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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第三章 外界統合と福祉支配の拡張 ~人道的管理による社会統合モデルの確立~

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福祉統治実施報告 ~医療・教育・支配構造における優しさの制度化~

父娘、子供、足の無い男を連れてダンジョンに帰って来た。


夜も遅く、皆精神的に疲れている様だったので、馬車に乗せてすぐ熟睡の催眠をかけ、昨日は宿舎で寝かせた。


翌朝、ダンジョンに来るようにミックとジョージにお迎えを頼んだ。


呼び出したのは謁見の間ではなく、食堂だ。

どうせ飯を食わせなければならないしな。


囚人達はすでに食べ終わり、作業に出ている。

鉱山の朝は早い。


そのままミックとジョージに風呂へ案内させ、ルール通りに入浴してもらう。

サウナ、湯、休憩を三周。湯船の中で体をこすって洗う方式だ。

子供はそのかぎりではない。


娘だけは宿舎でたらいにお湯を張り、体を拭かせた。


湯から上がった四人――いや、実質は三人と一組の親子だが、

顔つきは昨日とはまるで別人のようだった。

血色が戻り、瞳に光が宿っている。

――清潔と温かさ。それだけで、人はここまで変わる。


風呂を終えた四人を、俺とエリザベートの“ボス部屋”へ通す。

一応はエリザベートとの共用スペースだが、実際はほとんど執務室だ。

隅に遮光カーテンで仕切られたエリザベートのベッドルームがある程度で、私物はほとんど無い。


ちなみに俺は椅子に座ったまま、スイッチを切ったように休む。

――「体、あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」

と言いたくなるが、一番偉いのが俺なので言えないのが寂しい。


ボス部屋ではエリザベートはすでに採血の準備をしていた。

完全に連れてきたら“食事・風呂・採血”がルーティン化している。

とても良い傾向だ。


最近、エリザベートの能力がさらに上がった。

どうやら血を見るだけで、その成分が分かるらしい。

完全に血液検査を兼ね備えたようなものだ。

住民たちの健康状態まで確認できる――実に、管理に適した能力だと思う。


進化とは、その個体の“望む方向”へ伸びるものらしい。

そして、彼女が望んだのは“支配”でも“力”でもなく、“見守る力”だったのかもしれない。


エリザベートは、弱者への優しさが強くなってきた。

かつては、弱い者に対して特別な興味を示すこともなかった。

だが進化を重ね、自身が“強者”の立場になった今――

かつてレッサーヴァンパイアだった頃の“弱い自分”を、相対的に思い出しているのだろう。


あの時の至らなさ。悔しさ。悲しみ。

それらが、いま彼女の中で「他者への共感」に変わりつつある。


“慈悲深く優しいヴァンパイアの君主”

――言葉としては突っ込みどころしかないが、実際にそんな存在が目の前にいるのだから、仕方がない。


俺としては、戦略上何の問題もない。

むしろ、エリザベート王国の発展にこれほど適した人材はいないだろう。

そう思えること自体、少し誇らしい。


やがて、顔を上気させた面々がやって来た。

俺の姿を見て恐怖を露わにする者もいたが、昨日一度会っているので、そこまで酷くはない。


エリザベートに軽い鎮静の催眠を頼む。

採血で暴れられても困るので、ちょうど良いだろう。


エリザベートが採血を行う間に、俺は足の無い男に話しかけた。

「昨日も言ったが、足いるか?」


少しぼんやりとした状態で、男が答える。

「普通に歩けるようになるなら、歩きたいです。」


俺はゴーレムを足型にして、核の部分を男の膝に埋め込んだ。

男はいきなりの痛みに叫び始めたので、エリザベートが鎮痛の催眠をかける。

俺はエリザベートに謝罪した。

エリザベートは呆れたように微笑んでくれた。


「どうだ? 動くか?」

男は足を動かしてみて、

「はい、本当に足をもらえました。」


「微調整するから、少し歩いてみろ。」

男はおずおずと歩き出した。俺は様子を見て微調整する。

徐々にペースを上げて歩き、やがて普通に歩けるようになった。


「走ってみろ。」

男は走り出し、

「問題ありません。」


ここに来て初めての笑顔だ。

「良かったな。」


ミック、ジョージを中心に村人全員で拍手が起こる。

エリザベートと俺も遅れて参加した。


「では改めて、エリザベート女王の謁見の儀を行う。」


村人全員が驚愕する。

ミックとジョージは笑っている。


「女王様?!」

「謁見?!」

「貴方様が王様では?」


色々な声で騒がしくなってきたので、エリザベートが軽い鎮静の催眠を施す。


「ここは鉱山の中にあるダンジョンだ。

 近々、西十キロ先にある川の向こう岸に首都を作る。

 そこはエリザベート王国。

 ここにいるのが初代女王、エリザベート・ラビリンスだ。」


「エリザベート・ラビリンスです。よろしくお願いします。」


「そして俺が宰相のメイズ・ラビリンスである!」


「各自、自己紹介をしろ。」


先ずは、全て理解している爺さん。


「はい、私はリンの村で農民をしておりました、ダンカンと言います。

 昨日エリザベート様の眷属としてもらい、この様な若さを与えられました。

 第二の人生、誠心誠意お勤めさせて頂きます。」


「えっ?! ダンカンのジジイ?! 俺より年下にしか見えないぞ!」

と騒ぎ始めたので、また鎮静。

弱めだとすぐ解けるな。


次、「私ですかね?」という顔で、娘が


「ダンカンの娘、ニアです。

 お父さんを助けてもらって……もう、それだけで嬉しくて。

 お父さん共々、よろしくお願いします。」


鎮静したので大人しくなった男が、

「リンの村の農民、ダックです。

 足をありがとうございました。よろしくお願いします。」


「農民なのに足を無くしたのか? 兵士かと思ってたぞ。」


「はい。町に出稼ぎに行った時に高い所から落ちて、

 骨がぐちゃぐちゃになっちゃって……

 回復魔法をかけるにも高すぎるってことで、切られました。」


「そうか、分かった。最後に坊主、自己紹介できるか?」


「うん、ぼくはパーシーって名前です。

 おいしいごはんと、おふろと、きるもの……ありがとうございます。」


「よく自己紹介できたな。偉いぞ。」


俺が褒めてやると、とても嬉しそうにした。

昨日の話を聞く限りでも、あまり褒められることがなかったのだろう。


「とりあえず、ダックとダンカンはここの農場を手伝ってくれ。

 ニア、読み書き計算はどれくらいできる?」


「あまりできないです。」


「そうか。ニアとパーシーは読み書き計算の練習だ。

 ミックとジョージ、二人を農場まで案内してくれ。」


ニアとパーシーには催眠学習をさせてみよう。

エリザベート先生、お願いしますね。


【ダンジョン成長報告】


【モード】福祉統治モード(医療・教育・再生)

【眷属進化】エリザベート:治癒・血液解析能力を獲得。住民健康監査機能発現。

【医療管理】義足生成技術(ゴーレム核埋込型)確立。生活再建者3名受入完了。

【教育制度】催眠学習実験開始(識字・計算教育)

【社会基盤】風呂・食事・採血のルーティン化。生活満足度上昇。

【魔素収支】福祉活動に伴う心理安定化により生産効率+6%。




今回は、エリザベートが本格的に「女王」になった回でした。

支配というより、見守るような優しさが既に聖女と化してますね。


血を見るだけで成分を判別できる進化は、

もはや“医療AI”のような存在ですよね。

メイズとエリザベート、それぞれ極端な正邪の様な雰囲気強まって

エリザベート王国の形が見えてきました。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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