偵察観測報告 ~蠅型眷属による初期情報収集結果~
仮拠点の位置も決めたし
さて、改めて周囲の調査をしよう。
前に見つけた“集落らしきもの”が気になって仕方ない。
安全な場所か、それとも危険地帯か。まずは情報収集だ。
「というわけで、ベルゼブブの眷属――発進!」
黒い魔法陣が四つ、ふわっと浮かび上がる。
以前は八匹出して視界が八分割になって死にかけた。学習した結果、今回は四匹だ。
(本当に八分割は酔う……四匹で十分だな)
黒煙の中から小さな蠅たちが姿を現す。ぶんぶんぶん。
見た目はただの蠅だが、れっきとした“高性能偵察ユニット”である。
「頼んだぞ諸君、東10km先の集落だ!」
蠅たちは一斉に羽ばたき、夜の森へと消えていった。
――約10km。1時間ほど飛んだ後、集落が近づいてくる。
わくわくする。第一村人発見、ってなるかな?
眷属1:「前方に小型の建物発見。生存者確認。40代男性2名、帯剣しております」
眷属2:「前方に大型の建物発見。生存者確認。20代〜80代、総勢32名、全員男。
服装は質素、衛生状態――最悪」
眷属3:「鉱山へ向かう道らしきもの発見。採掘中の人影あり」
眷属4:「畑発見。手入れは雑。雑草多数。あまり熱心ではない模様」
……全部、脳内での一人芝居だよ!?
悪いか! 眷属たち喋れないんだよ!? なんとなくやりたかったんだよ!!
「よし、調査完了。報告ご苦労、俺の脳内部隊!」
結果――あの集落は小規模な鉱山村だった。
働き手はほぼ男のみ。防衛力ほぼゼロ、衛生環境アウト。
魔物よけの“なんとなく近づきたくなくなる”級の結界があるらしいが、
蠅さん達のやる気には適わなかったようだ。
生活レベルは“ギリ文明”。
「……なるほどね。これは、いじりがいがあるな」
ゾンビウルフの中で、コアをゆっくりと輝かせながら呟く。
「次は――この村をどう利用するか、だ」
章末ステータス(修正版)
•種別:ダンジョンコア(ゾンビウルフ融合体)
•ダンジョン名:無名(仮拠点)
•状態:拠点展開中・偵察完了(集落確認)
•地形:森林地帯・地脈安定/近隣に川あり
•眷属:蠅 ×4(現地偵察中 → 殉職なし、帰還待ち)
•備考:集落は鉱山村。防衛力低・衛生悪。利用の余地あり。
初めて“人の営み”を観察しました。
かつて人間だった自分にとって、見慣れたはずの光景――
けれど、今の視点で見ると、それはまるで別の構造です。
食事も労働も衛生も、すべてが“生きるための仕組み”として動いている。
そして、観察するたびに思う。
世界そのものが、巨大なダンジョンなのかもしれません。
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読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。




