開拓地設計報告 ~橋梁建設および眷属班組織構成について~
翌日。
デイビッド、ジャック、双子のマックスとブレンダ。
冒険者《赤い羽根》のウォーレンとランディ、そして御者リーダー。
計七人が馬車に乗り、シグの町へと帰っていった。
護衛として、蜘蛛さんズを一匹ずつ同行させている。
馬車の中には、ミミックさんが一匹――ポツンと置かれているだけだ。
道中では各村で住民をスカウトできるよう指示を出した。
また、各村で炊き出しを行うよう命じてある。
ひもじい人間を炙り出し、新しく起こす国への移民として声をかけるためだ。
老人だろうが戦傷者だろうが未亡人だろうが、幼子だろうが関係ない。
誰でもいいから連れてこい――そう言ってある。
そういう行き場のない奴ほど、使い道は豊富だ。
“善意の炊き出し”も、目的があれば立派な投資だ。
それとは別に村長に全粒粉を100kg渡すように言っておいた。賄賂だ。
この世界、この時代において賄賂は罪ではない。
特に辺鄙な村に賄賂を渡す奴など滅多にいないので、
喜ばれること間違いなしだろう。
炊き出しを行い、村に多量の食糧を与えてくれる。
村の力にならない余剰人員を預かってくれる。
近くにできたという怪しい国主。
理解不能という点では恐怖だろうが、
悪い印象は持たれないはずだ。
俺は俺で、次の行動に移る。
「ミック、ここをどうしようか?」
西に十キロの場所を開拓するのは決まったが、
一番の問題はこの鉱山の在り方だ。
「とりあえず、このまま開拓を続けるか?
西の開拓はノームとゴーレムでやるつもりだから、
ここの囚人は使う気はないぞ」
「さすがはメイズ様ですね。
後から文句をつけられないようにしておくわけですか」
「とりあえず、ジャックたちが戻るまでは予測不能だからな。
各村の貧民、シグの貧民、
ここの奴隷解放、シグの奴隷、他の町の奴隷……。
順番で言えば、そんな流れになるだろうな。
五月雨式だが、その都度対応していくしかない」
今回はさすがに、エリザベートには留守番してもらおう。
現地確認をして指示するだけだし、村の受け入れ人員の方にトラブルがあった時に
急行しなければならないかもしれないからな。
というわけで、まずは採取班のウルフ三頭をハイウルフへ進化させた。
かなり経験を積んでいたので、魔素一万ずつで済んだ。
もう少し待てば勝手に進化していただろう。
体長は一・五メートルほどだったものが、二メートル近くまで成長し、
進化したのが一目で分かる。
名付けもしておこう。
サークル、トライアングル、スクエア――で良いか。
名付けが終わった瞬間、
「ワォン♪」
三頭が尻尾をぶんぶん振って駆け寄ってきた。
うん、普通に犬だな。
ウルフを十頭生成し、そのうち三頭を採取班へ。
残りを開拓班に回すつもりだ。
ウルフは風魔法を得意とする。伐採にはもってこいだ。
さらにゴーレムを十体、ノームを二十人生成する。
ノームは身長八十センチほどの人型モンスターで、
土魔法に長けている。町づくりには最適の素材だ。
そのうち四人を選び、名付けを施す。
ノース、イースト、サウス、ウエスト。
名付けられた四人の目に力が宿り、声を揃えて言った。
「「「「ご主人様、よろしくでーす」」」」
ウルフに二人ずつ乗って開拓地に向かわせる。
名付けノーム四人には魔素玉を渡しておく。
ウルフとノームはロープで固定だ。
毛布三枚と健康ランドセット六組も一緒に括り付ける。
少し重いだろうが、ウルフ達は平気そうだ。
モンスター相手なら思考を送れば伝わる。話が早い。
あとは現地の様子を見ながら、指示を出すだけだ。
ペガサスを生成しようとしたが、
ペガサスは女癖が悪いらしい。
エリザベートに悪さをされても困るので、代わりにケルピーを生成した。
水魔法を使える点も、採用理由の一つだ。
羽より蹄の方が実用的だし、欲望が少ない分扱いやすい。
ケルピーに鞍をつけ、ウルフ達と共に向かう。
ゴーレムは後からゆっくり来てもらう。
乗馬経験はないが、意識を繋げていれば
ケルピーの動きがダイレクトに伝わる。体重移動も容易だ。
特に急ぐ理由もないので、速足程度のペースで進む。
ウルフ達も名付けしたメンバーは楽しそうだ。
十キロの道のりを一時間もかからず走破し、開拓予定地に到着した。
到着したというか、川があってそれ以上進めなかったのだ。
そういえば来る時、川があったのを思い出した。
ゾンビウルフの時は、泳ぐ+溺れる+流されるで渡った気がする。
「どうせなら、川を渡った向こう側を領土と主張する方がいいか。
ニュースのみんな、橋って架けられる?」
“ニュース”――NEWS(North, East, West, South)の略。
ノームリーダー四人のチーム名だ。
ウルフチームは図形名なので、チーム名は“シェイプス(Shapes)”にした。
ノースが答える。
「過去の記憶にあるので大丈夫ですよー」
一番最初に名前をつけたので、自然と総リーダーになっているようだ。
他の三人も「「「大丈夫ですー」」」
「じゃあウルフ達に木を切ってもらって、ゴーレム達に運ばせて、
橋を架けてもらっていいかな?」
「「「「頑張りまーす!」」」」
「「「ワン!」」」
「何日ぐらいかかりそう?」
「簡単なのなら明日にはできまーす。
頑丈なのなら五日ぐらい欲しいでーす」
ノースが答える。
「じゃあ頑丈に作ってくれ。
寝床がいるな。雨風避けられる建物作れる?
三十メートル四方ぐらいでいいよ」
川沿いにちょうど良いスペースがあったので、
そこに小屋を土魔法で建てる。
五分もかからず完成した。
ミミックさんを二匹ほど生成。
岩や木材を飲み込み、必要な場所で吐き出させれば作業効率が上がるだろう。
「とりあえず橋ができるまでは、俺にできることはなさそうだな。
後は任せてもいいか? 無理しないでね」
「「「「頑張りまーす!」」」」
「「「ワン!」」」
というわけで、ダンジョンに戻りジャック達からの連絡を待つことにしよう。
いよいよ忙しくなってきたが――
それでも、楽しんでいこう。
【ダンジョン成長報告】
【モード】開拓・建国準備期(橋梁建設中)
【開拓班】ノーム×20(NEWS班リーダー4名)/ゴーレム×10/ウルフ×10(Shapes班)
【新規構想】川を跨ぐ橋梁建設(頑丈構造・進捗0→50%)
【眷属行動】移民スカウト・炊き出し実施中(囚人/貧民交渉)
【備考】“労働・眷属・理屈”の三軸で国の骨格を形成中
橋づくりに寝床づくり。
どう見ても地味な作業だが――こういうのが一番大事なんだよな。
俺の眷属たちは、命令で動いてるわけじゃない。
意識が繋がってるから、俺が「休む」って思えば全員も休む。
夜に動かないのはサボりじゃなくて、正しい稼働停止だ。
むしろ夜中に働いてたら、俺が一番怒る。
この世界、昼に働いて夜に寝るだけで“ホワイト経営”扱いになるんだから楽なもんだ。
まあ、俺は合理的なだけで善人じゃない。
でも結果的に誰も潰れないシステムができてるなら、それで十分だ。
次は橋の完成報告と、移民の受け入れだな。
国づくりってのは、案外“シフト管理”から始まるもんらしい。
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読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。




