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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第三章 外界統合と福祉支配の拡張 ~人道的管理による社会統合モデルの確立~

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外界接触第壱報 ~ヴェストリン村調査および潜在人材確保について~

ダンジョンを出発しておよそ四時間ほどで、

最初の村――ヴェストリンの村に到着しました。


まずは村長に会いに行きます。

メンバーはジャックデイビッド、そして冒険者のウォーレン、マックス君、ブレンダさんの五人です。

デイビッドが顔馴染みのようなので、紹介を任せることにしました。

(実は私も知っているのですが、あまりにも容姿が変わりすぎているため、初対面という体を取ります。)


ヴェストリンは、鉱山を除けばシグの町から最も遠い村で、三十世帯、人口八十人ほどの規模です。

“ヴェスト”は“西”を意味し、そこにハイム、ガルド、ベルク、リンと続きます。

そのため西の街道では「ヴェスト」を省略し、“リンの村”と呼ぶことのほうが多いのです。


ちなみに、シグの町を中心に北がノール、東がオスト、南がシュード。

いずれも同じようにハイム、ガルド、ベルク、リンと続きます。

私とデイビッドのようなシグの商人は省略することに慣れていないため、

つい正式名称の「ヴェストリン」と呼んでしまうのです。


村長の家は村の中央にあり、会合の際には集会所としても使われています。

建物は大きいものの、実際に生活している部分はそれほど広くありません。


デイビッドが扉を叩き、丁寧に声をかけました。

「お久しぶりです。デイビッドです。村長さんはいらっしゃいますか?」


出てきたのは村長の奥さんでした。

「畑のほうにおりますが、呼んできましょうか?」


「いえ、こちらから伺いますのでお気になさらず。」

デイビッドがそう答え、畑の場所を教えてもらいました。


畑に向かうと、ウォーレンが先に声をかけます。

「お久しぶりです!」


「おぉ、本当にお久しぶりですね。」

村長は笑顔で応じました。


ウォーレンが続けます。

「今日は紹介したい方をお連れしました。ジャック・ラビリンス様です。」


「ご紹介にあずかりました、ジャック・ラビリンスです。よろしくお願いします。」

私はあえて商人風ではなく、執事風の口調で挨拶しました。


「村長のトニーです。よろしくお願いします。」

トニーと会うのは八年ぶりほどですが、彼は四十年前の私を知る人物でもあります。

そのため私は、髪型や所作、眼鏡などで雰囲気を変え、別人のように見せていました。

デイビッドからも「これなら気づかれませんよ」とお墨付きをもらっているので、問題はないでしょう。


「実は、私の主人エリザベート様がこの近くに領地を拝領されまして――」

(※正確にはメイズ様からの委任なので、まったくの嘘ではありません。)


「その西の森を開拓することになりました。

開拓民の手配は整っておりますが、補助人員を探しておりまして。

この村で該当しそうな方はいらっしゃいませんか?」


トニーが首をかしげました。

「人員、ですか?」


「はい。力仕事ではなく、

老人であれば知識を、戦傷者であれば経験を、

未亡人であれば家事を、子供であれば可能性を――。

そうした方々を求めております。」


「労働力ではなく補助要員ですか?

 なんとも奇妙な話ですね」


「実は急に決まったことでして、様々な人手が足りず困っております。

 普通の出稼ぎには不向きな人材でも今は猫の手を借りたい程なのです。

 給金は面接後になりますが、相場の倍程度を考えています。勿論使い潰すような真似はいたしません。

 この件は“やんごとなきお方”の肝入りで、条件は破格です。

 その点、デイビッドも保証いたします。」


「さらに、主人より今回のお願いのお礼として、

全粒粉百キロと炊き出しを振る舞えとの命を受けております。

粉の方は後ほどご自宅へ、炊き出しは村の集会所で始めても構いませんか?」


「ぜ、全粒粉百キロですと?!」

(トニーは明らかに動揺していました。)


「炊き出しまでしていただけるとは助かります。

食糧に困っているわけではありませんが、余裕があるわけでもないので……。」


「では、準備を始めます。

炊き出しの際に候補者の方へ、それとなくお声掛けいただけると助かります。

また、寝たきりや身体の不自由な方がいれば、そのお世話もお任せください。

うちには高位の治癒士もおりますので、回復も可能です。」


「りょ、了解しました。

全粒粉百キロ、炊き出し、人員確保に病人治療……。

ずいぶん余裕のあるお方のようで。」


「正直、主人と繋がりを持っておいて損はありません。

何しろ規格外のお方ですから。」


デイビッドも頷きました。

「我がデイビッド商会も、今後はエリザベート様との取引一本に絞る予定です。」


「そこまでのお人なのですか……!」

村長が目を丸くします。


ウォーレンも加勢しました。

「会えば分かりますよ。

会った人でエリザベート様を悪く言う人はいません。

鉱山の囚人たちも、今や皆ファンです。」


「あっこの子達はシグの町の貧民街の子達です。

妹さんの方は最初は体調崩されていたのですが

こちらで保護してすっかり元気になりました」

二人が挨拶します。

「「こんにちわ」」


「凄いですね……分かりました。出来るだけ協力させていただきます。」


村長の家の集会所を借り、炊き出しの準備を始めました。

メニューはヒラ焼きパンと具だくさんのスープ。

器は各自で持参してもらいます。


一時間後、焼きたてのパンと出来たてのスープを求めて、村人たちが列を作りました。

歩行の覚束ない者、衣服の汚れた子供、動けない老人の分まで受け取る者――。

私はその一人ひとりに、こっそり蜘蛛さんを付けていきました。


村人たちは、

香ばしく柔らかい全粒粉パンと、

骨と肉の旨味が溶け込んだ塩胡椒のスープに感動していました。


大好評のうちに炊き出しを終え、村長へ挨拶に向かいます。


「ありがとうございました。皆、喜んでくれたようで何よりです。」


「こちらこそ、こんなにしていただいて……何とお礼を言えば。」

「ではぜひ、労働力の件、よろしくお願いします。」

「分かりました。改めて相談してみます。」


「今夜は宿に泊まり、明日出発します。

出発前にもう一度ご挨拶に伺います。」


「承知しました。おやすみなさいませ。」


宿に戻る途中、私はつぶやきました。

「トニーが村長ですか、、、

私はトニーに騙された事があるんですよ。

金を横領した従業員に収穫物横流ししてたんです。

全体の額からしたら微々たる額でしたが今でも許せない気持ちがあります。


デイビットが同意します。

「あの人には昔から黒い噂がありますね。」


「まぁ今更ですね。いつか痛い目に合うでしょう。物理的に」


翌朝、改めて挨拶をするとトニー村長が

「何人か候補者と希望者は出ていますがどの様にしたら良いのでしょうか?」


私は

「数日中には別の者が迎えに来ると思いますので

準備しておいていただけたらと思います。」


「了解しました。ではお待ちしております。」

と深く頭を下げました。


私は笑顔で

「これから良い関係を築ける様よろしくお願いします。」

と言い次の村へと出発しました。













いよいよ村人の勧誘です。

村長が味方になれば良いのですが

村長はどうするんでしょうか?

炊き出しや贈り物といつもの「先に与える」戦略で交渉上手くいけば良いのですが



※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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