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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第三章 外界統合と福祉支配の拡張 ~人道的管理による社会統合モデルの確立~

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幸福構造試行報告 ~才能・努力・環境による社会安定論~

姿が変わったことを周知しなければならないと思い、囚人フロアに顔を出した。


そこには――驚くべき光景があった。


誰もいない。

……そりゃそうだ、全員街道整備に行っている。

今はウルフルズも採取班として毎朝馬車について行っている。


続いて、俺はリンのフロアに向かった。


ダンカンたち眷属は、エリザベートほどではないにしてもすぐ気づいた。

俺との意識パスはないが、エリザベートとの繋がりで機嫌が良いのは伝わるらしい。


「エリザベート様、そちらの方は……もしやメイズ様ですか?」

「はい。メイズ様のお姿が変わりました。今後のことを考え、人間に姿を近づけました」

「オーラ以外は、まったく違和感がありませんね」


「オーラ?」

「はい。前のお姿の時は、その異形から発されるオーラなのかと思っていましたが、

現在も全体的に恐ろしいというか……禍々しいというか……。失礼なことを言い、申し訳ございません!」


ダンカンが土下座しかけたので、慌てて止める。


「はい、お会いした時から、とても素敵なオーラが出ていますよ。

ご存じなかったのですか? わざとやっているものだとばかり思っていました。

魔力操作でオーラを核の中に押し込めれば、だいぶ減ると思います」


「ん? こうか?」

「はい、大分減りました。常に相手を威圧するメイズ様らしいオーラで、私は気に入ってましたのに……」


(エリザベートのポンコツぶりが加速している気がする、今日この頃であった)


「ダンカン、ありがとう。今後も思うことがあれば、どんどん言ってくれ」

「恐縮です」


そのやり取りを見ていたリンの連中は、緊張が解けて一気に空気が緩んだ。


すると村人の一人が、おずおずと手を上げた。

「申し訳ありませんメイズ様一つお伺いしたい事があるのですが、、、」

「ん?何だ言ってみろ」


「メイズ様、やりたい事を決めろとさっき言ってましたけど、

私たちは畑を耕したことしかないんです。希望を言えと言われても、よく分からないんですけど……」


「そうだろうな。無理を言っているのは分かっている。

なので今まで通り畑を耕しながら、やりたい事を探すという形でもかまわない。

希望が出た時点でその職に鞍替えしても構わない。


後は“何が好きなのか”を突き詰めてほしいというのもある。

例えば“美味しいもの食べたい”から“料理人”になる方法もあるし、

肉が好きすぎて“狩人”になるかもしれない。

もちろん、美味しい野菜を作りたくて“農民”もありだ。


一つ一つの“好き”からでも、選択肢はいくつもある」


村人たちは静かに聞いていた。


「俺の持論だが、“才能”なんてほとんど必要ないんだ。

そうだな……才能20%、環境30%、努力40%、運10%だな」


「才能が必要ない? 努力は分かります……運も必要でしょう……。

才能以上に必要なのが環境?」


「そうだ。一番蔑ろにされるのが環境だ。

お前、名前は?」

「オリバーです」

「オリバー、お前の親が商人だったら、今も農民やってると思うか?」

「それなら商人やってると思います」

「それが環境だ」

「……?!」

「周りの環境によって、そいつの人生は決まるんだ。

だから俺は、その環境を可能な限り整えてやる」


「針子になりたい?

必要な道具、生地と針と鋏と……あとは何だ? 必要と思う道具は何でも揃える。

一流の縫製職人も連れてくる。……まぁ、それは時間をくれ。いつか必ず連れてきてやる」


「職人になりたい? 同じだ。道具、窯、指導者、全部揃えてやる」


「環境さえ整えば、努力だけでさっき言った条件で言えば七、八割は達成できる。

運なんて、世界一になりたい時にちょっと必要なだけだ」


「だからって訳じゃないが、お前らには歴史を学んでほしい。

俺自身、この国の成り立ちは知らないが、国なんて大体同じだ。


村があり、町があり、領主の治める都市があり、それが集まって国になる。

……あれ? 俺この国の名前知らないぞ?」


「ワタル王国です」

「ワタル?!」

「はい」

「ワタル? なんでワタル??」

「勇者ワタル様が興した国だからです」

「勇者ワタル?! ちょっと待て! ひぃひぃふーひぃひぃふー……駄目だ、後回しだ」


_____________________________________


再起動まで、だいぶ時間を要した……。

皆、何があったのか分からない様だが黙って俺を見つめている。


「話を戻すぞ。

国を興した奴は偉い、才能があった――それは間違いない。

ではその周りにいた奴は? その子供は? 子孫は?

今の領主は才能があるのか?


ここの領主は比較的善政をしている。それは分かっている。

でもそれは才能じゃない。

貴族として生まれた環境と、領主として受けた教育、そして努力の成果だ。


貴族でさえ、領主でさえ、そういうことだ。


“才能がないから最初からやらない”――それだけは言い訳にするなよ」


「話が大きくなりすぎて、途中からよく分からなくなってきましたけど……」


「いつか俺の言っていたことを理解してくれると嬉しい。

とりあえず、“才能なんてくそくらえ”ってことだ」


「分かりました。やりたい事探してみます」



_______________________________________________


俺はボス部屋に戻って来た。


エリザベートが言う。

「なぜ国名を聞いただけで、あそこまで動揺したのですか?

勇者に何かトラウマでもあるのですか?」


「俺は前世から転生してダンジョンマスターになっただろ?

ワタル王は多分、転移者だな……リバーシ開発者も奴だろ」


「本当ですか?! それであんなに動揺されたのですね……」


「いや、別に何の問題もないんだ。

既に過去の人間だし、ただいきなりだったから驚いただけだ」


「それならば良いんですが……」


「後、気になったのは――なんでここの領主が善政をひいているって分かってるんですか?」


「まず男女比率で男の方が多い。

つまり、“戦争がない”。

“魔物討伐のシステムがきちんとしていて、危機管理できている”ことが分かる。


要は生命の危険に遭遇する男の方が死にやすいはずなのに、男が溢れている。

これだけでも国の防衛に関する考え方がしっかりしている事が分かる。


まだ分かる事はあるぞ。

“倫理観がしっかりしている”。

国を興したのがワタル王って言うんでしっくり来たが、一夫一妻制がきちんとしている。

これが僻地の村だと、村全体が家族のようになっていて、

“どの子がどの親の子か分からない”なんてことになっている場合もある。

リンぐらい僻地なら、そうなっていてもおかしくはない。


昔の俺の祖国の村では、祭りの日に“村中誰とまぐわってもいい”なんて風習があったくらいだ。

肉体的にも繋がりを持ち、より一層の一体感を出すためだな。

それにより村全体を身内扱い、家族扱いして村を守っていた。

家族ぐるみの村だと、パーシーみたいな子は不幸になりにくい。


ただ弊害があって、村長の権限が強くなりすぎる。

“村八分”って、一人だけのけ者にされる事を非常に恐れ、

村長とかの権力者の同調圧力から脱する事が難しくなるんだ。

そうすると村人の移動を制限するようになる。

村の労働力は、村長のものみたいになるからな。

前話にあった他の地方の村へ移動とか、出来なくなる。


人員の入れ替えが起こらないと近親相姦が起きやすく、長期的に見ると村が滅ぶ。


そう見るとリンの村は、村長の権限は強めだが強すぎるという程ではない。

倫理観で各家族の貞操は守られている。

他の村への移動も認められている。


だから、村長以上の強権力を持った俺みたいなのが現れると、

村長の身近以外の求心力が一気になくなる。


村長とその周りの連中は、俺の話に良い顔をしていなかったからな。

とても分かりやすくて笑いそうになったよ」


「そこまで見てるんですね」


「ああ。孤児紛いのパーシーがいてほっとしたよ。

家族経営方式の村だったら、方針変更していたかもな」


「そこまでですか?」


「催眠といっても万能じゃないだろ。

一時的に言う事を聞かせられても、一生操り人形のように行使していたら絶対長持ちしない。

自発的に一生懸命努力して生きてもらって、結果的にエリザベート王国の為になってもらうのが一番だな」


「メイズ様と一緒にいるようになって、“幸せとは何なのか”深く考えるようになりました」


「食べれて、動けて、気持ちよく寝れれば、それでいいんだよ。

美味しい物を食べて幸せを感じ、

仕事して誰かに“ありがとう”と言われて幸せを感じ、

夜布団に入って気持ちよく寝て幸せを感じる。

あっ、風呂に入ってさっぱりして幸せを感じる。

それに満足していれば、それが幸せだ」


「それに満足できなくなるのが、人間なんだがな。」


「ん? ちょっと待て。

美味しい物も食べれず、ダンジョンマスターとして恐れられ、

寝るのは机の前で椅子に座り、風呂にも入れず……

俺が一番不幸じゃねーか?!」


幸福とは食って動いて寝て現状に満足するという事

しかし現状が同じだと人は不満を抱える。

なので「自分のやりたい道を突き進め」と叱咤激励します。


とはいえ彼自身はまだ、

寝不足・食事抜き・風呂なしのブラック運営です。

メイズに幸せな日々は来るのでしょうか、、、

支配する側が一番不幸という構図、ある意味正しい世界なのかもしれません。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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