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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第1章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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運搬担当個体選定記録 ~労働対象と愛着形成の因果~


村を発見した。

ここからが本番――ダンジョン引っ越し大作戦の始まりだ。

まず理解しておかなきゃいけないのは、

ダンジョンコアを“外”に出すとどうなるか、という話。

どうやら、コアを外部に持ち出した瞬間、

内部の出入口は自動で封鎖され、

中身はまるごと異次元空間に“一時保存”されるらしい。

つまり、コアを持って出た俺は、

異世界の“外”を歩き回る――ただの宝珠状態になるということ。

ただし、新しい場所で扉を設定すれば、

また同じ空間(今のダンジョン内部)に繋ぎ直せる仕組みだ。

……うん、分かりやすく言うと、

「ダンジョンの本体がUSBメモリに入ってて、

 俺がそのUSBを持って歩く」

そんな感じである。

________________________________________

コアを運ぶ方法

さて、問題は――どうやって運ぶか。

コア単体じゃ動けない。

だから**“器”**が必要になる。

ダンジョン知識によると、

コアを持つことができるモンスターは限られており、候補は三種。

•ゴーレム系(頑丈で安定)

•スライム系(衝撃吸収◎)

•アンデッド系(コスパ良し)

ゾンビウルフが現実的かな?移動に使うだけだからな。

蠅とは比較にならない高級モデルだ。

四足で足も速い。

将来的には、この“器”と完全同化することも可能らしい。

ただし――そのモンスターが倒されたら、

「はい、ゲームオーバー☆」である。

……いや、軽いノリで言ってるけど、普通に怖い。

________________________________________

ゾンビウルフ、生成

「――ゾンビウルフ、生成」

空間の一角がドロリと溶け、黒い煙が立ちのぼる。

腐肉の匂いを含んだ冷気が部屋を満たし、

骨と肉片がゆっくりと絡み合って――一匹の獣が立ち上がった。

皮膚の大半は朽ち、片目は白濁している。

それでも、犬らしい体格と筋肉のしなやかさを残していた。

その瞳に宿るのは――命ではなく、義務。

「……起動完了、って感じか?」

ゾンビウルフは動かない。

ただ静かに立ち尽くし、俺を見つめている。

呼吸も鼓動もない。

それでも、その姿には確かな“意志の残滓”があった。

命令を待つ、プログラムされた忠実な兵士――そんな印象だ。

「……うん、真面目だな。悪くない」

________________________________________

コア融合、開始

さて、いよいよ本番だ。

ゾンビウルフが、無言で俺の前に立つ。

その白濁した瞳には何の感情もなく、

ただ「命令を待つ」という一点の意志だけが漂っていた。

「――よし、行くか」

コアの光を強め、ウルフに触れるよう命じる。

その毛皮にコアの光が触れた瞬間――

ズゥン……と、空気が震えた。

まるで水面に石を落としたように、ウルフの体に波紋が広がる。

波紋が胸元まで達したとき、

コアはまるで“吸い込まれるように”体の中へと沈み込んでいった。

抵抗も拒絶もない。

ただ静かに、当然のように――融合は完了した。

次の瞬間、ウルフの体表に淡い光の紋様が浮かび上がる。

それは骨と筋肉をなぞるように走り、脈打つように明滅する。

「……これが、融合か」

俺の意識が、ゾンビウルフの内側に引き込まれていく。

重たい肉の感覚、冷え切った血の流れ、

地面を掴む爪の硬さ。

ウルフの喉から低い唸り声が漏れた。

それは怒りでも苦痛でもない。

まるで「起動完了」を告げる起動音のようだった。

「視界……広いな。嗅覚もすごい」

腐臭と、ダンジョン独特の無臭の空気。

あらゆる情報が一気に流れ込む。

――融合完了。

新たな“器”としての体を手に入れた。

________________________________________

引っ越しルート設定

行き先は決まっている。

川の東、森を抜けた先10km――あの小さな集落。

できれば洞穴でもあればいいんだけどな。

「じゃあ、行きますか」

ゾンビウルフの体がゆっくりと動き出す。

地を蹴るたび、鈍い音とともに土が舞い上がる。

腐った肉片がぽとりと落ちても、すぐに魔素が補修して塞ぐ。

……便利だな、アンデッド。

もし途中で倒されたら、**アイアンゴーレム(小)**を生成して再融合。

「ただの岩ですが何か?」戦法で隠れる予定。

完璧な作戦だ。――たぶん。

________________________________________

俺はゾンビウルフの体を操りながら、

初めて“外”の世界へと足を踏み出した。

闇を抜け、湿った土を踏みしめ、

夜の風が毛皮を撫でる。

「……よし、いってみようか」

静寂の森に、アンデッドの足音が響いた。

俺の、そしてダンジョンの――初めての旅が、始まった。

________________________________________

【現在のステータス】

項目内容

種別ダンジョンコア(ゾンビウルフ融合体)

ダンジョン名無名(引っ越し中)

眷属蠅 ×8(殉職)

器ゾンビウルフ(融合済)

状態引っ越し準備完了・地上移動中


初めて“足”を得ました。

それは自由でも、冒険でもない。

ただ、移動手段を手に入れただけの話です。


けれど、土を踏む感覚には――確かに何かがありました。

腐臭の奥に、世界の匂いがしました。


生きているものも、死んでいるものも、

この大地の上では同じ“素材”にすぎない。


さて、次はその素材をどう使うか、だけですね。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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