建国報告 ~思いつきと最適解の交差点~
リバーシを見せたら昼飯の時間だ。
昼は宿舎で、囚人たちと同じ飯を食べてもらうことにした。
待機していた冒険者二人と御者も一緒に行かせる。
午後からは調味料の発注だ。
とりあえずお試しで――
塩100kg:大貨1枚
砂糖100kg:大金貨5枚
こしょう100kg:白金貨1枚
乾燥唐辛子100kg:大金貨3枚
リバーシ1000組:大金貨1枚
「全品の相場をまとめると白金貨二枚、約二億円分。
だが今回は相場の半額――白金貨一枚(約一億円分)でいい。
その分の奴隷を用意してくれ。
奴隷は刑期一年で金貨一枚が相場だ。
まずはこの鉱山で、刑期五年までの者を優先的に買い取りたい。
その次に、金貨五枚以下で落とせる人員がいれば二十人ほど欲しい。
思ったより人は少ないかもしれないが、まずは白金貨一枚分をそのために充てる」
デイビッドはメモを取りながら頷いた。
「了解しました。刑期別に手配してみます。五年以内優先で、人員が集まり次第ご報告します」
「こちらも、いずれ商会を立ち上げた方がいいか?」
「暫くは誤魔化せるかもしれませんが、後々問題になるかと……」
「,,,,そうか、いずれ問題になるか。となると今問題になっても誤差の範囲か
ミック、シグ子爵領ってどこまでだ?」
「この鉱山までですけど……まさか」
「どうせ問題視されるのなら
一々、既存の枠組みの中に入って下から上がるより、
枠組みの外で一番上になった方が早いと思わないか?
ここからさらに西に首都を作って開発する分には、
領土侵害には“理屈上ならない”んだよな?」
ミックは答える前に一瞬ため息をついた。
「……はい、“理屈上”は、なりませんね」
メイズはにやりと笑った。
空気が一瞬、凍りつく。
冗談のようで冗談ではない――そんな気配が場を包む。
「じゃあそういうことで!」
ミックが思わず椅子を軋ませた。
「今、話の流れで建国決めましたよね?
もう少し戸惑うとか悩むとかあっても良いんじゃないですか?」
「そうか、では悩むとするか、、、
よし国王はエリザベートで、俺は宰相で行こう」
「わ、私が国王ですか!?
普通はメイズ様が国王になるんじゃないですか?」
エリザベートが当然の疑問を口にする
ミックが
「悩む内容が違うじゃないですか!
特に悩んでないし!」
「ミック酷いぞ、きちんと悩んで出した結論だ
別に面白がってエリザベートを国王にしようとしている訳ではない
エリザベートは夜しか動けないだろ。
今後、他国との交渉も出てくるはずだ。
その時、誰が動く?
俺が国王だと動きづらくなる。
だから、国王はエリザベートに任せる。
俺は宰相として動きやすい立場にいた方が都合がいい
「俺が国王だと動きづらくなる。
――だから、国王はエリザベートに任せる。
俺は宰相として動きやすい立場にいた方が都合がいい。
国王ってのは“地位”でもあるが、所詮は“職業”だ。
信頼性、カリスマ性、好感度。
国民が安心して『この人についていけば幸せになれる』と思ってくれれば、それで十分。
対外的なビジュアルも、俺よりエリザベートの方が良いしな」
「メイズ様は格好いいです」
エリザベートが合いの手を挟んだ。
俺を宰相だと思って侮る様な奴の炙り出しにも使える。
「国王を職業なんて言うのメイズ様だけですよ!
なんで今思いついただけなのに、最適解が出てくるんですか?」
ミックが呆れたように言う。
デイビッドは起動停止していたが、やがて再起動して言った。
「ミック様、いつもこんな感じですか?」
「この間なんて、思い立った数時間後に
ダンジョンの中に十キロ四方の畑を作って、
全部開墾して、全部種を植えて、一週間で全部壊した」
「豪快ですね」
「それがまた、全部無駄になった訳じゃなくて、
宿舎横の開拓にきちんと活かされてるのが腹立つんですよね」
「なんだなんだ、文句ならきちんと言ってくれれば聞くぞ?」
「最大限褒めてるので、お気になさらず」
ミックは恭しくそう言い放った。
そのタイミングで、ジャックが急に立ち上がった。
「鉱山より西十キロに――“エリザベート王国”の樹立をここに宣言します!」
「それ、俺かエリザベートの台詞じゃないのか?」
「なるべく早く確定事項にしてしまいたかったもので。申し訳ございません」
……全然反省していない。
「ジャックのキャラ、壊れてきてるな。
これが催眠の副作用か……?」
俺は真面目にそう考えた。
少しの狂気と、少しの忠誠。
この二つの混ざり方こそが、人間という素材の面白いところだ。
【ダンジョン成長報告】
【モード】通常運営(商談・建国構想期)
【交渉成果】香辛料取引成立(相場比1/2・高純度生成)/奴隷労働力確保交渉進行中(鉱山:刑期≤5年優先買付・金貨5枚以下20名目標)
【新規構想】西方開拓地に“エリザベート王国”構想立ち上げ
【備考】経済・労働・政治ネットワークの多層化進行中
今回は“思いつきが国家になる”回でした。
普通なら勢いで終わるところを、
理屈でそのまま建国にまで持っていくあたりが、メイズらしいですよね。
周りが慌てている中で一人だけ平然としているあの温度差、
あれがこの物語の面白さでもあります。
いよいよ“国としての形”を整えていく段階へ移ります
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読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。




