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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第二章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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娯楽施設転換報告 ~生産拠点から社交空間への再配置計画~

農場の運営だが、育成自体は問題ない。

種は芽吹き、葉が伸び、生命の鼓動が土の中に満ちている。


――満ちているのを感じる。

それこそ、魔素をガリガリと削られる勢いで!!


他のダンジョンで高価な果実が実り、それがオークションで高値で取引されている――

その話はその話で、高級食材を“餌”にして冒険者を呼び込む戦略としては有効かもしれない。


だが、安価な野菜を育てるには非効率にもほどがある。

魔素消費のコスパが悪すぎる。


「農場計画は中止する」


俺の言葉に、ミックとジョージ、そして農場班になった囚人たちは見てわかるほど落胆した。


「そんなに駄目ですか?」


「あぁ。居住している住人の基礎ポイントより、農場の維持にかかるポイントの方が多い。

 このまま育成を続けるより、現物を生成した方が安い。

 さらに加工品なら、それよりも少ないポイントで済む。

 ……まあ、どの作物にどの科学肥料が合うのか分かっただけでも大きな収穫だな」


「それは仕方ないですね。ダンジョンでの農場は諦めましょう。

 作物の方はまだ芽吹いたばかりなのに、もう分かるんですか?」


「合う肥料の区画だけ、魔素の減りが早いんだよ。

 つまり、それだけ育成スピードが早いってことだろう」


「なるほど。では、外で農地を作れば良いということですね」


「そうだ。

 それでだ、今後もミックとジョージの鉱石加工の仕事は無いだろ?

 だから計画を変更する。

 宿舎の前にある萎びた農地の修繕と、新しい開墾を進める」


「了解しました。

 これまでの努力が無駄にならないなら上等です。

 通常の開拓作業、頑張りますよ」


「悪いな」


「いえいえ。通常の鉱山管理より新しい農地開拓の方が楽しいですし、

 お役御免にならずに済んで良かったですよ」


「開拓なら今までより力仕事が増えるだろうから、ゴーレムを五体ほど生成しておく。

 単純作業には向いてるだろ」


俺は言いながら、五体の土製ゴーレムを生成した(5×10,000P)。

体長二メートル、全身が太く無骨なフォルム。

パワーは十分だ。


「ここの農場は一度消滅させて、十分の一ほどの試験農場を残す。

 今後、新しい品種を植えた時の肥料試験に使ってくれ」


「了解しました」


「今は八月だから、来月秋蒔きの作物を植えれば、冬までに一度収穫できるだろ?」


「スケジュール作って動きます」


「うん、任せた」


俺が陣頭指揮を取ってもいいのだが、そうするとエリザベートが一人でダンジョンに残ることになる。

今までもほとんど一緒にいたから、なんか嫌なんだよな。

――はい、単なる我儘です。


ミックもその辺を分かっているらしく、素直に言うことを聞いてくれる。

……もしかしたら「俺も日光駄目」だと思われてるだけかもしれないけど。

まあ、問題ない。


さて。

輸送隊が戻るまでに、もう一つやっておきたいことがある。


「ミック、職人も囚人の中にいるか?」


「四人ほど居たと思います」


「木をちょっと加工できれば良いだけだからな。呼んできてもらえるか?」


「また面白いことをなさるんですね。分かりました、呼んできます」


しばらくして、ミックが囚人四人を連れて戻ってきた。


「急に呼び出して悪かったな」


そう言うと、四人ともニコニコしてご機嫌だ。

このダンジョンで“命令される”のは苦痛ではなく、

“何か面白い仕事が始まる予兆”なのだから当然か。


俺は三センチ×一メートルの角材を出し、言った。


「これを一センチの厚さに切って、片面を焼き付けて焦がしてくれ」


次に、四十センチ四方・厚さ一センチの板を出し、続ける。


「これに八×八のマス目――四センチ間隔で六十四マス作る。

 どちらも一、二ミリの誤差はいいが、なるべく揃えてくれ」


ミック、ジョージ、エリザベート、職人たち全員がキョトンとしている。

そりゃそうだ。何に使うか分からないもんな。


これは異世界転生定番の――リバーシだよ!


「ああ、リバーシですね。

 丸じゃなくて角なのは、作りやすさ重視ですか?」


ミックが言った。


……もうあるのかよ!?


「あるのか?」

思わず声が震えた。


「ありますよ。でもその作り方なら製造原価を下げられそうですね。

 廉価版として売り出せます」


「そうか……」


「将棋やチェス、麻雀はあるのか?」


「将棋とチェスはあります。麻雀は無いですね」


……良かった、最後の砦が残っていた。


ということは、この世界にも“転生者”や“転移者”がいた、またはいる、ということだろう。

まあ、いたとしても俺のやることは変わらん。


「分かった。じゃあ、廉価版リバーシの試作から始めよう。

 木材は採取班に運んでもらう。

 大工道具は必要な物を言ってくれ。都度生成する」


「了解しました。こちらも動きます。工房はダンジョン内ですか?」


「そうだな。工房はダンジョン内。

 俺とエリザベートが工房管理、ミックとジョージが農場管理で行こう」


「それで良いと思います」


「じゃあ、とりあえず農場再編で動いてくれ。

 工房の方は明日木を持って帰って、明後日から稼働開始だ。

 今日は掘削現場に戻ってくれ」


俺は新たにミミックを生成した。


「戻るついでにこの子を運んでもらっていいか?」


囚人四人が頷き、ミミックを荷台に乗せる。

ミミック自身も自走できるが、掘削現場までの道は細く凹凸が多い。

運んでもらった方が早い。


掘削現場に着くと、俺は石を一つ拾ってミミックに与えた。


「ミミックさん、縦三センチ、横二センチ、厚さ一・五センチの形に精製できる?」

――普通にできた。


「じゃあこの石、角を削って丸くしてくれ」

――普通にできた。


「この形を基準に、丸い形を九つ掘れる?」

――できた。


「反対側を焼き付けできる?」

――できる。


「同じものを“丸1~8”でお願い」

「同じく“三角1~9”」

「同じく“四角1~9”」

「剣・盾・鎧・兜のマークは?」

「杖・ローブのマークは?」

――全部できた。


「今の全部を四つずつ、無地の四つを足してまとめて作ってくれ」


はい、麻雀セットの完成である。

所要時間、一時間十五分。

東南西北発中は漢字がなじみ無いのでドンジャラ風にしてみた。


それにしてもミミックさん、有能すぎる。


「メイズ様、それは何ですか?」

エリザベートが興味津々で尋ねてくる。


「とても良いものだよ」


点棒は職人たちに作らせよう。

さらに、ミミックさんに台とサイコロを作ってもらった。


とりあえず点棒なしだが――

今晩、俺とエリザベート、看守二人で実践だ。


夜が楽しみだぜ。


どんな遊びも、最初に“作る”のが一番面白い。

効率だとか合理性だとか――そんなものを考える前の、

ただの「創造の衝動」。

それが、このダンジョンを動かしている原動力なんだと思う。


【ダンジョン成長報告】


【モード】生産拡張モード(安定稼働)

【農場開拓】ダンジョン内農地→縮小解体/外部農地開墾準備段階(魔素圏外)

【生産管理】農場班再配置完了/ゴーレム労働ユニット×5稼働準備

【新規構想】工房設立(管理:メイズ&エリザベート)/製作班試運転開始

【人員配置】エリザベート(副管理者)/ミック&ジョージ(農場統括)/囚人職人班×4(製作班)


農場の縮小は、“失敗”ではなく“再設計”でした。

効率を求めるほどに削ぎ落とされ、最後に残ったのは――創造の衝動。


メイズ様は、利益ではなく構造を楽しむ。

「奪わず、与えて支配する」という理念を、

今度は“働かせる”ではなく“作らせる”という形で展開しているのです。


こっそり看守たちと卓を囲む夜もまた、その延長線上。

それは支配のための娯楽ではなく、

“世界の仕組み”を遊ぶための静かな実験でした。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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