【閑話】核融合実験記録 ~ダンジョンマスター、人間になる~
リンの連中に対する最初のフォローは終了した。
チャンスは与えた。後は連中がどうするかだ。
さて――ダンジョンに血を大量に与えたからか、人が大量に入植したからかは分からないが、俺もレベルアップ(?)したらしい。
俺が求めていた能力は「核融合」だ。
要は、「骸骨、いい加減嫌だ!」って話だ。
これで――骨=スケルトン、肉=ゴーレム、皮=スライム。
人間らしくなれるらしい。
ちなみに、生命体との核融合もできるが、「生命体=有機物=ダンジョン資源」という図式が立ってしまい、“勿体ない精神”のせいで実行する気が起きない。
今後、機会があればする可能性も否定できないけどね。
というわけで、実際に行ってみる――「核融合」。
人型ゴーレムとスライムを生成し――合体!!
頭の中に、ロン毛で細身のおじさんが、色黒でガタイの良いスキンヘッドのおじさんの頭を掴んで「だめーーー!」と叫んでいたが――別に駄目じゃないので実行する。
ゴーレムとスライムが、体に吸い込まれ、形作っていく。
骨格が軋み、筋肉のような魔力繊維が走る。
その上からスライムが薄く膜を張り、徐々に“皮膚”の色を帯びていった。
……なんというか、気持ち悪いほどリアルだ。
基本は周りに溶け込めるように欧州人系統だ。
こちらの大体平均ぐらいの身長、180cm弱。
イメージとしてはトム・ク◯ーズを意識してみた。
間違ってもトム・ブ◯ウンではない!
……まあ、骸骨のままスーツ着ても、ナイトメアー・ビフォア・クリスマスのジャックになっちゃうからな。
スタイリッシュ支配者に進化するタイミングとしても悪くない。
早速エリザベート達にお披露目だ。
エリザベートは俺を見るなり――
「メイズ様?! そのお姿は?!」
やはり言わなくても分かるのか。
まぁ、意識レベルで繋がってるからな。
「スケルトンを骨型に、ゴーレムを肉体にして、スライムを皮状にして覆ったんだ。どうだ、似合うか?」
「とてもお似合いですわ!!」
「ミック、ジョージ、どうだ?」
「いきなり姿変えるの無しですよ……せめて一言言ってからにして下さい……。
とても良いと思いますよ。真人間っぽく見えます。」
「とてもお似合いです。ゴーレムとスライムって事は、変装し放題って事ですか?」
「ジョージ、よく気付いたな!
そうなんだ、これで――
“メイズ・ラビリンス”と“ダン・ジョンマス”を併用できるってことだ!」
「まだ諦めてなかったのか……」
「まだ諦めてなかったのですね……」
「それは素晴らしいですね!」
一人だけ反応が違う奴がいた。
「エリザベート、前と反応違うな?」
「はい? 前は唯一の名乗りだったからです。
今は“メイズ・ラビリンス”という立派な名乗りがございます。
その上で名乗る名乗りなど、別に何でも良いのです。
それより、他人物になれ裏からメイズ様の勢力を増やすことが出来るならば、素晴らしいことと思いました。」
「エリザベート、よく言った! さすが私の一番理解者だ!」
「お褒めにあずかり光栄です。」
ミックとジョージもその話を聞いて、
「確かにそう言われると悪い案じゃないのか……」
「ダンジョンマスターがメイズ・ラビリンスで、仮の姿がダン・ジョンマス?
半分正体ばらしてる気もしますが……」
「……仕方ない。マンジロウにするか!」
「「「いやジョンマスで大丈夫です!」」」
骸骨のまま世界を支配するのも、それはそれで味がありましたが――
そろそろ「見た目で引かれる」のは卒業しても良い頃です。
今回の“核融合”は、単なる見た目の変更ではなく、
ダンジョンの主が「外界で活動するための身体」を得る第一歩でした。
そして何より、エリザベートの言葉がすべてを象徴しています。
「名乗りはもう、目的ではなく手段」――
人は名を残そうとします。メイズにとって名など必要だからある。
というだけの物です。
……まあ、作者的には単純に「骸骨でスーツは似合わない」という理由でもありましたが。
見た目は人間、中身はダンジョン。
最も面倒で、最も効率的な世界支配の幕開けです。
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読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。




