私と運命の番の間に飛ぶのは愛?それともアレルゲン!?マスクと空気清浄機が必須です!
今度は、異種族間の恋愛について、ちょっとした疑問を広げてみました。
誰かが少しでも笑ってくれますように。
この世界は誰もが運命の番で結ばれる。
種族なんて関係ない。
それが常識だ。
私の運命の人は、どこにいるのだろうか?
———
ある日仕事終わりに、同僚でもある友人と街を歩いていると、急に胸が高鳴った。
「嘘……!今日!?」
まだ顔も見えない。
でも待ちわびていたからわかる。
正直、仕事の後だから、小麦粉があちこちに付いている。
こんな状態じゃなくて、お洒落した私を見てほしかった。
前から来る、あの人は——
私の運命の——
「ぶえっくしょおおおおおおい!」
「え!?カッツェ?ちょっと急にどうしたの?大丈夫?」
隣を歩く友人が、驚きつつもティッシュを差し出してくれる。
涙が、鼻水が、まるで運命の番に出会えた祝福をする泉のように溢れる。
「はーーーっくしょん!ぶえっぶえっ……ぶえっくしゅん!」
「おいおい、大丈夫か?どうした、急に?」
嬉し涙か、もしくはアレルギー反応か、止まらない涙で霞んだ視界の向こうで、待ち侘びた運命の番が、私と同様に、くしゃみと涙が止まらない。
双方の友人たちが困惑する中、私と彼は必死に意思疎通を取ろうとする。
「あっ、あな、ぶえっくしゅ、あなたはわたしの、ぶえっくしょおい!」
「はっくしゅ、ぶえっぶえっ、あなたはうんめ……はっくしゅっ!」
全く会話にならない。
彼のことを知りたいのに、何もわからない。
涙の滝で彼が見えない。
相手も同じように、何かを伝えようとしてくれているが、苦戦しているようだった。
私は止まらないくしゃみと、涙と鼻水を垂れ流した状態の中、ジェスチャーで運命の番に会えた喜びを伝えようとする。
「へっくしっ!」
(会えて心から嬉しい!)
私が何かを言いたがっていることに気づいた友人が、ジェスチャーを解読し始めた。
「私は?……あなたの?……え?心臓がどうしたの?心臓が痛い?」
「はっはっはーっくしゅ!」
(違う!)
「違う?痛くないのね。え?心臓じゃない?心?心なの?……心が……痛い?」
「ぶえっくしょい!」
(違うってば!)
「ちょっと怒らないでよ!もう一回!心は合ってるのね?心がどうしたの?破裂?」
「っくしゅ!ずびーーーっ」
(破裂してない!)
「それ、嬉しいとか喜んでるって言いたいんじゃないんですか?」
「え?心が……嬉しい?」
彼の友人も一緒になって、私の言葉を彼に伝えようとしてくれている。
肝心の運命の番は、私と同じでくしゃみと涙と鼻水が止まらず、私のことが見えているのかさえもわからない。
「心が喜んでいるってこと?ちょっと!それって運命の番ってこと!?キャー、良かったじゃない!」
友人は、まるで自分のことのように飛び跳ねて喜び、そのまま抱きつこうとした。
しかし、私が涙と鼻水でぐしゃぐしゃであったことを思い出し、若干引いた笑顔で、そっと私の肩を叩いた。
そして全く話が出来ない私たちの代わりに、友人たちがお互いを紹介してくれた。
「彼女の名前はカッツェ。猫の獣人で、年は24歳。実家のパン屋でパン職人をしているわ」
それを聞いた彼の顔が驚愕で染まる。
「彼の名前はゼーダー。杉の木のドリアードで、年齢は26歳。王立薔薇園で働いているよ」
——杉!!
しかも薔薇園!?
目と鼻が溶けてしまう……
私の運命の番は、花粉そのものだった。
私は、重度の杉花粉アレルギー。
薔薇も駄目だ……
どうやら彼は動物、特に猫の毛にアレルギーがあるようだ。
しかも、私の服に付いた小麦粉を見て、何だか痒そうにもぞもぞしている。
愕然とする私たちを見て、友人たちも何かがおかしいと気づいたようだ。
「……カッツェ、あなた確か杉の花粉症、あと薔薇にもアレルギーがあったんじゃ……」
「ゼーダー、お前、俺んち来ると同じ症状出てたよな?部屋に鳥と猫入れるな、って言ってたけど……猫アレルギーか!?しかも小麦粉食べられなかったんじゃないか!?」
「「……運命の番なのに……」」
なんてことだ。
運命の番に会えたというのに。
お互いがお互いのアレルゲンだなんて……。
そのとき、ゼーダーが涙と鼻水とくしゃみを必死に抑え、声を出した。
「てが……み……いや……で……でん……わで……はなそ……う」
確かに、文通はお互いのアレルゲンが手紙に付着する恐れがあって危険だ。
ぼーっとしてきた頭で、必死に考える。
無菌スーツがいる。
あとアレルギー専門の名医。
いや、聖女か?
ありがたいことに、友人たちが私たちの代わりに、電話番号を交換してくれている。
私の運命の番は、私と同じように、いい友人を持っているようだ。
そんなところにも心がときめく。
しかし心は相手を求めているのに、体が勝手に後ろに後ずさる。
運命の番なんだ。
アレルゲンなんかに、負けたくない。
涙で腫れ上がった目で、彼を見つめる。
彼も、涙が溢れ続ける目で私を見つめ返す。
心で通じ合う。
次の日、新聞の片隅に小さな広告、そして質問コーナーに不思議な質問が載った。
——※急募※運命の番に対するアレルギー対策、求む
——※至急※聖女は空気清浄機何台分ですか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
花粉症の季節ですね。
皆さま無事ですか?
私はバラ科アレルギーで果物がほぼ全滅、さらに猫アレルギーもあって大変です……。
「無菌スーツ?聖女?これから二人は大丈夫?」と思った方、ぜひ感想をお聞かせください。




