【閑話】名称由来確認 ~識別子および呼称運用方針について~
「メイズ様、そういえばお聞きしたいことがあったのですが」
エリザベートが、少し真剣な顔で口を開いた。
「お名前の由来、伺ってもよろしいですか?
あの時はいきなりの名乗りに驚きすぎて、理由を聞くのを忘れていましたので」
隣で輸送隊の報告書をまとめていたジョンとポールも、
気になった様子で手を止め、耳を傾ける。
「単純に、前世の言葉で“ダンジョン”の別名だ。
“メイズ(Maze)”は入り組んだ迷宮を指し、
“ラビリンス(Labyrinth)”は深く、終わりの見えない迷宮を指す言葉だな。」
「なるほど……。
やはり“ダンジョン”にこだわっておられるのですね。
ただ――“ダン・マンジロウ”や“ダン・ジョンマン”よりは、
ずっと良い響きだと思います。
エリザベート・マンジロウなんて、さすがに名乗りたくありませんでしたので。」
「名前など、名乗っていればそのうち馴染むものだ。
結局は判別用のただの記号にすぎん。
ある人物など、数の単位を名前にしていたぞ。
“大きければ偉い”などと言いながら、
“無量大数”の下の単位と、そのさらに下の単位を組み合わせてな。
だが慣れれば気にならんものだ。」
「……相手の名前を、わざと聞かないのもそのせいですか?
メイズ様、滅多に自分からは名乗りませんよね。」
「あぁ。本当に必要な時しか名乗らんし、
相手の名を知るまでは、相手はただの有象無象だ。
そういう意味では――俺は、誰よりも“名前”を大事にしているのかもしれんな。」
「誰よりも大事にしているのに、“ただの記号”と言いきるのは……
本当にメイズ様らしいですね。」
「確かに普通は、まず名前を決めますもんね。
私の名付けも、すぐ決めてくださいましたし。」
「今後第二・第三の顔が必要な時には――
“マンジロウ”や“ジョンマン”の出番が来るかもしれん。
……あるいは“メイ・キュウ”とか、“メイキ・ユウメイロ”とか。」
「……それ、もう迷宮通り越して迷走してません?」
エリザベートが苦笑し、
ジョンとポールは顔を見合わせて吹き出した。
――名もまた、構造の一部なのだろう。
✦ あとがき ✦
“名前はただの記号”と豪語するメイズ様を見て、
作者も自分のペンネーム「不可思議那由多」を見つめ直しました。
……どこまでが名前で、どこからが単位なのか、正直もう分かりません。
※感想・ブクマ励みになります!
読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。




