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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第三章 外界統合と福祉支配の拡張 ~人道的管理による社会統合モデルの確立~

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仕事と労働の定義報告 ~支配なき秩序の試運転~

翌日。


朝は眷属達に、リン村の村人達の為の朝ご飯を作らせた。


朝日が出る頃になると、自動的に部屋も明るくなる仕組みになっているので、

皆、恐る恐る食堂に集まって来る。


リンの村全員で出された朝食を食べている姿俺が見ていると

村長が口を開いた。


「それで我々は、何をしたら良いのでしょうか?」


「昨日も言ったが、特に無いぞ?

 とりあえず一週間ここで生活してくれれば良い。

 逆に、何かしたい事があったら言ってくれ。」


そう言うと、村長の動きが止まった。


「申し訳ありません。言ってる意味がよく分からないのですが……」


「食事は朝晩二回、食べ放題。

 材料と調味料は厨房にあるので、好きに使ってもらって構わない。

 風呂は大浴場をいつでも好きな時に使ってくれ。

 部屋で幾らでもゴロゴロしてくれ。


 着替えは“健康ランドセット”と呼んでいるその服だ。

 基本毎日使い捨て。半袖、長袖、短パン、長ズボン、各種揃えたから好きなのを選んでくれ。」


「エリザベート王国の基本は、

 “国民が健康で文化的な最低限度の生活を送る権利の保証‘‘だ。


 無理矢理連れて来た事に対しては謝罪もするし、賠償もしよう。

 しかし、私の見た目でいきなり現れて伝えても信じてもらえないのでな。

 そこのところを理解してもらえると有り難い。


 話を戻すが、最低限の“衣食住”は保証する。

 村での生活より快適な筈だ。」


周りを見渡すが、否定する者は居ない。


俺は話を続けた。


「エリザベート王国に“労働”は必要無い。

 俺が皆に出来ればして欲しいと思うのは、“仕事”だ。」


ますます皆の顔が、

(こいつは何を言ってるんだ)

という表情になっているが、気にしない。


「労働とは、“人が動いて労をなす”。

 つまり、“人が動いて疲れる”事だ。


 仕事とは、“事に仕える”。

 つまり、最終的に“事を成し遂げる”事だ。」


言いたい事の意味を、皆が反芻する時間を取る。


例えば、農作業。畑仕事。

やっている事は同じだ。


しかし――


農業を作業としてやっている者は、

「麦が出来た。麦を刈った。麦を出荷した。」になる。


畑仕事を“仕事”としてやる者は、

「良い麦が出来た。多くの麦を刈った。

 より多くの利益が出る麦を出荷した。

 来年はもっと上手く出来る様にしよう。」になる。


村で多くの利益が出る小麦を一人が作っても、

本人に多くの利益が返って来るとは限らない。


村で多くの利益が出る小麦を村全体で作っても、

村がその恩恵を受けられるとは限らない。


だから前からのやり方で、そのままやる。

勿論、それが悪いと言っている訳ではない。


ただ、より良い方法を

模索するのを、考えるのを

止めないで欲しい

諦めないで欲しい

と思うだけだ。


エリザベート王国では、より努力し、成果を上げた者をきちんと讃えたいと考えている。


結果として全てが上手くいく訳では無い。

しかし努力を続ける事が、上手くいく可能性を引き上げるただ一つの方法だろう。


努力し、学び、励み、何かしらの事を成し遂げる事が出来る可能性のある人生を歩んで欲しい。


その為にならば、エリザベート王国は協力を惜しまない。


一部の人間には、何かが届いた様だ。

今はそれで良い。


「先ず手始めに、一番手っ取り早いのは読み書き計算なんてどうだ?


 パーシー!」


いきなり呼ばれた少年が、驚きながらも返事をする。


「はい?!」


「パーシー、りんごを6個、1週間毎日貰えると合計幾つになる? 一週間は7日だぞ。」


「42個です?」


何でそんな質問をされたのか、パーシー本人は分かっていない様だ。

しかし、間を置かずに答えた事に対して、村人達は驚愕を隠せない。


それはそうだ。

村人は計算なんか出来ない。

なのに6歳ぐらいのパーシーが、難しい(村人にとっては)計算をさらりとやってのけた。


パーシーが村を出てから、まだ数日しか経っていない。

更に本人は、当たり前の様な顔をしている。


村人達の興味を惹くには十分だった。


「読み書き計算に興味ある者は、ダンカンに言ってくれ。

 今日はまだ初日だ。風呂に入ってのんびり過ごしてくれ。」


俺は先を立ち、囚人フロアに向かう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


囚人フロアに来ると、ちょうどお目当てのミックがいた。


「ミック、そろそろ引越するが、囚人達を宿舎に戻す形で良いか?」


「え? 囚人達連れて行かないのですか?」


「お前らの所属はシグの町だろ?

 更に囚人は刑期中だ。勝手な移動は問題だろ。」


「今更過ぎません?

 ヴェストハイムまで、エリザベート王国の領土じゃないんですか?」


「ハイムまでは領土ではなく租借地だな。

 ハイムまでの租税はシグの町に献上するぞ?」


「じゃあ、鉱山で採取される鉱石も献上すれば形式的に問題ないのでは?」


「鉱山も租借地か……。移動はどうするんだ?

 西の領土から鉱山まで通うのか?」


「一応考えていたのは、道整備してもらって馬車移動……なんですが、無理ありますよね。」


「街道整備はどうせしなきゃならないな。

 普通の馬車なら2時間、ゴーレム馬車なら30分か。

 30人立って移動で問題ないか……。


 トーマス達は領地周辺の採取に切り替えれば良いし、食堂係も移動要らないのか。

 ミック達は御者席か。22人か,,,,椅子無しならゴーレム馬車で通勤可能じゃないか!


 お前、狙ってたな……」


「とんでもないです。」


目を合わせようともしないミックの姿に苦笑しながら、俺は言う。


「分かった。囚人達は明日から、

 引越先から鉱山までの街道整備に取り掛かってくれ。

 俺も街道整備用のゴーレム用意する。」


「了解しました!」


 囚人達の血液が今後も手に入るので良しとしよう


【モード】統合運用モード(初期稼働)

【対象】リン村居住区(76名)/囚人班(再配置準備)

【教育指針】読み書き・計算教育の導入

【進行内容】

・村人への初日説明会

・読み書き計算教育班の設立

・囚人班との街道整備計画策定

・ゴーレム馬車導入構想(移動効率化)


メイズの演説により、言葉の支配が始まりました。


言っている事は綺麗事。けれど、嘘は言っていない。

行動を伴い、慈悲を与え、環境を整え、ただ与えるだけ。

求める事は、自己実現。


――あれ? メイズって聖人君子だったっけ?


メイズの言った、

「労働と仕事」――このわずかな言葉の違いが、

リンの村人が「動かされる側」から「動く側」へ変わるきっかけになれば良いですね。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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