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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第三章 外界統合と福祉支配の拡張 ~人道的管理による社会統合モデルの確立~

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【閑話】天使の憂鬱 ~“負け癖”のある天使が初めて笑った日~

またダンジョンか……

私の名前はミカエル。

先ほど生成され、名付けをされたらしい。


私は天使族の中でも最下層の存在だ。

それでも「天使」というだけで名付けを行う奇特な主も、たまに現れる。


だが――ダンジョンでの名付けで幸福感を味わったことは、一度もない。


そもそも私を含め、生成されたモンスターは魔素で存在を維持する。

だが天使という種族においては、魔素は毒だ。

天界で聖気で存在を維持するのが本来の姿だからだ。

とはいえ天界で創生されても名付けされた事が無い為、記憶はほとんど無い

天使を生成するダンジョンマスターは天界での私達の能力を期待して生成するのだろう

しかしダンジョンに存在する天使は総じて力を万全に使えない。


さらに、前述した種族能力に期待されて深階層に配置されることが多い。

深階層ほど魔素濃度が高く、天使は弱体化するにもかかわらず、だ。

ただの生成ならともかく、名付けされてしまうと主も後に引けないのだろう。

それを告げても嫌な顔をされ、結局深階層に設置されることが多かった。

だからいつしか、告げることをやめた。


冒険者が来たら精いっぱい戦う。

だが大した力は出せず、そのまま消滅して終わりだ。

いつしか、それが当然だと思うようになっていた。


今回は四人生成されたようだが、全員同じ考えだろう。

私たちは天使という種族、階級の意思という同じ存在から生まれたのだから。


「お前らには今からリンの村に行って神官を説得してもらう」


今回の主から下された命令は、予想外のものだった。


……なぜダンジョンから出るのだ?

神官を“説得”?

戦わないのか?


「神官を倒す……のではなく、説得ですか?」


この天使チームのリーダーは私――という意味不明な確信だけはある。

勝手に言葉が出てしまっていた。


「そうだ。俺の存在を怪しんでいる神官がこちらに向かって来ている。

 俺に敵対する意思はないので素直に言うことを聞いてくれと頼んでくれ。

 一度ここを見てもらってから、敵対するかどうか選んでほしいと伝えてくれ」


「了解いたしました。やらせていただきます」


その瞬間、状況確認の情報が脳内に流れ込んできた。

どうやら私にやる気がなかったため、忠誠度が足りていなかったらしい。

最初の命令に興味を持ったことで情報が流れてきたのだろう。


思えば、今までも情報が何もないままダンジョン内に配置されていたことがあった。

来た冒険者を倒すということしかしていなかったから、気にも留めていなかったが。


今回は――面白そうだ。

主は私たちに戦闘能力を期待していないらしい。


生活型ダンジョン?

ダンジョンに百名の人間が居住済み?

低階層での催眠や治療、採血が主な業務で、居住者の精神安定を図るのが仕事?!


よく分からないが、それが望みというなら応えよう。

破壊より救済のほうが、私たちは得意だ。

_________________________________

ダンジョンを出て、村の近くで待機している。

先ほどまでヴァンパイア族の仲間と共に、村人全員を眠らせた。

その後、村から離れて待機しているところだ。


「天使の連中、出番だ。よろしく頼む」


その言葉と共に、私たちは村に向かって飛び立った。

敢えて目立つように、光魔法を展開しながら移動した。


「初めまして皆さま。お出迎えありがとうございます。

 私はエリザベート様より出迎えの使者を賜りました、ミカエルです。」


「同じく、ガブリエルです。」


「同じく、ラファエルです。」


「同じく、ウリエルです。」


「エリザベート様一行は、もうすぐ到着されます。

 そこで神官のお二方にお願いがあります。

 聞き入れていただけますでしょうか?」


神官二人が顔を見合わせ、一人が答える。


「何でしょうか? お願いの種類によりますが」


「こちらの魔封じの首輪をつけていただきたいのです。

 あなた方からは敵意が隠しきれておりません。

 我が主エリザベート様は、場所によっては王より貴重なお方です。

 そこまで敵意を見せられている相手を、御前にお通しするわけにはいきません。

 お分かりいただけますでしょう」


「断った場合は?」


「このままシグの町にお帰りいただくしかございません。

 こちらはお顔を合わせて、実情と今後の対策をご相談したいだけですので」


「あなた方は神の使徒ではないのですか?」


「神の使徒です。

 メイズ様という現人神を、信仰の対象にしております。」


子供たちが騒ぎ始めた。


「メイズ様って神様だったのかー! 確かに納得です!」


「あれだけの事、普通じゃできないもんね!」


神官二人は子供の邪気の無さに当てられたのだろう。

顔を合わせ、頷き合った。


「分かりました。魔封じの首輪、受け入れます」


「ありがとうございます。その言葉だけで結構です。」


「……?」


「敵対する気が無くなったのですよね?

 メイズ様は『受け入れます』というその言葉が魔封じになると仰っていました。

 誇り高き神官が、自ら発した言葉を翻すような事はしないだろうと。」


この場のリーダーであるジャックさんに念話を飛ばす。


(首輪なんかつけてみろ、それ自体が侮辱行為だ。

 首輪をつけられた事が心の奥底で小さな炎となり、

 後で燃え上がり暴れかねない。

 プライドってのが一番厄介なんだ。

 ポイントは最初だけなんだ。出鼻を挫いてこっちの流れにしてしまえば、何とかなる。

 とも仰ってましたけど)


ジャックさんが吹き出してしまい、周りが訝しげな顔をしたので誤魔化すために大きめの声で伝える。


「到着されたようです」


ケルピーの大型馬車が二台、村に到着した。


こうして、私たちは無事に最初の任務を果たした。





天使という種族がダンジョンに出る

それ自体に違和感があります。


魔を扱うダンジョンと聖を扱う天使

そこには確実に大きな隔たりがあり、

それは解決不能な筈です。

結果深層階に置かれ、力を封じられ、

ただ消耗されて終わること。

それが彼らの当たり前であり、むしろ 神々の作戦ではないのかと思えてしまいます。


弱兵が相手にいれば、神々は常に優位に立てます。

だからこそ、天使という“生成可能な戦力”を、わざわざ用意している。

そんな事まで自然と考えてしまいます。


メイズは彼らに戦闘を求めず、

“敵意を消すための最初の一歩” だけを命じました。


その行動原理はいつも同じです。

力ではなく、構造で相手を動かすこと。

今回の神官たちも、その構造の中で、自然と流れに乗せられていきました。


天使たちにとっては、これが初めて

「敗北以外の結末」を経験した日でもあります。


彼らが救済に向いているという事実は、

メイズにとっても、この世界にとっても、

これから大きな意味を持つかもしれません。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

今日もダンジョンは、静かに動いています。

もしメイズの考え方に少しでも共感してもらえたなら――

ぜひ、あなたの“魔素”を分けてください。

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