正史照合報告 ~ワタル王治世の500年構造~
俺は遠隔でリックの講話を見聞きしている。
隣にいるエリザベートにも意識共有していた。
「エリザベートどう思う?」
「魔王キコですか? 紫の呪いって完全に魔素汚染ですよね?」
「そうだよな、、、魔王キコも多分転生者か転移者だな。多分魔素汚染の拡大防いでたんだろ。」
「そう言われるとしっくり来ますね。魔王の侵攻は魔素汚染の土地だけです。魔素汚染の原因を魔王キコに被せてるだけで魔素汚染の原因が魔王キコとは限らないです」
「勇者ワタル以外が魔素汚染にやられた、という事は魔王の周辺の方が魔素が濃かったという事だな。西の方から魔素汚染始まったと言ってたな。一度調べてみるか。」
「そんなに過去の事気になるのですか?」
「いや気になってるのは過去の事じゃないぞ? 魔素はこの世界に必要な物であり害悪でもある。俺は魔素を消費する為に生み出された存在だ。万が一再度魔素汚染が広がったとして、俺が大量の魔素を一度に取り込めるのか、それとも俺が魔素に飲み込まれるのか、きちんと確認しておかなければならないだろ?」
「それはまずいですね。メイズ様、今度大量の魔素を取り込み練習をしましょう。きっと訓練で取り込む量増やせる筈です!」
「いや無理だろ、、、まぁ多分魔素汚染はもう起きないと思うがな、、、」
「そうなんですか?」
「リックに幾つか確認してからだ。後でリックとゆっくり話そう。」
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夕食が終わり、リックとジミーを呼び出した。
「疲れているところ悪いな。今日1日見学してみてどうだった?」
「想像していた状況と違いすぎて理解が追い付いていません。大規模農場、学び舎の環境、子供達の知識欲、催眠の使い方と効果……どれをとっても世界が変わると言っても過言ではないと思いました。」
リックが答える。
「この環境のダンジョンを破壊しようとしていた事を、今では恥ずかしく感じています。」
とジミーが珍しく発言した。
「それは仕方ないだろ、、、町にヴァンパイアの眷属や催眠に侵されている商人達が来て『一緒に来てくれ』と言われたら誰でも疑うだろ。」
「そう言って頂けると助かります。」
「神官の二人にはシグの街の貧民をここに移住させる事をお願いしたいんだが、どうだろう?」
「教義的には反していないので特に問題はありませんが……あまり大々的にやるのもまずいのですよね?」
「そうだな、最初はあまり目立たない方が良いだろう。バレたらバレたでその時だ。どちらかというとお前らの方が問題だと思うぞ? 幾ら教義に反していないとはいえダンジョンに人を送り込んでいるとバレたら問題になるだろ?」
「私としては、教義に反するかどうかが問題なのであって、それが人助けになっているなら幾ら糾弾されても平気です。」
リックが答える。
「私もここに来て住民の笑顔を沢山見ました。シグの街やヴェルクの各村では見る事の無かった表情です。ここに連れて来る事に後悔は無いと思います。」
「それなら良かった。ではシグの町の貧民街の住民に助けの手を差し出してやってくれ」
「かしこまりました」
「それと先程の講話を聞かせてもらって、幾つか聞きたい事あるのだが良いか?」
「どちらで聞いていたのですか?」
「俺はダンジョン内ならどこでも見れるし聞けるんだ。ダンジョン=俺だからな」
「ダンジョンに意思がある、というのは本当だったのですね! 数多の冒険者や研究者が唱える話ですが、確たる証拠が無いので棚上げしている話がここで解明するとは思いませんでした。」
「ダンジョン研究者なら俺に興味持つか、、、良い話聞いたな。その内そちらにも勧誘してみるか」
「そうですね。メイズ様に聞く事でその分野の研究は一気に進みますね」
「ダンジョンは今発見されているのは幾つぐらいあるんだ?」
「ダンジョンは均等に出来る、という通説があります。一番大きいダンジョンが王都に一つ。王都から東西南北の都市に各一つ、大体200kmから300km。唯一、東南500kmの所にある辺境伯領だけ例外です。大きいと言われるダンジョンはその6つです。更にその都市の東西南北100km程度離れた所にダンジョンができました。シグの町は辺境伯領の南にあるダンジョンを中心に栄えた町です。王国はダンジョンと共に栄えたのです。」
「ん? シグの町にもダンジョンあるのか?」
「既に攻略済みです。」
「なるほど。だから話に出てこなかったのか。いつ頃攻略されたかわかるか?」
「三十年ほど前だと思います。S級冒険者が攻略したそうです。」
「ダンジョンコアがどこに行ったかとか分からないよな」
「領主様なら知っているかもしれませんが、私どもでは分かりかねます。」
「分かった。ありがとう。」
「それで話が大分逸れたが、講話を聞いていて気になった点だがな。ワタル王の在位は何年ぐらいだったんだ?」
「25年程度です。先程言ったダンジョンを探し出し、モンスターが溢れない様に対策をして、国が平穏になると共に御逝去されました。享年56歳と聞いています。」
「ワタル王国建国は何年前なんだ?」
「一昨年、建国500年迎えました。」
「ワタル王の子供がその後王位を継いだ?」
「ワタル王には子供がいませんでした。公爵の子供を養子に迎え、王位継承の準備はしていたそうです。その子供が王位を継ぎました。名前をタケル=ヤマトと名乗る様に言い、王位に着くときにヤマト姓を名乗る慣例になりました。現在の王の名はベンジャミン=ヤマト様です。
その後、この国の王位は5人の公爵が協議の上、持ち回り制になりました。」
「ワタル王は結婚しなかったのか?」
「何故だか分かりませんが、ワタル王は結婚しませんでした。それを周りがとやかく言う訳でも無かった為、何か先天的な障害があったのでは無いか? という風説が流れていた様です。」
「ワタル王を支えて居たのは公爵か? それとも腹心がいたのか?」
「公爵五家は全てワタル王が叙爵されたので忠誠度は高かったと思われます。更に宰相イト様と言う方がまとめていたと伝えられております。」
「前の王族や貴族はどうなったんだ?」
「以前の国は現在のワタル王国程の規模はありませんでしたので、貴族と言ってもさほど人数いた訳では無かった様です。前の王族と一緒に辺境の地に赴いた様です。」
「ん? もしかして初代辺境伯って前王なのか?」
「はい。但し、あくまで平和的譲渡で他意はないとしつこい程記録に残っています。」
「なるほど、大体わかった。又、質問あったら聞くかもしれないが、今日のところはこれぐらいにしておこう。疲れていたところ悪かったな、ゆっくり休んでくれ」
ワタル王の在位期間、建国から500年の流れ、
そして王族や貴族の継承の仕組み——
物語の舞台となる国家の “骨格” が明確になった回でもあります。
歴史というのは、細部が分かるほど
その国の価値観や制度の理由が見えてきます。
今回描いた内容は、リックが語った正史をメイズが淡々と確認しただけ ですが、
それでもこの世界の背景が一段深くなったと思います。
ワタル王国がどんな形で500年続いてきたのか。
その上で、今メイズが作っている国はどこへ向かうのしょうか。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
今日もダンジョンは、静かに動いています。
もしメイズの考え方に少しでも共感してもらえたなら——
ぜひ、あなたの“魔素”を分けてください。
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