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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第1章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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眷属生成試験Ⅰ ~吸血姫型個体の創造と情動反応~

「……できれば農村とかの方が良かったんだけどなー」

鎖の音。ツルハシの打撃音。

働くのは男ばかりで、目の光が死んでいる。

「……鉱山奴隷か。いやー、テンション下がるな」

まぁ、全部がうまくいくわけじゃない。

「せっかくだし、この辺に拠点を移すか。

 鉱山の中にダンジョンを作った方が、いろいろ便利そうだし」

――というわけで、また引っ越しである。

集落を見回っていた蠅たちにも指示を出す。

全員、鉱山へ。奥までくまなく探索だ。

入り口から掘削中の坑道とは逆側――

すでに掘り尽くされ、誰も近づかない廃坑を発見。

「よし、ここだ。誰も来ない、最高の立地」

夜を待って、ゾンビウルフの視界を通して見下ろす。

灰色にくすんだ鉱山、煤まみれの小さな集落。

ゾンビウルフの体を岩肌に沈め、コアを震わせた。

次の瞬間、洞窟の奥が光に包まれる。

岩壁がきしみ、扉が現れ――

その扉の向こうに、例の真っ白な部屋が現れた。

「……ふぅ、移転成功っと。よし、ここが本当のスタート地点だ」

ここから、“俺のダンジョン生活”が本格的に始まる。

________________________________________

「さて――この巣の象徴を生み出そう」

その前に、ゾンビウルフの体を返納しよう。

俺ひとりならまだしも、

ボスモンスターが人型なので悪臭に付き合わせるのは気の毒だ。

「ゾンビウルフ君、ありがとう。君の走りは忘れない」

静かに感謝を告げ、コアを震わせる。

魔素の流れが止まり、体が崩れ落ちる。

その破片は灰となり、床に吸い込まれた。

――さて、本番だ。

コアが明滅し、床に黒い魔法陣が広がる。

空気が一気に冷え込み、闇の粒子が渦を巻く。

「――いでよ、吸血姫ヴァンパイア!」

轟音とともに黒霧が弾け、

そこに――ひとりの少女が立っていた。

________________________________________

生成したのはレッサーヴァンパイア

俺のダンジョンに強力な能力はいらない

最低限の能力がありそれをきちんと実行出来る能力があれば良い

なのでヴァンパイアとしては下位となるレッサーヴァンパイアを生成した

身長はおよそ一四〇センチ。

体重は三〇キロ台ほど。

細い手足、骨の浮くほどの華奢な体躯。

黒糸のような髪が肩口でゆらりと揺れ、

雪より白い肌が淡い光を返す。

まるで血の通わぬ陶磁器のようだった。

だが、目と唇だけが異様に鮮やか。

血を垂らしたような紅。

白い頬に映えて、ぞっとするほど艶やかだ。

黒と白と紅――三色だけで構成された、人工めいた完璧さ。

――美しい。だが、冷たい。

心を持たない精密な人形のようだった。

________________________________________

『……生成完了』

少女がゆっくりと瞳を開く。

紅玉のような双眸が、静かにコアである俺を見つめた。

ただの珠である俺がマスターであると本能で理解出来たようだ。


その瞳の奥に感情はない。

ただ、計算された知性だけが存在している。

じっと俺を見つめたまま、動かない。

瞬きすらしない。

(……こうして見ると、某オリエント工業製の人形みたいだな)

命令待ちAI感がすごい。

________________________________________

『さて――名を与えよう』

コアの光が柔らかく脈打ち、

魔素が少女の体を包む。

念話で伝える『君の名は――エリザベート』

瞬間、空気が一変した。

魔素がざわめき、少女の身体が淡く光を帯びる。

紅い瞳が見開かれ、ほんの一瞬――息を呑んだ。

「……なに、これは……?」

困惑、戸惑い。

初めて“感情”という不明な変数を得た存在の反応。

どうやら、名付けには魂を震わせる力があるらしい。

無機質な人形だった存在が、

今――確かに“生き物”になった。

________________________________________

『……エリザベート。それが、君の名前だ』

「……名前」

小さく反芻するように呟き、少女は俺を見つめた。

紅い瞳に、かすかな光が宿る。

その頬が、ほんのりと紅潮していた。

________________________________________

どうやら“再起動”には時間がかかるようだ。

無感情の存在が、突然“心”という未知の機能を得たのだから。

混乱するのも当然だろう。

『しばらく休んでいい。落ち着いたら話をしよう』

俺はそう告げて、コアの光を少し弱めた。

新たに生まれた吸血姫――エリザベート。

その胸の奥で、確かに何かが動き始めていた。

【現在のステータス】

項目内容

種別ダンジョンコア

ダンジョン名鉱山拠点「第一巣」

所在地鉱山奥・廃坑区域(地脈安定)

ボスモンスター吸血姫エリザベート(生成・名付け済)

眷属蠅 ×4(偵察終了・休眠中)

状態移転完了・主核安定中


生まれる瞬間を見た。

それは、コードに感情が混ざる瞬間だった。


命令通りに動くはずの存在が、

“名を持つ”というバグを起こす。


理屈では説明できない。

けれど、たぶんそれが――生命なんだろう。


これで、俺のダンジョンはようやく“心臓”を得た。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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