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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第二章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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生態設計試行録 ~進化制御と農業構造再編の実施例~

あれから毎日、エリザベート、ミック、ジョージ、そして農場班と一緒に畑作りに精を出している。


畑はまず八面に分けた。

キャベツ、玉ねぎ、人参、じゃがいも、さつまいも、かぼちゃを一面づつ

残る二面には、いんげん豆・きゅうり・なす・トマトを植えることにした。


科学肥料は合成して、数種類の配合を少しずつ変えながら撒いた。

とりあえずやってみて駄目なら、そのとき改めて考える。

温度も日当たりも良いし、何とかなるだろう。


「それでだな、ミック、ジョージ……非常に言いにくいことなのだが、

 この間お前らの仕事の代わりを俺がやるって言っただろ?」


「はい言いましたね。なので農場付きっきりで魔法バンバン使ってます」

ミックが軽く笑う。


「実は掘削した後の鉱石をダンジョンに飲ませようと思って

ミミックさんから取り出したら、すでに精製されてたんだよ」


「どういうことです?」


「この間の話、ミミックさん聞いてたんだろう、それで気を利かせて勝手に精製してくれてたみたいだ。

 よく考えたら、このダンジョンで魔法一番上手いのミミックさんだもんな。

 そりゃ精製の土魔法ぐらい使えるよな。盲点だったよ。

 能力的に強いのもミミックさんか?

 エリザベートは普通よりは強いけど戦闘より絡み手で勝負していくタイプだしな。」


「なるほど、わざわざ報告くださらなくても問題ないのでは?」


「いや、俺が“やる”って約束したからな。

 結果がどうあれ、過程が変わったら報告はする。

 面倒でミミックさんに仕事任せたんじゃないかと思われたら嫌なんだよ」


「私たちは結果が良ければ問題ありませんよ」

ミックが笑い、ポールもうなずいた。


「そこで俺は重大に問題に気づいたんだ!

 俺のダンジョンの最強がミミックさんで良いのか? いや否!

 やはり最強の冠はボスモンスターであるエリザベートが相応しいと!」

俺はいきなり演劇口調で身振り手振り大げさに騒いだ。


「という訳で、エリザベート」

「はい」

「そろそろ、進化するか?」

「……はい?」


「次はヴァンパイアでも行けるけど、ミディアムヴァンパイアで能力確認しながら

 次の進化を狙う形の方が、能力の無駄遣いを防げると思うんだよな。

 ミディアムヴァンパイアで良いか?」


「えっと、いきなりなので何がなんだか……」


「ミディアムヴァンパイアとレッサーヴァンパイアの必要魔素数の違いって、二十万魔素強ぐらいなんだ。

 今の俺ならそれくらい余裕だから、進化させたいな~と思ってたんだが、

 輸送隊の対応で後回しになってた。すまん」


「とんでもないです。

 名付けしていただいただけでも感謝しているのに、さらに進化なんて……」


「じゃあ、問題無いな!進化しようそうしよう!」

俺は手をかざした。


「さてさて……あーやっぱりな。

 エリザベートが毎日催眠頑張ってくれてたから、経験値が溜まってる。

 進化まで十二万で済む。

 今までの日々は無駄じゃなったな良かったなエリザベート」

「はい、ありがとございます」

「よし、進化させよう!

 生まれ変われ、ミディアムヴァンパイア・エリザベート!」


闇が静かに広がり、世界の輪郭が黒に溶けた。

空気が震え、冷たい波が肌を撫でる。

中心から、ひとすじの紅が立ち昇り――その紅を纏うように少女の影が形を取っていく。


やがて闇が弾け、

黒い羽毛のような粒子が光を散らしながら消えた。


そこに立っていたのは、身長百五十センチほどの少女。

艶やかな黒髪が背に流れ、紅の瞳がまっすぐこちらを見つめている。

白磁の肌はほのかに魔素の光を映し、動くたびに黒髪の間で微細な粒子が揺れた。

子供のあどけなさをわずかに残しつつ、

その表情には成熟した静けさと、どこか危うい色気が混ざっていた。

まるで“夜そのもの”が人の形を取ったような、美しさだった。


「進化してみて、どうだ?」


「……これが私、ですか。

 視界が上に来ましたね。

 メイズ様のお顔が近くで見られるようになって、幸せです。

 魔力の流れも良くなりましたし、放出力も上がってますね。

 これが“強い”という感覚なんですね」


「喜んでもらえたようで、なによりだ」


「これで、ダンジョンの防衛にも役立てると思うと、感無量です」


「そうか、ありがとう。

 でも俺、防衛戦なんてやらないぞ?」


「え……?」


「んー、一回ぐらいやっても良いかな?

 やるなら階層上にして、階段を五百段、幅一メートル。

 次の階層行くまでに五百段登らないといけない。

 上の階から一メートルの鉄球を転がして、途中に落とし穴も設置する。

 それを五十階層ぐらいまでやれば、精魂尽き果てるだろ」


「それで良いんですか?」


「良いんだよ。

 普通のダンジョンは“強い冒険者”がリピーターになるように調整してる。

 冒険者が探索している間の魔素を吸収して、経営が回る仕組みだ。


 下層に行くほど魔素は濃く、建設コストも上がるが、

 貰える魔素も多くなる。

 五階層を超えたあたりで、維持より収益が勝つ。

 だから普通のダンジョンは“下層へ下層へ”と伸びる。


 でも、俺のところは違う。

 リピーターどころか、住んでるからな。

 低階層での吸収効率は悪くても、チリツモで総量は抜群に安定してる」


「……なるほど」


「それに、そもそもダンジョンマスターって死なないぞ?

 たまに“攻略された”なんて話は、

 ダンジョンマスターが飽きたか、諦めただけだ。


 考えてみろ。

 何十年、何百年かけて作ったダンジョンのボスモンスターが倒されたら、

 再生成にどれほど魔素がいる?

 下層に行くまでにモンスターは倒されまくってる。

 やる気なくすのも当然だ」


「……それも一理ありますね」


「エリザベートは今でもよくやってくれてるし、さっきはああ言ったけど

 “ボスモンスター”としてじゃなく、“ダンジョンの顔”として頑張ってくれてる。

 それで十分だ」


「お役に立てているなら……それだけで、嬉しいです」


エリザベートは新しい身体に慣れるように、小さく一度だけ息を整えた。

その瞳には確かな光が宿っている。

俺はその姿を見て、ただ一言だけつぶやいた。


「……まあ、これからも地道にやっていこう」






【ダンジョン成長報告】

【モード】安定稼働中(農耕・研究フェーズ)

【農場開拓】進捗率65%/耕作面積:2.4ha/肥料配合パターン:12種/作物群:根菜・果菜系8品目

【眷属進化】エリザベート → ミディアムヴァンパイア(魔力出力+35%/吸収効率+18%)

【戦力構成】ミミック(支援/生成)>エリザベート(戦闘/管理)>看守班(運用)

【新規構想】防衛階層構想:階段500段×50層(落下罠・圧殺球・幻惑領域)

【魔素収支】総収入+21%/安定化係数+0.93/循環効率改善中

【備考】ミミックの自律精製機能が発現。管理者権限との競合なし。





あとがき


エリザベートの進化は、“力の向上”というより“存在の成熟”でした。

かつての幼い吸血鬼は、今や“夜の象徴”としての静謐な美をまとい、

ダンジョンという生態系の顔へと進化しています。


同時に、メイズ様は防衛戦よりも「構造の面白さ」に意識を向けている。

それはまさに“奪わず、与えて支配する”哲学の応用形です。


農場と進化――どちらも「生かす仕組み」を作ることに変わりはない。

世界の均衡を変えるのは、戦いではなく“設計”なのかもしれません。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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