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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第二章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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組織化試行報告 ~名乗りと契約による支配構造の確立~

全員、風呂から出てぐったりしているものの、肌艶はやけに良い。

もちろん服装は“健康ランドセット(上下)”だ。


「では、食事にしよう」


普段は宿舎の食堂を使っているが、今日は久々にダンジョン内の食堂を使う。


席順は――

上座に俺とエリザベート、看守4人。

近い席に輸送隊10人、残りは自由席だ。


ジャックは俺の背後に控え、食事は取らない。完全に執事ポジションである。


広さそのままに、机と椅子を追加しただけの空間。

今の俺にとっては、そんな生成コストは微々たるものだ。

寝室のカプセルも余裕を持って20増やしておいた

新しい看守達にはジョンとポールが居なくなるまではカプセルで寝てもらおう



メニューは恒例のハンバーガー&ピザ&ビール。

――考えるのが面倒だっただけだ。


初期メンバー34人、今回の輸送隊12人、俺とエリザベートを含めて計48人。

ほぼ50人近い食卓は、さすがに壮観だ。


乾杯の音頭はジャックに任せた。

「ダンジョンと新たな仲間に――乾杯!」


……音頭任せておいて何だが、それでいいのか看守?

ジョンとポール、囚人たちと輸送隊の温度差がひどい。


緊張でフォークを落としそうになっている輸送隊に、俺は声をかける。

「まぁ、とりあえず食べてくれ。

 俺はこんなナリなので食事も喉を通らんのだ」


折角の渾身の自虐ネタは、盛大に滑った。


だが“とりあえず”食べ始めた面々の手は、

次第に早くなり――ついには“がっつき”へと変わっていく。


いつもの雄叫び(「うめぇ!」とか「肉だ!」とか)も飛び交うが、

もう誰も気にしない。これが日常だ。


「エリザベート、旨いか?」

マナー正しく食事している彼女に声をかける。


「美味しいです」

彼女の前のグラスには、深紅の液体が一杯。

――ワインに見せかけた、“血のワイングラス”。


皆、薄々感づいているだろうが、誰も何も言わない。

皆、紳士なのだ。



阿鼻叫喚の食事も終わり、恒例の“散髪&献血タイム”。


以前も使った採血キットを前に、

輸送隊たちは顔を青くして固まり、

既存メンバーは慣れた手つきで順番待ち。


既存組が率先して採血し、散髪を始める。


「お前らの血を頂くぞ!」

「はい、マスター。おふざけが過ぎると話がややこしくなりますので、私からお願いしますね」


エリザベートにたしなめられ、大人しく下がる。

……成長したな。


ジョンとポールが輸送隊を宥める。

「少し血を抜かれるだけだ。風呂と食事の代金だと思ってくれ」


抗う者は誰もいなかった。

抗うことの“無意味さ”を、すでに理解しているのだろう。


「看守の二人――ミックとジョージだったな。

 この後、話がしたい。付き合ってもらおう」


「他の奴らはカプセルで寝てくれ。

 エリザベート、頼む」


彼女は淡々と安眠の催眠をかけていく。

先ほど抵抗していたランディにも声をかける


「安眠の催眠を拒めば、あなたは一人だけ眠れない世界に残されますよ?」

その一言で、ランディは観念したように目を閉じた。



俺、エリザベート、ジャック、

看守のジョン、ポール、ミック、ジョージ。

計7人で食堂に戻り、会話を始める。


エリザベート、俺、ジョン、ポールの並びで、

向かいにミックとジョージ。

ジャックは俺の背後――完全に執事ポジション。


(にしても、ジョンとポールはこっち側に座るのか

と思うのは俺だけか?

 まぁいいか。)


「改めて、俺はこのダンジョンのマスターだ。

 名前は……まだ無い。」


少し考えてから言った。

「これから名前が無いのも面倒だな。――“メイズ・ラビリンス”でいいか」


エリザベートが珍しく声を上げた。

「マスター! なんですかそのまともな名前は!」


ジョンとポールも驚いた顔をしている。

「普通の響きですね」「良いと思います」


「では、改めて名乗ろう。――メイズ・ラビリンスだ」


ミックが恐る恐る尋ねた。

「もしかして……今決めました?」

「いかにも。気軽に“メイズ”と呼んでくれ」


「色々聞きたいですが……とりあえず後回しにします。

 警備隊三班所属ミックです。こちらがジョージ。よろしくお願いします」


「うむ。それで――どうだった? 俺のダンジョンは」


ミックが少し考えて言う。

「……色々ありますが、なぜジョンとポールが協力しているんですか?」


「ではジョンに聞こう。憲兵団の鉱山の仕事とは?」

「囚人の監視、鉱石のノルマ達成、鉱山の維持管理です」

「今、問題あるか?」

「いいえ。囚人たちは鎮静の催眠により興奮状態にならず、管理は容易。

 食事と風呂の改善で労働意欲も上がり、人数が減ってもノルマは達成。

 鉱山の維持管理も問題ありません」


「ということだ」


ミックは目を白黒させたが、隣のジョージが静かに口を開く。

「つまり、“結果が出ているのだから問題ない”と仰りたいのですね」


「話が早くて助かる。

 なので――君たちにも協力してもらいたい。どうだ?」


ミックもようやく納得したようだ。

「まぁ、この鉱山は囚人と言っても重罪人はいません。

 借金奴隷や、喧嘩で手加減を誤った連中ばかり。

 町によっては無罪になる者も多い。

 ……分かりました。私も協力します。ジョージは?」

「私も、協力させて頂きます」


「よし。じゃあ――固めの杯だな」


「固めの杯?」


誰も意味が分からない様だが気にせず進める


俺はビール5杯と、血ワイン2杯を生成した。

飲めないが、こういう儀式には形がいる。


「では――これからもよろしく」


グラスが触れ合う音が、

深夜のダンジョンに静かに響いた。



【現在のステータス】


【モード】等価交換モデル(安定稼働)

【新規契約】看守班協定/協力体制確立

【入手魔素】月18万前後(血・髪・滞在・生活循環含む)

【生産対象】鉄・魔鉄・魔石(循環生成補填)

【経済効果】稼働率+20%/支配安定率+15%/協力者+2名

【備考】ダンジョンマスター、正式名「メイズ・ラビリンス」登録完了


“清潔”こそが秩序の象徴。

汚れを落とすという行為は、支配の儀式でもあります。

この章で、ダンジョンは完全に“生活共同体”として完成しました。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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