初来国観察録 ~異質さが調和へ変わる瞬間~
2台の馬車に分かれて乗りダンジョンに戻って来た。
ケルピー馬車なら2時間ちょっとだ。
囚人達が道を作っているがまだ正式開通までには時間がかかるだろう。
今回は最低限馬車1台通れる分だけ先に通した。
獣道に毛が生えた様なもので、ケルピー馬車以外の馬車では通行不可能だ。
到着したら先ずは食事だが、総勢27名ともなるともうパーティーの様だ。
場所は殺風景な食堂だけどな。
パーティーの準備が出来るまで
デイビッドを除く4人と神官の2人にはダンジョンを見学して来てもらおう
先ずは30分ぐらいでぐるっと見て回るだけで印象は分かるだろう。
「教義的に何か食べれない物とかあるか?」
神官二人に聞いてみたが特に駄目な物はないそうだ。
それだけ聞いたら送り出す。
案内人はジャックとエリザベート、マックスとブレンダもつけた。
パーティー参加の人数は
ヴァンパイア5名、天使4名、眷属1名、人間17名
俺は含めて居ない
「天使族は食事するのか?食べるなら何が好きとかあるのか?」
ミカエルが答える
「特に食事は必要ありません。今日は折角なので頂きますが好き嫌いも特にありません。」
性別も種族も体格も様々な参加者だし、
今日はバインキング形式にしよう。
大皿に
炒飯、ペペロンチーノ、焼きそば、
卵スープ,サラダ,唐揚げ,焼き肉、スクランブルエッグ
デザートコーナーに
カッププリン、カップケーキ、カップゼリー
飲み物は
オレンジジュース、牛乳、ビール、ワイン、水
こんなもんで良いだろ。
厨房から普段使ってる皿、カップ等を持って来させて
準備は完了だ。
暫くするとジャック達が戻って来た。
「ジャックに案内頼んだがリンエリアは初めてだったな。」
「基本設備は囚人エリアと変わっていませんでしたので説明には問題ありませんでした。」
「ちょうどご飯食べてて皆楽しそうでしたよ」
「リック、ジミー見学してみた感想はどうだ?」
リックが
「一般的な農村の生活より格段に恵まれていますね。」
ジミーは
「住民が清潔でどこにもごみ一つ落ちていず、大浴場も完備されていて清潔そのものでした。」
「清潔な環境にいるだけで防げる病気は多いからな。
不潔な環境にいるより良いだろう?
感想はまた後でゆっくり聞こう。料理が覚めてしまうので先に食事にしよう
各自自分で給事して好きな物を好きなだけ食べてくれ。足りなくなる様なら補充するから遠慮しないで良いぞ。後は自由にやってくれ」
初来国の者達は起動停止してるが
何度か来てる者は俺の行動に慣れてる分再起動が早い
エリザベートは最初からデザートコーナーに
赤い羽根は主食
ジャックは高速で少量づつ皿に載せている。
マックス、ブレンダ組は少し背が足りないな。
エリザベートとジャックがフォローに入った。
さすが気が利く二人だ。
ヴァンパイア組と天使組も理解した様で動き出した。
常識という概念が無いから早いな。
同時にデイビッドも動き出したな。
ジャックと同じ様に先ずは全部味見する様だ。
デイビッドが動き出した事により後の商人達も全員動き出した。
「二人は私の出す食事に不安がある様なら別を考えるが?」
リックが答えた
「いえ、不安とかではなくいきなりだったので戸惑っていただけです。
大丈夫です。いただきます。」
そう言ってリック達も動き出した。
勿論ヴァンパイア組には血ワインを別途進呈しておいた。
マックス、ブレンダ、赤い羽根達が交互に話しかけてきていた。
マックスやブレンダは頑張った様なので過剰なぐらい褒めてやった。
赤い羽根は村で言った冒険者ランク向上の話を詳しく聞きたかったらしく魔素吸収とレベルアップの相互関係を知りたがっていたので詳しく教えておいた。
神官二人も大分緊張がほぐれて来た様で商人達と談笑していた。
食事も済み、皆も大分満足した様なので
「今日は皆疲れただろう。風呂に入って寝てくれ。
リック、ジミーうちでは寝る前に「熟睡の催眠」
というのをかけているが、掛かってみるか?
止めておくか?」
「熟睡の催眠、、、ですか?」
「そうだ、よく眠れるぞ。エリザベート王国では
満足のいく食事、適度な仕事、清潔な住環境に風呂、熟睡出来る環境を与える事を
最低限の奉仕と考えている。
主に使ってる催眠は「熟睡と鎮静」だけだ。
「熟睡」は疲れを翌日に残さない為。
「鎮静」は精神を穏やかに暮らす為だ。
そんな感じで各自の生活に支障を冒す様催眠はしていない。
まぁ鎮静の催眠のせいで皆穏やかで今一つ活気が無いのが問題ではあるがな」
リックが驚きを隠さず聞いて来た
「これだけのヴァンパイアと天使がいたらもっと強い催眠状態に出来る訳ですよね?
何故そんな効果が薄い催眠だけなんですか?」
「人形集めて国作って楽しいか?
それに深層心理に合わない催眠繰り返されたら多分壊れるぞ?
人間なんて可能性の塊だ。
いつどんな才能が開花するなんて誰にも分からない。
その才能の芽を育てる行為を捨て芽を摘む事は俺はやらないぞ。
あくまで国民各自の自主性に任せる。」
「貴方にとってのメリットが有りませんよね?」
「俺の望む事は「ダンジョンを大きくする事」だけだ。
他の欲が俺には無い。
食欲も睡眠欲も性欲も名誉欲も無い。
ある意味呪われた存在だ。
お前らのいう「神」なのか「世界の管理者」なのかは知らないが
俺は「ダンジョンを大きくする」為だけにある存在なんだ。」
「ダンジョンを大きくする
という事と
衣食住を保証する
という事の接点がわからないのですが、、、」
「簡単に言うとダンジョンは宝で人を呼び込んでその人の生命力を貰う訳だ。
殺さなくてもダンジョン内で活動し続けてくれれば良い訳だな。
だからダンジョンは活動時間が長くなる様に深く長くして滞在時間が長くなる様にする。
俺はダンジョン内で活動し続けて貰うために生活基盤を提供する事にしたって事だ。」
「なるほど、、、生活しているだけでメイズ様のメリットになると、、、」
「あぁダンジョンマスターらしい事を伝えよう。
月に一度コップ2杯程度の血を捧げてもらう
子供は10歳から成人までコップ1杯程度な
この量は一ヶ月で回復出来る量だ。
どうだ、血を捧げろなんてダンジョンマスターらしいだろう」
「いやそれだけで良いのならむしろ良い条件なのでは無いかと思ってしまいました。」
「エリザベートはその血液を使ってだな、、、
その者の健康状態が分かる。
病気の早期発見に使ってる
天使組は今後その手伝いをする予定だ。」
「それ治療院の仕事ですよね?それもお布施もらって行う、、、」
(ヴァンパイアの部下が天使様なのですね、、、)
「まぁそう言う事だ。
俺たちがしている事は大体説明したかな?
あぁ教育もしている。とりあえず読み書き計算だけだがな。
あ、忘れていた。授業中は「集中」の催眠を使っているな。
脳が活性化して学習能力が格段に上がっている。
お前らもいる間に講話の一回でもしてやってくれ、神官の教えも知りたいだろ」
「教育ですか、、、講話の件は了承致しました。ご協力させて頂きます。」
「今回本を金貨十枚分仕入れた筈だから教育関係は充実すると思うぞ。」
「金貨十枚分ですか?!私は見てませんけど??」
「馬車の中にミミックがいてマジックボックス扱いだから全部ミミックの中だ。」
国民の識字率や教育を行わないのは為政者が優位に立ちたいからだろ?
俺の場合ダンジョンマスターの力やヴァンパイアの力があるから絶対的優位は揺るがない
だから幾ら教育施しても問題無いし、逆に最終的に国力は増強するからな。」
「既存の国が黙って無いのでは?」
「勿論きちんと外交するさ。
シグの町にも鉱山の鉱石と各村の農作物の納入分は
俺がきちんと責任をもって納めるつもりだ。
向こうが実態に気づくまでの間だけだがな。
その上で向こうが交渉に来るのか武力で来るのか
それはその時になってみなければ分からないけどな」
「ジミーはどうなんだ?ずっと聞いてるだけだったが」
「私は教会の中で魔退治の部署の人間です。
今日一日で今まで自分がやって来た事の全てを否定されています。」
「魔退治は魔退治で必要だろ?
俺みたいに理屈で切り込んで来る魔なんて他には居ないと思うぞ?
さっき言った俺の外交戦略と一緒だな。
暴力には暴力で、計略には計略で、交渉には交渉で相対する必要は必ずある。
そんな自分の人生を全否定する必要は無いって」
「なんか救われた気分です。」
「催眠受けるかどうか聞いただけなのに長話になったな、それでどうする?掛かってみるか?」
「「はい、掛かってみます」」
「そうか、じゃあエリザベートに挨拶して風呂入って寝てくれ
風呂も独自ルールあるが難しい事じゃないから案内受けてくれ」
「じゃあ良い夢見ろよ。あばよ!」
【ダンジョン成長報告】
【モード】生活圏拡張フェーズ(外部接続)
【外部接触】神官含む15名を初受け入れ。生活圏との摩擦は小。緊張緩和を確認。
【運営】食堂をバイキング形式で初稼働。供給・補充ラインに問題なし。
【催眠】熟睡・鎮静のみ説明。希望者には適用予定。宗教勢力との対話開始。
【教育】読み書き計算の継続。講話受け入れ体制整備。
【医療】血液診断の有効性を説明。天使班との協働予定。
【備考】外部者が国是を理解し始め、秩序圏の拡張が進行中。
神官リックとジミーにとって、
メイズの国は“悪魔の領域”であり、
ヴァンパイアと天使の共存など本来あり得ない世界です。
それでも食事と会話、
そして目の前にある生活の秩序を見てしまえば――
彼らはもう、「危険な魔の巣窟」とは思えなくなる。
人は信念を捨てたときではなく、
“揺らいだとき”に変わり始めます。
今回の神官二人もまさにその入口に立っただけです。
それでも、入口に立てた時点で十分なのかもしれません。
そしてメイズにとっては、
これもただの「効率」の話でしかありません。
秩序がある方が魔素が集まり、
教育があった方が長期的な利益が生まれ、
安定した生活は滞在時間を伸ばす。
彼の合理の延長線上に、
気がつけば“国”が出来ていく。
そんな姿を、これからも描いていければと思っています。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
今日もダンジョンは、静かに動いています。
もしメイズの考え方に少しでも共感してもらえたなら――
ぜひ、あなたの“魔素”を分けてください。
※感想・ブクマ励みになります!
あなたの一票が、この国を育てます。




