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かまくら

作者: 唯野葦也

寒いので温かくなる話を。

 こんこんと雪が降る。

 犬駆けまわり子供は騒ぐ。


 息子たちが雪にときめく頃合いの年に来たこの地域には珍しい豪雪。

 折角建てた一軒家を壊されまいと大人はデスクワークで壊れかけの腰に活を入れ除雪する。

 電車も止まり会社が合法的に機能しなくなったのに、大人という職業は年中無休で営業しなくてはいけないものらしい。


「よっ、こいせ!」


 買っておいてよかったシャベル。この時のため、なんて殊勝なGETではなく。

 菜園なぞ嗜もうとした妻にせがまれ買ったはいいものの、名の通りお蔵入りになった死蔵品である。

 あらかた屋根から雪を落とし一息。しかし庭にも白、白、白とついでに子供たちの足跡がたくさん。

 子供の頃ならこのままダイブしただろうけど、この年になるといかにソレがばっちぃものか識かってしまう煤けた背中の哀愁よ。


 子供が雪を食べようとするのをそれとなく注意しつつ、梯子を下りる。

 二階のフロアに入るなり愛しかった妻から雪で部屋を汚すなと叱られる。

 労いの言葉はないんですか無いんですね仕方ない。事前に自分で用意してた着替えと着替え入れに放り込んで真新しい防寒具に着替える。

 若かったころ妻とスキーに行った時、レンタルより定期的に行くならと買ってそれっきりだったスキー用の防寒具。暖かさが段違いである。

 何故また防寒具を着るかというと、いつも構ってやれていないけどこれでも愛息子たちは可愛いものでして。

 せっかくの雪だ。子供の頃の憧れかまくらなんぞ作ってやれば喜ぶのではと。


 まぁ本音は子供の頃の憧れを叶えたい心なのかもしれないが、本心では子供のためだという大義名分を言い聞かせる。



 それから数時間後かまくらは出来た。まぁ積もった山をくり抜いただけの簡易版であるが。

 レンガ作りが本当は作りたかったが、熟練度も経験値もないので妥協。自分が白壁と格闘してる間にどうやらお昼御飯が出来てたらしい。

 子供たちは雪で遊んでご飯も食べてお昼寝中。なんて良い御身分なんだ。こっちがせっかく玩具を用意したというものなのに。

 いや、子供とは昔からそういうものであったな。そう物思いに耽りながら外でリビングを見てると、不意に温かい匂いがした。



「全く、貴方が一番雪ではしゃいでるじゃないの、はいこれ。お雑煮よ」


 言い訳を理路整然と説きたかったが、半分程度だと思いたい急所を突かれぐうの音も言えずお椀を受け取る。よく見れば妻の持つお盆にはもう一つのお椀と箸が二膳置いてあった。


「せっかくだし、かまくらの中で食べましょ、崩れたりしたら怒るからね?」


 そう不敵に微笑みながら先にかまくらに入り啜る妻を見ながら、手に残るお雑煮を食べてすらいないのにどこかポカポカする家族の大黒柱なのであった。



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