして母さんに抱き着かれて……。それにここ、母さんの部屋じゃないか。てことは今寝ているのは……。
「うぇえ!?」
そうだよ! どうして僕、母さんのベッドで寝てるんだよ! しかも母さんと抱き合って……。
「ねえ! どうして僕は母さんのベッドで母さんと一緒に寝てるの!?」
「あらあらどうしてでしょうね~?」
母さんの目が笑っていない笑顔が怖い……。
「答える気あるの……?」
「あるわよ~? 昨日泣き疲れて寝ちゃったからそのまま連れて来たんだけど覚えてないわよね~?」
「泣き疲れて……?」
ウソでしょ。そんなの覚えがないよ!? だって僕は昨日遅めの夕食の後――。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
大量の髪の毛のせいで一人で着替えることもできないから母さんに手伝ってもらうことになった。
「明ちゃん、今日は髪が長すぎてお風呂に入れないだろうからとりあえず着替えだけして寝ましょうか」
そう言って着替えを母さんから受け取ったんだけど、受け取ったのは女物のパンツとえーっと……姉さんがたまーに着ているこれってなんだっけ?
首をかしげて見ていると、
「それはキャミソールっていうのよ~?」
と母さんが教えてくれた。
なんとなく予想してたけど、こうも堂々と渡されると顔が引きつってしまう。
上は良いよ、タンクトップの変則的な物だって考えればまだガマンはできる。目下の問題はパンツ……うう……こんな小さいのはかないといけないのか~……。両手で広げてみても小さい……こんなので大丈夫なのかな?
「ほらほら、女の子がパンツを両手で広げて遊ぶなんてはしたないわよ?」
やけに鋭い母さんの声が聞こえた。母さんってしつけとかこうゆう時はうるさいからなぁ……。
「分かったよぅ……」
僕は観念して手伝ってもらいながらロングTシャツを脱いで、キャミソールを上から被った。着心地はなんかすべすべしてて落ち着かない。
そういえば、髪の毛に気を取られてて自分の体を見なかったけど胸を押さえるとちょっとだけ盛り上がってるのが分かる。
「女の子の体なんだ……」
「なぁに? 今さらそんなこと」
母さんが不思議そうに聞いた。
「だってさ、さっきまでロングTシャツの上にパーカーまで着てたからさ。体型良く分からなかったんだよね」
「ああ、そう言えばそうね」
それに加えて色々と心によゆうが無くて確認もしなかったし……。
「小さいけど胸が膨らんでるとかフクザツ……」
「でもいきなり胸が大きくなくて良かったわね?」
「どうして?」
「どうしてって、大きいと重心変わったりするし、肩凝ったりするし……」
そう言って母さんは自分の肩に手を当てる。確かに母さんって胸が大きいような……。
「そんなに肩凝るの?」
「う~ん……そのうち分かるわよ? お母さんも千夏ちゃんも胸が大きい方だし、そのうち明ちゃんも膨らむんじゃないかなぁ?」
自分の胸を見てみるけど、膨らむのが想像できない。
「なんか考えたくない……」
続いてハーフパンツを脱ごうとしてハッと気付いて目を反らした。そういえばハーフパンツの中にはなにもはいてなかったんだっけ……。
僕は目を反らしながらハーフパンツを脱いだ。
「あらあら……」
母さんが苦笑いをする。
「だってさ……トランクスがズルズル脱げるんだもん。それだったらはいてる意味が無いなって……」
そう言い訳だけしてパンツを手に取る。
「これ誰の?」
「安心して? さっきコンビニで買ってきたの~。最近のコンビニってすごいわよね~。ショーツまで売ってるなんて」
そうか~…女の子のパンツってショーツって呼ぶのか~…。
そんなことを考えながらはいてみる。現実逃避バンザイ。抵抗感があっても別のことを考えていればなんとでもなるもんだ。人間はすごい。
パンツをはき終わって、面積がすごく少なかった分ぴったりな感じがする……。
「うう……」
ぴったり過ぎて逆に気持ち悪い……。むしろ自分の下半身がどんな風に変化したのかがはっきり分かってしまった。
そうだよね。女の子になっちゃったってことはもうアレも無いんだよね……。そう思うとなんだか悲しくなってきた。
「どうしたの? 大丈夫?」
「だ、大丈夫……じゃないかも……」
すっごい気分落ち込んだのは間違いじゃないと思う。
「ほらほら泣かない泣かない」
「え……?」
自分の頬に手を当てるとだらだら涙を流してた。
「あ……ええっ!?」
「そうよねぇ……ショックよね~……」
母さんが僕を抱きしめて、
「だけど、泣ける時には泣いておいた方が良いから思いっきり泣きなさい」
と言った。
□◇□◇□◇□◇□◇――…
―――ってところまでは覚えてるんだけど……。
「泣き疲れて母親にしがみついて寝るとか……」
鬱だ……死にたい……。
「お母さんは気にしてないわよ~?」
「僕が気にするんだよっ! はぅ~……」
「カワイかったし、良い匂いがしたし、柔らかかったし……えへへ~……」
そう言って母さんは僕を強く抱きしめて、首筋に顔を押し付けて盛大に鼻で息を吸い始めた。
「ぎゃああああああ! 止めてっ! 止めてよぉっ!」
サバ折りだっけ? 相撲の技でそんなのがあったと思うけど、まさにその技をかけられている僕の腰が悲鳴を上げる。
「母さんギブギブ! ぎゃあ!?」
バタバタ暴れているとさすがにうるさかったのか、
「ちょっとお母さん! 朝っぱらからうるさいわよ!?」
と姉さんがドアを蹴破るくらいの勢いで入って来た。
「って……その黒いのって明?」
黒いのって……そういえば長い髪の毛で全身黒一色だっけ……。って、そんなことよりも今のこの状態を打開する救世主の登場だよ!
「そっ、そうだよぉ! 姉さん、母さんを離してよ! ぐぇ……」
ひぃっ、そんな足まで絡めて全力で力こめられたら、
「潰れる……潰れちゃう……」
「はぁ……。お母さん、もう朝ご飯の時間よ? いいかげん起きてくれないかな?」
「え~……せっかく明ちゃんやわらかくて良い匂いなのに~……寝汗も良い匂いなのね……」
「ちょっ!? 母さんそんなヘンタイだったなんてっ!」
なごりおしそうに言わないでよ。
「もう良い! 朝ごはんくらい今日は私が用意するから2人はゆっくり後で来れば?」
ええっ!? 待った! それってこのまま僕たち放置するってこと!?
「後、明の着替え。昨日言われた通り用意したからここに置いとくね」
そう言って姉さんは部屋を出て行く。
「ちょっと姉さんへるぷぅ! へるぷみー!?」
「弟よ! 強く生きるのよ! あ……今は妹なのかな?」
前半は力強く、後半は首を捻って姉さんはドアを閉めてしまった。
「明ちゃ~ん!」
「ひぃぃぃぃいいいい」
障害の無くなった母さんを止める者はもう誰もいない。僕はされるがまま、アリジゴクの様に布団に引きずり込まれた。
あれから10分くらい、精神をゴリゴリ削ってグロッキー状態の僕は母さんにベッドから両脇を抱えあげられていた。
「ほーらお着替えでちゅよ~」
「あぅ~……」
パジャマを無理やり剥ぎ取られてキャミソールとパンツだけの姿になっていた。
「は~い、これはいてね~……そうそう、で次はこれに袖通して~……うんうん……似合うわ~。それでそれで……――」
パァン!!
「ひぅ!?」
ぼーっとしてたら目の前で手をたたかれた。
「ほ~ら鏡見て~」
気付いたら僕は着替えさせられていて、母さんの鏡台に映った僕は間違いなく女の子だった。
大量の髪の毛は頭の左右で大きなお団子にしてまとめたツインテールのような感じになっていた。
服装は大き目のパステルグリーンのカットソーに茶系色のジャケット。それに合わせて黒色の半ズボンみたいなのをはかせられている。いやまあ、スカートよりかはマシなのかな? とは思うけど……すごく抵抗感じる。女の子女の子し過ぎてるよ……。
「カワイイわよ~?」
いや……カワイイと言えば可愛いかもしれないけどさ……。
「まだ寒いからニーソックスにでもする?」
確かに太もも半分まですそはあるけどちょっと肌寒い……でもここは断固として!
「ハイソックスでお願いしますっ!」
「え~……お母さんはどっちかと言うと――」
しぶる母さんの言葉をさえぎるためにあえて声を大にして叫ぶ。
「ハイソックスでっ! お願いしますっ!」
僕の精神力をこれ以上削らないために大事なことなので二度言わせていただきます。
「残念だわ~……」
そもそもニーソックスなんて女の子がはくもので僕がはくものじゃないよ! ……って、あれ? 僕は今女の子だったんだっけ? まぁいっか。
受け取ったハイソックスを手早くはこうとして前屈みになったとたんにバランスを崩して前に倒れそうになった。
「うわっと」
「大丈夫?」
母さんが心配そうにかけてきた声に軽くうなずく、頭が重くて倒れそうになったんだ。だいぶ頭の上でまとめたはずなのに前屈みになったら地面に着いちゃうとかどれだけ長いんだよ僕の髪。
ハイソックスをはき終えて振り向くと母さんがもう服を着終えていた。着替えるの早いなぁ……。
母さんはさっさと靴下はいて軽く体を捻った後、
「さ~て、今日はいっぱいやることあるからガンバって行きましょ~!」
と元気に言った。
でも、もう僕の精神は早くも限界だよ……。
とりあえず、
「そうだね……」
と相槌を打ったけど母さんは許してくれなかった。
「もっとここは元気に『おー!』って言うところよ? さんはい! ガンバって行きましょ~!」
「お~……」
いやもう放っておいてよ。もう直ぐ浮上すると思うから……。
「イヤイヤそうだけど仕方ないわね~……。ほら朝ごはん食べに行くわよ~」
「は~い……」
僕は母さんに引きずられるようにダイニングへと足を運ぶのだった。
― つ・づ・く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。
という訳で第2幕をおおくりいたしました。
幕間がシリアス過ぎただけにシリアスで開始すると思っていた皆様。
シリアスじゃあありませんでした。ごめんちゃい。
でもベッドと着替えだけで1話取るとか結構きついですね~。他の作品でこんな展開あるのかな?
ちなみに今回の推理要素は明くんの髪型です。
次回掲載時に明らかになると思うので推理の猶予期間はそこまでという事で~(笑)
それでは新しい展開に突入したばっくわ~どまじっくを今後ともよろしくお願いいたします(ぺっこり