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ばっくわ~どまじっく  作者: 水姫 七瀬
第1幕 始まりの不幸
10/57

第8話 対応できない!……という名の不幸

皆さんお疲れ様です。

新しいお話をおおくり致します。

(2012/10/27 体裁統一のためのチェック)


「このバカモンがあああああああああ!!!!


 フシャーっと背中の毛を逆立てて、黒ネコさんがナイスミドルなダンディー声で罵声(ばせい)を上げています。

 僕もなにがなんだか分かりませんが、相当(そうよう)お猫さまはご立腹(りっぷく)のようです。テシテシとねこぱんちを妖精さんの頭に打ちこんでます。


「エルカ! お前のおかげでどれだけシステムにエラーが起きたか判っているのか!」


「はぅ~……ごめんなさ~い……」


 ここは僕の住んでいる高根市の市役所、その5階にある魔法少女担当課の課長室です。

 その課長室に僕と妖精さんとレッドさんが連れて来られたんだけど、まさか課長さんがネコだとは思わなかったよ。


「佐伯明君、とんだことに巻き込んで済まなかったね」


「は? え? でも僕も色々と原因作ったみたいで……だからその~……妖精さん解放してあげてもらえませんか? じゅうぶん反省しているようなので……」


 いやね、ねこぱんちと妖精さんの格闘なんてある意味ファンシーな展開はすごく見ごたえあるんだけど、かわいそうな気もするんだよね。


「ううぅ~…佐伯さん良い子だ~…」


 妖精さんが僕の後ろに隠れた。ねこぱんちとは言えサイズ的に痛そうだしなぁ。


「キミは甘過ぎだ……」


「え?」


 レッドさんが、ため息を吐きながらボソッと言うもんだから気になって仕方ない――と気付いたらお猫さまが、

「に゛ゃぁああああああ!!!!」

と怒声を上げながら僕に(おど)り掛かって来た。


「うわぁ!? 止めてよネコさん!」


 お猫さまは声の通りオスだった。オスのアレが額に押し付けられて正直ゲンナリした。

 なんでも良いけど頭の上で格闘するのはよして欲しい。タダでさえ髪の毛長くなってるのに……。

 お猫様は僕の頭の上で格闘をして妖精さんを(くわ)えると、机に着地して妖精さんを足蹴(あしげ)にした。

 乱れた髪を直そうと思ったけど半分諦めた。僕の髪の毛は現在コピー用紙のダンボールに(まと)めて突っ込まれてる。

 イスを勧められたんだけど、髪の毛が邪魔過ぎて普通に座れなかったんだ。仕方なく地面に広げるには長すぎる髪を、ところどころ他の課の職員から借りた髪留め用のゴムで(まと)め上げて、ダンボールにどぼんだ。本当に長すぎる髪って邪魔だよね。


「それで佐伯君」


「はい?」


 妖精さんの上でふんぞり返ったお猫さまがシリアスな声で話しかけてきた。ギャップ激しいよこの人たち。いやネコと妖精さんだけどさ。


「話が前後して申し訳ない。君の処遇(しょぐう)なんだが――」


「元に戻してくれるんですよね!?」


「申し訳ないが対応できない」


 お猫さまが首を振りながら答えてくれました。


「君の身体変化は私たちの手には負えないものなのだ」


「でも、これ魔法なんですよね?」


 魔法で起きたことなら魔法で元に戻せるんじゃないの? ていうかそうゆーモノだよね? 普通。


「そう、魔法が原因なのは確かだ。ただ、我々の魔力ではどうしようもないのだ」


「どうゆうことですか?」


「ではまず、魔法少女システムの一部の話をしようか」


 お猫さまがそう言うと腕を組む。なんとなく器用だと感心してしまう。


「魔法少女システムとはもう歴史の教科書にも出てくる通り、28年前に造られたものだ」


 確か歴史の教科書でならったなあ。28年前異世界との門の開閉(かいへい)方法が偶然発見されてしまったのが原因だったんだっけ。

 この門は、門の向こうの世界の魔法技術によって開閉(かいへい)するから、こっちの世界の人は自分の意志で門の向こう側に行くことができないんだ。

 一方的な侵略(しんりゃく)をされて世界は一週間でボロボロになってしまった。

 原因は近代兵器と魔法では魔法の方が強いということ。

 近代兵器は破壊(はかい)されれば再生産による供給(きょうきゅう)を行わないと戦力を補充(ほじゅう)できない。それに対して、魔法は破壊されることは無いし、魔力が()きても休息を取れば元に戻る。

 また、魔力障壁(まりょくしょうへき)なる能力は魔力をともなわない攻撃を受け付けないという特性を持っているために銃弾やヤワなミサイルじゃ攻撃は通らないんだ。

 だけど、そこに異世界から侵略(しんりゃく)を止める者たちが向こう側からやってきた。

 その存在は自らを守護者(ガーディアン)と称して世界中の魔力を持つ女の子たちと協力して魔法少女システムというものを構築した。

 世界を守護するための魔法少女達は激しい戦いとともに、侵略者たちを討ち取り、見事世界を護ったのだった。

 というのが教科書の説明のあらまし。

 実際はもっと面倒なことが一杯書かれていたけど頭の悪い僕にはそのていどを思い出しただけでも上デキだ。


「魔法少女達は任期を終えると1つの権利が与えられるのだ」


「権利?」


「任期の終わった魔法少女自身の可能性の範囲内であれば『願いごとを1つ叶えることができる』というものだ」


 てことは魔法少女は働いた報酬(ほうしゅう)として『願いごと』を1つ叶えてもらうという認識で良いのかな?


「はぁ、それが僕になんの関係があるんですか?」


 僕は首をかしげた。

 だいたい魔法少女になったのはついさっき。略式契約だっけ? でなったんだから、任期を終えた後にもらえる権利とは全く関係ないじゃないか。


「君の身体が女性体になってしまったのはこの『願いごとを1つ叶えることができる』というものに関係しているのだ」


「はぁ? 僕はまだ任期どころかさっき略式契約しただけなんですから、その話は関係ないですよね?」


「本来ならばそうなのだが……君の場合はかなり特殊な部類に入る。むしろ、魔法少女システムの欠陥(バグ)になるだろうか。君自身の『願いごと』では無く、他の者の『願いごと』で起きたことなのだから」


「いったい誰の『願いごと』なんですか?」


 大体魔法少女で働いた人の報酬(ほうしゅう)で僕が女の子になったなら、僕の知り合いに魔法少女がいるってことになるよね? でもそんな人全く思い浮かばないんだけど。


「それは後で本人に聞いてくれたまえ。今、その本人をここに呼び寄せている最中だ」


「はぁ……」


「それで、話を続けるよ? 君の処遇(しょぐう)だが、2つある。1つはこのまま契約を破棄(はき)して一般人に戻ってもらうこと。2つ目は正式契約を交わして魔法少女になってもらうことだ」


 今までの生活か魔法少女の生活か選べってことか。


「前者には危険が(ともな)う。君は侵略者に認知されてしまった。これからも狙われ続けることになる可能性が高い」


「そ、そんなぁ!? なんとかならないんですか!?」


「申し訳ないが我々ではなんともしようがない」


 じゃあ結局、僕は『魔法少女になる』という選択肢(せんたくし)を選ぶしかないじゃないか。いや、なんとなく話の筋から判ってたんだけどさ……。


「後者は我々としてもお願いしたい。魔法少女になることで自衛ができるようになることはもちろん。任期が終わったら『願いごとを1つ叶えることができる』権利を与ることができる。それを使えば君は元通りの男性体に戻れる」


「僕が魔法少女をやれば元に戻れるってことですか?」


「君が『男の子として生活をしていた可能性』を持っていることは証明されている。それに、君は例外中の例外で2人分の魔力をその身に宿しているから『願いごと』の叶う可能性もかなり高い。『願いごと』で男性体に戻ることはできるだろう」


「2人分?」


「そう、君が元々持っていた魔力に加えて他者の『願いごと』の魔力の2人分だ」


 つまり、僕は1人で魔法少女2人分の力を持っているということなのか……。

 その時卓上の電話が鳴り響いた。お猫さまは器用に両手で受話器を抱え上げると会話をし始めた。


「私だ。……うむ、不測の事態だったゆえにご足労願ったのだ。……うむ、5階魔法少女担当課の、うむ……課長室までよろしく頼む」


 誰かがこの部屋に来るらしい。さっきお猫さまが言っていた僕に『願いごと』を使った人なのかな。

 お猫さまは受話器を置くと僕の方に向き直った。


「とにかくだ。今は心の整理が付かないと思うので月曜日までに考えて来てくれたまえ」


「はぁ、月曜日ですか?」


 なんだか中途半端(ちゅうとはんぱ)猶予(ゆうよ)だなあ。僕としては今答えを出さなくても良いのならそれに越したことはないけどさ……。明日でも良いじゃない。


「魔法担当課と言ってもやってることはお役所仕事。公務員だ。日曜日は侵略者が現れない限りは休日なのだよ」


「はぁ……」


 確かに日曜日に市役所なんて開いてないしなぁ……。お猫さまだってサラリーマン(?)。休日出勤なんて無理を言わせるのもなんだか忍びない。


「ああ、さっき言い忘れていたが、魔法少女の任期は18歳までだ。つまり高校を卒業するまでだな。良く考えると良い」


 それを早く言って欲しい。冗談じゃない。後3年はこのまま女の子として過ごさないといけないの!?


「もっと早く任期を終わらせることはできないの!?」


「君の左腕の腕輪に石がはめ込まれているだろう?」


 左腕を見ると確かに銀色の腕輪に黒い石がはまっていた。


「その石には『願いごと』を叶えるための魔力蓄積機能(まりょくちくせききのう)が付いている。個人差はあるが最低でも2年は溜まらないだろう」


「てことは男に戻るにしても最低で2年はこのままなのか~……」


「残念だが3年だな。任期は任期だ。『願いごと』を使用するためのキーは任期満了時にしか支給(しきゅう)されないのだ。今すぐに渡すことはできない」


「そんな~……」


 コンコン――とドアを叩く音が聞こえた。多分さっきの人が部屋に到着(とうちゃく)したんだろう。全員で部屋の出入り口のドアに注目する。一体誰が来たんだろう。


「ああ、入りたまえ」


 お猫さまがそう言うとドアが開いた。そこにいたのは……、


「ええっ!? 母さんっ!?」


 僕の母さんだった。




                         ― つ・づ・く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



今回はなんだかセリフ多い回で申し訳ないなぁと思いつつおおくりしました。

とうとつに出て来たお母さんの今後は如何に?

最近リアルでいろいろ忙しくなってきて遅筆気味ですがどうか今後もお付き合い下さいませ(ぺっこり

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