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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第三章 外界統合と福祉支配の拡張 ~人道的管理による社会統合モデルの確立~

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教育実践報告 ~学びと労働の境界線~

結局、誰も「この仕事をしてみたい」とは言ってこなかった。


まぁ、仕方ないことだ。

今まで目の前のことしかやってこなかったわけだから、いきなり「好きなことをやれ」と言われても無理な話だろう。


とりあえず食事係は、今までも家事をしていた妙齢のお姉様方にお願いした。

毎日約八十人分の食事を用意するのだから、結構大変だ。

ただ、村では収穫などの繁忙期にはまとめて料理を出すことも多かったらしく、協力体制はばっちりらしい。

逆に洗濯や掃除がなくなったので、むしろ楽になっているとのことだ。


子供は全員で三十三人。十五歳が成人なので、それ以下を子供扱いとした。

成人間近の子は大人扱いされたかったようだが、彼らが一番重要な存在(駒)なのだ。

これから教育を受けることで、一番ジェネレーションギャップを生み出す存在になるのだから。


食堂で学校らしきことを始める。

以前からパーシー、ニア、ダンカンを中心にやっていたことだが、人数が増えたため本格的に始めることにした。

子供たちに加えて、空き時間には妙齢のお姉様方にも参加してもらう。


エリザベートの過去の記憶をもとに、

単語の書き取り、

分かる限りの地理、

魔物関係、

俺の知識を元にした数学。

そして――「一番重要な授業は『思想』だ」。


なぜ農民は農民なのか?

貴族は貴族なのか?

同じ人間なのか?

そこにどのような違いがあるのか?

基本的に“当たり前”に思っていたことを考えるようにしてやれば良いだけだ。


すべての授業の終わりに簡単な感想文を書かせる。

文章を書く力を身につけさせるのと、習熟度を確認するためだ。


それと魔法の授業の講師居たんだった。

そういえばミックとジョージ、魔法使えたんだった。

魔法を使っているところを見たのが大分前だったから、すっかり忘れていた。


その他の村人たちには、とりあえず農業をやってもらう。

男性は二十九人。ダンカン、ダックもこちらに合流させた。


ちなみに、開拓をしていたノームさんとゴーレムは、半径十キロの開拓終了後に、川に支流を作り、一キロごとに用水路を引いてもらっている。


農業を開始する前に、大事な用件を伝えなければならない。


「それでリンの村に戻りたいという者はいるか?」


伝えると、全員が起動停止した。

最近、多くないか? 起動停止。


村長のトビーが再起動して聞いてきた。


「帰していただけるのですか?」


「以前にも帰すと伝えなかったか?

 俺はエリザベート王国の生活水準を体験してもらいたかっただけだ。

 ただ、魔物が運営する国なので信用度が壊滅的にない。

 なので強硬手段を取らせてもらっただけだ。

 俺は我が国の生活水準の方が高いと自負している。

 もちろん、慣れない環境で多少の不便さはあるだろうが、衣食住すべてにおいて快適に過ごせたはずだ。

 今後、金銭的にも以前より裕福に過ごせるだろうし、国民も随時増加していく。

 シグの町の人口は八千人程度らしいので、その人口を超えるまで数年だろう。

 何しろ、ダンジョンには土地が足りなくなるという恐れがないからな。

 そうすれば店や娯楽も豊富になり、農地を耕しながら町の生活もできるようになる。

 その上でもう一度聞く。リンの村に戻りたいという者はいるか?」


「私は帰りたいです」

とトビーが言う。


「分かった。明日馬車を出す。他にはいるか?」


と言うと、四人が恐る恐る手を挙げた。


実は分かっていたことだ。

手を挙げた四人はトビーの取り巻き。

今まで村の中心にいて、小さいながらも権力の恩恵にあやかっていた連中だ。


トビーは周りを見て、帰りたいと思っている人間が少ないことに動揺している様子だった。


「四人も分かった。今手を挙げた五人は部屋で休んでいてくれ」

と言い、ダンジョンに戻す。


「では残り二十四人はエリザベート王国の国民となるということで良いな……。

 ではお前らに伝えておくことがある。

 お前らにかけている催眠なんて、そんなものだぞ。分かったか?」


「「「「「「「「……?!」」」」」」」」


「ここに連れてくるまでは、先ほども言った通り申し訳ないが強権を使い、強い催眠状態にした。

 けれど、ここに来てからは“精神を安定させ、興奮しない”ぐらいの制約しかない催眠しかかけていない。

 なのでトビーのように心から『帰りたい』と思えば、それは適うようになっている。

 つまり今のお前たちは俺の操り人形ではなく、れっきとした一個人だ。

 お前らは操り人形ではなく、自分でエリザベート王国の国民という今の立場を勝ち取ったということだ。

 それを忘れないでいてほしい」


俺はノームさん三人、ウンディーネさん(水の精霊)三人、ゴーレム三体を生成した。


「ノームさんが土を耕し、ウンディーネさんが水をやり、ゴーレムが畝を作る。

 力仕事はほとんど任せられるから、各自の負担は少なくなるだろう。

 それでも人員が足りないようなら言ってくれ、追加する。

 基本的には朝五時起床、飯を食って六時開始。

 三時間働いて三十分休憩、九時半。

 三時間働いて三十分休憩、十三時。

 三時間働いて十六時終了って感じか?」


「十六時終了で良いのですか?」

ダンカンが聞いてきた。


「十七時飯、十八時風呂、二十一時就寝って感じか?

 あっ、三十分休憩時は軽食出すか」


「あの……楽すぎる気がするのですが……。

 今までなら日暮れまで働いて、その後道具の補修とか生活用品の整備とかしてたのですが……」


「あっ、道具はこれな」


囚人の時に出したミスリル製の農具一式を出すと、どよめきが起きた。


「あの……光り輝いてますが……」


「ミスリル製だからな、強度抜群だ」


「……。」


村人一同、起動停止状態に入ったようだ。


「八人で三組に分かれて、三キロ×十キロ耕作してくれ。

 まず作ってほしいのは豆だ!」


と言って大豆を生成した。


「麦じゃなくて、豆ですか?」


醤油と味噌を生成する。


「これは醤油と味噌という調味料だ。

 これを作るための材料が大豆だ。

 これが作れるようになったら、お前ら大金持ちだぞ?」


「今晩はこれを使った料理、食べさせてやろう」


突然歓声が上がった。


「お前ら、仕事より金より飯なんだな……」


ダンカンが言う。


「申し訳ありません。私ども、ほとんど買い物とかせず、ほとんどは物々交換なものでして……。

 お金というものを使うのも、年に数回来る商隊の時だけですので……」


「なるほどな。雨で仕事できない時は、お前らも授業を受けてもらう。

 ただの農民でいられると思うなよ。

 大規模農業で、お前らはこの世界の最先端の存在になってもらうんだからな」


「仰る意味がよく分からないのですが……」


「今まで一人で畑を耕して百キロ程度の収穫があったとしたら、俺が目標にする収穫量は千キロだな。

 ここに二十四人いるわけだから、単純に二十四倍以上の収穫量を目標にする。

 とはいえ、失敗することもあるだろう。

 まぁ、十年ぐらいで結果が出れば良いんじゃないか?」


「分かりました……ご期待に沿えるよう努力いたします」


「努力より、困ったことがあったらきちんと報告してくれ。

 何とかなるかもしれないし、何とかならないかもしれない。

 何とかなるなら俺が何とかするし、何とかならないならお前らの責任ではなく他の方法を考えなきゃならない。

 努力で無理やり結果を出すと、次も無理をしなきゃならなくなるだろ?

 それじゃ駄目なんだよ。

 それなりにしっかりやって、最高の結果が出るようにするべきなんだ。

 まぁ、移住して初めての農作業だ。お前ら、明るい未来を夢見て頑張れ」


「「「「「「「はい!!!」」」」」」


【モード】領地運営モード(教育、農業段階へ移行)

【眷属】エリザベート、ダンカン以下5名、ノーム23、ウルフ16、ゴーレム13、ケルピー4、ミミック2、ウンディーネ3

【協力班】看守(ミック/ジョージ/講師担当)、リン出身民29名(うち5名はダンジョン内待機)、児童33名(教育班)、妙齢のお姉様方26名(家事・食堂班)

【生産】大豆栽培開始/用水路整備10km×40本(1km毎に10㎢開拓)

【教育】基礎魔法指導(講師:看守2名)/思想・倫理授業導入

【新規】食堂稼働開始/思想教育導入/帰還希望者送還(5名)


教育が始まりました。

メイズは目の前の事に追われる生活から

未来を見通す生活に変えたいのです。

何故ならそれが一番早く相手を味方につける手段だからです。

ただ与えて満足させて終わりではなく、与える事により感謝という鎖も一緒に与えているのです。


この世界では「働くことが生きること」と直結していますが、

メイズにとっては「生きることの中に働くことがある」という形にしていきます。


メイズの国作りは始まったばかりです。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

今日もダンジョンは、静かに動いています。

もしメイズの考え方に少しでも共感してもらえたなら――

ぜひ、あなたの“魔素”を分けてください。


※感想・ブクマ励みになります!

あなたの一票が、このダンジョンを育てます。

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