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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第二章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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衛生管理混乱記録 ~過剰清潔化による社会構造の破綻例~

いよいよ、新しい侵入者(住人)がやって来た。


予定通り、五台の馬車。

御者席には御者と冒険者が一人ずつ。

馬は小型の実用種で、いわゆるサラブレッドのような“走るための馬”ではない。


看守二人は……まあ、馬車の中で偉そうにしている。

中にいるだけで偉そうに見える俺に問題ありか。


――というわけで、予定通り十二名が宿舎に到着した。


出迎えはジョンとポールの二人。

俺は周囲に配置した蜘蛛さん達を通じて、多方向から監視している。

距離があるため、会話は拾えない。


(さて、さっさと中に入ってもらおう)


今回の作戦は「パターンB」。

到着時間によって行動が変わる仕組みだ。

夜なら休息誘導、昼なら食事誘導、というわけ。


今は昼前。つまり――昼食タイム、パターンB。


視点を部屋の隅の蜘蛛さんに切り替えると、ようやく声が聞こえた。


看守の一人が叫ぶ。

「なんだこの状態は!?」


「何がどうした、ミック」

ジョンが怪訝そうに返すと、

「綺麗すぎるだろ……!」


その瞬間、俺も察した。


――やばい。

スライムさん達、ずっと清掃続けてたんだった。


壁、床、天井――どこを見てもピッカピカ。

しかも艶出し液まで分泌してる。


(……いや、優秀すぎるだろお前ら)


蝿さんも、蜘蛛さんも、スライムさんも、ウルフ達も、

本当によく気が利く。

俺の命令以上のことをやってくれる。


(嬉しいけど、今回はマイナス方向に優秀だな……)


俺は溜息をつき、決断した。

「仕方ない。睡眠薬作戦は中止だ。

 ――蜘蛛さん部隊、出動。計十二名、拘束」


数十匹いた蜘蛛さんのうち十二匹が、

スルスルと天井から降り、馬車の一団を瞬時に絡め取る。


(うーん、仕事早い)


「よし、行くぞエリザベート」


隣で静かに控えていた吸血姫が頷く。

「予定より早いですね。何か問題が?」


「うん。宿舎が――綺麗すぎた」


「……???」


「普通さ、男ばっかりの脳筋集団って掃除しないだろ?

 それがスライムさん達のおかげで、汚れ一つないんだよ」


「なるほど。通常ではあり得ない状態が、

 私達には“普通”になっていたということですね」


「そう。俺の衛生基準、この世界じゃ異常なんだよ」


「……仕方ありませんね。

 それこそが、マスターの“マスターたる由縁”ですから」


「お、エリザベートもだいぶ分かってきたな」


彼女はわずかに微笑んだ。

紅い瞳が、どこか誇らしげに揺れる。



宿舎に着くと、そこには――首だけ出たミノムシが十二個。


「……うん。蜘蛛さん達、今日も絶好調だな」


「エリザベート、軽い催眠、何人まで効きそう?」


「とりあえず全員に試みます。

 失敗した者だけ、別の方法に切り替える形でよろしいですか?」


「素晴らしい。それでいこう」


俺は満足げに頷いた。

最近、彼女の思考が確実に俺に近づいている。


合理、観察、効率――

そして、時々の悪ノリ。


蜘蛛さん達は状況判断が早くなり糸だし能力上がってるし

スライムさん達は命令を待たずに周囲を整えるようになった。

そして、エリザベートも――もう、俺の意図を言葉にしなくても理解して動く。


……支配が深まるほど、みんなが“成長”していく。


なんか嬉しい事ばかりで、

今日の俺は、ちょっとだけ多幸感に酔ってしまう


【現在のステータス】


項目内容


作戦名:再教育キャンプ・フェーズ2(侵入者初期拘束)

新規対象:輸送隊12名(看守2+囚人10)

効果:宿舎制圧・抵抗抑止成功

補足:スライム過剰清掃による作戦前倒し

ボス:吸血姫エリザベート(理解度+5%/実行判断速度+10%)

備考:衛生基準の異常化による心理混乱発生中



清潔で秩序立った世界ほど、外から見れば異常に見える。

それは理想の裏返しであり、狂気の前兆でもあります。

外部の視点が入り始めたことで、

この“楽園”の異質さがより際立つ章でした。


※感想・ブクマ励みになります!


読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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